⑥新しい戦略(せんりゃく)と国を守るための予算

日本周辺における安全保障環境(ほしょうかんきょう)は戦後最も(きび)しい状況(じょうきょう)にあるなか、みなさんの命と平和な()らし、そしてわたしたちの領域(りょういき)領土(りょうど)領海(りょうかい)領空(りょうくう))を確実(かくじつ)に守り()くために、2022年12月16日、新しい戦略(せんりゃく)文書として、国家安全保障戦略(ほしょうせんりゃく)、国家防衛戦略(ぼうえいせんりゃく)防衛力整備(ぼうえいりょくせいび)計画を作りました。新しい戦略(せんりゃく)文書のもとで、国を守る組織(そしき)である自衛隊(じえいたい)がその能力(のうりょく)発揮(はっき)するため、必要な装備品(そうびひん)(戦車、護衛艦(ごえいかん)戦闘機(せんとうき)など)の整備(せいび)や、しっかりとした自衛隊(じえいたい)員の教育・訓練といった取組など、「防衛力整備(ぼうえいりょくせいび)」の一環(いっかん)として進めていきます。「防衛力整備(ぼうえいりょくせいび)」のために必要となるお金を「防衛関係費(ぼうえいかんけいひ)」といい、毎年必要なお金(=予算)を確保(かくほ)し活用していきます。

新しい戦略(せんりゃく)文書と予算の関係

新しい戦略(せんりゃく)文書(国家安全保障戦略(ほしょうせんりゃく)、国家防衛戦略(ぼうえいせんりゃく)防衛力整備(ぼうえいりょくせいび)計画)の内容(ないよう)や予算との関係は次のとおりです。

★ 新しい戦略(せんりゃく)文書と予算の関係
  • 将来(しょうらい)(おおむね10年程度(ていど))の戦略(せんりゃく)防衛力(ぼうえいりょく)の目標

  • 国家安全保障戦略(ほしょうせ んりゃく)
    国家安全保障(ほしょう)に関する最上位の政策(せいさく)文書として位置付けられ、伝統(でんとう)的な外交・防衛(ぼうえい)分野のみならず、経済(けいざい)安全保障(ほしょう)技術(ぎじゅつ)情報(じょうほう)なども(ふく)幅広(は ばひろ)い分野について、政府(せいふ)としての横断(おうだん)的な対(おう)に関する戦略(せんりゃく)(しめ)されています。
  • 防衛(ぼうえい)に関する戦略(せんりゃく)指針(ししん)()まえて策定(さくてい)
  • 国家防衛戦略(ぼうえいせんりゃく)
    日本を防衛(ぼうえい)するための目標や、これを実現(じつげん)するためのアプローチと手段(しゅだん)(しめ)されています。戦後、最も(きび)しく複雑(ふくざつ)な安全保障環境(ほしょうかんきょう)の中で、わたしたちの命と平和な()らしを守り()くためには、その(きび)しい現実(げんじつ)に正面から向き合って、相手の能力(のうりょく)と新しい戦い方に着目した防衛力(ぼうえ いりょく)抜本(ばっぽん)的強化を行う必要があります。そのため、反撃能力(はんげきのうりょく)保有(ほゆう)(ふく)め、防衛力(ぼうえいりょく)抜本(ばっぽん)的強化の方針(ほうしん)を定めました。
  • 防衛(ぼうえ い)の目標などを具体化
  • 自衛隊(じえいたい)のおおむね10年後の体制(たいせい)と今後5年間の国の防衛(ぼうえい)に必要な金額(きんがく)整備(せいび)する主な装備品(そうびひん)内容(ないよう)

