岸防衛大臣の第19回IISSアジア安全保障会議への出席
及び三国間・二国間会談等について

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6月10日から6月12日にかけて、岸防衛大臣は、同会議に出席し、スピーチを行うとともに、各国国防大臣等との会談等を行ったところ、概要以下のとおり。

1.IISSアジア安全保障会議におけるスピーチ(概要)(11日午前)

 岸大臣から、第2セッション「Managing Geopolitical Competition in a Multipolar Region(多極化する地域における地政学的競争への対処)」においてスピーチを実施した。スピーチでは、ロシアのウクライナ侵略が示すインド太平洋地域への含意と、インド太平洋地域における地政学的競争に対処するための日本の取組について説明した。

 最初に、ロシアのウクライナ侵略への対応は、ウクライナの命運を左右するに留まらず、ルールに基づく国際秩序の命運を左右するものであると述べ、世界はルールに基づく国際秩序を守ろうとする諸国と、ルールを無視し力により国際秩序を変更していこうとする諸国の競争の最中にあるという認識を示した。さらに、①核を保有または開発し、ルールを無視する諸国の危険性が現実のものとして存在していること、②被侵略国の強固な抵抗と国際社会全体の協力によって侵略の勢いを減退させることが可能であること、③国際社会の協力の手法は多岐にわたり、それは距離・地域が離れていても可能であること、という今般の侵略から導き出した3つの教訓を指摘した。

 次に、その教訓は、今般の侵略と類似の問題を潜在的に抱えるインド太平洋地域への教訓でもあることを述べ、ロシアの極東での軍事活動の活発化、中露関係が深化する可能性、南シナ海・東シナ海における力を背景とした一方的な現状変更やその試みと台湾問題、そして北朝鮮問題について言及した。そして、こうした問題を引き起こす主体は核兵器を保有または開発し、ルールを無視しているという現実に直面する中、日本はそうした主体に最前線で対峙していると主張し、平和国家として歩みを強めていくための防衛力の抜本的強化と日米同盟の強化について強調した。

 さらに、ルールに基づく国際秩序を守るため、FOIPの実現を今後も追求する意思を示した。具体的には、ASEANの中心性と一体性を支持する真に互恵的なパートナーシップの構築、多様な地域の枠組みを通じた国際法に則ったルールの強化、日米豪印の協力の具体化、欧州諸国等の地域外の国々との協力の促進について言及した。そして、インド太平洋において危機が起きた場合でも、国際社会全体による対応により、ルールを無視する試みを阻止することができると確信していると述べたうえで、ルールに基づく国際秩序を守る諸国の連帯は強固であるということを見誤るべきではない、との強いメッセージを発した。

以上

2.シャングリラ会合 2022 防衛大臣スピーチ

2022年6月11日(土)第2セッション
多極化する地域における地政学的競争への対処
(Managing Geopolitical Competition in a Multipolar Region)

冒頭挨拶

 チップマン所長、御来賓の皆様。シャングリラ会合に参加することができ、大変光栄です。新型コロナによる困難の中、3年振りにこうしてシンガポールの地で開催されることを嬉しく思います。本会合開催のために、一貫して尽力されているIISSの皆様とシンガポール政府に、改めて敬意を表します。

 また、本セッションでは、欧州の国家でも特にインド太平洋地域へ積極的な関与を表明し続けてきたフランスのルコルニュ軍事大臣、そして、本年G20の議長国を務められるインドネシアのプラボウォ国防大臣と共にお話できることを、大変光栄に思います。

 本日は、ロシアのウクライナ侵略が示すインド太平洋地域への含意と、インド太平洋地域における地政学的競争に対処するための日本の取組について、お話したいと思います。

ロシアのウクライナ侵略に対する認識とその教訓

 ロシアのウクライナ侵略という暴挙は、力による一方的な現状変更に他ならず、明確にウクライナの主権と領土の一体性を侵害しています。これは、武力行使を禁ずる国際法及び国連憲章の深刻な違反であり、我が国は厳しく非難して参りました。また、ウクライナにおける多数の無辜の民間人殺害など重大な国際人道法違反についても、ロシアはその責任を負わなければなりません。

