海賊対処活動

海賊行為は、海上における公共の安全と秩序の維持に対する重大な脅威です。特に、海洋国家として国家の生存と繁栄の基盤である資源や食料の多くを海上輸送に依存しているわが国にとっては、看過できない問題です。
2009年3月、ソマリア沖・アデン湾においてわが国関係船舶を海賊行為から防護するため、海上警備行動が発令されたことを受け、護衛艦2隻がわが国関係船舶の直接護衛を開始し、P-3C哨戒機も同年6月より警戒監視を開始しました。  現在、派遣海賊対処行動水上部隊、派遣海賊対処行動航 空隊及び派遣海賊対処行動支援隊を派遣し、現地における活動を実施しています。
■ 派遣海賊対処行動水上部隊は、護衛艦(1隻派遣)により、アデン湾を往復しながら民間船舶を直接護衛するエスコート方式と、状況に応じて割り当てられたアデン湾内の特定の区域で警戒にあたるゾーンディフェンス方式により、航行する船舶の安全確保に努めています。
■ 派遣海賊対処行動航空隊は、P-3C哨戒機(2機派遣)により海賊行為への対処を行っています。第151連合任務群司令部との調整により決定した飛行区域において警戒監視を行い、不審な船舶の確認と同時に、海自護衛艦、他国艦艇及び民間船舶に情報を提供し、求めがあればただちに周囲の安全を確認するなどの対応をとっています。収集した情報は、常時、関係機関などと共有され、海賊行為の抑止や、海賊船と疑われる船舶の武装解除といった成果に大きく寄与しています。
■ 派遣海賊対処行動支援隊は、派遣海賊対処行動航空隊を効率的かつ効果的に運用するために、ジブチ国際空港北西地区に整備された活動拠点において、警備や拠点の維持管理などを実施しており、2021 年に活動拠点開設から10年の節目を迎えました。
 国際社会の共同による取組が功を奏し、ソマリア沖・アデン湾における海賊事案の発生件数は、現在低い水準で推移しているものの、海賊を生み出す根本的な原因とされているソマリア国内の不安定な治安や貧困などはいまだ解決されていません。また、ソマリア自身の海賊取締能力もいまだ不十分である現状を踏まえれば、国際社会がこれまでの取組を弱めた場合、状況は容易に逆転するおそれがあり、わが国が海賊対処を行っていかなければならない状況に大きな変化はありません。
 このほか、派遣海賊対処行動水上部隊及び同航空隊は、戦術技量の向上及び各国軍との連携の強化を目的として、ソマリア沖・アデン湾などの海域において、EU海軍部隊などとの間で共同訓練を実施しています。こうした共同訓練や寄港を通じたインド太平洋 地域沿岸国との相互理解の深化や連携の強化は、海洋安全保障の維持に寄与するものであり、戦略的に非常に大きな意義があります。

派遣海賊対処行動水上部隊について(中東地域における情報収集活動兼務)(統合幕僚監部ホームページ) 派遣海賊対処行動航空部隊及び支援隊について(統合幕僚監部ホームページ)

中東における情報収集活動

海上自衛隊による情報収集活動は、政府の航行安全対策の一環として日本関係船舶の安全確保に必要な情 報を収集することを目的に、2020年1月、海賊対処部隊のP-3C哨戒機2機が同年2月、派遣情報収集活動水上部隊の護衛艦が情報収集活動を開始しました。
2022 年2月以降は、派遣海賊対処行動水上部隊が海賊対処行動と情報収集活動を兼務して実施しています。現在までのところ水上部隊及び航空隊が活動した海域において、日本関係船舶に対する特異な事象 があったとの情報は得られていません。