教育訓練・その他活動

2022年

領域横断作戦と機動展開前進基地作戦(EABO)を踏まえた連携 ~レゾリュート・ドラゴン21~ ※ EABO:Expeditionary Advanced Base Operations

1はじめに
 令和3年12月4日から同年12月17日の間、東北方面隊を担任部隊として令和3年度国内における米海兵隊との実動訓練「レゾリュート・ドラゴン21(RD21)」が、東北の王城寺原演習場を主体として、八戸駐屯地、岩手山演習場、霞目駐屯地、そして北海道の矢臼別演習場において実施されました。
  本訓練には、陸上自衛隊から東北方面隊の第5普通科連隊等の人員約1,400名、米軍から第3海兵機動展開部隊の第4海兵連隊等の人員約2,600名が参加し、令和3年度に米海兵隊と国内で実施した最大規模の実動訓練となりました。

2RD21の意義
 日本を取り巻く安全保障環境が厳しさを増す中、「自由で開かれたインド太平洋」のビジョンを共有する日米両国は、日米同盟に基づく相互運用性を強化し、我が国への脅威に対する抑止及び対処の実効性を向上することが求められています。
 平素から共同訓練を行うことは、日米共同対処能力を維持・向上させるために、陸上自衛隊と米軍の相互理解や意思疎通を促進し、日米それぞれの作戦遂行能力・戦術技量及び日米の相互運用性の向上を図る上で有益です。現在、陸上自衛隊では、陸、海、空という従来の領域に加え、宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域を踏まえた領域横断作戦の能力向上が、米海兵隊では、機動展開前進基地作戦(EABO)構想に基づく、作戦実施要領の具体化及び能力向上が喫緊な課題であり、本共同訓練は、陸上自衛隊の領域横断作戦と米海兵隊のEABOを踏まえた連携向上を図るため、日米双方にとって極めて重要な訓練です。

日米共同による防御地域の偵察


3RD21の特色及び訓練概要
 昨年度まで実施していた国内における米海兵隊との実動訓練「ノーザン・ヴァイパー」は、北部方面隊と米海兵隊による連隊規模の共同訓練でした。今年度から新たに開始した「レゾリュート・ドラゴン」は、北部方面隊に限らず各方面隊が担任することから、「ノーザン」を冠する名称を改めるとともに、その内容も陸上自衛隊の領域横断作戦と米海兵隊のEABOを踏まえた連携向上を焦点とし、日米同盟による抑止力及び対処力を一層強化するための訓練として発展させています。
 今回のRD21では、まず、指揮機関訓練において日米が連携して計画及び命令を作成しました。また、日米対戦車ヘリコプターによる射撃訓練、MV-22オスプレイ等を使用した空中機動訓練、MV-22オスプレイからの物量投下をはじめとする兵站訓練、緊急患者空輸を含む衛生訓練等を実施しました。さらに、陸上自衛隊の地対艦誘導弾(SSM)部隊は地上機動により、米海兵隊のHIMARS部隊はC-130Jによる空中機動により八戸演習場に展開し、日米の共同調整所において共有した目標情報に基づき、日米の部隊が連携して対艦戦闘を含む火力戦闘訓練を実施し、日米間の連携要領の具体化を図りました。
 また、陸上自衛隊は、時期を同じくして、国内における日米共同指揮所演習である「ヤマサクラ81」や米国における米軍との実動訓練「ライジング・サンダー21」において米陸軍との連携を強化する中、RD21を通じて米海兵隊とも更なる連携の強化を図ることにより、日米による抑止力・対処力を一層強化するとともに我が国の安全及びインド太平洋地域の平和と安定にも寄与することができました。


C-130によるHIMARSの展開

MV-22オスプレイによる患者後送

4領域横断作戦とEABOを踏まえた連携
 陸上自衛隊は、2018年12月に策定された中期防衛力整備計画における5つの基本方針のもと、領域横断作戦に必要な能力を強化しており、部隊の新編・改編や装備品の取得・改良に加え、様々な訓練・演習において部隊・隊員の練度を向上させています。一方で、米海兵隊は、2020年3月に発表された「FORCE DESIGN 2030」を踏まえ、2 021年2月「TENTATIVE MANUAL FOR EXPEDITIONARY ADVANCED BASE OPERATIONS」を 発表し、EABOに基づく部隊の作戦要領の具体化を進めています。
 現代戦の特性を考えると、侵攻する敵を排除するための攻撃能力もさることながら、敵のミサイルによる飽和攻撃や宇宙・サイバー・電磁波領域からの攻撃に対して、被害を局限して健在するとともに、持続的に作戦を遂行する必要があります。
 領域横断作戦とEABOとの共通点については、どちらの部隊とも作戦当初から戦域内に所在する「スタンド・イン・フォース」として、あらゆる領域からの攻撃に対して部隊を防護し、持久して作戦を遂行するという点にあります。このため、同じ地域において陸上自衛隊と米海兵隊が作戦をする上で、あらゆる領域からの攻撃に対して、お互いに補完し合いながら部隊を防護しつつ作戦を遂行することが極めて重要となります。
 陸上自衛隊と米海兵隊が個々に領域横断作戦とEABOに必要な能力を向上させるともに、本訓練のような日本国内における共同の実動訓練の場を活用し、相互に補完しながら日本を防衛する能力を向上させることには大きな意義があります。
 現段階においては、領域横断作戦及びEABOの発展・深化は、途上段階にありますが、RD21は領域横断作戦とEABOを踏まえた連携を演練したはじめての本格的な実動訓練であり、陸上自衛隊と米海兵隊はそれぞれが戦略ビジョンを作戦・戦術レベルで具体化することができました。

共同調整所における日米共同の作戦会議の様子


5おわりに
 RD21では、領域横断作戦とEABOを日米相互に具体化し、発展させるとともに、その連携要領を深化させ、共同訓練の場でなければ得難い経験を積み上げることができました。
 また、国内における日米共同による実動訓練を通じ、日米が領域横断作戦とEABOを相互に発展させることにより対処力を向上させることが、日本防衛の実効性の向上、ひいては抑止力の強化にも寄与していることを改めて認識することができました。
 陸上自衛隊は、本訓練で得られた成果を日々の訓練に反映していくとともに、令和4年度におけるRD22につなげ、日米の連携を引き続き向上させていきます。日本防衛の実効性の更なる向上のため、次の共同訓練の準備は、既に開始されています。

日米共同による防御地域の偵察


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