 ロシアのウクライナ侵略への対応は、ウクライナの命運を左右するに留まらず、国際社会がこれまで築き上げてきたルールに基づく国際秩序の命運を左右するものでもあります。国際社会が一致して、毅然と対抗していかなければ、ルールに基づく国際秩序は崩壊し、無秩序な世界が形成されてしまうでしょう。世界は今、ルールに基づく国際秩序を守ろうとする諸国と、ルールを無視し、力により国際秩序を変更していこうとする諸国の、競争の最中にあるのです。

 今般の侵略からは、次の教訓を導き出すことが出来ると考えています。第一に、核を保有または開発しているうえに、ルールを無視する諸国の危険性が、現実のものとして存在していることです。核兵器による威嚇を行い、強大な軍事力を行使して、一方的な現状変更を試みるという暴挙を実際に行う国家が、この地球上に存在しているという恐ろしい事実を、我々は強く再認識しています。

 第二に、そのような暴挙に対しても、侵略を受けた国の強固な抵抗と国際社会全体の協力により、侵略の勢いを減退させることが出来るということです。この教訓を、侵略をたくらむ国に十分に認識させることができれば、今後、世界の他の地域で起きるかもしれない侵略を抑止することもできるはずです。

 第三に、そうした国際社会の協力は、たとえ距離や地域が離れていても可能だということです。ルールを無視したロシアに対する強力な制裁、侵略に対し必死に抵抗するウクライナへの大規模な支援、そして、この侵略を正当化しようとするロシアの偽情報への対応といったさまざまな取り組みには、多くの国々や民間組織が参加しています。引き続き、国際社会の団結した対応が求められています。

インド太平洋への課題と日本の防衛政策

 いま申し上げた教訓は、インド太平洋地域における教訓でもあります。この地域は、まさに、今般の侵略と類似の問題を潜在的に抱え、急速に厳しさと不確実性を増しているからです。

 まず、ウクライナを侵略しているロシアは、極東・太平洋においても軍事活動を活発化させています。ロシアと中国の関係が更に深まる可能性があります。それぞれ強力な軍事力を保有する中露両国の共同軍事活動が、各国の懸念を深めていることは間違いありません。

 また、南シナ海および東シナ海では、力を背景とした、一方的な現状変更やその試みが継続されています。さらに、南シナ海と東シナ海の間に位置する台湾海峡の平和と安定は、日本の安全保障はもとより、国際社会の安定にとっても重要であります。しかし、この地域では、台湾に対する武力行使の可能性を放棄せずに、透明性を欠いたまま、広範かつ急速な軍事力を強化する試みも見られています。

 さらに、北朝鮮は、今年に入ってから、核戦力の強化に言及しつつ、かつてない高い頻度で、かつ新たな態様でのミサイル発射を繰り返しています。昨今の北朝鮮による核・ミサイル関連技術の発展は、我が国、地域、国際社会の平和と安全を脅かすもので、断じて容認できません。

 こうした問題を引き起こす主体は、核兵器を保有または開発しているうえに、ルールを無視した行動をとっているという現実があります。インド太平洋地域においても、ロシアのウクライナ侵略のようなことが起きる潜在的な危険性があることは、既に国際的な懸念として共有されていると言えるでしょう。

 我が国は、戦後、平和国家としての道をひたむきに歩んでまいりました。国際法の誠実な遵守に努め、法の支配の強化を重要視し、国家間の紛争も、一貫して国際法に基づく平和的解決を追求して参りました。

 それにもかかわらず、現在、日本は核を保有または開発し、ルールを無視する主体に囲まれているのみならず、それらは、年々、公然とルールを無視するようになっています。日本は、ルールを無視する行動に対抗し、ルールに基づく国際秩序を守るための、まさに最前線に位置しているのです。

 このような状況を受け、日本はまず、平和国家としての歩みを一層強めていくための自助努力として、戦略文書を改定し、防衛力の抜本的な強化を加速します。そして、そのために、インド太平洋地域の平和と繁栄の礎である日米同盟をさらなる高みへと押し上げ、その抑止力と対処力を一層強化して参ります。

