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戦闘機用エンジンに関する研究

戦闘機用エンジンシステムの研究試作(プロトタイプエンジン)の納入について

概要

航空機及び航空機用機器並びに誘導武器についての研究及び試験等を行っています。

航空機技術研究部

航空機のシステム化技術、航空機及び航空機搭載機器並びに誘導武器の要素技術に関する調査研究・試験等を担当しています。

エンジン技術研究部

エンジンのシステム化技術及び要素技術に関する調査研究・試験等を担当しています。

誘導技術研究部

誘導武器のシステム化技術及び要素技術に関する調査研究・試験等を担当しています。

土浦支所

誘導武器の要素技術についての試験に関する業務

新島支所

誘導武器の発射試験に関する業務

将来戦闘機関連研究

将来戦闘機コンセプト

 ※将来戦闘機に関する研究開発ビジョンより抜粋

クラウド・シューティング

「クラウド・シューティング」は、戦闘機の戦い方を大きく変えるゲームチェンジャーとなり得る技術です。自機のセンサで見つけて自機のウェポンで撃つ「個」の戦い方から、編隊のセンサで見つけて編隊のウェポンで効率的に撃つ「チーム」の戦い方に変えるもので、特に数的劣勢下でその効果が発揮されます。
「クラウド・シューティング」を実現するには、各戦闘機が持っているセンサ情報やウェポン情報を僚機間データリンクで共有し、編隊内で統合的に火器管制を行う必要があります。

「戦闘機用統合火器管制技術の研究」では、シミュレータを使用した模擬戦闘試験を通じて統合火器管制システムの評価・分析を実施しています。「クラウド・シューティング」ができるシステムの効果を検証しており、数的劣勢下でも高い有効性を確認しています。
 また、この研究では、僚機間データリンク装置を試作して航空機に搭載し、編隊内での高速な情報交換に関する飛行実証も計画しています。

模擬戦闘試験中のコックピット内の様子
飛行実証用のデータリンク装置

敵を凌駕するステルス技術

ステルス技術とは相手のセンサから探知されにくくする技術で、相手へのレーダー反射を減らすことが重要になります。そのためには戦闘機形状などに工夫が必要で、翼下や胴下に搭載されるウェポンを胴体内部に格納するウェポン内装化、レーダー反射が大きいエンジンファン面を隠すような曲がったインテークダクト(ステルスインテークダクト)など、新しい技術を適用することにより優れたステルス性が実現できます。

ウェポン内装化
ステルスインテークダクト

一方、ステルス化を図ると機体重量が重くなるので、機体構造軽量化技術が必要となり、その他、整備作業を容易にする電動化技術も必要になります。

「ウェポンリリース・ステルス化の研究」

戦闘機が高いGや高速で飛行する環境においても、ウェポンが格納されたウェポンベイ扉を短時間で開閉し、その間に安全にウェポンをリリースし、機体からの確実な分離を実現する技術の研究を行いました。
 数値流体解析(CFD : Computational Fluid Dynamics)や風洞試験などを行い、ウェポン内装システムの設計に必要なデータを取得しました。それら成果に基づいて実物大のウェポン内装化システムを試作し、航空装備研究所での地上試験を通じて、研究目標とした性能を実現することを確認しました。

実物大ウェポン内装化システムの試験状況(連続写真)

「ステルスインテークダクトの研究」

曲がったダクトによりエンジンファン面を外部から見えなくしたりすることでステルス化が図られますが、その反面、インテークダクト内を通る気流はインテークダクト内面から剥がれたり、渦ができやすくなったりするため、乱れた気流がエンジンに入ることになり、エンジンにとっては安定な作動に影響を及ぼすことになります。

「ステルスインテークダクトの研究」では、ステルス性を確保しつつ乱れを抑えた気流を実現するため、インテークダクト内部の流れを積極的に制御する気流制御技術について研究を行いました。
 ダクトの曲げ率などの構成要素に関するCFDや風洞試験を実施し、インテークダクトの設計に必要な境界層制御機構などの気流制御技術に関するデータを取得しました。それらの成果に基づいて設計されたステルスインテークダクトを評価するための風洞試験模型を試作しました。風洞試験ではエンジン入り口で乱れの少ない気流を実現していることを確認するとともに、CFD解析を併せて実施し、インテークダクト内部の流れ場の現象を把握しました。

