放 射 線 科
1 放射線治療の特徴
悪性腫瘍(がん)は正常な細胞よりも放射線に弱いことを利用したがん治療です。完全にがんを治す目
的の根治的治療から、苦痛を取り除く目的の緩和的治療まで幅広く使用されます。がん患者さんは経過中
に半数の方で放射線治療が必要になるとされており、さまざまな診療科と連携して多くのがん患者さんの
治療に当たっています。近年の放射線治療の進歩は目覚ましく、より根治性が向上し副作用が少なくなっ
てきています。放射線治療は患者さんへの負担が比較的少なく、いわゆる「切らずに治す」ことが見込め
る治療法です。高齢の方や他の病気をお持ちの方であっても、多くの場合で無理なく治療を受けていただ
くことができます。
2 放射線治療の流れ
➀ 主科の先生から御依頼をいただき、放射線科の外来を受診していただきます。外来日は火曜日です。
➁ 放射線科の診察を受けていただき、放射線治療の適応がある
かどうかを判断いたします。適応がある場合、医師から治療の説明を行い、看護師がオリエンテーショ
ンをいたします。
➂ 放射線治療計画を立案するために、治療する体勢でCTを撮影いたします。場合によっては身体固定具
の作成やMRIなどの画像を撮影することもあります。
➃ 医師と放射線技師が治療計画の立案と検証作業を実施したのちに治療開
始します。CT撮影から治療開始までは、計画の複雑さによりますが2~7日程度を要します。
➄ 放射線治療は基本的に1日1回、15分間程度です。じっと横になっているだけで治療は終わります。治
療中は医師の診察を週1回受けていただきます。
➅ 放射線治療終了後は、通院可能であれば定期的に経過を診させていただきます。
3 放射線治療装置
治療装置をTruebeam(Varian社)に更新し2025年6月に運用を開始
体表面位置照合システムIDENTIFYにより体表面領域の位置精度向上、呼吸性移動対策、皮膚マーキングの量と範囲を減らすことによる整容上の配慮が可能です。
4 当院の放射線治療の代表的疾患の成績
当科は2009年に現在の新病院が開院して以来、積極的に高精度な放射線治療に取り組んできました。新
病院開院から10年間の放射線治療件数は1373件でした。そのうち高精度放射線治療と言われるものの内訳
は、頭部の定位放射線治療が63件、体幹部放射線治療が215件(肺癌: 183件、肝癌: 32件)、強度変調放射線
治療155件(前立腺癌: 116件、その他の疾患: 39件)でした。じつに全体の3割以上を高精度放射線治療が占め
ています。2025年の装置更新により、放射線治療の高精度化をさらに推進しています。
● 強度変調放射線治療
放射線の当てる「強さ」を時間的空間的に変化させることで、標的であるがんに放射線を集中させ、周
囲の正常な臓器にはなるべく放射線を当てない技術を強度変調放射線治療(IMRT: Intensity Modulated
Radiation Therapy)と言います。この治療法は治療時間がかなり長くなりがちなのが欠点でしたが、通常の
治療とほとんど変わらず短時間で治療できる回転型の強度変調放射線治療(VMAT: Volmetric ModulatedArc
Therapy)を当院ではかなり早い段階から導入しました。当科がこの技術で最も多く治療してきた病気は前
立腺癌です。前立腺癌は放射線の投与量を上げることで成績が改善しますが、この技術によって正常臓器
の副作用を抑えつつ、無理なく前立腺癌に放射線を多く当てることが可能になります。2019年から前立腺
癌の患者さんの希望に応じてハイドロゲルスペーサーと金マーカーを留置したうえで強度変調放射線治療
を実施しており、代表的な副作用である直腸出血がほとんどなくなりました。
● 定位放射線治療
限局した病変に放射線を多方向から集中させることで局所的に極めて強い放射線を当てることにより、
あたかも病変を「焼き切る」ような治療法です。1回あたりに多くの放射線を投与するため治療回数は1~5
回と少ない回数で済み、少ない負担で治療を終えることができます。転移性脳腫瘍、肺癌、肝癌、前立腺
癌、腎癌、膵癌、転移性脊椎腫瘍、5個以下の少数個転移等に保険適用で本治療を実施できます(進行度
等により適用にならない場合があります)。
5 PET治療計画
PET/CT装置は悪性腫瘍(がん)の診断に有用な画像検査であり、2025年1月に新しいPET/CT装置である
Biograph Vision (Siemens社)の運用を開始しました。当院は核医学部門と放射線治療部門が密接であり、
核医学検査であるPET/CTの撮影室に放射線治療に必要な装置(治療用の平坦な寝台、位置照合用のレーザ
ーなど)が取り付けてあります。これによって、PET/CT画像から放射線治療計画を立案することができま
す。リンパ腫という病気ではPET/CTを治療計画に用いることがほぼ必須化しており、その他の病気でも
PET/CT計画が威力を発揮します。

肺癌の放射線治療後に再発した症例ですが、CTのみでは治療後の変化と腫瘍の区別がつきにくい状態です。

治療計画にPET/CTを用いることで、腫瘍の局在が明確になります。

PET/CTで集積を認めた部位に対して治療計画を立案しました。
