⑥日本を防衛(ぼうえい)するための自衛隊(じえいたい)自身の取組

日本を防衛するための自衛隊自身の取組

日本を防衛(ぼうえい)するための手段(しゅだん)には、①日本自身の防衛力(ぼうえいりょく)を強化すること、②日本とアメリカの同盟(どうめい)関係を強化すること、③各国との協力関係を強化することの三つが挙げられます。ここではまず、日本自身の防衛力(ぼうえいりょく)を強化するための自衛隊(じえいたい)の取組について見てみましょう。

普段(ふだん)からの情報(じょうほう)収集(しゅうしゅう)警戒(けいかい)監視(かんし)

 日本は四方を海に囲まれ、6,800あまりもの島々(しまじま)や広大な排他(はいた)経済(けいざい)水域(すいいき)(水産資源(しげん)鉱物(こうぶつ)資源(しげん)権利(けんり)がある水域(すいいき))を有しています。日本の領海(りょうかい)排他的(はいたてき)経済(けいざい)水域(すいいき)の面積は世界で第6位もの広さがあります。この広大な海域(かいいき)でどのような事態(じたい)が起きても対応(たいおう)できるよう、自衛隊(じえいたい)普段(ふだん)から日本の領海(りょうかい)領空(りょうくう)とその周辺の海空域(かいくういき)情報(じょうほう)収集(しゅうしゅう)警戒(けいかい)監視(かんし)を行っています。
 具体的には、海上自衛隊(かいじょうじえいたい)航空自衛隊(こうくうじえいたい)が、航空機やレーダーサイトなどにより、日本周辺の海域(かいいき)での船舶(せんぱく)状況(じょうきょう)や、日本とその周辺の上空の状況(じょうきょう)を24時間態勢(たいせい)見張(みは)っています。
 また、主要な海峡(かいきょう)では、陸上自衛隊(りくじょうじえいたい)沿岸(えんがん)監視(かんし)隊や海上自衛隊(かいじょうじえいたい)警備(けいび)所などが同じく24時間態勢(たいせい)見張(みは)っています。
 このような情報(じょうほう)収集(しゅうしゅう)警戒(けいかい)監視(かんし)で得られた情報(じょうほう)は、海上保安庁(かいじょうほあんちょう)などの関係省庁(しょうちょう)にも共有し、連携(れんけい)を強化しています。

わが国周辺海空域(かいくういき)での警戒(けいかい)監視(かんし)のイメージ
わが国周辺海空域での警戒監視のイメージ

外国の航空機や潜水艦(せんすいかん)などへの対処(たいしょ)

 警戒(けいかい)監視(かんし)により、日本の領空(りょうくう)侵入(しんにゅう)するおそれのある航空機を発見した場合には、航空自衛隊(こうくうじえいたい)戦闘機(せんとうき)などを緊急(きんきゅう)発進(スクランブル)させ、その航空機の状況(じょうきょう)確認(かくにん)し、行動を監視(かんし)します。さらに、航空機が実際(じっさい)領空(りょうくう)侵入(しんにゅう)した場合には、退去(たいきょ)警告(けいこく)などを行います。2021年度には航空自衛隊(こうくうじえいたい)は1年間で1,004回もこの緊急(きんきゅう)発進を行いました。右のグラフのように、対応(たいおう)した航空機は中国とロシアのものが大半を()めています。

緊急(きんきゅう)発進の実施(じっし)回数とその内訳(うちわけ)
緊急発進の実施回数とその内訳

 また、潜水艦(せんすいかん)が海の中に(もぐ)ったまま外国の領水(りょうすい)領海(りょうかい)と内水(=(わん)河川(かせん)など、領海(りょうかい)より内側の水域(すいいき))のこと)内を航行することは国際法(こくさいほう)(みと)められていません。、日本の領水(りょうすい)内にこのような潜水艦(せんすいかん)がいた場合、海上自衛隊(かいじょうじえいたい)艦艇(かんてい)などが探知(たんち)識別(しきべつ)追尾(ついび)といった対処(たいしょ)を行います
 北朝鮮(きたちょうせん)の工作船など、武装(ぶそう)工作船と(うたが)われる不審(ふしん)な船に対しては、基本的(きほんてき)には海上保安庁(かいじょうほあんちょう)対処(たいしょ)します。しかし、海上保安庁(かいじょうほあんちょう)では対処(たいしょ)できない場合や対処(たいしょ)困難(こんなん)な場合には、自衛隊(じえいたい)海上保安庁(かいじょうほあんちょう)連携(れんけい)して対処(たいしょ)を行います。

緊急発進(スクランブル)準備中の空自戦闘機
緊急(きんきゅう)発進(スクランブル)準備中の空自戦闘機(せんとうき)
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緊急(きんきゅう)発進(スクランブル)ってどんなことをするの?
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基地(きち)でも空でも全力ダッシュだよ。スクランブルの命令が出ると、1秒の無駄(むだ)もなく準備(じゅんび)をして、飛び立ち、日本の領空(りょうくう)に他国の航空機が国際法(こくさいほう)違反(いはん)して勝手に入ってくる前に現場(げんば)の空へ()けつけなくてはいけないんだ。雨や風の中でも隊員が協力し、細心の注意を(はら)って任務(にんむ)にあたっているよ!
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(もぐ)った状態(じょうたい)でやってくる潜水艦(せんすいかん)はどうやって見つけるの?
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音や磁気(じき)(など)を感じ取ると海中の色々なことがわかるんだ。護衛艦(ごえいかん)潜水艦(せんすいかん)、航空機などにはそのための機械も積んでいるよ。隊員の中には、海中の音を耳で()()けて潜水艦(せんすいかん)の種類を当てる隊員たちもいるみたい!
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日本の島々(しまじま)を守るために