風洞試験模型概要
風洞試験模型(三音速風洞に設置状態)

「機体構造軽量化技術の研究」

ウェポン内装化やステルスインテークダクトなどを適用したステルス戦闘機は、従来の戦闘機に比べて胴体容積が増加することから、機体重量が増加します。これを解決するためには、日本の優れた製造技術である複合材の接着成形技術を活用した一体化・ファスナレス(金属ファスナなどの低減)構造技術、エンジンからの放熱を遮蔽することで軽量化素材の適用範囲を拡大させるヒートシールド技術が必要になります。

「機体構造軽量化技術の研究」では、これら必要な技術の成立性を段階的に検証・確立しています。
 胴体のうち燃料区画の一部を取り出した構造要素供試体を試作し、燃料タンク圧を想定した強度試験の結果を高効率・高精度構造解析結果と比較検討しました。さらに胴体部をほぼ模擬した実物大の部分構造供試体を試作し、飛行中にかかる力をかけた強度試験を実施しました。現在、耐環境性について強度試験等を実施中です。

「電動アクチュエーション技術の研究」

戦闘機の内部には所狭しと様々な配線や配管が張り巡らされています。特に油圧配管どうしの接続部分では油漏れの有無を機体外部から点検できるようにアクセスパネルが設置されますが、機体表面とアクセスパネルの間のギャップがステルス性を損なうことになります。これを解決する方法として、油圧配管をなるべく使わないための電動化技術の確立が必要になります。電動化によるメリットとしては、配管が配線に変わることから機体設計の自由度向上、整備性向上、被弾した際の生存性向上も挙げられます。
 「電動アクチュエーション技術の研究」では、高いGなどの厳しい環境条件の中で使用され、高い性能が求められる戦闘機に搭載可能なレベルの小型・軽量化された電動アクチュエーションシステムに関する研究を実施しています。舵面を駆動する電動アクチュエーションを試作し、地上での統合試験などを実施し、電動アクチュエーションシステムの成立性を確認しています。

「戦闘機用エンジンシステムに関する研究」

将来の戦闘機のステルス性と高高度・高速戦闘能力を実現するため、スリム化と高推力化を両立した戦闘機用エンジンの研究を行っています。これまでの研究を通じて得られた成果をもとに、ハイパワーかつスリムな戦闘機用エンジンのプロトタイプXF9-1を試作し、地上性能試験を実施しました。

XF9-1の地上性能試験

XF9-1は、平成30年6月に受領し、7月から基本性能や振動特性等を確認する試験を始めて、目標性能である最大推力15トン達成を同年8月に確認しました。

地上運転場に搭載されたXF9-1

コアエンジンの高空試験

XF9-1の心臓部にあたる高温高圧部の要素で構成されたコアエンジンの各種の性能確認を千歳試験場のATF(Altitude Test Facility:エンジン高空性能試験装置)で行いました。この時、燃焼器出口最大温度が1800℃という高温状態での構造健全性を確認し、その成果はXF9-1の設計・製造に反映しました。

ATFのチャンバーに搭載されたコアエンジン

XF9-1の高空試験

令和元年9月から10月には飛行状態を模擬した条件下で各種の性能確認を行いました。令和2年7月に制御機能等を確認するために必要なデータ取得を完了しました。

ATFのチャンバーに搭載されたXF9-1

- ハイパワースリムエンジンのためのコンセプト -

スリム化したエンジンによるハイパワーの実現

  • ファンの単位面積当たりの流入空気の大流量化、高圧力化
  • 流入空気に大きな燃焼エネルギーを与え、排気の高速化に必要なコアエンジンの高温化
  • 高圧力比ファンを回転させるための高い負荷に対応した単段の低圧タービン

第4世代機(F-2等)搭載エンジンと同じ推力レベルにおいて断面積で約3割のスリム化を実現

世界トップレベルの燃焼器出口温度1,800℃の実現

熱疲労試験
(高圧タービンの高温耐性を確認)

  • 軸長短縮による圧縮機の軽量化
  • 効果的な冷却構造による燃焼器の高温化
  • 新耐熱材料による高圧タービンの高温化

「戦闘機用エンジンシステムの適応性向上技術の研究」

プロトタイプエンジン(XF9-1)の成果を継承し、将来の戦闘機の機体性能要求に柔軟に対応するため、適応性の向上を実現するための新しいエンジン要素技術に関する研究を行います。