  • 防衛力整備(ぼうえいりょくせいび)計画
    日本として保有(ほゆう)すべき防衛力(ぼうえいりょく)水準(すいじゅん)(しめ)し、その水準(すいじゅん)を達成するための内容(ないよう)(ふく)む「防衛力整備(ぼうえいりょくせいび)計画」においては、5年間で43兆円程度(ていど)という、これまでとは全く(こと)なる水準(すいじゅん)の予算規模(きぼ)により、防衛力(ぼうえいりょく)抜本(ばっぽん)的強化の実現(じつげん)に向けたさまざまな取組を記載(きさい)しました。
  • 具体化された事業に(もと)づき、年度予算を編成(へんせい)
  • ③毎年の国の防衛(ぼうえい)に関する予算

  • 年度予算
    こうした「防衛力整備(ぼうえいりょくせいび)計画」を()まえ、毎年度必要な国の防衛(ぼうえい)に関する予算を決めていきます。
ロシアはウクライナ全土に対し、5,000発以上の弾道(だんどう)巡航(じゅんこう)ミサイルを使用
沖縄・宮古島間を通過(つうか)した中国軍の偵察型(ていさつがた)無人機(2023年1月)
桃園国際(とうえんこくさい)空港が中国軍に攻撃(こうげき)されたという偽情報(にせじょうほう)否定(ひてい)するために台湾国防(たいわんこくぼう)部が発表した画像(がぞう)(2022年8月)【台湾国防(たいわんこくぼう)部】

3つの防衛(ぼうえい)目標と3つのアプローチ

3つの防衛(ぼうえい)目標

  • ① 力による一方的な現状変更(げんじょうへんこう)(ゆる)さない安全保障環境(ほしょうかんきょう)を作る

    G7首脳会合に参加する岸田内閣総理(そうり)大臣(2023年5月)【首相官邸(かんてい)HP】
  • ② 力による一方的な現状変更(げんじょうへんこう)やその試みを、同盟(どうめい)国・同志(どうし)国などと協力・連携(れんけい)して抑止(よくし)・対(しょ)

    米空軍戦略爆撃機(せんりゃくばくげきき)などとの共同訓練(2023年3月)
  • ③ 日本への侵攻(しんこう)が起きた場合、日本が主たる責任(せきにん)をもって対(しょ)し、同盟(どうめい)国などの支援(しえん)を受けつつ、相手の侵攻(しんこう)阻止(そし)(はい)

    水陸両用作戦などの訓練(2023年2月)

3つのアプローチ

  • ≫アプローチ①

    日本自身の防衛体制(ぼうえいたいせい)の強化

    ・日本の防衛力(ぼうえいりょく)抜本(ばっぽん)的強化
    ・国全体の防衛体制(ぼうえいたいせい)の強化

    次期戦闘機(せんとうき)(イメージ)
  • ≫アプローチ②

    日米同盟(どうめい)抑止力(よくしりょく)と対(しょ)力の強化

    海自護衛艦(ごえいかん)「いずも」への米海兵隊F-35Bの着陸(2021年10月)

    ≫アプローチ③

    同志(どうし)国などとの連携(れんけい)の強化

    日本、米国、英国、オランダ、カナダ、ニュージーランドによる共同訓練(2021年10月)

防衛力(ぼうえいりょく)抜本(ばっぽん)的強化の7つの分野

日本を防衛(ぼうえい)するために、必要な機能(きのう)能力(のうりょく)として、以下の7つの柱を重視(じゅうし)して、防衛力(ぼうえいりょく)抜本(ばっぽん)的強化に取り組んでいきます。特に、今後5年間の最優先(ゆうせん)課題として、今持っている装備品(そうびひん)最大限(さいだいげん)有効(ゆうこう)に活用するため、装備品(そうびひん)可動状況(かどうじょうきょう)の向上や弾薬(だんやく)燃料(ねんりょう)確保(かくほ)、主要な防衛施設(ぼうえいしせつ)への投資(とうし)の加速、スタンド・オフ防衛能力(ぼうえいのうりょく)や無人アセット防衛能力(ぼうえいのうりょく)などの将来(しょうらい)中核(ちゅうかく)となる能力(のうりょく)の強化を実施(じっし)していきます。