 ルールを無視する行動に最前線で対峙している日本が防衛力を抜本的に強化することは、力による一方的な現状変更を断じて容認しないという強固な決意を示し、我が国に対してはもちろん、インド太平洋地域においてルールを無視しようとする意志を砕くことにも繋がるものと確信します。

 力による一方的な現状変更は、日本のみならず、どの国・地域に対しても許してはなりません。引き続き、日本は平和国家としての道を微塵も外れることなく、ルールを無視する行動を防ぎ、その意志を持たせないようにすべく、必要なあらゆる努力を続けて参ります。

FOIPとルールに基づく国際秩序

 我が国がこれまでも推進して参りました、「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)というビジョンは、まさにルールに基づく国際秩序を守るための協力を推進していくための取組です。我が国は法の支配や航行の自由、自由貿易等の普及・定着、経済的繁栄の追求、平和と安定の確保を通じたFOIPの実現へ、今後もまい進します。

 FOIPの実現のためには、インド洋と太平洋の2つの海の交わりに位置するASEAN諸国との協力が不可欠です。FOIPは、ASEANが地域の平和・自由・繁栄の維持に貢献するために採択した「インド太平洋に関するASEANアウトルック」(AOIP)と本質的な原則を共有しており、我が国はこれを全面的に支持しています。

 日本とASEANは、力を背景とした一方的な現状変更の試みに強く反対し、懸念を共有しています。我々は法の支配を重視し、地域の安全保障上の課題への対処にも協力して参りました。日本としては、ASEANが、引き続きその中心性と一体性をもとに、各国と真に互恵的なパートナーシップを構築していくことを期待し、そうした協力を続けて参ります。ルールを無視する国との協力は、互恵的にはなりえません。ルールを無視する国は、借款等を通じて弱みにつけこみ、自国の利益のために相手を利用しようとします。そのような国と協力を深めれば、結局、自らの国益を損なうということを、ここで指摘しておきたいと思います。

 インド太平洋地域には、地域全体を包含する枠組みは存在しません。だからこそ、ASEANを中心とした日・ASEAN、ASEAN+3、東アジア首脳会議などの多様な枠組みを通じて、国際法に則ったルールを強化していくことが、FOIPの実現には必要です。加えて、地域を強靭にするために建設的な役割を果たすADMMプラスなどの安全保障枠組みの役割も、一層重要となっています。また、この地域における取組として日米豪印は、四カ国による協力の枠組みを、FOIPを実現するために、より具体的なものとして参ります。

 加えて、日本は、欧州諸国をはじめとした普遍的価値を共有する地域外の国々との協力も推進してまいります。こうしたFOIP実現の取組は、ルールに基づく国際秩序の維持・強化にも大きく貢献するものです。

 ルールに基づく国際秩序を守る諸国は、距離や地域が離れていても可能な多岐にわたる重層的な協力を実施することにより、ルールを無視する試みを阻止することが可能である。こうしたことを国際社会は、今まさにロシアのウクライナ侵略への対応で示していかなければなりません。インド太平洋地域において危機が起きた場合も、国際社会全体によって対応し、ルールを無視する試みを阻止することが出来ると、私は強く確信しています。

 そのためにも、ルールに基づく国際秩序を守る諸国は、それぞれの防衛力を強化するとともに、各国が強固に連帯していくことを戦略的に発信していくべきです。そうすることで、ルールを無視する主体に対し、ルールに基づく国際秩序を力によって変えることは不可能であると、強く認識させていかなければなりません。ルールに基づく国際秩序を守る諸国の連帯は強固であるということを、見誤るべきではない。このことを、強調しておきたいと思います。

結語

 我々は、ルールに基づく国際秩序を守るための、歴史的な岐路に立っています。ルールを無視する行動に対処するための最前線に立つ我が国は、引き続き防衛力を抜本的に強化して参ります。さらに、FOIP実現のため、志を共にする諸国がインド太平洋地域と国際社会に一国でも増えていくよう不断の努力を続けてまいります。そうした努力こそが、ルールに基づく国際秩序の維持・強化に繋がっていくのです。ご清聴、有難うございました。