「推力偏向ノズルに関する研究」

高機動性の実現と、また、尾翼を縮減させてステルス性の向上を図るため、従来の空力舵面による機体の姿勢制御に加えて、エンジンの排気ジェットの方向を変える(推力を偏向する)ことにより姿勢制御を行う「推力偏向ノズルの研究」を行っています。

推力偏向ノズルの効果による高機動のイメージ

この研究では、試作を行った全周20度の推力偏向が可能な推力偏向ノズル(XVN3-1)を戦闘機用エンジン(XF9-1)に搭載して地上試験を実施する計画です。

無人機関連研究

将来無人機に関する研究においては、まず有人機を改造した有人/無人で運用できるOPV飛行試験機※による自律化技術の飛行実証を行い、その後、有人機と無人機が協調して飛行を行う技術、人工知能といったゲームチェンジャーとなる技術等について、実運用環境における試験評価を行い技術を獲得していくことを目指しています。
 航空装備研究所では、航空機搭載型小型赤外線センサシステムインテグレーションの研究において、OPV飛行試験機を用いた技術の飛行実証を実施しました。現在は、無人機の高度な自律化や有人機と無人機が協調する際に必要となる、機体性能を最大限に発揮する飛行制御と自動経路生成、無人機を管制するインターフェースなどの技術の研究を進めています。また、人工知能技術の適用による戦闘支援に関する基礎的な研究にも取り組んでいます。今後は、これらの研究を重点的に推進、発展させ、将来の無人機の実現を目指します。

※OPV: Optionally Piloted Vehicle(有人機をもとに改造し、用途により有人/無人の運用を選択できる航空機)

「航空機搭載型小型赤外線センサシステムインテグレーションの研究」

弾道ミサイル警戒は長時間にわたり単調かつ危険な状況下での継続的な活動ですが、そのような人間が対応するには過酷な状況下で活躍が期待される装備品として、弾道ミサイルを探知することができる小型赤外線センサを搭載した無人航空機(無人機システム)が挙げられます。
 このような無人機システムを構築するためには早期探知技術の他、気象条件等を考慮した飛行経路を自動生成して監視を続ける継続監視技術、他航空機との衝突回避や自動離着陸を行う無人機運航技術も必要です。これら技術を飛行試験により獲得、検証する有効な方法の一つとして、有人機を改修して必要に応じて無人機システムの自律飛行と有人機の操縦を選択できるOPVという方法があります。

運用構想案

「航空機搭載型小型赤外線センサシステムインテグレーションの研究 」では、フィジカルシミュレーション試験において気象予測などの情報に基づいて最適な飛行経路が自動生成される継続監視技術などを段階的に検証、確認しました。さらにKM-2D型有人機を赤外線センサや自律飛行のための装置などを搭載したOPV飛行試験機に改修し、平成30年10月に初飛行しました。その後、令和元年10月から11月にかけ、北海道大樹町の多目的航空公園及び同周辺空域において、継続監視技術などの確認のため飛行試験を実施しました。

誘導武器関連研究

「高高度迎撃用飛しょう体技術の研究」

弾道ミサイル等の高速な脅威を迎撃するためには、高い運動性能により高精度で目標へ誘導(飛しょう)する必要があります。一方で、高高度領域での迎撃は空気の密度が低く、旋回に必要な空力が弱いため、空力操舵による高応答の制御が困難となります。そのため高高度において空力制御以外の方法で迎撃ミサイルの機動性を向上させる技術の開発が必要になります。
 「高高度迎撃用飛しょう体技術の研究」では、誘導弾の機軸に対し、直交方向に推力を発生させて制御を行う長秒時燃焼圧制御サイドスラスタ技術並びに、小型の偏向体(ジェットタブ)を用いてロケットモータの推力を偏向させるジェットタブ式TVCによる推力制御技術を組み合わせた高高度領域高応答誘導制御技術の適用により、高高度高速目標の迎撃を目指しています。

高高度迎撃用飛しょう体(イメージ図)

