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第III部 わが国防衛の三つの柱(防衛の目標を達成するための手段)

2 各国との防衛協力・交流の推進

安全保障分野での協力・交流を推進するに際しては、地域の特性、相手国の実情やわが国との関係なども踏まえつつ、最適な手段を組み合わせた二国間での防衛協力・交流が重要となる。

1 オーストラリア
(1)オーストラリアとの防衛協力・交流の意義など

オーストラリアは、ともに米国の同盟国として、普遍的価値2のみならず安全保障上の戦略的利益を共有するわが国にとって、インド太平洋地域の特別な戦略的パートナーである。

日豪防衛協力の深化を背景に、日豪両国は、2007年3月、わが国にとって米国以外で初の安全保障に特化した共同宣言である「安全保障協力に関する日豪共同宣言」を発表したほか、これまでに日豪ACSA3

や日豪情報保護協定、日豪防衛装備品・技術移転協定といった協力のための基盤を整備してきている。

2022年1月には、両国首脳が、日本国の自衛隊とオーストラリア国防軍との間における相互のアクセス及び協力の円滑化に関する日本国とオーストラリアとの間の協定(日豪円滑化協定4)に署名し、二国間の安全保障・防衛協力を一層強化していくことを確認した。

豪国防大臣と2+2テレビ会談を行う岸防衛大臣

豪国防大臣と2+2テレビ会談を行う岸防衛大臣

豪陸軍本部長と会談を行う吉田陸幕長

豪陸軍本部長と会談を行う吉田陸幕長

(2)最近の主要な防衛協力・交流実績など

2021年5月、岸防衛大臣は、ダットン豪国防大臣と電話会談を実施し、今後も日豪の特別な戦略的パートナーシップを深化させ、防衛当局間のコミュニケーションを継続するとともに、FOIPの維持・強化に向け、防衛協力・交流を引き続き活発に進めていくことで一致した。また、東シナ海や南シナ海における力を背景とした一方的な現状変更の試みや、緊張を高めるいかなる行為にも強く反対するとともに、中国の海警法に対し懸念を表明した。さらに、北朝鮮情勢についても意見交換を行い、北朝鮮による、全ての大量破壊兵器及びあらゆる射程の弾道ミサイルの完全な、検証可能な、かつ、不可逆的な廃棄(CVID)の実現に向けて引き続き連携していく意思を再確認した。

両大臣は、2022年2月にも電話会談を実施し、岸防衛大臣から、わが国のトンガにおける国際緊急援助活動の実施にあたり、自衛隊の輸送機の受け入れなど、多岐にわたる支援をオーストラリアから得たことに感謝の意を伝えた。また、岸防衛大臣は、日・太平洋島嶼国国防大臣会合(JPIDD:Japan Pacific Islands Defense Dialogue)へのオーストラリア代表者の参加や、南太平洋国防大臣会合(SPDMM:South Pacific Defense Ministers Meeting)5への日本のオブザーバー参加に向けてのオーストラリアからの支援に感謝し、両大臣は、太平洋島嶼国を含む地域のパートナーとの協力を共に一層強化し、「自由で開かれたインド太平洋」の維持・強化に益々取り組んでいくことで一致した。

2021年6月、岸防衛大臣は、茂木外務大臣とともに、ダットン国防大臣及びペイン外務大臣と第9回日豪外務・防衛閣僚協議(「2+2」)6をテレビ会議により実施し、地域情勢につき高い水準で戦略認識を共有し、二国間の安全保障・防衛協力を一層引き上げるとの強い決意を表明した。また、東シナ海や南シナ海をめぐる議論の中で、四大臣が一致して、中国の海警法について懸念を表明するとともに、南シナ海での国連海洋法条約と合致しない中国の海洋権益に関する主張に反対すると表明した。台湾海峡の平和と安定の重要性を確認し、両岸問題の平和的解決を促すことでも一致した。さらに安全保障・防衛分野での協力については、共同訓練の複雑化・高度化を含め、運用面での協力を深化させる旨一致した。そのうえで、自衛隊法第95条の2に基づく豪軍の武器等の警護任務の実施については、適切な機会において、警護を実施する準備が整ったことを確認した。なお、同年11月には豪軍に対する初めての警護を実施した。

2022年1月、岸田内閣総理大臣はモリソン首相との日豪首脳テレビ会談を実施し、特別な戦略的パートナーである日豪関係のさらなる強化、FOIPの実現に向けた両国のコミットメントを一層具体化させていくことで一致した。また、両首脳は、2007年に「安全保障協力に関する日豪共同宣言」が署名されて以降の二国間安全保障の目覚ましい発展及び地域の戦略的環境の変化を踏まえ、両国の安全保障協力を深化させ、裾野を広げていく今後の長期的な取組の羅針盤となる新たな安全保障協力に関する共同宣言を今後可能な限り早期に発出するとの方針で一致した。

なお、両首脳はテレビ会談に先立ち行われた日豪円滑化協定署名式において、この協定に署名し、両国の安全保障・防衛協力を新たな段階に引き上げる協定の署名を歓迎しつつ、日豪関係のさらなる発展への期待を表明した。

また、2022年1月から同年2月にかけて実施したトンガにおける国際緊急援助活動に際しては、豪軍統合作戦司令部に設置された国際調整所にわが国からも要員を派遣し、各種調整を実施したほか、輸送艦「おおすみ」が豪海軍補給艦から燃料補給を受けるなど、両国の関係が一層強化された。

(3)各軍種の取組

ア 統合幕僚監部

2022年1月及び同年2月、統幕長はキャンベル国防軍司令官との電話会談を行い、同年1月に火山噴火の被害にあったトンガの被災者支援について、日豪が緊密に連携し、国際社会と共に活動していくとともに、双方が今後も緊密に連携してインド太平洋地域の平和と安定に寄与していくことを確認した。

イ 陸上自衛隊

陸幕長は2021年11月、日本に公式招待したバー陸軍本部長と会談を実施し、二国間及び多国間での防衛交流、共同訓練、能力構築支援などをこれまで以上に多層的に積み重ね、抑止力・対処力を強化し、インド太平洋地域の平和と安定に寄与していくことで一致した。さらに両者は、陸自として初となる豪陸軍への連絡官派遣にかかる覚書の署名を行った。

ウ 海上自衛隊

2021年6月に護衛艦「むらさめ」が関東南方海域において、同年9月には令和3年度インド太平洋方面派遣(IPD21:Indo-Pacific Deployment21)部隊がオーストラリア北方において、また、同年11月に護衛艦「いなづま」が四国南方海域において、さらに、2022年3月には護衛艦「ゆうだち」がベンガル湾において、それぞれ日豪共同訓練を実施し、戦術技量の向上及び連携の強化を図った。

日豪共同訓練の様子

日豪共同訓練の様子

エ 航空自衛隊

日豪間の相互運用性の強化を図るため、空幕長は2021年6月、ハプフェルド空軍本部長と「航空自衛隊によって代表される日本国防衛省及び豪州空軍によって代表される豪州国防省との間における空中給油に関する覚書」に署名した。

参照資料37(最近の日豪防衛協力・交流の主要な実績(過去3年間))
1章5節2(米軍等の部隊の武器等防護(自衛隊法第95条の2)の警護の実績)

(4)日米豪の協力関係など

わが国とオーストラリアは、普遍的価値を共有しており、インド太平洋地域及び国際社会が直面する様々な課題の解決のため、緊密に協力している。このような協力をより効果的・効率的なものとし、地域の平和と安定に貢献していくためには、日豪それぞれの同盟国である米国を含めた日米豪3か国による協力を積極的に推進することが重要である。

2007年4月以降、計10回にわたって、3か国局長級会合である日米豪安全保障・防衛協力会合(SDCF:Security and Defense Cooperation Forum)が行われている。

また、2020年7月、河野防衛大臣(当時)は、エスパー米国防長官(当時)、レイノルズ国防大臣(当時)との間で、日米豪3か国防衛相テレビ会談を実施し、共通の価値観や長きにわたる同盟及び緊密なパートナーシップを維持しながら、インド太平洋地域の安全、安定及び繁栄を強化するという共同のコミットメントを再確認した。

また、日米豪3か国による共同訓練及び日米豪3か国にそのほかの国も加えた多国間共同訓練も継続して行われてきており、陸自は、2021年6月にオーストラリアのマウント・バンディ演習場において、米海兵隊及び豪陸軍との実動訓練(サザン・ジャッカルー21)を実施し、戦術技量の向上及び米豪軍との連携強化を図ったほか、同年7月、陸幕長は、日米豪シニア・リーダーズ・セミナーを主催し、米太平洋陸軍、米太平洋海兵隊及び豪陸軍トップとの間で意見を交換し、FOIPの維持・強化のため、引き続き連携していくことで認識を共有した。また、同年6月から8月にかけて、陸自及び海自は、オーストラリアにおける米豪主催多国間共同訓練「タリスマン・セイバー」に参加し、戦術技量の向上及び米豪を含む参加各国との連携強化を図った。同年10月には、海自インド太平洋方面派遣部隊が、ベンガル湾において日米豪英共同訓練を、また、沖縄東方で日米豪共同訓練を実施し、戦術技量の向上及び米豪海軍などとの連携強化を図った。また、海幕長は、2022年2月、米太平洋艦隊司令官及び豪海軍本部長との間でインド太平洋地域の課題について意見を交換し、連携の強化などについて確認した。同月、空自は、グアムを拠点とする多国間共同訓練「コープ・ノース22」において、日米豪共同訓練及び人道支援・災害救援共同訓練を実施したほか、海自からもUS-2救難機1機が日米豪共同訓練に参加し、実戦的な訓練環境のもと、相互運用性の向上を図った。

このように、日米豪3か国間での様々な機会を通じて、情勢認識や政策の方向性をすり合わせつつ、相互運用性を高める努力を続けている。

参照資料52(多国間共同訓練の参加など(過去3年間))

2 インド
(1)インドとの防衛協力・交流の意義

インドは、世界第2位の人口と、高い経済成長や潜在的経済力を背景に影響力を増しており、わが国と中東、アフリカを結ぶシーレーン上のほぼ中央に位置するなど、極めて重要な国である。また、インドとわが国は、普遍的価値を共有するとともに、アジア及び世界の平和と安定、繁栄に共通の利益を有しており、特別な戦略的グローバル・パートナーシップを構築している。このため、日印両国は「2+2」などの枠組みも活用しつつ、海洋安全保障をはじめとする幅広い分野において協力を推進している。

日印間の防衛協力・交流は、2008年10月に「日印間の安全保障協力に関する共同宣言」が署名されて以来着実に深化し、防衛大臣などの各レベルでの協議や、二国間及び多国間の訓練を含む軍種間交流などが定期的に行われている。2014年9月には日印防衛協力・交流の覚書が、2015年12月には日印防衛協力・交流の制度上の基礎をさらに整備する日印防衛装備品・技術移転協定及び日印秘密軍事情報保護協定がそれぞれ署名され、地域やグローバルな課題に対応できるパートナーとしての関係とその基盤が強化されている。

