②日本の周りの安全保障(ほしょう)環境(かんきょう)(1)

日本の周りの安全保障環境

インド太平洋地域(ちいき)

 日本が位置するインド太平洋地域(ちいき)は、世界の人口の半数が住む、世界の経済(けいざい)にとって重要な地域(ちいき)です。同時に、中国のさらなる発展(はってん)などにより、国と国との力関係に複雑(ふくざつ)影響(えいきょう)が生じ、特にアメリカと中国との間で政治(せいじ)経済(けいざい)・軍事・技術(ぎじゅつ)など様々な分野での競争が(はげ)しくなっています。中でも、技術(ぎじゅつ)をめぐっては、先進的な技術(ぎじゅつ)を使える国が、国と国との関係において有利に立てるとの考えから、自分の国の新しい重要な技術(ぎじゅつ)が、(てき)になるかもしれない国に(わた)らないようにするような政策(せいさく)が重要になってきています。
 また、インド太平洋地域(ちいき)の国々の中には、わたしたちが大事にしている自由や民主主義(しゅぎ)といった価値観(かちかん)を必ずしも共有していない国があるだけでなく、強大な軍事力を有する国が集中しています。国際的(こくさいてき)なルールを無視(むし)して、軍事力を使って自分の国の主張(しゅちょう)()(とお)したりするなど、一方的に行動する国も存在(そんざい)します。例えば、みなさんもロシアがウクライナに軍事攻撃(こうげき)を行ったことはニュースで見ていると思います。このような中で、ルールに(もと)づいた、自由で、開かれたインド太平洋地域(ちいき)を守っていくことがますます重要になっています。

日本の周りの安全保障(ほしょう)環境(かんきょう)
日本の周りの安全保障環境
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日本の周りには、世界の中でも大きな軍事力を持つ国が集まっているんだね。
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それだけでなく、中国、北朝鮮(きたちょうせん)、ロシアなどは、軍事力をさらに強化し、軍事活動を活発化させているよ。日本にとって、国の防衛(ぼうえい)はとてもとても重要な課題なんだよ。

(2)中国

 中国は、とても速いペースで国防(こくぼう)費を増加(ぞうか)させ、軍事力を強化しています。また、日本の固有の領土(りょうど)である尖閣諸島(せんかくしょとう)周辺で活動を活発化させ、南シナ海では軍事施設(ぐんじしせつ)整備(せいび)を行うなど、軍事力も使って一方的に自分の主張(しゅちょう)()(とお)そうとしています。こうした中国の動きは、日本を(ふく)地域(ちいき)国際(こくさい)社会の安全保障(ほしょう)上の強い懸念(けねん)となっており、こうした傾向(けいこう)は近年より一層(いっそう)強まっています。中国がルールに(もと)づき行動することが求められています。

中国の軍事力

 中国は近年、(くわ)しい説明をしないまま、とても速いペースで軍隊にかけるお金である国防(こくぼう)費を()やしています。こうしたお金を使い、中国は核兵器(かくへいき)やミサイル、艦艇(かんてい)や航空機といった軍事力を急速に強化しています。
 このような軍事力の強化は、台湾(たいわん)独立(どくりつ)や、ほかの国が台湾(たいわん)独立(どくりつ)支援(しえん)することを思いとどまらせることなどを目的としていると考えられます。さらに、中国は「世界一流の軍隊」を目指すとしており、アメリカ軍と同じかそれよりも強い軍隊をつくろうとしているとみられます。

中国共産党(きょうさんとう)創立(そうりつ)100周年祝賀大会で演説をする(しゅう)近平(きんぺい)総書記
【中国通信/時事通信フォト】
中国が公表している国防予算の推移(すいい)
中国が公表している国防予算の推移
2019年に就役(しゅうえき)した中国初の国産空母「山東」
【Avalon/時事通信フォト】
J(じぇい)-20戦闘機(せんとうき)(第5世代と言われる新しい戦闘機(せんとうき)
【ImagineChina/時事通信フォト】