01 スタンド・オフ防衛能力(ぼうえいのうりょく)

攻撃(こうげき)されない安全な距離(きょり)から相手部隊に対(しょ)する能力(のうりょく)を強化

12(ひとに)式地対艦誘導弾能力(かんゆうどうだんのうりょく)向上(がた)の開発
トマホークの取得(しゅとく)
02 統合防空(とうごうぼうくう)ミサイル防衛能力(ぼうえいのうりょく)

ミサイルなどの多様化・複雑(ふくざつ)化する空からの脅威(きょうい)に対(おう)するための能力(のうりょく)を強化

イージス・システム搭載艦(とうさいかん)(イメージ)の建造(けんぞう)
03 無人アセット防衛能力(ぼうえいのうりょく)

無人装備(そうび)による情報収集(じょうほうしゅうしゅう)戦闘支援(せんとうしえん)等の能力(のうりょく)を強化

偵察(ていさつ)UAV(ユーエーブィ)(中(いき)用)(イメージ)の整備(せいび)
04 領域横断(りょういきおうだん)作戦能力(のうりょく)

全ての能力(のうりょく)融合(ゆうごう)させて戦うために必要となる宇宙(うちゅう)・サイバー・電磁波(でんじは)、陸・海・空の能力(のうりょく)を強化

スタンド・オフ電子戦機(イメージ)の整備(せいび)
05 指揮統制(しきとうせい)情報(じょうほう)関連機能(きのう)

迅速(じんそく)かつ的確(てきかく)に意思決定を行うため、指揮統制(しきとうせい)情報(じょうほう)関連機能(きのう)を強化

AI技術(エーアイぎじゅつ)を活用した画像(がぞう)の活用(イメージ)
06 機動展開能力(てんかいのうりょく)・国民保護(ほご)

必要な部隊を迅速(じんそく)に機動・展開(てんかい)するため、海上・航空輸送(こうくうゆそう)力を強化。これらの能力(のうりょく)を活用し、国民保護(ほご)実施(じっし)

輸送船舶(ゆそうせんぱく)(イメージ)の取得(しゅとく)
07 持続(せい)強靱性(きょうじんせい)

必要十分な弾薬(だんやく)誘導弾(ゆうどうだん)などを早期に整備(せいび)。また、装備品(そうびひん)の部品取得(しゅとく)修理(しゅうり)施設(しせつ)強靱(きょうじん)化に係る経費(けいひ)確保(かくほ)

火薬庫の確保(かくほ)
反撃能力(はんげきのうりょく)(イメージ図)

防衛(ぼうえい)生産・技術基盤(ぎじゅつきばん)の強化

防衛(ぼうえい)生産・技術基盤(ぎじゅつきばん)は、自国での防衛装備品(ぼうえいそうびひん)の研究開発・生産・調達を安定的に確保(かくほ)し、新しい戦い方に必要な先端技術(せんたんぎじゅつ)防衛装備品(ぼうえいそうびひん)に取り()むために不可欠(ふかけつ)基盤(きばん)です。そのため、いわば防衛力(ぼうえいりょく)そのものと位置付けられています。
 昨今、自衛隊(じえいたい)の活動の場が()えている中、政府(せいふ)が自ら防衛装備品(ぼうえいそうびひん)製造(せいぞう)しない日本では、民間の企業(きぎょう)(たよ)らざるを()ません。しかし、近年、利益(りえき)がなかなか()られないなどの理由から防衛(ぼうえい)(にな)企業(きぎょう)装備品(そうびひん)を取り(あつか)うことをやめてしまう例が()えています。そのため、以下のような取組を進めていきます。