「日米豪印首脳会談(2022年5月)」【官邸HP】

「日米豪印首脳会談(2022年5月)」【官邸HP】

(2)最近の主要な防衛協力・交流実績など

2018年10月に交渉が開始された日印物品役務相互提供協定(ACSA)は、2020年9月に署名が行われ、2021年5月の国会承認を経て同年7月に発効した。2019年11月には、日印間で初となる第1回外務・防衛閣僚会合「2+2」が開催され、新たな安全保障上の課題の認識を共有し、二国間の安全保障協力を進めることに対するコミットメントを改めて表明した。また、防衛当局間の日印共同訓練を定期的に実施し、さらに拡充するために継続的な努力を行うことで一致するとともに、海自とインド海軍間の協力の深化にかかる実施取決めに基づき、情報交換が強化されたことを評価した。防衛装備・技術協力に関しては、事務レベル協議での生産的な議論に期待を表明するとともに、多国間協力や地域情勢についても意見交換を行った。

2020年12月、岸防衛大臣は、シン国防大臣と電話会談を行い、両大臣は、日印ACSAの署名や日米印豪で実施された海軍種間共同訓練「マラバール」の成功による成果を確認し、二国間及び日印両国を含む多国間の防衛協力・交流が新型コロナウイルス感染症の拡大下においても推進されていることを歓迎した。また、東シナ海・南シナ海を含む地域情勢について意見交換を実施し、力を背景とした一方的な現状変更の試みに強く反対するメッセージを明確に発信していくことで一致した。

防衛装備・技術協力においては、2018年7月から「UGV7ロボティクスのための画像による位置推定技術に係る共同研究」を継続している。

日米豪印4か国の連携も強化されており、2021年3月に開催された初の日米豪印首脳テレビ会議に続き、同年9月には、米国において4か国による首脳会合が実施され、今後毎年、日米豪印首脳会合を開催することで一致した。2022年5月に日本で実施された日米豪印首脳会合では、宇宙、サイバー分野のほか、海洋状況把握(MDA:Maritime Domain Awareness)や人道支援・災害救援(HA/DR)の分野でも協力を強化していくことを確認した。防衛当局間でも、日米豪印4か国の協力を引き続き進めていく方針である。

(3)各軍種の取組

ア 統合幕僚監部

2020年11月、統幕長はラワット国防参謀長と電話会談を行い、「日印特別戦略的グローバル・パートナーシップ」を一層促進すべく、二国間協力を強化するとともに、FOIPのもと、日米豪印の防衛協力を推進することの重要性について確認した。

イ 陸上自衛隊

2021年6月及び2022年3月、陸幕長がナラヴァネ陸軍参謀長と電話会談を行うとともに、2022年3月にテレビ会談を行い、日印両国の関係強化はインド太平洋地域の平和と安定のため重要であり、多層的な日印陸軍種間防衛協力を推進していくことで一致した。2022年2月から同年3月、インドにおいて印陸軍との共同訓練(ダルマ・ガーディアン21)を実施し、陸自の対テロにかかる戦術技量を向上させるとともに、日印陸軍種間のさらなる連携を強化した。

ウ 海上自衛隊

2021年7月には、第1回日印フォーラムに海幕長がシン海軍参謀長とともにパネリストとして参加し、日印海軍種間協力の重要性について議論した。また、同年9月に米国で開催された国際シーパワーシンポジウム(ISS:International Seapower Symposium)においても懇談を実施し、日印共同能力の向上を評価しつつ、一層協力していくことで合意した。さらに、2022年2月、海幕長がインド海軍主催多国間共同訓練(MILAN2022)に参加した際、2021年12月に交代したクマール海軍参謀長と会談し、日印共同訓練の内容を高度化することで合意した。

2021年6月、海自遠洋練習航海部隊がインド洋において、海自補給艦が東シナ海において、それぞれインド艦艇と日印共同訓練を実施し、戦術技量の向上およびインド海軍との連携強化を図った。同年10月には海自インド太平洋方面派遣部隊がインド西方海域において、また、2022年1月には海自インド太平洋・中東方面派遣部隊がベンガル湾において、それぞれインド海軍と日印共同訓練を実施したほか、 同年2月から同年3月にかけて、ヴィシャーカパトナム周辺において実施されたインド海軍主催多国間共同訓練(MILAN2022)に参加するなど、FOIPの維持・強化に向けた日印の強固な連携・結束を示した。さらに、2020年に引き続き、日米豪印の4か国による日米印豪共同訓練「マラバール2021」をグアム島及び同島周辺海域、西太平洋(フィリピン海)及びベンガル湾において、同年8月から同年9月にかけて、及び同年10月に実施し、FOIPの実現に向けて4か国の一致した意思を具現化するとともに、民主主義や法の支配といった基本的価値を共有する4か国の連携・結束を内外に示した。

日米印豪共同訓練「マラバール2021」に参加する隊員の様子

日米印豪共同訓練「マラバール2021」に参加する隊員の様子

エ 航空自衛隊

2021年6月、空幕長はバーダウリア空軍参謀長と日印空軍種間の防衛協力・交流の推進のためにテレビ会談を実施した。また、同年10月にはチョウダリ空軍参謀長とテレビ会談を実施し、両国間の防衛協力・交流の重要性を確認し、引き続き推進していくことで一致した。

また、2022年2月及び同年3月には、インドで実施する日印陸軍種共同訓練(ダルマ・ガーディアン21)への陸自の参加を支援するため、C-2輸送機による隊員や装備品の航空輸送を実施した。

印空軍参謀長とテレビ会議を行う井筒空幕長

印空軍参謀長とテレビ会議を行う井筒空幕長

参照資料38(最近の日印防衛協力・交流の主要な実績(過去3年間))

3 東南アジア(ASEAN)諸国
(1)ASEAN諸国との防衛協力・交流の意義

ASEAN(Association of Southeast Asian Nations)諸国は、約6.7億人の人口を擁し、高い経済成長を続けるなど、成長センターとしての高い潜在性を有している。また、ASEAN諸国は、わが国のシーレーンの要衝を占めるなど戦略的に重要な地域に位置し、わが国及び地域全体の平和と繁栄の確保に重要な役割を果たしている。

こうしたASEAN諸国の重要性を踏まえれば、防衛省・自衛隊が、地域協力の要となるASEANの中心性・一体性・強靭性の強化の動きを支援しつつ、ASEAN諸国それぞれとの間で防衛協力・交流を強化することは、FOIPの推進に資するのみならず、わが国にとって望ましい安全保障環境を創出することにつながり、大きな意義を有する。

わが国は、このような考えに基づき、ASEAN諸国との間では、ハイレベル・実務レベル交流を通じた信頼醸成及び相互理解の促進を行うとともに、能力構築支援、共同訓練、防衛装備・技術協力などの協力を推進している。また、二国間協力に加え、拡大ASEAN国防相会議(ADMM(ASEAN Defence Ministers' Meeting)プラス)やASEAN地域フォーラム(ARF:ASEAN Regional Forum)といった多国間の枠組みでの協力も実施している。わが国が2016年に日ASEAN防衛協力の指針として表明した「ビエンチャン・ビジョン」は、ASEAN全体への防衛協力の方向性について、透明性をもって重点分野の全体像を初めて示したものであった。また、2019年11月、タイで開催された第5回日ASEAN防衛担当大臣会合において、河野防衛大臣(当時)は「ビエンチャン・ビジョン」のアップデート版である「ビエンチャン・ビジョン2.0」を発表し、ASEAN各国の大臣から歓迎の意が示された。防衛省としては、こうした二国間・多国間の協力を今後も積極的に推進する考えである。

参照本節3項(多国間における安全保障協力の推進)
本節4項(能力構築支援への積極的かつ戦略的な取組)
資料39(最近のASEAN諸国との防衛協力・交流の主要な実績(過去3年間))
資料51(ビエンチャン・ビジョン2.0)

(2)インドネシア

ア インドネシアとの防衛協力・交流の意義

インドネシアは世界第4位の人口(約2.7億人)を擁する東南アジア地域の大国であり、G20メンバー国である。2015年3月の日インドネシア首脳会談において、安倍内閣総理大臣(当時)とジョコ大統領は、海洋と民主主義に支えられた戦略的パートナーシップの強化で一致し、日インドネシア「2+2」を開催することについて再確認しており、様々なレベルと分野で防衛協力・交流が活発に行われている。

日インドネシア親善訓練の様子

日インドネシア親善訓練の様子

イ 最近の主要な防衛協力・交流実績

2021年3月、岸防衛大臣は、東京でプラボウォ国防大臣と対面による防衛相会談を行った。両大臣は、国連海洋法条約をはじめとする国際法を遵守する必要性を再確認するとともに、共同訓練を含む防衛協力・交流のさらなる推進について一致した。

同月、第2回日インドネシア「2+2」が東京で開催され、日インドネシア防衛装備品・技術移転協定が署名され、即日発効するとともに、地域情勢や二国間協力などについて議論を行った。両国は、東シナ海及び南シナ海などの情勢について意見交換を行ったうえで、力による一方的な現状変更の試みの継続・強化について深刻な懸念を共有した。

ウ 各軍種の取組

(ア)陸上自衛隊

2021年8月、陸幕長がプルカサ陸軍参謀長と電話会談を行い、法の支配に基づく国際秩序の重要性について認識を共有するとともに、陸軍種間で連携を強化していくことで一致した。

(イ)海上自衛隊

2021年6月には、海自遠洋練習航海部隊がインドネシア海軍と親善訓練を実施し、相互理解の増進及び信頼関係の強化を図った。また、同年8月には、海幕長が、インドネシア海軍主催の国際海洋安全保障シンポジウム(IMSS:International Maritime Security Symposium)にオンラインで参加し、海洋安全保障に関する意見交換を実施した。さらに、同年9月には米海軍が主催する国際シーパワーシンポジウム(ISS:International Seapower Symposium)において海幕長がポルウォノ海軍副参謀長と懇談を実施し、南シナ海における親善訓練を含め、防衛協力・交流を推進していくことで合意した。

IMSSに参加する山村海幕長

IMSSに参加する山村海幕長

(3)ベトナム

ア ベトナムとの防衛協力・交流の意義

約9,700万の人口を擁する南シナ海の沿岸国であるベトナムとの間では、防衛当局間の協力・交流が進展しており、2021年9月の防衛相会談を契機に、日越二国間だけではなく、地域や国際社会の平和と安定により積極的に貢献するための「新たな段階に入った日越防衛協力」のもと、ハイレベルや多国間を含む各種協力を推進している。

イ 最近の主要な防衛協力・交流実績

2021年6月、岸防衛大臣は、ザン国防相と日ベトナム防衛相テレビ会談を行い、両国の防衛協力関係を「新たな段階」へと引き上げるため、両国の連携をさらに緊密にしていくことで一致した。また、同年9月には、岸防衛大臣が訪越して、ザン国防相と日ベトナム防衛相会談を実施した。両大臣は、両国の防衛協力は、二国間だけではなく、地域や国際社会の平和と安定により積極的に貢献するための協力であると再定義し、「新たな段階」に入った協力関係のもと、日本とベトナムが様々なレベルで協働していくことで一致した。さらに、両大臣は、「日越防衛装備品・技術移転協定」が署名に至ったことを歓迎した。同年11月には、防衛省において、同年中3度目となる日ベトナム防衛相会談が行われ、ザン国防相から、国連アビエ暫定治安維持部隊(UNISFA:United Nations Interim Security Force for Abyei)への参加準備のための知見共有に関する要請があり、岸防衛大臣から、陸上自衛官を中心とした要員のベトナムへの派遣を含む所要の協力を行う旨を表明した。加えて、両大臣は、同日、日ベトナム防衛当局間の「サイバーセキュリティ分野での協力に関する覚書」及び「衛生分野での協力に関する覚書」が署名に至ったことを歓迎した。

