⑦日本を防衛(ぼうえい)するための自衛隊(じえいたい)自身の取組

自衛隊(じえいたい)の重要な役割(やくわり)は、「日本を守ること」です。自衛隊(じえいたい)は、どこかの国を()めるための組織(そしき)ではなく、日本がほかの国から()められないためにある組織(そしき)です。
また、万が一、日本がほかの国から()められた場合には、その勢力(せいりょく)排除(はいじょ)し、みなさんの生命と財産(ざいさん)を守ります。そうした役割(やくわり)をしっかりと果たすためには、常日頃(つねひごろ)から日本の周りでおかしな動きがないか見張(みは)りをし、何かあれば対(おう)できるようにしています。
ここでは、日本自身の防衛力(ぼうえいりょく)を強化するための自衛隊(じえいたい)の取組について見ていきましょう。

普段(ふだん)からの情報収集(じょうほうしゅうしゅう)警戒監視(けいかいかんし)

日本は四方を海に(かこ)まれ、14,000あまりもの島々(しまじま)や広大な排他(はいた)経済水域(けいざいすいいき)(水産資源(しげん)鉱物資源(こうぶつしげん)権利(けんり)がある水域(すいいき))を有しています。日本の領海(りょうかい)排他(はいた)経済水域(けいざいすいいき)の面積は世界で第6位もの広さがあります。この広大な海域(かいいき)でどのような事態(じたい)が起きても対(おう)できるよう、自衛隊(じえいたい)は毎日日本の領海(りょうかい)領空(りょうくう)とその周辺の海空域(くういき)情報収集(じょうほうしゅうしゅう)警戒監視(けいかいかんし)(※)を行っています。
 具体的には、海上自衛隊(じえいたい)航空自衛隊(こうくうじえいたい)艦艇(かんてい)航空機(こうくうき)、レーダーサイトなどにより、日本周辺の海域(かいいき)での船舶(せんぱく)状況(じょうきょう)や、日本とその周辺の上空の状況(じょうきょう)を365日24時間態勢(たいせい)見張(み は)っています。また、主要な海峡(かいきょう)では、陸上自衛隊(じえいたい)沿岸監視(えんがんかんし)隊や海上自衛隊(じえいたい)警備(けいび)所などが同じく24時間態勢(たいせい)見張(みは)っています。特に、最近は、日本の周りの国の活動が活発になっており、非常(ひじょう)に気を()けない状態(じょうたい)が続いています。
 このような情報収集(じょうほうしゅうしゅう)警戒監視(けいかいかんし)()られた情報(じょうほう)は、海上保安庁(ほあんちょう)などの関係省(ちょう)にも共有し、連携(れんけい)を強化しています。

警戒監視(けいかいかんし):外国が不審(ふしん)な行動をとらないか、(つね)に日本の周りの海や空を見張(みは)っていること

どんな飛行機で見張(みは)っているの?
自衛隊(じえいたい)では、飛行機のことを「航空機(こうくうき)」というよ。
見張(みは)りには、洋上の船や(もぐ)った状態(じょうたい)潜水艦(せんすいかん)を見つけることができる「哨戒(しょうかい)機」があるよ。また、日本の領空(りょうくう)侵入(しんにゅう)するおそれのある航空機(こうくうき)をいち早く発見することができる、「空飛ぶレーダーサイト」と()ばれる早期警戒(けいかい)機や早期警戒管制(けいかいかんせい)機もあるんだよ。
★ 日本の周辺海空域(くういき)での警戒監視(けいかいかんし)のイメージ
空飛ぶレーダーサイト空自E(イー)-767早期警戒管制(けいかいかんせい)
警戒監視(けいかいかんし)にあたる海自P(ピー)-1機哨戒(しょうかい)

外国の航空機(こうくうき)潜水艦(せんすいかん)などへの対(しょ)

警戒監視(けいかいかんし)により、日本の領空(りょうくう)侵入(しんにゅう)するおそれのある航空機(こうくうき)を発見した場合には、航空自衛隊(こうくうじえいたい)戦闘機(せんとうき)などを緊急(きんきゅう)発進(スクランブル)させ、その航空機(こうくうき)状況(じょうきょう)確認(かくにん)し、行動を監視(かんし)します。さらに、航空機(こうくうき)実際(じっさい)領空(りょうくう)侵入(しんにゅう)した場合には、退去(たいきょ)するよう警告(けいこく)を行います。2022年度には航空自衛隊(こうくうじえいたい)は1年間で778回(平均(へいきん)すると1日で約2回!)もこの緊急(きんきゅう)発進を行いました。下のグラフのように、対(おう)した航空機(こうくうき)は中国とロシアのものが大半を()めています。
 また、潜水艦(せんすいかん)が水の中に(もぐ)ったまま外国の(りょう)水(領海(りょうかい)と内水(=(わん)河川(かせん)など、領海(りょうかい)より内側の水域(すいいき))のこと)内を航行(こうこう)することは国際法(こくさいほう)(みと)められていません。日本の(りょう)水内にこのような潜水艦(せんすいかん)がいた場合、海上自衛隊(じえいたい)艦艇(かんてい)などが探知(たんち)識別(しきべつ)追尾(ついび)といった対(しょ)を行います。
 北朝鮮(きたちょうせん)の工作船など、武装(ぶそう)工作船と(うたが)われる不審(ふしん)な船に対しては、基本(きほん)的には海上保安庁(ほあんちょう)が対(しょ)します。しかし、海上保安庁(ほあんちょう)では対(しょ)できない場合や対(しょ)困難(こんなん)な場合には、自衛隊(じえいたい)も海上保安庁(ほあんちょう)連携(れんけい)して対(しょ)を行います。

