③日本の周りの安全保障環境(ほしょうかんきょう)

(3)北朝鮮(きたちょうせん)

北朝鮮(きたちょうせん)体制(たいせい)維持(いじ)するため、核保有(かくほゆう)などが(みと)められていないにもかかわらず、核兵器(かくへいき)弾道(だんどう)ミサイルなどの開発や増強(ぞうきょう)に集中的に取り組んでいます。今では、弾道(だんどう)ミサイルに核兵器(かくへいき)をのせて日本を攻撃(こうげき)する能力(のうりょく)を持っているとみられますが、今後、これまで以上に(かく)・ミサイル開発を進めていくと考えられます。こうした北朝鮮(きたちょうせん)の軍の動きは、日本や国際(こくさい)社会の平和と安全をこれまでより一層(いっそう)(おびや)かすものになっています。

北朝鮮(きたちょうせん)政治体制(せいじたいせい)

北朝鮮(きたちょうせん)では、金正恩(きむじょんうん)委員長がとても大きな権力(けんりょく)を持っています。周りの幹部(かんぶ)を短期間で交代させて緊張感(きんちょうかん)(あた)えたり、外国からの情報(じょうほう)が流入することを警戒(けいかい)して市民の統制(とうせい)を強めたりしているとも言われています。

ミサイルを視察(しさつ)する金正恩(きむじょんうん)委員長(2022年11月)【EPA=時事】

北朝鮮(きたちょうせん)核兵器(かくへいき)弾道(だんどう)ミサイル

北朝鮮(きたちょうせん)核保有(かくほゆう)(みと)められていません。北朝鮮(きたちょうせん)に対しては、国際(こくさい)社会が国連の安全保障(ほしょう)理事会などを通じて、これまで何度もすべての核兵器(かくへいき)弾道(だんどう)ミサイルをなくすよう求めてきました。しかし北朝鮮(きたちょうせん)は、これまで6回の核実験(かくじっけん)実施(じっし)し、とても速いスピードで弾道(だんどう)ミサイルなどの開発を()し進めています。
 今では、北朝鮮(きたちょうせん)は日本にも(とど)弾道(だんどう)ミサイルを数百発持っており、これらのミサイルに核兵器(かくへいき)をのせて日本を攻撃(こうげき)する能力(のうりょく)を持っているとみられています。
 近年は、変則(へんそく)的な軌道(きどう)で飛んだり、音の速さを大きく上回るスピードで、低い高度を飛ぶとする新しい弾道(だんどう)ミサイルも(ふく)め、立て続けにミサイルの発射(はっしゃ)()り返しています。その中には、潜水艦(せんすいかん)や鉄道、車両から発射(はっしゃ)するものもあります。こうしたミサイルは、地上に固定された発射台(はっしゃだい)から発射(はっしゃ)するミサイルと(くら)べ、いつ・どこから()つのかを事前に知ることが困難(こんなん)です。
 さらに2022年には、アメリカ全土にも(とど)くとする新しい大陸間弾道(だんどう)ミサイル(ほかの大陸を攻撃(こうげき)できるくらい長い距離(きょり)を飛ぶミサイル)の発射(はっしゃ)()り返し、日本の安全保障(ほしょう)にとって、これまでよりもいっそう重大かつ差し(せま)った脅威(きょうい)となっています。

北朝鮮(きたちょうせん)平壌(ぴょんやん))を中心とする北朝鮮(きたちょうせん)保有(ほゆう)している弾道(だんどう)ミサイルの射程(しゃてい)(イメージ)

(4)ロシア

ロシアは、核戦力(かくせんりょく)(ふく)め、軍の装備(そうび)を新しいものにしており、日本の周りも(ふく)めて活発な活動を継続させています。2022年2月には、(となり)の国であるウクライナに侵略(しんりゃく)を開始しました。これは、力によって一方的に現状(げんじょう)を変えようとすることで、国際法(こくさいほう)違反(いはん)するものであり、(みと)めることはできません。

ロシアの軍事力

ロシアは、核兵器(かくへいき)をのせることができる大陸間弾道(だんどう)ミサイルや潜水艦(せんすいかん)から発射(はっしゃ)する弾道(だんどう)ミサイル、長距離爆撃機(ちょうきょりばくげきき)(とても長い距離(きょり)を飛ぶことができる爆撃機(ばくげきき))を、アメリカと同じくらい数多く保有(ほゆう)しています。核兵器(かくへいき)と、核兵器(かくへいき)をのせることができるミサイルや爆撃機(ばくげきき)などの兵器をあわせて、核戦力(かくせんりょく)()びます。ロシアはこうした核戦力(かくせんりょく)について、さらに新しい装備(そうび)を開発したり、導入(どうにゅう)したりする動きを進めています。
 また、飛ぶスピードが音の速さを大きく上回る極超音速(ごくちょうおんそく)ミサイルなど、新たな兵器の開発や配備(はいび)も進めています。

音速の20倍以上の速度で飛ぶとされる極超音速滑空(ごくちょうおんそくかっくう)兵器アヴァンガルド【ロシア国防(こくぼう)省】
新型(しんがた)大型(おおがた)大陸間弾道(だんどう)ミサイルサルマト【ロシア国防(こくぼう)省】