ウ 各軍種の取組

(ア)統合幕僚監部

2021年11月、統幕長は、クオン人民軍総参謀長兼国防副大臣とテレビ会談を行い、「新たな段階」に引き上げられた日越防衛協力をさらに前進させるとともに、FOIPの実現に向け、両国の協力関係を深化させていく意義を確認した。

(イ)陸上自衛隊

2021年7月、陸幕長は、ギア人民軍副総参謀長とテレビ会談を行い、インド太平洋地域の安全保障情勢について意見交換するとともに、日越陸軍種間で連携を強化することで一致した。また、同年11月の日越防衛相会談の成果を踏まえ、同月、ベトナムによるUNISFA参加準備に協力するため、陸自がこれまでのPKO参加で培った知見をオンラインで共有したほか、同年12月から3週間、陸上自衛官をベトナムに派遣し、UNISFA参加部隊の各種物品の梱包に関する助言及び実技支援を実施した。

(ウ)海上自衛隊

2021年10月、海自インド太平洋方面派遣部隊の護衛艦「しらぬい」がハイフォン港に寄港し、ベトナム海軍とおよそ2年ぶりとなる親善訓練を実施した。このほか、海自は、同年11月及び2022年2月にもベトナム海軍と親善訓練を実施した。さらに同年3月には、外洋練習航海の一環で護衛艦「すずつき」がカムラン湾に寄港した。また、能力構築支援として同年1月、ベトナム海軍に対し、水中不発弾処分及び潜水医学の分野での能力向上を図ることを目的にオンラインセミナーを実施した。

(エ)航空自衛隊

2021年9月、空自C-2輸送機が国外運航訓練の一環でベトナムに寄航し、航空路及び地域特性の把握、国外任務遂行能力の向上を図った。

また、能力構築支援として、2022年2月、ハノイ市内及び近郊において、ベトナム防空・空軍を対象に、航空機による捜索救難分野の知見共有や実技支援のほか、現場の救難要員との意見交換などを実施した。

訪日したベトナム国防大臣と会談を行う岸防衛大臣(2021年11月)

訪日したベトナム国防大臣と会談を行う岸防衛大臣(2021年11月)

(4)シンガポール

ア シンガポールとの防衛協力・交流の意義

シンガポールは2009年12月、東南アジア諸国の中で、わが国との間で最初に防衛交流に関する覚書に署名した国である。以後、同覚書に基づき、各種の協力関係が着実に進展している。

イ 最近の主要な防衛協力・交流実績

シンガポールとの間では、定期的に防衛当局間協議を行っているほか、英国国際戦略研究所(IISS:The International Institute for Strategic Studies)が主催するシャングリラ会合には、ほぼ毎年防衛大臣が参加し、わが国の安全保障政策について説明するなど、ハイレベル交流も活発に行われている。

ウ 各軍種の取組

2021年4月、海幕長がベン海軍司令官とテレビ会談を実施し、艦艇・航空機の寄港・寄航を継続するとともに、海軍種間の関係強化を図ることで一致した。また、同年10月、海自インド太平洋方面派遣部隊の護衛艦「かが」、「むらさめ」及び「しらぬい」が、シンガポールとの連携強化を目的として同国に寄港した。さらに、2022年3月、護衛艦「ゆうだち」がベンガル湾において、シンガポール海軍と親善訓練を実施した。

そのほか、国連PKOや海賊対処活動などの国際協力業務遂行に際した寄港や軍種間交流も積極的に行われている。

(5)フィリピン

ア フィリピンとの防衛協力・交流の意義

南シナ海の沿岸国であり、米国の同盟国でもあるフィリピンとの間では、ハイレベル交流のほか、艦艇の訪問や防衛当局間協議をはじめとする実務者交流、軍種間交流が頻繁に行われている。

イ 最近の主要な防衛協力・交流実績

2021年6月、岸防衛大臣はロレンザーナ国防大臣とテレビ会談を行い、航行及び上空飛行の自由の重要性を確認した上で、国連海洋法条約をはじめとする国際法を遵守し、FOIPを維持・強化していくことが重要であるという考えを再確認した。また、力を背景とした一方的な現状変更の試みや緊張を高めるいかなる行為にも強く反対していくとのメッセージを、共に国際社会に向けて発信していくことを確認し、この文脈で中国の海警法に関して深刻な懸念を表明した。また、前年8月に決定した警戒管制レーダーの移転に関しては、着実にプロセスが進んでいるとの認識を共有するとともに、それを歓迎した。

ウ 各軍種の取組

2021年は、陸海空自衛隊がフィリピン国内においてフィリピン軍と共同訓練を実施した。

(ア)陸上自衛隊

2021年6月に、陸幕長がセンティーノ陸軍司令官と電話会談し、インド太平洋地域が安全保障上の焦点であるという認識を共有し、南シナ海における現状変更への試みに対する深刻な懸念等を共有し、日比陸軍種間連携を強化していくことで一致した。また、陸自水陸機動団は、米比共同訓練「カマンダグ21」に参加し、災害救助活動にかかる能力の向上を図るとともに、訓練を通じて日比間の相互理解の増進及び連携の強化を図った。

カマンダグ21に参加する陸自隊員の様子

カマンダグ21に参加する陸自隊員の様子

能力構築支援においては、同年11月、マニラ近郊においてフィリピン陸軍に対し、人道支援・災害救援(HA/DR)分野の能力構築支援として、わが国がフィリピンに対し政府開発援助(ODA)で供与した人命救助機材の取扱いに関する講義や機材を使用して行う捜索救助訓練の実施に必要な知見の共有を実施した。

(イ)海上自衛隊

2021年9月、米国で開催された国際シーパワーシンポジウム(ISS)において海幕長がボルダド海軍司令官と懇談を実施し、海自の寄港機会や共同訓練の増加など、防衛協力・交流を推進していくことで合意した。同年7月には、海自遠洋練習航海部隊がダバオに寄港するとともに、フィリピン海軍との親善訓練を実施した。また同年10月、米比主催共同訓練「Exercise SAMA SAMA 2021」に参加したほか、同年11月には、インド太平洋方面派遣部隊の護衛艦「かが」及び「むらさめ」が、スービックに寄港するとともに、フィリピンとの親善訓練を実施し、戦術技量の向上及び相互理解の増進を図った。

(ウ)航空自衛隊

2021年6月、空幕長は、フィリピン空軍が主催するエア・フォース・シンポジウムにオンラインで参加し、「デジタル時代における指揮統制」をテーマにスピーチを実施した。同年7月には、空自C-130H輸送機がクラーク空軍基地において、フィリピン空軍と空軍種として初の二国間共同訓練を実施し、人道支援・災害救援活動にかかる技量向上及びフィリピン空軍との連携の強化を図った。また、2022年1月、空幕長は、カンラス空軍司令官とテレビ会談を実施し、日比空軍種間の協力が進展していることを確認し、両空軍種間の取組をさらに推進していくことで一致した。

能力構築支援としては、同年9月、空自の航空医官などがオンライン形式により、航空医学や航空機を用いた患者搬送に関する専門的な知見の共有を図った。

参照IV部4章5節3項(新たな防衛装備・技術協力の構築)

(6)タイ

ア タイとの防衛協力・交流の意義

タイとの間では、早くから防衛駐在官の派遣や防衛当局間協議を開始するなど、伝統的に良好な関係のもと、長きにわたる防衛協力・交流の歴史を有している。また、防衛大学校では、1958年に初めて外国人留学生として受け入れたのがタイ人学生であり、その累計受入れ数も最多となっている。

イ 最近の主要な防衛協力・交流実績

2021年5月、岸防衛大臣は、プラユット首相兼国防大臣とテレビ会談を行い、東シナ海・南シナ海を含む地域情勢について意見交換を実施し、航行及び上空飛行の自由の重要性を確認するとともに、「インド太平洋に関するASEANアウトルック」(AOIP:ASEAN Outlook on the Indo-Pacific)が、平和と協力を促進する上で、FOIPと多くの本質的な原則を共有していることを再確認した。

また、2022年5月には、岸田総理大臣のタイ訪問の際に防衛装備品・技術移転協定が署名され、発効した。

ウ 各軍種の取組

(ア)統合幕僚監部

防衛省・自衛隊は、2005年から米タイ共催の多国間共同訓練「コブラ・ゴールド」に継続的に参加している。直近では、2022年2月から同年3月にかけて実施された多国間共同訓練「コブラ・ゴールド22」に参加し、国際平和共同対処事態における協力支援活動にかかる調整などに関する訓練を実施し、統合運用能力の向上を図った。

(イ)海上自衛隊

2022年1月、海幕長は、ソンプラソン海軍司令官との間でテレビ会議を行い、コロナ禍にあっても非接触型の防衛交流が可能な海軍種の強みを活かし、さらなる関係強化を図っていくことで一致した。

同年3月、海自外洋練習航海部隊がタイ海軍と親善訓練を実施し、戦術技量の向上及び連携強化を図った。

(7)カンボジア

ア カンボジアとの防衛協力・交流の意義

カンボジアは、1992年にわが国として初めて国連PKOに自衛隊を派遣した国である。また、2013年から能力構築支援を開始するなど、両国間での防衛協力・交流は着実に進展している。

カンボジア陸軍司令官と会談を行う吉田陸幕長

カンボジア陸軍司令官と会談を行う吉田陸幕長

イ 最近の主要な防衛協力・交流実績

2021年6月、岸防衛大臣は、ティア・バニュ副首相兼国防大臣とテレビ会談を行い、航行及び上空飛行の自由並びに国連海洋法条約をはじめとする国際法の遵守の重要性を確認した上で、FOIPを維持・強化していくために、「インド太平洋に関するASEANアウトルック」(AOIP)とFOIPとの間の協力の促進に向けて連携していくことを再確認した。また、PKO分野における人材育成協力の継続を含め、二国間の防衛協力・交流をさらに進めていくことで一致した。

ウ 各軍種の取組

(ア)陸上自衛隊

2022年2月、陸幕長がフン・マネット陸軍司令官を日本に公式招待し、陸軍種トップ間の信頼関係を構築するとともに陸軍種間の関係を強化していくことで一致した。また、同司令官は、岸田総理大臣、岸防衛大臣及び林外務大臣にも表敬を行い、FOIPに関する日本の考えを支持するとともに、日カンボジア協力関係をさらに強化していく考えを示した。

(イ)海上自衛隊

2022年3月、海自のインド太平洋・中東方面派遣部隊の掃海母艦「うらが」及び掃海艦「ひらど」がシハヌークビル港に寄港し、カンボジア海軍と親善訓練などを行った。この際、同港では、ティア・バニュ副首相兼国防大臣出席の歓迎式典が実施された。また、同部隊の隊員の一部が、リアム海軍基地を訪問し、同司令官を表敬し、カンボジア海軍との相互理解を増進させた。

(8)ミャンマー

ア 最近の主要な防衛協力・交流実績

2021年2月に発生した国軍によるクーデターに対し、同年3月、わが国や米国を含む12か国の参謀長などの連名により、関係国の防衛当局が結束して国軍及び関連する治安機関による民間人に対する軍事力の行使を非難するとともに、国軍に対して暴力を停止するよう求める声明を発出した。ミャンマーに対しては、2018年から士官学校日本語学科において、日本語教育の環境整備支援を実施している。

(9)ラオス

ア 最近の主要な防衛協力・交流実績

2021年6月、岸防衛大臣とチャンサモーン国防大臣との間でテレビ会談を実施し、人道支援・災害救援(HA/DR)分野における協力の継続を含め、二国間の防衛協力・交流をさらに進めていくことで一致した。