中国のミサイル戦力

 中国はさまざまな種類のミサイルを数多く保有(ほゆう)しています。こうしたミサイルの中には、核兵器(かくへいき)搭載(とうさい)することができるものもあります。
 右の図は、中国が保有(ほゆう)している弾道(だんどう)ミサイルの射程(しゃてい)(とど)距離(きょり))を地図に(しめ)したものです。日本はもちろんのこと、アメリカやヨーロッパまで(とど)ことがわかります。

中国が保有(ほゆう)する弾道(だんどう)ミサイルの射程(しゃてい)
(北京(中国)から発射(はっしゃ)した場合のイメージ)
中国が保有する弾道ミサイルの射程(北京(中国)から発射した場合のイメージ)

日本周辺の海や空での活動

 中国軍の艦艇(かんてい)や航空機は近年、日本の周辺の海や空での活動を拡大(かくだい)・活発化させており、沖縄(おきなわ)本島と宮古島の間や大隅(おおすみ)対馬(つしま)津軽(つがる)宗谷(そうや)海峡(かいきょう)なども頻繁(ひんぱん)通過(つうか)しています。2021年には、中国軍の艦艇(かんてい)がロシア軍の艦艇(かんてい)と合計10(せき)で共同演習(えんしゅう)を行いながら、日本の周りをなぞるように航行しており、日本に対して力を見せつけることを目的としていたと考えられます。

日本周辺海空域(かいくういき)における最近の中国軍の主な活動(イメージ)
日本周辺海空域における最近の中国軍の主な活動(イメージ)

中国軍の航空機の活動

中国の航空機に対する緊急(きんきゅう)発進回数の推移(すいい)
中国の航空機に対する緊急発進回数の推移

 中国軍の戦闘機(せんとうき)爆撃機(ばくげきき)などの航空機は毎日のように日本の近くまで飛んできており、これに対して自衛隊(じえいたい)は、日本の領空(りょうくう)侵入(しんにゅう)されないよう、戦闘機(せんとうき)緊急(きんきゅう)発進(スクランブル)を行って対応(たいおう)しています。中国の航空機に対して、一番多かった2016年度には851回、また、2021年度もそれに次ぐ722回緊急(きんきゅう)発進をしました。

尖閣諸島(せんかくしょとう)周辺での船舶(せんぱく)・航空機の活動

 中国政府(せいふ)船舶(せんぱく)は日本の固有の領土(りょうど)である尖閣諸島(せんかくしょとう)周辺にほぼ毎日やってきており、日本の領海(りょうかい)への侵入(しんにゅう)()(かえ)し行っています。尖閣諸島(せんかくしょとう)周辺の日本の領海(りょうかい)独自(どくじ)主張(しゅちょう)をする中国政府(せいふ)船舶(せんぱく)の活動は国際法(こくさいほう)違反(いはん)しています。
 こうした船舶(せんぱく)には機関砲(きかんほう)のような武器(ぶき)をのせているものもあり、また、日本の漁船に近づこうとする事案も発生しています。

南シナ海での活動

 中国は、東南アジアの国々との間で、南シナ海にある南沙(なんさ)(スプラトリー)諸島(しょとう)西沙(せいさ)(パラセル)諸島(しょとう)領有(りょうゆう)(けん)(ある土地がどの国のものなのか)について争っていますが、そうした争いが解決(かいけつ)しないまま、国際的(こくさいてき)なルールに(もと)づかず、()()てや軍事施設(ぐんじしせつ)整備(せいび)などを強行しています。
 南シナ海における紛争(ふんそう)の平和的な解決(かいけつ)を目指し、フィリピンは、中国を国際的(こくさいてき)仲裁(ちゅうさい)裁判(さいばん)(国と国との争いについての裁判(さいばん))所に(うった)えました。2016年に裁判所(さいばんしょ)により、フィリピンの主張(しゅちょう)(みと)める判断(はんだん)が下されたにもかかわらず、中国はこれを無視(むし)し続けています。
 日本としては、このように中国が、国際的(こくさいてき)なルールに(もと)づかず一方的な行動を続けていることに強く反対しており、国際(こくさい)社会からも同様の懸念(けねん)(しめ)されています。

南シナ海にあるファイアリー・クロス礁の軍事拠点化(CSIS/AMTI/Maxar)
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