日本周辺や北方領土(りょうど)でのロシア軍の活動

ロシアは近年、日本固有の領土(りょうど)である北方領土(りょうど)(ふく)む日本周辺での活発な活動を継続(けいぞく)させています。北方領土(りょうど)(ふく)むインド太平洋地域(ちいき)でのロシア軍の活動は、注意して見ていく必要があります。

地対(かん)ミサイル「バスチオン」
【ロシア国防(こくぼう)省】
地対(かん)ミサイル「バル」
【ロシア国防(こくぼう)省】

ロシア軍と中国軍の連携(れんけい)

近年、軍事分野も(ふく)め、ロシアと中国の協力関係が進展(しんてん)しています。日本の周りでは、ロシア軍と中国軍の爆撃機(ばくげきき)が日本海から東シナ海、さらには太平洋までを共同で飛行したり、両国の艦艇(かんてい)が日本海からオホーツク海で共同訓練を行い、その後、共同で航行(こうこう)するなど、連携(れんけい)を強化する動きがみられています。こうしたロシアと中国による共同軍事活動は、わが国の安全保障(ほしょう)上、とても気にかかるものです。

中国とロシアの海軍艦艇(かんてい)の共同航行(こうこう)の様子と飛行する中国のZ(ゼット)-9ヘリコプター(赤丸部分)(2021年10月)
共同で飛行した中国のH(エイチ)-6爆撃機(ばくげきき)(上)とロシアのTu(ティーユー)-95爆撃機(ばくげきき)(下)(2022年11月)

ロシアによるウクライナ侵略(しんりゃく)

ロシアは、2014年に、(となり)の国であるウクライナのクリミアを違法(いほう)に「併合(へいごう)」し、2022年2月からウクライナへの侵略(しんりゃく)を開始しました。
 引き続き、(はげ)しい戦闘(せんとう)が続いており、その状況(じょうきょう)(むずか)しくなってきています。
 ロシアによるこの侵略(しんりゃく)は、ウクライナの主権(しゅけん)領土(りょうど)侵害(しんがい)し、武力(ぶりょく)による威嚇及(いかくおよ)武力(ぶりょく)の行使を禁止(きんし)する国際法(こくさいほう)などの重大な違反(いはん)です。このような力で一方的に現状(げんじょう)を変えようとすることは、アジアを(ふく)国際(こくさい)社会全体を根本から()るがすものです。
 このようなロシアによる侵略(しんりゃく)(みと)めることは、アジアを(ふく)むほかの地域(ちいき)においても、一方的に現状(げんじょう)を変えようとすることが(みと)められるという間違(まちが)ったメッセージとなりかねないため、日本を(ふく)国際(こくさい)社会として、決して(ゆる)すべきではありません。
 日本は、ロシアによるこの侵略(しんりゃく)(きび)しく非難(ひなん)し、ロシアへの重要な物品の輸出(ゆしゅつ)などを禁止(きんし)するといった(きび)しい制裁(せいさい)を課すとともに、ウクライナを支援(しえん)するため、防弾(ぼうだん)チョッキなどの装備品(そうびひん)提供(ていきょう)しています。
 国際(こくさい)社会も同じように、このようなロシアの侵略(しんりゃく)に対して団結(だんけつ)して対応(おう)しており、一部の輸出(ゆしゅつ)や交流を止めるなど、様々(さまざま)な取組を行っています。

ロシア軍のミサイル攻撃(こうげき)により破壊(はかい)されたウクライナの集合住宅(じゅうたく)【2023年3月5日ウクライナ緊急事態庁(きんきゅうじたいちょう)
ウクライナから逃にげたとの(にせ)情報(じょうほう)を打ち消すため、ウクライナのゼレンスキー大統領(だいとうりょう)がウクライナ国内で撮影(さつえい)した動画(2022年2月)【ゼレンスキー大統領(だいとうりょう)Facebook(フェイスブック)
ウクライナ情勢(じょうせい)について話し合うG7(ジーセブン)首脳とゼレンスキー大統領(だいとうりょう)(2023年5月 G7(ジーセブン)広島サミット)【首相官邸(かんてい)HP】
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SNSなどの普及(ふきゅう)により、(だれ)でも好きな時に多くの情報(じょうほう)にアクセスし、発信することができるような時代だね。
だけど、たくさんの情報(じょうほう)があふれているからこそ、正しい情報(じょうほう)だけではなく、正しくない情報(じょうほう)、わざとだますようなニセモノの情報(じょうほう)もあふれているよ。
だから、何が正しい情報(じょうほう)なのか、気を付けないといけないんだよ。
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こうした情報(じょうほう)の中には、国の安全保障(ほしょう)そのものに大きなインパクトを(あた)えるものもあるよ。
例えば、ロシアによるウクライナ侵略(しんりゃく)などでは、軍事手段(しゅだん)に加えて、インターネットやメディアを通じてロシアに有利になるようなニセ情報(じょうほう)が流されたといわれているよ。