能力構築支援においては、同年6月にラオス人民軍に対し、人道支援・災害救援(HA/DR)(捜索救助・衛生)分野に関するオンライン形式のセミナーを実施した。

(10)マレーシア

ア マレーシアとの防衛協力・交流の意義

南シナ海の沿岸国であるマレーシアとの間では、2018年4月、防衛装備品・技術移転協定の署名・発効に続き、同年9月にはモハマド国防大臣(当時)の訪日に際し、小野寺防衛大臣(当時)とともに日マレーシア防衛協力・交流に関する覚書に署名した。

イ 最近の主要な防衛協力・交流実績

2021年4月、岸防衛大臣はイスマイル・サブリ国防大臣とのテレビ会談を行った。両大臣は、航行及び上空飛行の自由の重要性を確認した上で、国連海洋法条約をはじめとする国際法を遵守する必要性を再確認した。

ウ 各軍種の取組

(ア)海上自衛隊

2021年4月、海幕長がレッザ海軍司令官とテレビ会議を行い、自由で開かれたインド太平洋の実現のため、様々な分野でさらなる関係強化を図っていくことで合意した。また、同月、海自外洋練習航海部隊がポートクランに寄港するとともに、マレーシア海軍と親善訓練を実施した。さらに、2022年3月には海自インド太平洋・中東方面派遣部隊の掃海母艦「うらが」と掃海艦「ひらど」がコタキナバルに寄港した。

(イ)航空自衛隊

2021年7月、空幕長は、アクバル空軍司令官とテレビ会談を行い、地域における力を背景とした一方的な現状変更の試みや緊張を高めるいかなる行為も断固として受け入れられないとの認識を共有し、また、空軍種間の関係を発展させていくことで一致した。また、同年11月には、クアラルンプール国際空港に、空自C-2輸送機が寄航し、マレーシア空軍との部隊間交流を実施した。

(11)ブルネイ

ア 最近の主要な防衛協力・交流実績

2021年5月及び12月、岸防衛大臣はハルビ第二国防大臣とのテレビ会談を実施した。12月の会談において、両大臣は、日ブルネイ防衛協力・交流覚書の内容の調整が完了したことを歓迎するとともに、岸大臣は、ブルネイを中心にASEANが運用している「ASEANダイレクト・コミュニケーションズ・インフラストラクチャー(ADI)」へのわが国の加入を表明した。

ブルネイ海軍との親善訓練の様子

ブルネイ海軍との親善訓練の様子

イ 各軍種の取組

2021年6月、海自遠洋練習航海部隊がムアラに寄港するとともに、ブルネイ海軍と親善訓練を実施し、戦術技量の向上及び連携強化を図った。また、同年12月には、海自インド太平洋・中東方面派遣部隊の掃海母艦「うらが」と掃海艦「ひらど」がムアラに寄港するとともに、ブルネイ海軍と親善訓練を実施し、同軍との相互理解の増進を図った。

参照本節3項(多国間における安全保障協力の推進)

4 韓国
(1)韓国との防衛協力・交流の意義

北朝鮮の核・ミサイル問題をはじめ、テロ対策や、大規模自然災害への対応、海賊対処、海洋安全保障など、日韓両国を取り巻く安全保障環境が厳しさと複雑さを増す中、日韓の連携は益々重要となっている。

一方、日韓防衛当局間にある課題が日韓の防衛協力・交流に影響を及ぼしている。その例として、2018年10月、韓国主催国際観艦式における海自の自衛艦旗8をめぐる韓国側の対応、同年12月の韓国海軍駆逐艦による自衛隊機への火器管制レーダー照射事案9、韓国海軍による竹島周辺海域を含むわが国周辺海域における軍事訓練、日韓秘密軍事情報保護協定(GSOMIA:General Security of Military Information Agreement)の終了通告(ただし、のちに終了通告の効力を停止)に関する対応がある。韓国防衛当局側による否定的な対応が継続していることから、防衛省・自衛隊としては、こうした課題について、日韓・日米韓の連携が損なわれることのないよう、引き続き韓国側の適切な対応を強く求めていくこととしている。

(2)最近の主要な防衛協力・交流実績

2019年11月、河野防衛大臣(当時)は、第6回ADMMプラスに際して鄭景斗(チョン・ギョンドゥ)韓国国防部長官(当時)と会談を行い、2018年来、日韓の間には様々な課題が生じ、両国間の防衛当局間においても非常に厳しい状況が続いているが、両国を取り巻く安全保障環境が大変厳しい状況である中で、日韓・日米韓の連携は極めて重要であり、日韓防衛当局間の意思疎通を継続していく旨を確認した。

(3)日米韓の協力関係

日米韓3か国は、この地域の平和と安定に関して共通の利益を有しており、機会を捉えて緊密に連携を図っていくことが、北朝鮮問題を含めた様々な安全保障上の課題に対処するうえで重要である。

日米韓3か国では、例年、シャングリラ会合に際して日米韓防衛相会談を実施しており、2019年6月、岩屋防衛大臣(当時)はシャナハン米国防長官代行及び鄭景斗(チョン・ギョンドゥ)韓国国防部長官(いずれも当時)と日米韓3か国防衛相会談を実施し、北朝鮮の完全な非核化を検証可能な、かつ、不可逆的な方法で求める、全ての関連国連安保理決議に従って、北朝鮮が国際的な義務を完全に遵守することが、国際社会の共通目標であることを確認した。

また、北朝鮮籍船舶による違法な「瀬取り」を抑止し、中断させ、最終的に撲滅するための持続的な国際協力を含む、北朝鮮に関連する国連安保理決議の完全かつ厳格な履行のため、国際社会と連携していくことでも一致した。地域の安全保障問題に関しては、航行及び上空飛行の自由が確保されなければならず、すべての紛争は、国際法の原則に従って、平和的手段により解決されるべきであることを再認識し、そのうえで3か国間の安全保障協力を強化していくことで一致した。

さらに、同年11月、河野防衛大臣(当時)は、第6回ADMMプラスに際して実施した日米韓防衛相会談において、北朝鮮の完全な非核化及び弾道ミサイルの放棄を検証可能な、かつ、不可逆的な方法で求めるという国際社会の共通目標、安保理決議の完全な履行の重要性、法の支配に基づく秩序の重要性などの共通認識を共有し、情報共有、ハイレベルの政策協議、共同訓練を含む、3か国の安全保障協力を促進することに合意した。

また、2022年2月には日米韓防衛相電話会談を開催し、3か国の安全保障上の協力の重要性を再確認するとともに、北朝鮮の弾道ミサイル発射に対し、3か国で緊密に連携していくことで一致した。

実務レベルでは、日米韓防衛実務者協議(DTT:Defense Trilateral Talks)の枠組みにおける局長級・課長級の協議及びテレビ会談の実施、日米韓参謀総長級会談などを通じて、様々なレベルで緊密に情報共有を図りつつ連携してきている。

2021年10月には、日米韓防衛当局局長級電話会議が実施され、核・ミサイルを含む北朝鮮情勢、地域安全保障及び3か国の安全保障協力の強化について議論するとともに、日本側から、北朝鮮の完全な非核化や弾道ミサイルの放棄を検証可能かつ不可逆的な方法で求める、すべての関連する国連安保理決議に従って北朝鮮が国際的な義務を完全に遵守するという、国際社会の共通目標の達成に向けて日米韓3か国が緊密に連携することの重要性を提起した。日米韓防衛当局局長級電話会議については、2022年1月以降、北朝鮮が相次いでミサイル発射を行ったことを受け、同月及び同年2月にも開催されており、日米韓3か国の安全保障上の協力の重要性を再確認するとともに、その強化について議論を実施している。

(4)各軍種の取組

ア 統合幕僚監部

2021年4月、統幕長がハワイにおいて、日米韓参謀総長級会議に参加した。本会議には、統幕長のほかミリー米統合参謀本部議長、ウォン韓国合同参謀本部議長などが参加し、地域の平和と安定のため、互いの安全保障に関する諸課題について話し合い、多国間協力を強化するために、共に取り組んでいくことについて合意した。また、2022年3月にも、ハワイにおいて日米韓参謀総長級会議が実施された。統幕長は、ミリー米統合参謀本部議長及びウォン韓国合同参謀本部議長とともに同会議に参加し、3者は、地域の平和と安定を脅かす課題への対応、安全保障協力の拡大及び「自由で開かれたインド太平洋」の推進のため、多国間協力と訓練に関する意見交換を行い、これらを達成するための日米韓の協力を強化することに合意した。

イ 海上自衛隊

2021年7月、海自が、オーストラリア東方海空域において、日米豪韓共同訓練「パシフィック・ヴァンガード21」や日豪韓共同訓練、米豪主催多国間共同訓練「タリスマン・セイバー」における日米豪韓加5ヵ国の共同訓練を実施し、戦術技量の向上及び米豪韓加海軍との連携強化を図った。

日米豪韓共同訓練「パシフィック・ヴァンガード21」の様子

日米豪韓共同訓練「パシフィック・ヴァンガード21」の様子

今後も様々な機会を活用して、日米韓3か国の安全保障協力を強化していくことが求められている。

参照資料52(多国間共同訓練の参加など(過去3年間))

(5)日韓GSOMIAについて

日韓の防衛当局間において、2014年12月に署名した日米韓情報共有に関する防衛当局間取決めに基づき、米国を経由する形で北朝鮮の核・ミサイルに関する秘密情報の交換・共有を行ってきた。一方、北朝鮮により頻繁に繰り返される弾道ミサイルの発射や核実験など、北朝鮮を巡る情勢がさらに深刻化していることを踏まえ、日韓間の協力をさらに進めるべく、2016年11月、日韓GSOMIAを締結した。これにより、日韓政府間で共有される秘密軍事情報が適切に保護される枠組みが整備された。2019年8月には、韓国政府から、同協定を終了させる旨の書面による通告があったが、同年11月、韓国政府から、同通告の効力を停止する旨の通告があった10。韓国政府がこのような決定を行ったことに対し、河野防衛大臣(当時)から、東アジアの安全保障環境が厳しい中で、日米、日韓及び日米韓の連携が重要であり、そのような状況を韓国側も戦略的に考えた決定と考えている旨をコメントしている。

参照資料40(最近の日韓防衛協力・交流の主要な実績(過去3年間))

5 欧州諸国、カナダ及びニュージーランド

欧州諸国、カナダ及びニュージーランドは、わが国と普遍的価値を共有し、また、テロ対策や「瀬取り」対応などの非伝統的安全保障分野や国際平和協力活動を中心に、グローバルな安全保障上の共通課題に取り組むための中核を担っている。そのため、これらの国と防衛協力・交流を進展させることは、わが国がこうした課題に積極的に関与する基盤を提供するものであり、わが国と欧州諸国、カナダ及びニュージーランドの双方にとって重要である。

参照資料41(最近の欧州諸国、カナダ及びニュージーランドとの防衛協力・交流の主要な実績(過去3年間))

(1)英国

ア 英国との防衛協力・交流の意義

英国は、欧州のみならず世界に影響力を持つ大国であるとともに、わが国と歴史的にも深い関係があり、安全保障面でも米国の重要な同盟国として戦略的利益を共有している。このような観点から、国際平和協力活動、テロ対策、海賊対処、サイバーなどのグローバルな課題における協力や地域情勢などに関する情報交換を通じ、日英間で協力を深めることは、わが国にとって非常に重要である。