【参照】キーワード『中国の無人機・気球』(③日本の周りの安全保障環境(ほしょうかんきょう)

緊急(きんきゅう)発進(スクランブル)準備(じゅんび)中の空自戦闘機(せんとうき)
緊急(きんきゅう)発進実施(じっし)回数とその内訳(うちわけ)
緊急(きんきゅう)発進(スクランブル)ってどんなことするの?
基地(きち)でも空でも全力ダッシュだよ!スクランブルの命令が出ると、1秒の無駄(むだ)もなく準備(じゅんび)をして飛び立つんだ。日本の領空(りょうくう)にほかの国の航空機(こうくうき)が勝手に入ってくるといったトラブルが起こる前に現場(げんば)の空へ()けつけなくてはいけないんだよ。
(もぐ)った状態(じょうたい)でやってくる潜水艦(せんすいかん)はどうやって見つけるの?

音や磁気(じき)等を感じ取ると海中の色々(いろいろ)なことがわかるんだ。
護衛艦(ごえいかん)潜水艦(せんすいかん)航空機(こうくうき)などには、音や磁気(じき)探知(たんち)分析(ぶんせき)する機械を積んでいるよ。海中の音を耳で()き分けて潜水艦(せんすいかん)の種類まで特定する隊員もいるんだよ!
潜水艦(せんすいかん)を題材にした漫画(まんが)映画(えいが)でその様子がよくわかるよ。

日本に対する侵攻(しんこう)への対(お う)

多くの島々(しまじま)(ふく)む日本の領土(りょうど)を守るためには、自衛隊(じえいたい)の部隊をくまなく配備(はいび)しておくこと、そして状況(じょうきょう)(おう)じて部隊を速やかに移動(いどう)させることが必要です。また、普段(ふだん)からの情報収集(じょうほうしゅうしゅう)警戒監視(けいかいかんし)により、(てき)からの攻撃(こうげき)前触(まえぶ)れを早期に察知し、航空機(こうくうき)艦艇(かんてい)を使って、空や海で相手より優位(ゆうい)に立つことができる状況(じょうきょう)確保(かくほ)することが重要です。
 事前に(てき)からの攻撃(こうげき)前触(まえぶ)れを察知した場合には、(てき)()めてくると予想される場所に相手より先に自衛隊(じえいたい)の部隊を移動(いどう)させ、(てき)の部隊が日本の島に近づいたり、上陸したりすることを阻止(そし)することになります。
 さらに、(てき)に日本への攻撃(こうげき)を思いとどまらせるためには、(てき)攻撃(こうげき)できる範囲(はんい)よりも遠く、攻撃(こうげき)されない安全な距離(きょり)から対(しょ)できる能力(のうりょく)、すなわち「スタンド・オフ防衛能力(ぼうえいのうりょく)」(※)を自衛隊(じえいたい)が持っておくことも重要です。そのため、より遠くから(てき)艦艇(かんてい)や上陸部隊などに対(しょ)するための「スタンド・オフ・ミサイル」を整備(せいび)したり、そのミサイルを日本のどこからでも、発射(はっしゃ)できるようにしたりするなど、様々(さまざま)な取組を進めています。

※スタンド・オフは、一般(いっぱん)的には「(はな)れている」といった意味です。

12式(ひとにしき)地対艦誘導弾能力(かんゆうどうだんのうりょく)向上(がた)(イメージ)
極超音速誘導弾(ごくちょうおんそくゆうどうだん)(イメージ)
それでも、(てき)が日本に()()こんできたら、自衛隊(じえいたい)はどうやって日本を守ってくれるの?