以上

3.各国国防大臣等との会談

6月11日、岸防衛大臣はオースティン米国防長官及びイ・ジョンソプ韓国国防部長官と日米韓防衛相会談を実施しました。北朝鮮情勢等について忌憚のない意見交換を行い、日米韓3か国の緊密な連携の重要性を確認するとともに、3か国による共同訓練の実施で一致しました。

日米韓防衛相会談共同声明(2022.6.11)(仮訳)

6月11日、岸防衛大臣はロイド・オースティン米国防長官及びリチャード・マールズ豪副首相兼国防大臣と第10回日米豪防衛相会談を行いました。
3大臣は、自由で開かれたインド太平洋の維持・強化のため、3カ国の防衛協力を更に進展させるとともに、インドや欧州諸国、ASEAN諸国、太平洋島嶼国といった地域のパートナーとの協力についても引き続き強化していくことを確認しました。

日米豪防衛相会談共同声明(2022.6.11)(仮訳)

6月11日、岸防衛大臣は第19回IISSアジア安全保障会議の機会に、アナンド・カナダ国防大臣と会談を行いました。両大臣は自由で開かれたインド太平洋の維持・強化に向けて二国間や多国間の防衛協力を引き続き強力に進めていくことで一致しました。

日加防衛相会談について

6月11日、岸防衛大臣はウン・シンガポール国防大臣と防衛相会談を行いました。両大臣は、地域情勢や二国間の防衛協力・交流等に関する意見交換を実施し、両国の防衛協力・交流を引き続き強化していくことを確認しました。
また、両大臣は、同日午前「日本国防衛省とシンガポール共和国国防省との間の防衛交流に関する覚書」の改定版への署名を行うとともに、防衛装備品及び技術の移転に関する協定について交渉開始を合意したことを発表しました。

日シンガポール防衛相会談について

6月11日、槌道防衛審議官は、第19回シャングリラ会合において、ブラシュコヴェツ・チェコ国防副大臣と会談を行いました。会談では、ウクライナやインド太平洋における地域情勢、日チェコ間の防衛協力等について意見交換を行いました。

槌道防衛審議官とブラシュコヴェツ・チェコ国防副大臣との会談について

6月12日、岸防衛大臣はセルイラトゥ・フィジー共和国防衛・国家安全保障・警察大臣と対面では初の日フィジー防衛相会談を行いました。両大臣は、二国間の防衛協力や地域情勢等に関する意見交換を実施し、両国の防衛協力・交流を一層推進していることを確認しました。

日フィジー防衛相会談について

6月12日、岸防衛大臣は、シャングリラ会合において、リチャード・マールズ豪副首相兼国防大臣と初めての日豪防衛相会談を行い、インド太平洋地域の平和と安定のため、日本とオーストラリアの防衛協力・交流を引き続き活発に進めていくことを確認しました。

日豪防衛相会談について

6月12日、岸防衛大臣は、シャングリラ会合においてヘナレ・ニュージーランド国防大臣と会談を行い、自由で開かれたインド太平洋 の維持・強化に向けて、太平洋島嶼国地域における防衛協力を一層進めていくことなどで一致しました。

日ニュージーランド防衛相会談について

6月12日、シャングリラ会合に参加中の岸防衛大臣は、魏鳳和中国国防部長と会談し、尖閣諸島周辺を含む東シナ海や南シナ海で、力を背景とした一方的な現状変更の試みが続いていることに強い懸念を表明するとともに、台湾海峡の平和と安定が国際社会にとっても極めて重要との考えを伝えました。

日中防衛相会談について

6月12日、槌道防衛審議官 は、第19回シャングリラ会合において、アブケヴィチュス・リトアニア国防副大臣と会談を行いました。会談では、ウクライナやインド太平洋における地域情勢、日リトアニア間の防衛協力等について意見交換を行いました。

槌道防衛審議官とアブケヴィチュス・リトアニア国防副大臣との会談について

4.記者会見