英国との間では、2012年6月に防衛協力のための覚書が取り交わされたのに続き、2013年7月に防衛装備品・技術移転協定が発効したほか、2014年1月には日英情報保護協定が発効し、二国間の防衛装備・技術協力及び情報共有の基盤が整備されている。同年5月の日英首脳会談において、両首脳は、安全保障分野の協力強化のため、日英「2+2」の開催、ACSAの交渉開始などについて一致した。

2017年1月には、日英ACSA11への署名が行われ、同年4月の国会承認を経て同年8月に発効した。これにあわせて関連する国内法令も整備された。日英ACSAの発効により、共同訓練や大規模災害対処などにおいて、自衛隊と英軍との間で、水・食糧・燃料・輸送などの物品や役務を統一的な手続により相互に融通することが可能となり、日英間の戦略的パートナーシップが一層円滑・強固なものとなった。さらに、日英間の円滑化協定について、2021年10月に正式交渉を開始し、2022年5月の日英首脳会談において、両首脳は大枠合意に至ったことを歓迎した。また、両首脳は、同協定が自衛隊と英軍の共同運用・演習の円滑化を通じ日英安全保障・防衛協力をさらに深化させ、両国が世界の平和と安定に一層寄与することに資するものであることを確認した。

また、2017年8月の日英首脳会談の際に発表された「日英安全保障共同宣言」においては、二国間の安全保障協力に関する関係当局間の具体的措置を伴う行動計画を策定することで一致し、2019年1月の日英首脳会談では、同宣言を再確認したうえで、日英関係が次の段階に引き上げられたことを確認した。

イ 最近の主要な防衛協力・交流実績

2021年7月、岸防衛大臣とウォレス国防大臣との間で、日英防衛相会談が実施され、英空母打撃群との共同訓練や日本寄港が、長い歴史と伝統を有する日英防衛協力が「新たな段階」に入ったこと、FOIPの実現のための英国の関与が強固かつ不可逆的であること、日英防衛協力がわが国の安全保障のみならず、インド太平洋地域と国際社会の平和と安定の確保に資するとともに、グローバルな課題に対処するものであることを示すものであることについて、認識を一致した。

また、両大臣は北朝鮮による弾道ミサイルの発射は国連安保理決議違反であり、地域の平和と安全を脅かすものとして強く非難するとともに、これまでの弾道ミサイル等の度重なる発射を含め、国際社会全体にとっての深刻な課題であるとの認識で一致した。そのうえで、両大臣は、北朝鮮による、全ての大量破壊兵器及びあらゆる射程の弾道ミサイルの完全な、検証可能な、かつ、不可逆的な廃棄(CVID)の実現に向けて「瀬取り」対応を含めて引き続き連携していく意思を再確認した。

同年9月に、クイン閣外大臣(国防調達担当)が、防衛省を訪問し、同月の英空母打撃群(CSG(Carrier Strike Group)21)の日本寄港や共同訓練の実施により、「新たな段階」に入った日英の防衛協力関係を、防衛装備・技術協力の面においても一層深化させた。

同年8月と9月に、空母「クイーン・エリザベス」を旗艦とする英空母打撃群が日本に寄港した。米軍横須賀基地に寄港した英空母「クイーン・エリザベス」には岸防衛大臣が乗艦し、英空母打撃群司令官及び駐日英国大使と共に空母上で共同記者発表を実施し、長い歴史と伝統を有する日英防衛協力が「新たな段階」に入ったことを確認した。

英空母クイーン・エリザベス艦内で、英空母打撃群司令官とあいさつを交わす山村海幕長

英空母クイーン・エリザベス艦内で、
英空母打撃群司令官とあいさつを交わす山村海幕長

ウ 各軍種の取組

(ア)統合幕僚監部

2021年7月、統幕長がカーター国防参謀長とテレビ会談を行い、英空母打撃群のインド太平洋地域への派遣の機会を最大限活用し、英国との防衛協力・訓練などを積極的に実施していくことで一致した。また、同年8月には、陸海空自衛隊が沖縄南方海空域において、戦術技量の向上及び基本的価値と戦略的利益を共有する米英蘭との連携の強化を目的として、「米国主催大規模広域訓練2021(LSGE21:Large Scale Global Exercise 21)」に参加した。統幕長は同年10月にも、カーター国防参謀長とテレビ会談を行い、FOIPの実現に向け、日英の協力関係を一層強化していくことで一致した。

(イ)陸上自衛隊

2021年7月、陸幕長がカールトン-スミス陸軍参謀総長とテレビ会談を行い、インド太平洋地域における安全保障情勢について認識の共有を図った。さらに2022年1月には、日英相互に関心のある地域情勢について意見交換を行うとともに、「日英陸軍種間協力のためのロードマップ」に署名し、日英陸軍種防衛協力・交流を計画的・段階的に推進していくことで一致した。

(ウ)海上自衛隊

2021年7月、海幕長がラダキン第1海軍卿兼海軍参謀長と懇談を行い、海軍種間の関係を深化させることで、FOIPの実現及び国際社会の平和と安定に寄与することを確認した。

また、空母「クイーン・エリザベス」を旗艦とする英空母打撃群の艦艇などとは、2021年7月、アデン湾において、海自海賊対処部隊が共同訓練を実施し、同年8月から同年9月にかけて、海自及び空自が、沖縄南方から関東東方に至るわが国近海において、共同訓練「パシフィック・クラウン21」を4回にわたって実施した12。その後、同年10月には米英の空母3隻をはじめ、海自護衛艦「いせ」、オランダ、カナダ及びニュージーランドのフリゲートが参加する日米英蘭加新共同訓練が実施され、また、ベンガル湾においては、日米豪英共同訓練(Maritime Partnership Exercise)を実施し、同年11月にはアデン湾で海賊対処部隊との共同訓練を実施した。こうした訓練を通じ、日英防衛協力が「新たな段階」に入ったことを具現化し、英国の関与が強固かつ不可逆的であり、日英防衛協力がわが国の安全保障のみならず、インド太平洋地域と国際社会の平和と安定の確保に資するものであることを示した。

(エ)航空自衛隊

2021年8月、空幕長がウィグストン空軍参謀長と会談し、航空及び宇宙における防衛協力のあり方についての認識を共有した。また、同年9月には、英空母打撃群との間で実施された「パシフィック・クラウン21」の一環として、空自F-35Aが英空軍のF-35Bなどとともに共同訓練を実施し、戦術技量の向上に加え、各国との連携強化を図った。

動画アイコンQRコード動画:CSG21日英の共同訓練
URL:https://youtu.be/RbuH4gelAZ0(別ウィンドウ)

(2)フランス

ア フランスとの防衛協力・交流の意義

フランスは、欧州やアフリカのみならず、世界に影響力を持つ大国であるとともに、インド洋及び太平洋島嶼部に領土を保有し、インド太平洋地域に常続的な軍事プレゼンスを有する唯一のEU加盟国であり、わが国と歴史的にも深い関係を持つ特別なパートナーである。

2014年1月には、パリで第1回日仏「2+2」が開催され、同年7月にはル・ドリアン国防大臣(当時)が訪日し、防衛協力・交流に関する意図表明文書が署名された。以降、国際テロ、海洋安全保障、防衛装備・技術協力、日仏ACSA、共同訓練、宇宙、海洋分野での協力、途上国の能力構築支援に関する連携などに関する協議が行われた。

2011年10月の日仏情報保護協定の発効をはじめとして、2016年12月には日仏防衛装備品・技術移転協定が発効したほか、2018年7月には日仏ACSAへの署名が行われ、2019年5月の国会承認を経て、同年6月に発効した。

イ 最近の主要な防衛協力・交流実績

2022年1月、約3年ぶりとなる第6回日仏「2+2」がテレビ会議形式で実施された。四大臣は、日仏間の安全保障・防衛協力が近年飛躍的に強化されていることを歓迎するとともに、前年の仏練習艦隊「ジャンヌ・ダルク」の日本寄港時における陸自及び海自との共同訓練や「瀬取り」対応への仏艦船の参加などの協力を振り返りつつ、日仏間の共同訓練や演習、防衛装備・技術協力を引き続き促進していくことで一致した。また、四大臣は、自衛隊と仏軍間の共同運用・演習のための行政上、政策上及び法律上の手続を相互に改善するための恒常的な枠組みについて議論を開始するよう事務当局に指示した。加えて四大臣は、仏のEU議長国下で、EUのインド太平洋への関与を一層強化していくことを確認した。さらに四大臣は、北朝鮮の核・ミサイル開発の進展、東シナ海・南シナ海情勢への深刻な懸念を共有した上で、力を背景とした一方的な現状変更の試みに強く反対することで一致するとともに、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調し、両岸問題の平和的解決を促すことで一致した。

ウ 各軍種の取組

(ア)統合幕僚監部

2021年10月、統幕長はビュルカール統合参謀総長と電話会談を実施し、日仏防衛協力・交流の成果及びその意義について確認するとともに、新領域を含むあらゆる分野において日仏間の連携を進めていくことで一致した。

自衛隊は、2015年からニューカレドニア駐留仏軍主催HA/DR訓練「赤道」に参加している。また、2021年5月には、練習艦隊「ジャンヌ・ダルク」の訪日の機会を捉え、日仏米豪4か国が陸上と海上において共同訓練「ARC21(アーク21)」を実施し、着上陸訓練など島嶼防衛にかかる自衛隊の戦術技量の向上を図るとともに、FOIPというビジョンを共有する4か国の協力関係を深化させた。

(イ)陸上自衛隊

2021年5月、陸幕長はビュルカール陸軍参謀長とテレビ会談を行い、共同訓練「ARC21(アーク21)」の意義を高く評価しつつ、陸軍種間の防衛協力関係を深化することにより、FOIPを維持・強化していくことで一致した。また、同年8月には、7月に就任したシル陸軍参謀長とテレビ会談を実施し、日仏陸軍種間で連携を強化していくことで一致した。さらに、2022年2月のテレビ会談では、日仏相互に関心のある地域情勢について意見交換を行うとともに、「陸上自衛隊と仏陸軍の協力」に署名し、日仏陸軍種防衛協力・交流を計画的・段階的に推進していくことで一致した。

(ウ)海上自衛隊

2021年5月、沖縄周辺において日仏共同訓練を実施したほか、海幕長はヴァンディエ海軍参謀長とテレビ会談を行い、共同訓練「ARC21(アーク21)」の成果を確認した。さらに、同年7月にシンガポールで行われた国際海上安全保障会議(IMSC)においても、海幕長がヴァンディエ海軍参謀長と懇談を実施し、引き続き、海軍種間の関係強化を図ることで合意した。また、同年9月には、インド太平洋方面派遣部隊の護衛艦「しらぬい」が、ニューカレドニアに寄港するとともに、日仏共同訓練「オグリ・ヴェルニー」を実施した。さらに、2022年3月、護衛艦「きりさめ」が、仏海軍フリゲート「ヴァンデミエール」と、東シナ海において2回目となる日仏共同訓練「オグリ・ヴェルニー」を実施し、戦術技量の向上及び連携強化を図った。

仏陸軍参謀長とテレビ会談を行う吉田陸幕長

仏陸軍参謀長とテレビ会談を行う吉田陸幕長

(エ)航空自衛隊

2021年5月には、空幕長がラヴィニュ航空宇宙軍参謀長とテレビ会談を実施し、力を背景とした一方的な現状変更の試みに対する懸念を共有するとともに、航空・宇宙分野における日仏空軍種間の防衛協力・交流をさらに進化させることで一致した。

