③日本の周りの安全保障環境(ほしょうかんきょう)

(1)日本周辺の情勢(じょうせい)

日本周辺では軍事力の強化・軍事活動の活発化の傾向(けいこう)顕著(けんちょ)

★日本周辺の安全保障環境(ほしょうかんきょう)

日本が位置するインド太平洋地域(ちいき)は、安全保障(ほしょう)上の課題が多い地域(ちいき)です。日本の周りには核兵器(かくへいき)(ふく)大規模(だいきぼ)な軍事力を有し、普遍(ふへん)価値(かち)やそれに(もと)づく政治(せいじ)経済体制(けいざいたいせい)を共有しない国家や地域(ちいき)複数存在(ふくすうそんざい)しています。また、歴史(れきし)的な経緯(けいい)背景(はいけい)とする外交関係などが複雑(ふくざつ)(から)み合う地域(ちいき)でもあります。
 さらに、東シナ海、南シナ海などにおいては、力による一方的な現状変更(げんじょうへんこう)やその試み、海賊(かいぞく)、テロ、大量破壊(はかい)兵器の拡散(かくさん)、自然災害(さいがい)といった様々(さまざま)脅威(きょうい)や課題が存在(そんざい)しています。
 また、日本周辺では、(かく)・ミサイル戦力を(ふく)軍備増強(ぐんびぞうきょう)が急速に進んでおり、力による一方的な現状変更(げんじょうへんこう)圧力(あつりょく)が高まっています。

(2)中国

中国は、今世紀(せいき)半ばに「世界一流の軍隊」を(きず)き上げることを目標に(かか)げています。こうした目標の実現(じつげん)に向け、兵器の開発や配備(はいび)を進めるなど、急速に軍事力を強化しようとしています。
 これに必要なお金を国防費(こくぼうひ)と言いますが、中国の発表によると、2023年度の国防費(こくぼうひ)31兆円以上にものぼります。日本の防衛関係費(ぼうえいかんけいひ)の約5倍のお金を、軍備増強(びぞうきょう)に使っていることになります。
 中国は、核戦力(かくせんりょく)やミサイル戦力の強化を進めています。このような能力(のうりょく)の強化は、いわゆる「A2(エーツー)AD(エーディー)能力(のうりょく)の強化などにつながります。

★ 中国の公表国防費(こくぼうひ)推移(すいい)

さらに、近年は、宇宙(うちゅう)やサイバーに関する能力(のうりょく)の強化を進めていると見られています。これは、軍事面で、相手の活動を妨害(ぼうがい)して、自分が優位(ゆうい)に立とうとするために行っていると見られます。

わが国周辺での活動

中国は、日本の周辺で軍艦(ぐんかん)や軍用機を活動させており、近年、その活動を拡大(かくだい)・活発化させています。また、最近では、中国とロシアが共同訓練を日本周辺で行っており、両国の爆撃機(ばくげきき)が共同で飛行したり、海軍の艦艇(かんてい)が共同で航行(こうこう)しています。さらに、無人機による活動も活発化させています。

いつも見ている地図を(さ か)さにして見てみよう。
★ 日本周辺海空域(くういき)における最近の中国軍の主な動向
尖閣諸島(せんかくしょとう)周辺での船舶(せんぱく)航空機(こうくうき)の活動

中国政府(せいふ)船舶(せんぱく)(海(けい)船)は日本の固有の領土(りょうど)である尖閣諸島(せんかくしょとう)周辺にほぼ毎日やってきており、日本の領海(りょうかい)への侵入(しんにゅう)()り返し行っています尖閣諸島(せんかくしょとう)周辺の日本の領海(りょうかい)独自(どくじ)主張(しゅちょう)をする中国政府(せいふ)船舶(せんぱく)の活動は国際法(こくさいほう)違反(いはん)しています。
 こうした船舶(せんぱく)には(ほう)のようなものをのせているものもあり、また、日本の漁船などに近づこうとする事案も発生しています。