防衛(ぼうえい)生産基盤(きばん)の強化
  • ●力強く防衛(ぼうえい)の仕事を続けることができる防衛(ぼうえい)(にな)企業(きぎょう)構築(こうちく)
  • ●サイバー攻撃(こうげき)などの様々(さまざま)なリスクへの対(しょ)
  • ●外交・防衛政策(ぼうえいせいさく)戦略(せんりゃく)手段(しゅだん)であり、海外への市場拡大(かくだい)にもなる防衛装備移転(ぼうえいそうびいてん)推進(すいしん)
日本の防衛(ぼうえい)(にな)企業(きぎょう)とアメリカ軍やアメリカの防衛(ぼうえい)(にな)企業(きぎょう)の間でマッチングするためのイベント(インダストリーデー)の様子
防衛技術基盤(ぼうえいぎじゅつきばん)の強化
  • 将来(しょうらい)の戦い方に直結する可能性(かのうせい)がある装備品(そうびひん)技術(ぎじゅつ)分野に集中的に取り組み、早期の防衛力抜本(ぼうえいりょくばっぽん)的強化につながる研究開発の実施(じっし)
  • ●民間の先端技術(せんたんぎじゅつ)幅広(はばひろ)く取り()み、積極的に活用
長期運用(がた)無人水中航走(こうそう)

人的基盤(きばん)の強化・衛生機能(えいせいきのう)変革(へんかく)

防衛力(ぼうえいりょく)発揮(はっき)するのは自衛隊(じえいたい)員です。高度な装備品(そうびひん)をどれだけ(そろ)えようと、それを(あつか)う人がいなければ防衛力(ぼうえいりょく)発揮(はっき)できません。しかし、少子化により、自衛官募集(じえいかんぼしゅう)の対(しょう)になる人口が減少(げんしょう)しています。そのため、防衛力(ぼうえいりょく)を「人」の面から強化する取組を進めていきます。また、戦う自衛隊(じえいたい)員の生命を(すく)態勢(たいせい)を強化していきます。

人的基盤(きばん)の強化

  • 優秀(ゆうしゅう)な人材を確保(かくほ)するため、広報(こうほう)や試験をデジタル化・オンライン化
  • 普段(ふだん)はそれぞれの仕事をしながら、いざという時に自衛官(じえいかん)となって活動する予備自衛官(よびじえいかん)になりやすい制度(せいど)整備(せいび)
  • 自衛隊(じえいたい)員全員が持つ能力(のうりょく)最大限(さいだいげん)発揮(はっき)できるよう、生活・勤務環境(きんむかんきょう)改善(かいぜん)するとともに、処遇(しょぐう)を向上
  • 女性自衛官(しょせいじえいかん)活躍推進(かつやくすいしん)などの人材の有効(ゆうこう)活用
  • ●教育基盤(きばん)の強化  など
募集(ぼしゅう)(しょう)者に対するオンライン説明会
先端技術(せんたんぎじゅつ)を活用した飛行教育

衛生機能(えいせいきのう)変革(へんかく)

  • 戦闘(せんとう)負傷(ふしょう)した隊員を救護(きゅうご)し、病院までの搬送(はんそう)中も医療(いりょう)を行い()態勢(たいせい)確立(かくりつ)
  • 防衛(ぼうえい)医科大学校での戦傷医療(せんしょういりょう)の教育研究を強化

お金は何に使われている?

令和5(2023)年度の日本の予算全体は約114兆円になりますが、そのうち防衛関係費(ぼうえいかんけいひ)防衛力整備(ぼうえいりょくせいび)に必要なお金)は約6.6兆円になります。
 その内訳(うちわけ)としては、約3(わり)自衛隊(じえいたい)員の給料や食事などのお金(人(けん)糧食費(りょうしょくひ))、約3(わり)燃料(ねんりょう)購入(こうにゅう)保有(ほゆう)する装備品(そうびひん)修理(しゅうり)などに必要なお金であり、新しい装備品(そうびひん)購入(こうにゅう)先端技術(せんたんぎじゅつ)への投資(とうし)(研究開発)に必要なお金は合わせて2(わり)を上回っています。

防衛関係費(ぼうえいかんけいひ)(当初予算)の 内訳(うちわけ)(令和5(2023)年度)