さらに、同年11月、空幕長がミル航空宇宙軍参謀長と会談し、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の重要性を確認するとともに、空軍種間の防衛協力・交流をさらに推進することで一致した。

2022年2月には、グアムを拠点とする多国間共同訓練「コープ・ノース22」における人道支援・災害救援共同訓練に仏空軍が参加し、日仏空軍種間の連携要領の向上を図ったほか、同年3月には、空自が仏航空・宇宙軍主催の宇宙演習「アステリクス2022」に初めてオブザーバー参加した。

(3)ドイツ

ア ドイツとの防衛協力・交流の意義

ドイツはわが国と基本的価値を共有し、G7などにおいて国際社会の問題に対し協調して取り組むパートナーであり、2020年9月に策定された「インド太平洋ガイドライン」に基づき、インド太平洋地域への関与を強めている。ドイツとの間では、2017年7月に日独防衛装備品・技術移転協定が、2021年3月に日独情報保護協定がそれぞれ発効している。また、2017年7月には、防衛審議官が訪独して第1回日独次官級戦略的対話を開催し、2021年4月には、日独で初めての「2+2」が開催されるなど、ハイレベルを含む交流が進展している。

イ 最近の主要な防衛協力・交流実績

2021年4月、日独で初めてとなる「2+2」がテレビ会議形式で実施され、四大臣は、FOIPの実現に向けて、両国で緊密に連携していくことを確認した。日本側は、ドイツのインド太平洋地域への関与の強化を歓迎するとともに、ドイツ海軍フリゲートの派遣の機会に、共同訓練や北朝鮮関連船舶による違法な「瀬取り」に対する警戒監視活動における協力を実施する可能性などを提起し、四大臣は引き続き調整していくことで一致した。また、四大臣は、日独情報保護協定の署名・発効を歓迎するとともに、同協定に基づいて、防衛装備品分野での協力など、両国の安全保障協力を一層推進していくことで一致した。さらに、四大臣は、国際社会における力による一方的な現状変更の試みについて深刻な懸念を共有し、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持・強化していくことが重要との点で一致した。

同年6月、岸防衛大臣は、クランプ=カレンバウアー国防大臣とテレビ会談を行い、インド太平洋地域への派遣が決定したドイツ海軍フリゲートに関し、共同訓練などの実施に向けて調整していくこと、ドイツ海軍フリゲート派遣時の、ドイツにとって初となる北朝鮮籍船舶による「瀬取り」を含む違法な海上活動に対する警戒監視活動への参加の可能性についても議論し、実現に向けて協力していくことで一致した。また、両大臣は、同月の岸防衛大臣による欧州議会安全保障・防衛小委員会におけるスピーチ13について触れつつ、EUや欧州諸国によるインド太平洋地域に対するコミットメントを不可逆的なものとするよう、日独で連携していくことの重要性を強調した。

同年11月、インド太平洋地域に派遣されたドイツ海軍フリゲート「バイエルン」が、ドイツ海軍艦艇としては約20年ぶりに日本に寄港し、岸防衛大臣が同艦を視察した。岸防衛大臣から、同艦の日本寄港は、この地域の平和と安定に積極的に貢献するとのドイツのコミットメントを示す上で重要な意義を有し、FOIPの維持・強化を推進していく上で重要なターニングポイントとなった、ドイツと共に、FOIPの維持・強化、そして、グローバルな課題への対処のために協働し、地域の平和と安定に引き続き積極的に貢献していく旨述べた。

日本に寄港したドイツ海軍フリゲート「バイエルン」

日本に寄港したドイツ海軍フリゲート「バイエルン」

また、「バイエルン」は、ドイツとしては初めて、同年11月から同年12月にかけて、北朝鮮籍船舶による「瀬取り」を含む違法な海上活動に対する警戒監視活動に参加した。

ウ 各軍種の取組

ドイツ海軍フリゲート「バイエルン」の日本寄港に合わせ、各幕僚長がハイレベル交流を実施した。

(ア)統合幕僚監部

2021年11月に統幕長がツォルン連邦軍総監と会談を行い、日独共同訓練とドイツ海軍フリゲート「バイエルン」の日本寄港などの成果及び意義を確認し、また、FOIPの実現に向け、日独の協力関係を強化していくことで一致した。

(イ)陸上自衛隊

2021年11月及び2022年1月、陸幕長はマイス陸軍総監とテレビ会談を実施し、今後の防衛協力・交流などについて意見交換し、陸軍種間でも連携を強化することで一致した。

(ウ)海上自衛隊

2021年11月、海幕長はツォルン連邦軍総監とともに訪日したシェーンバッハ海軍総監と会談を行い、ドイツ海軍のインド太平洋地域への関与を歓迎するとともに、地域と国際社会の平和と安定の確保及びFOIPの実現に向け、海自とドイツ海軍が共同訓練を通じて連携を強化していくことを確認した。

また、ドイツ海軍フリゲート「バイエルン」は同年8月から2022年1月にかけて、アデン湾、インド洋、日本近海において合計6回、海自護衛艦と共同訓練を実施し、連携の強化を図った。

(エ)航空自衛隊

2021年11月には、空幕長がゲルハルツ空軍総監と会談を行った。空幕長と空軍総監のハイレベル会談は18年ぶりであり、双方はハイレベル会談の再開を歓迎するとともにFOIPの理念に基づく国際秩序の重要性を確認し、今後は、宇宙領域を含む日独空軍種間防衛協力・交流を力強く推進することで一致した。

ドイツ連邦軍総監と会談する山崎統幕長

ドイツ連邦軍総監と会談する山崎統幕長

(4)カナダ

ア カナダとの防衛協力・交流の意義

日カナダ両国は、共にG7に所属し、同じ太平洋国家であるとともに、基本的価値を共有する戦略的なパートナーである。2019年の防衛協力に関する共同声明や、日加ACSAの発効、2017年以降毎年実施している日加共同訓練「KAEDEX(カエデックス)」や多国間共同訓練の実施など、日加防衛当局間の関係は、ここ数年で飛躍的に深化してきた。

加海軍フリゲートと日加共同訓練「KAEDEX」を実施する海自護衛艦

加海軍フリゲートと日加共同訓練「KAEDEX」を実施する海自護衛艦

イ 最近の主要な防衛協力・交流実績

カナダにおける日加修好90周年である2019年6月、岩屋防衛大臣(当時)は、カナダの国防大臣として13年ぶりに訪日したサージャン国防大臣と3年ぶりの日加防衛相会談を行い、同会談後、今後の防衛協力の推進に関する具体的な指針となる共同声明を、日加防衛当局間で初めて発表した。

2021年4月、岸防衛大臣は、カナダのサージャン国防大臣とテレビ会談を実施し、両大臣は、中国の海警法に対する深刻な懸念を表明した。同年12月には、岸防衛大臣はカナダのアナンド国防大臣とテレビ会談を実施し、アナンド国防大臣の就任への祝意を伝達した。両大臣は、東シナ海や南シナ海をめぐる情勢について、力を背景とした一方的な現状変更の試みや、緊張を高めるいかなる行為にも強く反対し、法の支配に基づく自由で開かれた海洋秩序が重要とのメッセージを明確に発信していくことで一致した。また、北朝鮮情勢について、これまでの弾道ミサイルなどの度重なる発射を含め、国際社会全体にとっての深刻な課題であるとの認識で一致し、「瀬取り」対処を含めて引き続き連携していく意思を確認した。2022年3月には、第5回日加次官級「2+2」対話を開催し、両国の外交・安全保障政策や地域情勢について意見交換を実施した。双方は、日加間で外交・安全保障面での連携が進展していることを歓迎し、その連携をこれまで以上に強化していくことを確認した。

カナダ軍は、2018年以降継続して航空機及び艦艇を派遣して北朝鮮籍船舶の「瀬取り」に対する警戒監視活動を実施しており、2021年も、カナダ海軍フリゲート「ウィニペグ」や哨戒機を派遣した。

ウ 各軍種の取組

(ア)海上自衛隊

2021年9月、海幕長は米海軍が主催する国際シーパワーシンポジウム(ISS)に参加した際、ベインズ海軍司令官と会談を行い、日加海軍種間の更なる連携強化について確認した。同年11月には、護衛艦「じんつう」が、東シナ海において、カナダ海軍フリゲート「ウィニペグ」と日加共同訓練「KAEDEX21」を実施し、戦術技量の向上及び連携強化を図った。「ウィニペグ」は、同年9月に実施した「パシフィック・クラウン21」や、同年10月に実施した日米英蘭加新共同訓練のほか、同年11月の海上自衛隊演習(実動演習)にも参加した。このほか、カナダ海軍フリゲート「カルガリー」との間でも、同年4月に日豪加共同訓練を実施するとともに、同年7月には米豪主催多国間共同訓練「タリスマン・セイバー」に日加両国が参加した。

(イ)航空自衛隊

2021年8月及び11月、空幕長は、マインジンガー空軍司令官と会談し、宇宙領域を含め、日加空軍種の防衛協力・交流をさらに推進することで一致した。

動画アイコンQRコード動画:タリスマン・セイバー21
URL:https://youtu.be/ZzcSFM_T-Gk(別ウィンドウ)

動画アイコンQRコード動画:令和3年度インド太平洋方面派遣訓練(Indo-Pacific Deployment2021)
URL:https://youtu.be/lmoU2uiXGPA(別ウィンドウ)

(5)ニュージーランド

ア ニュージーランドとの防衛協力・交流の意義

ニュージーランドは、わが国と基本的価値を共有する重要な戦略的協力パートナーである。FOIPというビジョンを推進する上でニュージーランドとの協力は極めて重要であり、防衛当局間においても、ハイレベル交流や共同訓練、部隊間交流などを活発に実施している。

ニュージーランドとの間では、2013年8月、防衛協力・交流に関する覚書の署名が行われたほか、2014年7月の日ニュージーランド首脳会談では、ACSAに関する研究を行うことで一致した。また、2022月4月の日ニュージーランド首脳会談では、情報保護協定の正式交渉開始について両首脳が決定した旨を発表した。

ニュージーランド国防大臣と電話会談する岸防衛大臣

ニュージーランド国防大臣と電話会談する岸防衛大臣

イ 最近の主要な防衛協力・交流実績

2021年4月、岸防衛大臣とヘナレ国防大臣はテレビ会談を実施し、FOIPの原則の維持・推進に向け、防衛協力・交流を引き続き活発に進めていくことで一致した。両大臣は、東シナ海について、緊張を高めるあらゆる一方的な試みへの強い懸念を表明した。さらに、南シナ海をめぐる情勢についても深刻な懸念を表明し、国連海洋法条約をはじめとする国際法に基づく平和的な紛争解決の重要性を改めて表明した。両大臣は、法の支配に基づく自由で開かれた海洋秩序が重要とのメッセージを明確に発信していくことで一致した。また、両大臣は、北朝鮮情勢について、弾道ミサイル等の度重なる発射を含め、国際社会全体にとっての深刻な課題であるとの認識で一致し、引き続き連携していく意思を再確認した。さらに、両大臣は、ニュージーランド空軍の哨戒機の搭乗員が海自鹿屋航空基地を訪問し、哨戒機を運用する海自隊員と交流を行うなど、日ニュージーランド防衛協力・交流が着実に深化していることを歓迎し、今後、初の2か国による共同訓練の実現に向けて調整を進めることで合意した。また、北朝鮮籍船舶による「瀬取り」に対する警戒監視活動に関して、ニュージーランド軍は、2018年以降継続して哨戒機を派遣し、2021年も2度の派遣を実施した。