中国海警船
(ほう)のようなものを搭載(とうさい)した中国海(けい)

米中関係

世界第1位の経済(けいざい)大国であるアメリカは、第2位の中国との間で、様々(さまざま)な問題を(かか)えています。近年、アメリカと中国との間では、政治(せいじ)経済(けいざい)・軍事などの分野にわたる競争が一層(いっそう)はっきりとしてきています。
 特に、アメリカは、技術(ぎじゅつ)分野において、アメリカの機微(きび)技術(ぎじゅつ)や重要な技術(ぎじゅつ)が中国に流出することにより、中国の軍事力が高まり、その結果、アメリカの安全保障(ほしょう)(おびや)かされることを警戒(けいかい)しています。
 そのため、アメリカは、中国に対して輸出(ゆしゅつ)輸入(ゆにゅう)に関係する規制(きせい)(きび)しくするなどして対(さく)(こう)じています。また日本、オーストラリア、インドなどの同盟(どうめい)国・同志(どうし)国とのつながりを強くしようとしています。
 中国は、こうしたアメリカの取組に反発しており、中国軍による高圧(こうあつ)的な行動に発展(はってん)しています。2022年には、中国軍が、南シナ海を飛行(ひこう)するアメリカ軍機やオーストラリア軍機に対して異常接近(いじょうせっきん)するなど危険(きけん)妨害(ぼうがい)活動()り返しています。

台湾(たいわん)をめぐる状況(じょうきょう)

中国は、台湾(たいわん)は中国の一部であると主張(しゅちょう)しています。中国は、これまでも台湾(たいわん)について平和的統一(とういつ)方針(ほうしん)は持ちつつも、武力(ぶりょく)行使の可能性(かのうせい)否定(ひてい)していません。
 近年、中台(ちゅうたい)の軍事バランスがとても速いスピードで中国に(かたむ)いています。そうした中、中国は台湾(たいわん)周辺での軍事活動を活発化させてきています。また、2022年8月、中国は台湾(たいわん)を取り(かこ)むように大規模(だいきぼ)な軍事演習(えんしゅう)を行いました。このとき、わが国近海に向けて弾道(だんどう)ミサイルの発射(はっしゃ)を行い、5発が日本の排他(はいた)経済水域(けいざいすいいき)EEZ(イーイーゼット))内に着弾(ちゃくだん)しています。
 このような活発化する威圧(いあつ)的な中国軍の活動により、国際(こくさい)社会の安全と繁栄(はんえい)に不可欠な台湾海峡(たいわんかいきょう)の平和と安定については、日本のみならず、国際(こくさい)社会全体において急速に懸念(けねん)が高まっています。

★ 2022年8月に中国が行った弾道(だんどう)ミサイル発射(はっしゃ)のイメージ

南シナ海への進出

中国は、東南アジアの国々(くにぐに)との間で、南シナ海にある南沙(なんさ)(スプラトリー)諸島(しょとう)西沙(せいさ)(パラセル)諸島(しょとう)領有権(りょうゆうけん)(ある土地がどの国のものなのか)について争っており、国際的(こくさいてき)なルールに(もと)づかず、()め立てや軍事施設(しせつ)整備(せいび)などを強行しています。
 南シナ海における紛争(ふんそう)の平和的な解決(かいけつ)を目指し、フィリピンは、中国を国際的(こくさいてき)仲裁裁判(ちゅうさいさいばん)(関連する条約(じょうやく)(もと)づく国と国との争いについての裁判所(さいばんしょ))に(うった)えました。2016年に裁判所(さいばんしょ)により、フィリピンの主張(しゅちょう)(みと)める判断(はんだん)が下されたにもかかわらず、中国はこれを無視(むし)し続けています。
 日本としては、このように中国が、国際的(こくさいてき)なルールに(もと)づかず一方的な行動を続けていることに強く反対しており、国際(こくさい)社会からも同様の懸念(けねん)(しめ)されています。

★ 南シナ海における力の空白をついた中国の進出と軍事拠点(きょてん)化の例(イメージ)