 日本が有する多くの島々(しまじま)を守るためには、自衛隊(じえいたい)の部隊をきちんと配備(はいび)しておくこと、そして状況(じょうきょう)(おう)じて部隊を(すみ)やかに移動(いどう)させることが必要です。また、普段(ふだん)からの情報(じょうほう)収集(しゅうしゅう)警戒(けいかい)監視(かんし)により、(てき)からの攻撃(こうげき)前触(まえぶ)れを早期に察知し、航空機や艦艇(かんてい)を使って、空や海でより優位(ゆうい)に立つことができる状況(じょうきょう)確保(かくほ)することが重要です。
 事前に(てき)からの攻撃(こうげき)前触(まえぶ)れを察知した場合には、(てき)()めてくると予想される場所に(てき)より先に自衛隊(じえいたい)の部隊を移動(いどう)させ、(てき)の部隊が日本の島に近づいたり、上陸したりすることを阻止(そし)することになります。
 また、海や空で相手より優位(ゆうい)に立つことが困難(こんなん)になった場合でも、(てき)の部隊が攻撃(こうげき)できる範囲(はんい)よりも遠くから、ミサイルなどを使って、(てき)の部隊の接近(せっきん)や上陸を阻止(そし)することになります。
 それでも万が一日本の島を(てき)占拠(せんきょ)されてしまった場合には、自衛隊(じえいたい)の航空機や艦艇(かんてい)によって島にいる地上の(てき)攻撃(こうげき)して制圧(せいあつ)した後、陸上自衛隊(りくじょうじえいたい)の部隊を空や海から着陸・上陸させるなど、あらゆる手段(しゅだん)(てき)から取り返すことになります。
 こうした作戦を行うことができるよう、防衛省(ぼうえいしょう)自衛隊(じえいたい)は九州や沖縄(おきなわ)に新しい部隊を配置したり、(てき)攻撃(こうげき)できる範囲(はんい)よりも遠くから対応(たいおう)できる「スタンド・オフ・ミサイル」の整備(せいび)を行ったり、また、部隊を素早(すばや)くかつ遠くに輸送(ゆそう)できるV-22オスプレイというヘリコプターと飛行機の特性(とくせい)をあわせ持つ航空機を導入(どうにゅう)したりするなど、様々な取組を進めています。

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自衛隊(じえいたい)には、体力自慢(じまん)の人が入るの?
テレビで見るほふく前進とか大変そう。
(みな)さん基地(きち)内などで体力づくりに(はげ)んでいます。はじめは自信がない人も多いですよ。また、体力を使う仕事だけではなく、その人に(おう)じた多様な仕事に取り組むチャンスがあります。
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もちろんほふく前進など大変な訓練もあります。ちなみにほふく前進には種類がありますが、歩くスピードよりも速くほふく前進できる人もいますよ。
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ミサイル攻撃(こうげき)から守るために

 (かり)弾道(だんどう)ミサイルで攻撃(こうげき)された場合には、日本を守るために、飛んでくる弾道(だんどう)ミサイルを()()とさなければなりません
 弾道(だんどう)ミサイルは発射(はっしゃ)されると、ロケットエンジンにより加速し、宇宙(うちゅう)空間まで高く上がります。ロケットエンジンの燃料(ねんりょう)が切れた後も、しばらくは宇宙(うちゅう)空間を飛び続け、その後宇宙(うちゅう)空間から大気圏内(けんない)に落ちてきて、最終的に地上に着弾(ちゃくだん)します。
 日本に向けて弾道(だんどう)ミサイルが発射(はっしゃ)された場合、自衛隊(じえいたい)はまず、様々なレーダーを使って、ミサイルがどこを飛んでいるのか、どこに向かっているのかなどを調べます。そして、高性能(せいのう)なレーダーやミサイルシステムを搭載(とうさい)しているイージス(かん)という艦艇(かんてい)からミサイルを発射(はっしゃ)し、宇宙(うちゅう)空間を飛んでいる弾道(だんどう)ミサイルを()()とします宇宙(うちゅう)空間で()()とせなかった場合でも、地上に配備(はいび)されているPAC(パック)-3(スリー)というミサイルで()()とすことで、日本を弾道(だんどう)ミサイルから守れるようにしています。

ミサイル攻撃から日本を守るイージス艦
ミサイル攻撃(こうげき)から日本を守るイージス艦
ミサイル防衛(ぼうえい)のイメージ図
ミサイル防衛のイメージ図
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艦長(かんちょう)になるにはどうしたらいいの。
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海上自衛隊(かいじょうじえいたい)入隊後、様々(さまざま)なコースから幹部(かんぶ)になり、艦艇(かんてい)職域(しょくいき)に選ばれたのち、艦艇(かんてい)や地上で様々(さまざま)な仕事を経験(けいけん)しながら艦長(かんちょう)を目指します。
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