ウ 各軍種の取組

(ア)統合幕僚監部

2022年1月、統幕長はショート国防軍司令官との電話会談を行い、同月に発生した火山噴火によるトンガの被災者支援に関し、日ニュージーランドが緊密に連携して国際社会と活動していくことを確認した。

(イ)海上自衛隊

2021年10月、沖縄南西海空域及び南シナ海において実施した日米英蘭加新共同訓練にニュージーランド海軍フリゲートが参加した。

(6)オランダ

ア オランダとの防衛協力・交流の意義

オランダは、わが国と400年以上の歴史的関係を有し、基本的価値を共有する戦略的パートナーである。オランダとの間では、2016年12月にヘニス国防大臣(当時)が訪日し、日オランダ防衛相会談に際して防衛協力・交流の覚書の署名が行われた。

イ 最近の主要な防衛協力・交流実績

2018年9月、小野寺防衛大臣(当時)がオランダを訪問し、バイレフェルト国防大臣と日オランダ防衛相会談を実施した。同会談では、NATO・EUを通じた協力について意見交換を実施するとともに、小野寺防衛大臣(当時)から北朝鮮の「瀬取り」の状況及び国連安保理決議に基づく厳格な制裁履行が重要である旨説明し、国連安保理非常任理事国かつ北朝鮮制裁委員会議長国(当時)であるオランダと緊密に連携していくことで同意した。

ウ 各軍種の取組

(ア)統合幕僚監部

2020年10月、統幕長がエイヘルセイム軍参謀総長とテレビ会談を実施し、FOIPの実現に向け、日蘭の協力関係を強化していくことで一致した。

(イ)海上自衛隊

オランダ海軍フリゲート「エファーツェン」は、英空母打撃群に加わって、2021年7月に海自が英空母打撃群艦艇と実施した海賊対処共同訓練に参加した。同年8月から9月には「パシフィック・クラウン21」に、同年10月には日米英蘭加新共同訓練にそれぞれ参加し、また、同年9月には日本に寄港した。

(ウ)航空自衛隊

2021年11月、空幕長はラウト空軍司令官と日蘭空軍種のハイレベル会談としては初となる会談を行い、FOIPの理念に基づく国際秩序の重要性を確認するとともに、日蘭空軍種間の防衛協力・交流を力強く推進することで一致した。

(7)NATO

ア NATOとの防衛協力・交流の意義

NATOはわが国と基本的価値とグローバルな安全保障上の課題に対する責任を共有するパートナーであり、2014年5月に安倍内閣総理大臣(当時)が欧州を訪問した際、NATO本部においてラスムセン事務総長(当時)と会談を行い、「日NATO国別パートナーシップ協力計画」(IPCP:Individual Partnership and Cooperation Programme between Japan and NATO14)に署名した(2018年5月、2020年6月改訂)。この計画に基づき、同年12月、女性・平和・安全保障分野における日NATO協力として、初めてNATO本部に自衛官を派遣するとともに、2015年以降、「ジェンダー視点のNATO委員会(NCGP:NATO Committee on Gender Perspectives)年次会合」に防衛省・自衛隊から参加している。2021年12月からは、国際機関/NGO協力幕僚として、自衛官をNATO本部軍事幕僚部協調的安全保障局(NHQIMSCS:NATO Headquarters International Military Staff, Cooperative Security Division)に派遣し、NATOと国連、アフリカ連合(AU:African Union)、欧州安全保障協力機構(OSCE:Organization for Security and Co-operation in Europe)、NGOなどとの協力案件の調整業務に携わっている。

防衛省は、2017年2月に欧州連合軍最高司令部(SHAPE:Supreme Headquarters Allied Powers Europe)に連絡官を派遣し、2019年6月にNATO海上司令部(MARCOM:NATO Allied Maritime Command)に連絡官を派遣している。また、2018年7月、在ベルギー日本国大使館が兼轄する形で、NATO日本政府代表部が開設された。サイバー分野については、2019年3月から、防衛省職員をNATOサイバー防衛協力センター(CCDCOE:NATO Cooperative Cyber Defence Centre of Excellence)に派遣し、同年12月には、エストニアにおいてNATO主催のサイバー防衛演習「サイバー・コアリション2019」へわが国として初めて正式に参加した。また、2022年4月には、CCDCOE主催のサイバー防衛演習「ロックド・シールズ2022」に英国と合同チームを編成し、参加した。

NATOパートナー空軍司令官会議における井筒空幕長のオンラインによる発表の様子

NATOパートナー空軍司令官会議における井筒空幕長の
オンラインによる発表の様子

イ 最近の主要な防衛協力・交流実績

2020年7月、河野防衛大臣(当時)は、ストルテンベルグNATO事務総長と電話会談を実施し、東シナ海・南シナ海を含む地域情勢について意見交換を行い、力を背景とした一方的な現状変更の試みに強く反対することを再確認するとともに、IPCPが改訂されたことを踏まえ、FOIPの維持・強化に向け、日NATO防衛協力・交流を引き続き強力に推進していくことで一致した。

ウ 各軍種の取組

(ア)統合幕僚監部

2021年4月、統幕長はピーチ軍事委員長とテレビ会談を行い、日NATO防衛交流の枠組みにおける協力の重要性と、法の支配に基づく国際秩序を維持するために新たな協力の機会を模索していくことで一致し、また、同年10月には、バウアー軍事委員長とテレビ会談を行い、日NATO間の協力関係の強化について議論した。

(イ)航空自衛隊

2021年10月、空幕長はNATOパートナー空軍司令官会議にオンライン形式で参加し、インド太平洋地域の重要性と安全保障上の課題、わが国のFOIP実現のための取組とNATO及びそのパートナー国との協力の必要性について共有した。

(8)ウクライナ

ア ウクライナとの防衛協力・交流の意義

ウクライナは、自由、民主主義、法の支配といった基本的価値を共有するパートナーである。同国との間では、2018年10月、ペトレンコ国防次官が訪日し、日ウクライナ防衛協力・交流に関する覚書に署名したほか、日ウクライナ安全保障協議を開催した。

イ 最近の主要な防衛協力・交流実績

ロシアによるウクライナ侵略後、ウクライナ政府からの装備品等の提供要請を受け、2022年3月以降、防弾チョッキ、防護マスク、防護衣などの非殺傷の物資の提供を順次行っている。同月、岸防衛大臣は、レズニコフ国防大臣と初めてのテレビ会談を実施した。レズニコフ国防大臣から、防衛省・自衛隊によるウクライナへの装備品等の提供について、深い謝意が述べられた。岸防衛大臣からは、祖国に殉じたウクライナ兵と戦禍に倒れたウクライナ国民に心から哀悼の意を捧げ、今なお祖国と家族を守るために戦っている兵士と国民に深い敬意を表した。また、今回のロシアによる侵略は、明らかにウクライナの主権及び領土の一体性を侵害し、武力の行使を禁ずる国際法と国連憲章の深刻な違反であり、決して認められない行為であるとともに、このような力による一方的な現状変更は、国際秩序の根幹を揺るがすものであり、ロシアを最大限非難する旨改めて述べた。

ウ その他

2022年4月、総理特使たる林外務大臣のポーランド訪問の復路運航において、日本への避難を希望するものの、自力での渡航手段の確保が困難なウクライナ避難民20名を政府専用機に同乗させた。加えて同月、「ウクライナ被災民救援国際平和協力業務実施計画」が閣議決定され、同年5月から国連難民高等弁務官事務所(UNHCR:Office of the United Nations High Commissioner for Refugees)がドバイに備蓄している人道救援物資を、自衛隊機によりポーランド及びルーマニアへ輸送した。

参照IV部4章5節3項1(5)(ウクライナ)

(9)ポーランド

ア ポーランドとの防衛協力・交流の意義

ポーランドは、普遍的価値を共に推進する戦略的パートナーである。同国との間では、「戦略的パートナーシップに関する行動計画」に基づき、政治・安全保障の分野を含めた協力が進められている。

イ 最近の主要な防衛協力・交流実績

2022年2月、岸防衛大臣はブワシュチャク国防大臣との間で、日ポーランド防衛協力・交流に関する覚書を署名し、併せて約9年ぶりとなる日ポーランド防衛相テレビ会談を実施した。会談に際し両大臣は、覚書に基づき、両国の防衛協力・交流を一層深化させることを確認した。さらにウクライナ情勢を受け、岸防衛大臣から、わが国はウクライナの主権及び領土一体性を一貫して支持している立場を表明し、ウクライナ情勢をめぐる問題は国際社会全体にも影響を及ぼすグローバルな問題であり、日ポーランド両国にとって看過することができない重大な問題であるとの認識を両国で共有した。また、インド太平洋地域に関し、両大臣は南シナ海や東シナ海における力を背景とした一方的な現状変更の試みや、緊張を高めるいかなる行為にも反対するとの意思を表明し、法の支配に基づく自由で開かれた海洋秩序が重要であるという認識で一致するとともに、ブワシュチャク大臣からはFOIPに対する強い支持が表明された。また、同年3月から実施しているウクライナ政府への非殺傷の物資の提供に際しては、ポーランドの空港を中継して輸送するなど、ポーランドからの支援を受けた。

(10)EU

ア EUとの防衛協力・交流の意義

自由・民主主義・法の支配といった基本的な価値を共有するEUとの間では、2019年の「日EUパートナーシップ協定」の暫定適用開始以降、安全保障・防衛分野における協力を着実に発展させてきている。2021年9月には、「インド太平洋戦略に関する共同コミュニケーション」が発表されるなど、EUのインド太平洋地域への関与が強化されている中、防衛省・自衛隊は、同地域へのEUのコミットメントが不可逆的なものになるよう、積極的かつ主体的に協力を進めている。

イ 最近の主要な防衛協力・交流実績

EUとの間では、2020年2月、河野防衛大臣(当時)は、第56回ミュンヘン安全保障会議に際してボレルEU上級代表と会談を実施し、日EU間で特に海洋安全保障の分野での協力が進展していることを歓迎しつつ、引き続き実質的な防衛協力・交流を進めることで一致し、地域情勢などについて意見交換を行った。

また、2021年5月に開催された日EU定期首脳協議において、両首脳は、FOIPに向けた協力を強化すること、及び、東シナ海・南シナ海情勢について、一方的な現状変更の試みに強く反対することで一致した。また、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促すことで一致した。また、同年6月には岸防衛大臣が欧州議会安全保障・防衛小委員会においてスピーチ15を実施し、地域の安全保障をめぐる現実やわが国の推進するFOIPの理念について説明した。

欧州議会安全保障・防衛小委員会においてスピーチを実施する岸防衛大臣

欧州議会安全保障・防衛小委員会においてスピーチを実施する岸防衛大臣

ウ 各軍種の取組

2014年以降、海自とソマリア・アタランタ作戦に従事するEU海上部隊との間で海賊対処共同訓練を実施している。2021年5月には、アデン湾において、海自護衛艦及びEU海上部隊(イタリア海軍及びスペイン海軍)にジブチ海軍及び同国沿岸警備隊が加わる形で共同訓練を行い、ルールに基づいた国際秩序の維持に日・EU・ジブチが引き続きコミットすることを確認した。

(11)イタリア

ア イタリアとの防衛協力・交流の意義

日伊両国はともにG7の一員であり、基本的価値を共有する重要なパートナーである。イタリアとの間では、2016年6月に日伊情報保護協定が発効した。2017年5月には、日伊防衛協力・交流に関する覚書への署名が行われたほか、2019年4月に日伊防衛装備品・技術移転協定が発効するなど、防衛協力を行っていくうえでの制度面の整備が進んでいる。

