訓練課程
訓練課程は、「自衛隊の必要とする基礎的な訓練事項について錬成し、幹部自衛官としての職責を理解してこれに適応する資質及び技能を育成する。」の方針のもと、各学年全員が同じ訓練を行う共通訓練と、第2学年において陸上・海上・航空要員に指定された後行う専門(要員)訓練に区分されます。訓練は毎週2時間程度実施される課程訓練と年間を通じ集中(1ヶ月の訓練を1回、1週間の訓練を2回程度)して実施される定期訓練をもって行われます。
共通訓練
目的は、「基本的な技能及び基礎体力を向上させること」。
また、陸上・海上・航空の各自衛隊の機能について理解を深めることも目的の一つです。
第1学年は陸・海・空自衛隊の部隊や訓練を見学して、将来の職場や職務に対する見識を深めるとともに、陸・海・空自衛隊要員選考の資とさせます。
敬礼や行進等、自衛官の基本的な動作を訓練して、厳正な動作を身につけます。基本教練は4年間のみならず、卒業し自衛官となった以降も訓練します。
第1学年は小銃を使った陸上での戦闘要領を訓練して、戦闘の基礎を学びます。
第1学年は小銃の分解・整備や操作要領を訓練するとともに、実弾射撃を体験します。
第1学年はテントでの野営や飯ごう炊飯等を体験し、野外行動の基礎を学びます。
カッターとは、複数人による手漕ぎで進む小型船のことです。第1学年はカッターの操法を訓練するとともに、気力・体力・チームワークの大切さを学びます。
第1学年は応急処置や溺者救護等の救急法や患者の搬送要領を学びます。
第1学年は7月、東京湾内にて約8kmの遠泳訓練を実施します。入校時泳ぎが苦手な学生でも、事前にしっかりと訓練して、完泳する力を身につけさせます。
第2学年は新潟県の妙高高原にてスキー訓練を行います。初めてスキーをする学生もいますが、基礎から訓練し、滑ることができるようになります。
第3学年は第2次世界大戦中に日米の激戦地であった硫黄島の研修を行い、過去の戦跡に学びます。
第4学年は入校直後の第1学年に対し、基本教練の教育を行い、教官としての実習を行います。
専門訓練
「陸上・海上・航空の各要員ごとに基礎訓練と体験訓練を行い、プロとしての資質を育成すること」が目的です。
陸上要員訓練
防衛大学校卒業後、各級陸上部隊の指揮官や幕僚となるため、陸上自衛官の野外行動の習得に始まり、徐々に隊員や部隊を運用する知識や技術を学びます。
小銃や機関銃等を使った地上戦闘要領を訓練して、技術を身につけます。
鉄条網や地雷等の障害設置や陣地構築の要領を訓練します。
野外における偵察や監視の要領を訓練します。
小銃や機関銃等の陸上自衛隊の装備火器の取り扱いを訓練します。
陸上自衛隊の通信機材とその取り扱いを学ぶとともに、無線通話要領等を訓練します。
計画や命令で部隊を指揮運用する方法を学びます。また、戦闘訓練、野戦築城等の各種訓練において10名以下の小部隊の指揮要領を訓練します。
第3学年の7月、全国各地の普通科部隊に分散し、隊員と生活を共にしつつ実習を行い、陸上自衛隊の訓練や生活を体験します。
海上要員訓練
防衛大学校卒業後、海上自衛隊各部隊の指揮官や幕僚となるため、シーマンシップの習得に始まり、主に艦艇乗組員として必要な基礎的知識を学びます。
船乗りとして必要な航法に関する基礎的知識を学びます。
将来の海上自衛官として必要な水泳能力を向上させるため、自ら訓練する方法を学びます。
気象のメカニズムや日本周辺の気象特性の基礎的事項を学び、簡単な天気予察ができるよう訓練します。
手旗信号、発光信号、旗りゅう信号を学び、洋上における船対船のコミュニケーション能力を修得します。
船乗りとして必要な洋上の交通に関する法律について学びます。
ロープの結び方や重量物の取扱法など、洋上作業に必要な事項について学ぶとともに、船の特性や船体構造などの知識を修得します。
操法に加え、カッターの揚げ降ろしに使うダビットの使用法についても学びます。また、指揮法を学び、第4学年時に第2学年に対し操法やダビットの使用法について指導します。
ヨットは風の力で進む船です。ぎ装から復旧まで一連の操作法を学ぶとともに、帆走時の基本操法や出入航法を訓練し、巡航を通じてシーマンシップを養成します。
機動艇はエンジンで動く小型船です。航海概論で学んだ知識を発揮する場になります。第4学年時には、学生が航路を計画し、横浜まで巡航します。
毎年7月、海上自衛隊所属の護衛艦等に乗艦し、艦艇での訓練や生活を体験します。日本各地の港に入港し、その土地の雰囲気を味わうのもこの実習の醍醐味の一つです。
第3学年の7月、海上自衛隊航空部隊の実習を行います。航空部隊の生活を体験するとともに、航空シミュレーターの見学や体験飛行を通じ、幹部搭乗員の役割等について学びます。
航空要員訓練
防衛大学校卒業後、航空自衛隊の多種多様な部隊等における指揮官や幕僚等となるため、航空自衛隊での座学等に始まり、徐々に組織的な部隊の運用要領を学びます。
7月、第2学年と第4学年合同で静岡県の富士川滑空場において、学生によりグライダーの飛行に必要な組織を編成し行う訓練です。組織の活動計画立案から実行に至るまで、操縦を除くほぼすべての機能の運用を学生自身で行います。
指揮官とそれを補佐する幕僚の役割について学びます。また、滑空機訓練、基地警備訓練において実際に指揮官や幕僚としての勤務を経験します。
航空自衛隊の基地警備の概要について学ぶとともに、第3学年と第4学年合同で警備の要領について訓練します。
航空機の整備を行う部隊について学ぶとともに、実際の整備部隊を研修します。
航空自衛隊の通信機器や情報システムについて学びます。
航空機が目的地まで風や燃料などを考慮して適切に移動する為の手法について学びます。
航空機の救命装備品(パラシュート、救命ボート、サバイバル・キット)について、使用法を学びます。
航空管制官の業務について学ぶとともに、実際の管制部隊を研修します。
輸送航空隊実習
第2学年の7月、輸送機部隊の実習を行い、航空輸送業務について学びます。
戦闘航空団実習
第3学年の7月、戦闘機部隊の実習を行い、戦闘機の飛行に係る機能について学びます。また、隊員と生活を共にして、航空自衛隊の訓練や生活を体験します。
高射部隊実習
第3学年の4月、地対空ミサイル(ペトリオット)を装備する高射部隊の実習を行い、地対空ミサイルの運用について学びます。
警戒管制部隊実習
第4学年の7月、領空の監視等を行う警戒管制部隊の実習を行い、警戒管制業務について学びます。