万が一、日本が侵攻(しんこう)された場合には、水中・海上・空中といった領域(りょういき)宇宙(うちゅう)・サイバー・電磁波(でんじは)領域(りょういき)のすべての領域(りょういき)横断(おうだん)的に連携(れんけい)させた作戦、すなわち領域横断(りょういきおうだん)作戦」により対(しょ)します。そして、無人アセットも(ふく)めたあらゆる手段(しゅだん)を使って、(てき)よりも優位(ゆうい)に立つ状況(じょうきょう)確保(かくほ)し、速やかにかつ(ねば)り強く活動を続け、(てき)に日本を()めることは不可能(ふかのう)だと(あきら)めさせます。
 自衛隊(じえいたい)が、(ねば)り強く活動を続けるためには、たくさんの艦艇(かんてい)航空機(こうくうき)などを持っていればいいわけではありません。活動を続けるためには、必要十分な量の弾薬(だんやく)やミサイル、そして燃料(ねんりょう)が必要です。さらには、艦艇(かんてい)航空機(こうくうき)などが故障(こしょう)した場合でも、部品を交換(こうかん)したり修理(しゅうり)をして、速やかに元の状態(じょうたい)(もど)すことができるようにしておくことが重要です。

着上陸作戦の訓練の様子(アイアン・フィスト23)

情報(じょうほう)戦への対(おう)

国際(こくさい)社会においては、紛争(ふんそう)が起こっていない段階(だんかい)から、SNS(エスエヌエス)などを通じて、意図的に(にせ)情報(じょうほう)拡散(かくさん)させるなどして、ほかの国の世論(せろん)影響(えいきょう)(およ)ぼし、自分の国に有利な安全保障環境(ほしょうかんきょう)をつくる情報(じょうほう)戦を重視(じゅうし)する動きが確認(かくにん)されています。
 そうした(にせ)情報(じょうほう)拡散(かくさん)などによる混乱(こんらん)が生じないよう、情報(じょうほう)戦への対(おう)を強化していく必要があります。防衛(ぼうえい)省・自衛隊(じえいたい)としては、有事はもとより普段(ふだん)から、様々(さまざま)情報(じょうほう)収集(しゅうしゅう)しつつ、ほかの国からの情報(じょうほう)が正しいかどうかを見極める能力(のうりょく)を向上させるなど、ほかの省(ちょう)などとも連携(れんけい)し、情報(じょうほう)戦への対応能力(おうのうりょく)を強化していきます。

ミサイル攻撃(こうげき)から守るために

(かり)弾道(だんどう)ミサイル(※)で攻撃(こうげき)された場合には、日本を守るために、飛んでくる弾道(だんどう)ミサイルを()ち落とし、日本に着弾(ちゃくだん)させないようにしなければなりません
 弾道(だんどう)ミサイルは発射(はっしゃ)されると、ロケットエンジンにより加速し、宇宙(うちゅう)空間まで高く上がります。ロケットエンジンの燃料(ねんりょう)が切れた後も、しばらくは宇宙(うちゅう)空間を飛び続け、その後宇宙(うちゅう)空間から大気圏(たいきけん)に落ちてきて、最終的に地上に着弾(ちゃくだん)します。
 日本に向けて弾道(だんどう)ミサイルが発射(はっしゃ)された場合、自衛隊(じえいたい )はまず、全国の地上レーダーやイージス(かん)のレーダーなどを使って、どのようなミサイルがどこを飛んでいるのか、どこに向かっているのかを調べます。
 そして、高性能(こうせいのう)なレーダーやミサイルシステムを搭載(とうさい)しているイージス(かん)(※)という艦艇(かんてい)からSM(エスエム)-3とよばれるミサイルを発射(はっしゃ)し、宇宙(うちゅう)空間を飛んでいる弾道(だんどう)ミサイルを()ち落とします宇宙(うちゅう)空間で()ち落とせなかった場合でも、地上に配備(はいび)されているPAC(パック)-3(※)というミサイルで()ち落とすことで、日本全体を弾道(だんどう)ミサイルから守れるようにしています。

ミサイル攻撃(こうげき)から日本を守るイージス(かん)
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防衛(ぼうえい)省・自衛隊(じえいたい )は、いざという時にしっかり対(お う)できるよう、アメリカ軍などと協力してミサイルに対(お う)する様々(さまざま)な訓練を行っているんだ。
  • 弾道(だんどう)ミサイル: 放物線を(えが)いて飛ぶロケットエンジン推進(すいしん)のミサイル。(はな)れた目標を攻撃(こうげき)することが可能(かのう)で、(かく)・生物・化学兵器などの大量破壊(はかい)兵器の運搬手段(うんぱんしゅだん)としても使用されます。
  • イージス(かん): 多くのミサイルや航空機(こうくうき)攻撃(こうげき)してきても、同時に対(お う)できる艦艇(かんてい)。イージスとは、ギリシャ神話の最高神ゼウスが(むすめ)アテナに(あた)えた(たて)で、あらゆる邪悪(じゃあく)(はら)うと言われています。
  • PAC(パック)-3:弾道(だんどう)ミサイルを(ふく)む各種ミサイルを()ち落とすことができる地対空誘導弾(ゆうどうだん)PAC(パック)-3とは、PATRIOT Advanced Capability-3の意味。
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