インド太平洋地域
日本が位置するインド太平洋地域は、世界の人口の半数が住む、世界の経済にとって重要な地域です。同時に、中国のさらなる発展などにより、国と国との力関係に複雑な影響が生じ、特にアメリカと中国との間で政治・経済・軍事・技術など様々な分野での競争が激しくなっています。中でも、技術をめぐっては、先進的な技術を使える国が、国と国との関係において有利に立てるとの考えから、自分の国の新しい重要な技術が、敵になるかもしれない国に渡らないようにするような政策が重要になってきています。
また、インド太平洋地域の国々の中には、わたしたちが大事にしている自由や民主主義といった価値観を必ずしも共有していない国があるだけでなく、強大な軍事力を有する国が集中しています。国際的なルールを無視して、軍事力を使って自分の国の主張を押し通したりするなど、一方的に行動する国も存在します。例えば、みなさんもロシアがウクライナに軍事攻撃を行ったことはニュースで見ていると思います。このような中で、ルールに基づいた、自由で、開かれたインド太平洋地域を守っていくことがますます重要になっています。
日本の周りの安全保障環境
日本の周りには、世界の中でも大きな軍事力を持つ国が集まっているんだね。
それだけでなく、中国、北朝鮮、ロシアなどは、軍事力をさらに強化し、軍事活動を活発化させているよ。日本にとって、国の防衛はとてもとても重要な課題なんだよ。
(2)中国
中国は、とても速いペースで国防費を増加させ、軍事力を強化しています。また、日本の固有の領土である尖閣諸島周辺で活動を活発化させ、南シナ海では軍事施設の整備を行うなど、軍事力も使って一方的に自分の主張を押し通そうとしています。こうした中国の動きは、日本を含む地域と国際社会の安全保障上の強い懸念となっており、こうした傾向は近年より一層強まっています。中国がルールに基づき行動することが求められています。
中国のミサイル戦力
中国はさまざまな種類のミサイルを数多く保有しています。こうしたミサイルの中には、核兵器を搭載することができるものもあります。
右の図は、中国が保有している弾道ミサイルの射程(届く距離)を地図に示したものです。日本はもちろんのこと、アメリカやヨーロッパまで届くことがわかります。
中国が保有する弾道ミサイルの射程
(北京(中国)から発射した場合のイメージ)
日本周辺の海や空での活動
中国軍の艦艇や航空機は近年、日本の周辺の海や空での活動を拡大・活発化させており、沖縄本島と宮古島の間や大隅・対馬・津軽・宗谷海峡なども頻繁に通過しています。2021年には、中国軍の艦艇がロシア軍の艦艇と合計10隻で共同演習を行いながら、日本の周りをなぞるように航行しており、日本に対して力を見せつけることを目的としていたと考えられます。
日本周辺海空域における最近の中国軍の主な活動(イメージ)
中国軍の航空機の活動
中国の航空機に対する緊急発進回数の推移
中国軍の戦闘機や爆撃機などの航空機は毎日のように日本の近くまで飛んできており、これに対して自衛隊は、日本の領空に侵入されないよう、戦闘機の緊急発進(スクランブル)を行って対応しています。中国の航空機に対して、一番多かった2016年度には851回、また、2021年度もそれに次ぐ722回も緊急発進をしました。
尖閣諸島周辺での船舶・航空機の活動
中国政府の船舶は日本の固有の領土である尖閣諸島周辺にほぼ毎日やってきており、日本の領海への侵入も繰り返し行っています。尖閣諸島周辺の日本の領海で独自の主張をする中国政府の船舶の活動は国際法に違反しています。
こうした船舶には機関砲のような武器をのせているものもあり、また、日本の漁船に近づこうとする事案も発生しています。
南シナ海での活動
中国は、東南アジアの国々との間で、南シナ海にある南沙(スプラトリー)諸島や西沙(パラセル)諸島の領有権(ある土地がどの国のものなのか)について争っていますが、そうした争いが解決しないまま、国際的なルールに基づかず、埋め立てや軍事施設の整備などを強行しています。
南シナ海における紛争の平和的な解決を目指し、フィリピンは、中国を国際的な仲裁裁判(国と国との争いについての裁判)所に訴えました。2016年に裁判所により、フィリピンの主張を認める判断が下されたにもかかわらず、中国はこれを無視し続けています。
日本としては、このように中国が、国際的なルールに基づかず一方的な行動を続けていることに強く反対しており、国際社会からも同様の懸念が示されています。