「低RCS対処ミサイル誘導制御技術の研究」

近年、戦闘機や攻撃機は敵のレーダに発見されないようステルス性を向上させています。このようなステルス機にミサイルを誘導する際には、ミサイルがステルス機を捕捉し追尾する距離が従来より短くなってしまい、ステルス機がミサイル回避のため旋回してしまうとステルス機を迎撃することが難しくなります。「低RCS対処ミサイル誘導制御技術の研究」では、ステルス機の位置や速度等の観測情報を基に未来の運動を予測するとともに、モデル予測制御を応用して、ステルス機へのミサイル会合シミュレーションを行い、最適制御による制御量の導出を反復して効率的な接近経路を計算することにより、ミサイルでステルス機を迎撃することを可能にする技術の獲得に取り組んでいます。

フィジカルシミュレーション試験
地上追随試験

「低コントラスト目標用画像誘導技術の研究」

島嶼部に侵攻し停泊する敵艦艇や上陸した敵車両等は、港湾等の背景との温度差が小さいため、これまでの赤外線シーカ(センサ)において用いてきた温度差が大きな物体を検出する画像処理アルゴリズムでは、その検出が困難となります。このため、背景との温度差が小さい「低コントラスト目標」の捜索・識別を可能とする新しい画像処理アルゴリズムとその評価手法に関する「低コントラスト目標用画像誘導技術の研究」を行っています。画像処理アルゴリズムとしては、機械学習を用いて赤外線特徴量(温度勾配等)を類型化したデータベースと目標の赤外線シーカ画像との照合を行う手法や、目標の赤外線特徴量を抽出する手法を基に、誘導弾が目標を検出・識別するための新しい技術の獲得に取り組んでいます。

「将来射撃管制技術の研究」

近年、対地攻撃の様相は航空機や多種多数のミサイルの同時攻撃が主流となってきています。このような多種多数の脅威にミサイルで同時に対処するためには、迎撃側のミサイルを誘導・管制する射撃用レーダにおいて、レーダの照射ビームの配分を目標に応じ最適化する必要があります。
 「将来射撃管制技術の研究」では、脅威の特性(目標のRCSや速度等)に応じてレーダリソース(照射ビームの数や照射間隔)を最適化するリソース制御に関する検討を行っています。

「ミリ波射撃管制技術の研究」

比較的近距離に迫って来ている敵舟艇や敵戦闘車両等をミサイルで対処するには、光学センサを用いて目標を標定し、ミサイルの管制・誘導を行うことが一般的です。しかし、煙幕や霧等が生じている際には光学センサを用いて舟艇や戦闘車両等の目標を標定することは難しくなります。
 「ミリ波射撃管制技術の研究」では、煙幕・霧等の環境下でも目標の検出が可能なミリ波レーダを用いて、洋上、地上及び空中の目標を標定し、ミサイルを管制・誘導するミリ波射撃管制技術について研究を進めています。

「スクラムジェットエンジンの研究」

従来の誘導弾に比べて遥かに短い目標到達時間と高い残存性を同時に実現して、相手方の脅威圏外から対処するスタンド・オフ能力を飛躍的に向上させた極超音速誘導弾は、戦闘様相を一変するゲーム・チェンジャーです。極超音速誘導弾を実現するための重要技術の一つであるエンジンについて、従来のエンジン技術では実現できなかった高高度極超音速(マッハ5以上)巡航を可能とする「スクラムジェットエンジンの研究」を実施しています。
 本研究では、装備品としての実現に留意し、従来までの研究の主流であった水素燃料に比べ、機体規模の小型化、入手性・貯蔵・取扱の容易さに大幅に優れる炭化水素燃料(ジェット燃料)を採用するとともに、超音速から極超音速までの幅広い速度域での作動を実現する、ラムモードとスクラムモードの2つのモードによるデュアルモード・スクラムジェットエンジンの実現を目指しています。

極超音速飛しょう体(例)

炭化水素燃料を用いたスクラムジェットエンジンの成立性の検証のため、JAXAとの研究協力の下、燃焼試験を行い、ジェット燃料によるスクラム燃焼に成功するとともに、冷却系検討に資する基礎データを取得しました。これらの研究成果に基づき、実飛しょうを想定したスクラムジェットエンジンシステムの研究に取り組んでいます。

スクラムジェットエンジンの概要

燃焼試験結果の例

 試験実施場所:JAXA角田宇宙センター

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