⑪世界の国々(くにぐに)との安全保障(ほしょう)協力の推進(すいしん)

国際(こくさい)社会の力関係はとても速いスピードで複雑(ふくざつ)に変化しており、もはやどの国も一国だけで自分たちの国を守ることはできません。こうした中では「仲間づくり」も重要であり、日本や地域(ちいき)国際(こくさい)社会の平和や繁栄(はんえい)を守るために、防衛(ぼうえい)省・自衛隊(じえいたい)は、外国の国防(こくぼう)省・軍隊との協力・交流を通じて、「自由で開かれたインド太平洋」の実現(じつげん)に向けて様々(さまざま)な取組を行っています。

「自由で開かれたインド太平洋」という考え

インド太平洋地域(ちいき)には、世界の人口の半数が住んでいます。また、主要なシーレーン(船舶(せんぱく)が通る海上交通路)が通っています。
 そのため、すべての国がルールに(もと)づき、自由に、安心して使えるようにしておくことは、とても重要になります。
 「自由で開かれたインド太平洋(FOIP(フォイップ)※)」という考え方は、インド太平洋地域(ちいき)を、法の支配に(もと)づく、自由で開かれたものとすることで、地域(ちいき)全体、ひいては世界の平和と繁栄(はんえい)確保(かくほ)していくとの考え方に根差したものです。
 防衛(ぼうえい)省・自衛隊(じえいたい)では、以下の三つの方針(ほうしん)で「自由で開かれたインド太平洋」というビジョンの実現(じつげん)()する取組を行っています。

FOIP(フォイップ):Free and Open Indo-Pacific

「自由で開かれたインド太平洋」というビジョンの実現(じつげん)()する防衛(ぼうえい)省・自衛隊(じえいたい)の取組
  • ❶ほかの国の国防(こくぼう)省や軍隊と交流・協力し、日本の生活を(ささ)えるタンカーなどの船舶(せんぱく)が安心してシーレーンを航行(こうこう)し続けられるようにすること
  • ❷ほかの国とお(たが)いに理解(りかい)を深め、信頼(しんらい)関係を(きず)き、予測(よそく)できないような争いなどが起きないようにすること
  • ❸ほかの国と協力し、地域(ちいき)の平和と安定に貢献(こうけん)すること

主要なシーレーンが通っていることやエネルギー安全保障(ほしょう)の観点から、東南アジア、南アジア、太平洋の島国、中東・アフリカ、中南米の国々(くにぐに)に対しては、次のページで紹介(しょうかい)するような幅広(はばひろ)手段(しゅだん)を活用しながら、協力を強化しています。
 また、こうした取組は同盟(どうめい)国であるアメリカ以外にも、オーストラリア、インド、イギリス、フランス、ドイツ、イタリアなどのヨーロッパ諸国(しょこく)、カナダ、ニュージーランドといった、「自由で開かれたインド太平洋」の考え方を共有する多くの国々(くにぐに)とも協力して行っています。
 このような国々(くにぐに)と安全保障(ほしょう)上の協力を行うことが、シーレーンを(ふく)海域(かいいき)などの安全確保(かくほ)や、ルールを守らない国が(あらわ)れにくくすることにつながっていきます。

FOIP(フォイップ)ビジョンの広がり

防衛(ぼうえい)省・自衛隊(じえいたい)が行う協力・交流の手段(しゅだん)

人による協力・交流

防衛(ぼうえい)大臣や陸海空各自衛隊(じえいたい)のトップである幕僚長(ばくりょうちょう)などの会談、実務者(じつむしゃ)による協議や国際(こくさい)会議への参加を通じて、外国の国防(こくぼう)省・軍隊との間でお(たが)いの理解(りかい)を深め、信頼(しんらい)関係を(きず)くとともに、さらなる協力や交流を進めていきます。また、日本の考え方を諸外国(しょがいこく)国際(こくさい)社会に向けて発信しています。

防衛(ぼうえい)大臣とオーストラリア国防(こくぼう)大臣の会談
(2022年12月)

艦艇(かんてい)航空機(こうくうき)や部隊を活用した協力・交流

艦艇(かんてい)航空機(こうくうき)のお(たが)いの国への訪問(ほうもん)や、他国との訓練、部隊同士(どうし)の交流などを通じて、信頼(しんらい)を高め合うとともに、相手国の部隊と連携(れんけい)する力を高め、自衛隊(じえいたい)能力(のうりょく)の向上や相手国との関係の強化を進めています。

アメリカ、オーストラリア、韓国(かんこく)、カナダとの共同訓練(パシフィック・ヴァンガード22)(2022年8月)

能力構築支援(のうりょくこうちくしえん)

自衛隊(じえいたい)経験(けいけん)(すぐ)れた能力(のうりょく)技術(ぎじゅつ)を活かして、東南アジア、南アジア、太平洋の島国などの国々(くにぐに)に対し、安全保障(ほしょう)防衛(ぼうえい)分野における人材の育成・教育などを行い、各国の軍隊が国際(こくさい)社会の平和や地域(ちいき)の安定のための役割(やくわり)をきちんと果たすことができるよう支援(しえん)しています。これにより、日本にとって望ましい安全保障環境(ほしょうかんきょう)を作り出していきます。

カンボジア軍に測量(そくりょう)教育を行う陸上自衛隊(じえいたい)

防衛装備(ぼうえいそうび)技術(ぎじゅつ)協力

防衛装備品(ぼうえいそうびひん)自衛隊(じえいたい)が使う車両や航空機(こうくうき)など)の外国への輸出(ゆしゅつ)提供(ていきょう)、外国と共同での防衛装備品(ぼうえいそうびひん)の開発・生産などを推進(すいしん)しています。こうした取組は、協力の相手となる国やその周辺地域(ちいき)の平和と安定だけでなく、自衛隊(じえいたい)のための防衛装備品(ぼうえいそうびひん)を生産する日本企業(きぎょう)製造(せいぞう)ラインや技術(ぎじゅつ)維持(いじ)にも役立つものです。

日本・イギリス・イタリアの三か国で共同開発する次期戦闘機(せんとうき)(イメージ)