イ 最近の主要な防衛協力・交流実績

2020年5月、河野防衛大臣(当時)は、グエリーニ国防大臣と日伊防衛相電話会談を実施した。両大臣は、地域情勢について力を背景とした一方的な現状変更の試みに強く反対することで同意したほか、同年がローマ・東京間横断初飛行100周年であり、空軍種間の協力が進展していることを歓迎するとともに、FOIPの維持・強化に向け、日伊防衛協力を引き続き強力に推進していくことで一致した。また、防衛装備・技術協力の分野を含め、今後一層協力を拡大する意思を表明した。

イタリア空軍との間の空自操縦者の委託教育に関する取り決めへの署名の様子

イタリア空軍との間の空自操縦者の委託教育に関する取り決めへの
署名の様子

ウ 各軍種の取組

(ア)海上自衛隊

2021年5月及び同年9月、派遣海賊対処行動水上部隊はアデン湾においてEU海上部隊(イタリア海軍)フリゲートなどと共同訓練を実施し、海自の海賊対処能力及び海賊対処にかかる連携の強化を図った。

(イ)航空自衛隊

2021年8月、空幕長はロッソ空軍参謀長との会談を行い、日伊防衛協力・交流の進展を相互に確認し、同年10月、空自は戦闘機操縦者などの効果的な養成及びイタリア空軍との防衛交流の推進を目的とし、イタリア空軍との間で空自操縦者の委託教育に関する取り決めを締結した。2022年1月には、イタリア空軍の教育機関IFTS(International Flight Training School)への隊員の派遣を開始した。

(12)スペイン

ア スペインとの防衛協力・交流の意義

スペインは、わが国と基本的価値を共有する戦略的パートナーである。2014年11月に署名された防衛協力・交流に関する覚書に基づき、防衛当局間の関係をさらに強化することで一致している。

イ 最近の主要な防衛協力・交流実績

スペインとの間では、2018年1月、デ・コスペダル国防大臣(当時)が訪日し、日スペイン防衛相会談を実施した。同会談では、デ・コスペダル国防大臣からFOIPを歓迎する旨表明があった。

ウ 各軍種の取組

2021年10月、海自の派遣海賊対処行動水上部隊は、アデン湾においてEU海上部隊(スペイン海軍)フリゲートなどと共同訓練を実施し、海自の戦術技量の向上及びEU海上部隊との連携の強化を図った。

(13)エストニア

ア エストニアとの防衛協力・交流の意義

エストニアは、基本的価値を共有するパートナーである。世界有数のIT立国として先進的な取組を行っており、防衛省・自衛隊との間でサイバー防衛分野における協力が進展している。また国内にNATOサイバー防衛協力センター(CCDCOE)を擁すなど、日NATO協力の観点からも重要な役割を担っている。

イ 最近の主要な防衛協力・交流実績

エストニアとの間では、2018年9月、ルイク国防大臣(当時)が訪日し、日エストニア防衛相会談を実施した。同会談では、同年1月の安倍内閣総理大臣(当時)訪問時の成果を踏まえ、CCDCOEに対する防衛省からの職員派遣を含め、今後、二国間及び多国間の枠組みの中でサイバー分野での協力を深化させていくことで一致した。

(14)フィンランド

ア フィンランドとの防衛協力・交流の意義

フィンランドは、普遍的価値を共有する戦略的パートナーであり、2019年2月には、岩屋防衛大臣(当時)とニーニスト国防大臣(当時)との間で、日フィンランド防衛協力・交流に関する覚書への署名が行われた。

イ 最近の主要な防衛協力・交流実績

2020年8月、河野防衛大臣(当時)が、カイッコネン国防大臣と日フィンランド防衛相テレビ会談を実施し、新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえつつ、FOIPの維持・強化に向けて、防衛協力・交流を強力に推進していくことで一致した。

(15)デンマーク

ア デンマークとの防衛協力・交流の意義

デンマークは基本的価値を共有する戦略的パートナーである。

イ 最近の主要な防衛協力・交流実績

デンマークとの間では、2019年10月、河野防衛大臣(当時)は、ブラムセン国防大臣との間で電話会談を実施し、二国間の防衛交流や両国を取り巻く安全保障情勢などについて、意見交換を行ったほか、河野防衛大臣から中東地域における日本関係船舶の安全確保のための自衛隊による情報収集活動について説明した。

6 中国
(1)中国との防衛協力・交流の意義

わが国と中国との「建設的かつ安定的な関係」は、インド太平洋地域の平和と安定に不可欠の要素である。日中は、大局的かつ中長期的見地から、安全保障を含むあらゆる分野において、「戦略的互恵関係」を構築し、それを強化できるよう取り組んでいく必要がある。

安全保障分野においては、防衛省・自衛隊は、中国との間で相互理解・信頼関係を増進するため、多層的な対話や交流を推進することとしている。この中で、尖閣諸島周辺海域を含む東シナ海情勢などについて、わが国の率直な懸念を伝達し、中国がインド太平洋地域の平和と安定のために責任ある建設的な役割を果たして、国際的な行動規範を遵守するとともに、国防政策や軍事力にかかる透明性を向上させることで、わが国を含む、国際社会の懸念を払拭していくよう強く促していく方針である。このほか、不測の事態の発生を回避すべく、「日中防衛当局間における海空連絡メカニズム」を両国間の信頼関係の構築に資する形で運用していくこととしている。

魏鳳和国務委員兼国防部長とテレビ会談を行う岸防衛大臣

魏鳳和国務委員兼国防部長とテレビ会談を行う岸防衛大臣

(2)最近の主要な防衛協力・交流実績

日中防衛交流は、2012年9月のわが国政府による尖閣三島(魚釣島、南小島及び北小島)の取得・保有以降、停滞していたが、2014年後半以降、交流が徐々に再開している。

2021年12月、岸防衛大臣は、約1年ぶりに、魏鳳和(ぎほうわ)国務委員兼国防部長と日中防衛相テレビ会談を実施した。両大臣は、日中関係や地域情勢について意見交換を行い、岸防衛大臣からは、尖閣諸島周辺海域を含む東シナ海情勢に関し、中国軍や中国海警局に所属する船舶による活動といった個別の事案について指摘しつつ、力を背景とした一方的な現状変更の試みに反対するとともに極めて深刻な懸念を伝達し、中国側に強く自制を求めた。また、台湾情勢についても言及し、台湾海峡の平和と安定は、わが国の安全保障にとってはもとより、国際社会の安定にとっても極めて重要であり、わが国としても、引き続き関連動向を注視していく旨述べた。さらに、南シナ海問題について、一方的な現状変更の試みや緊張を高める如何なる行為にも強く反対する旨伝達したほか、同年2月に施行された海警法についても深刻な懸念を伝達した。また、中国の不透明な国防費の増加及び戦力の近代化・増強に対しても、強い懸念を伝達した。そのうえで、両大臣は、「日中防衛当局間における海空連絡メカニズム」につき、その実効性を向上させるため「日中防衛当局間ホットライン」の早期開設が重要であることを改めて確認し、引き続き、両大臣が強いリーダーシップを発揮し、2022年中の運用開始を目標とすることで一致した。

また、同年12月、第13回日中高級事務レベル海洋協議がオンラインで実施され、日本側から東シナ海をはじめとする海洋・安全保障分野の課題にかかるわが国の立場や懸念を改めて申し入れ、中国側の自制ある行動を強く求めた。

(3)各軍種の取組

2019年4月、護衛艦「すずつき」が海自艦艇として約7年半ぶりに訪中し、中国人民解放軍海軍成立70周年を記念した中国主催国際観艦式に参加したほか、同月に海幕長が約5年半ぶりに訪中し、同観艦式に合わせ実施されたハイレベルシンポジウムにおいて、自由で開かれた海洋の重要性などについて発信した。これに続き、同年10月には、中国海軍ミサイル駆逐艦「太原」が中国艦艇として約10年ぶりに日本に寄港したほか、海自護衛艦との間で、約8年ぶり3回目となる親善訓練を実施した。

また、部隊間においても、2018年11月、中国軍東部戦区副司令員(中将)を団長とする東部戦区代表団が訪日したのに続き、2019年11月には、陸自西部方面総監を団長とする自衛隊代表団が東部戦区などを訪問した。このほか2018年には、6年ぶりに、笹川平和財団が主催する「日中佐官級交流」が再開されており、同年4月及び2019年9月に中国軍佐官級代表団が訪日したほか、2018年9月及び2019年4月に自衛隊佐官級訪問団が訪中し要人表敬、部隊への訪問などを行った。2021年10月には、「日中佐官級交流事業オンライン交流会」が実施され、日本側から防衛省・自衛隊の佐官級幹部14名、中国側から中央軍事委員会国際軍事協力弁公室・人民解放軍の将校14名が参加した。

(4)日中防衛当局間の海空連絡メカニズム

2007年1月及び同年4月の日中首脳会談において、安倍内閣総理大臣(当時)と温家宝(おん・かほう)中国国務院総理(当時)との間で両国の防衛当局間の連絡体制の強化、特に海上における連絡体制の整備で一致したことを踏まえ、日中防衛当局は、2008年4月に第1回共同作業グループ協議を開催し、以降、防衛当局間で、2015年1月の第4回共同作業グループ協議以降は両国の外交当局も交えた形で、協議を重ねてきた。

その後、2017年12月の第8回日中高級事務レベル海洋協議、2018年4月の第7回共同作業グループ協議などでの交渉を経て、同年5月に東京で開かれた日中首脳会談に際し、安倍内閣総理大臣(当時)と李克強(り・こくきょう)中国国務院総理の立ち合いのもと、日中防衛当局間で本メカニズムに関する覚書16の署名が行われ、同年6月8日、本メカニズムの運用が開始された。

本メカニズムは、日中防衛当局の間で、①日中両国の相互理解及び相互信頼を増進し、防衛協力・交流を強化するとともに、②不測の衝突を回避し、③海空域における不測の事態が軍事衝突又は政治外交問題に発展することを防止することを目的として作成されたものであり、主な内容は、①防衛当局間の年次会合・専門会合の開催、②日中防衛当局間のホットライン開設、③自衛隊と人民解放軍の艦船・航空機間の連絡方法となっている。

本メカニズムに基づき、同年12月には、防衛当局間で第1回年次会合・専門会合を開催し、直近では、2021年3月には第3回年次会合・専門会合が実施された。今後も、防衛省・自衛隊は、中国との間では、各種懸念が存在しているとの現状を踏まえ、わが国の率直な懸念を明確に伝えるべく、意思疎通を図っていくとともに、防衛交流を推進し、日中防衛当局間での相互理解・信頼醸成を進めつつ、わが国の領土・領海・領空を断固として守り抜くため、冷静かつ毅然と対応していくこととしている。

参照資料42(最近の日中防衛協力・交流の主要な実績(過去3年間))

7 ロシア
(1)ロシアとの防衛協力・交流の意義

ロシアとの関係については、ウクライナ情勢を踏まえ、政府としてG7の連帯を重視しつつ適切に対応することとしている。同時に、隣国であるロシアとの間で、不測の事態や不必要な摩擦を招かないためにも最低限の必要なコンタクトは絶やさないようにすることも必要である。2022年2月に発生したロシアによるウクライナ侵略について、政府は、明らかにウクライナの主権及び領土の一体性を侵害し、武力の行使を禁ずる国際法と国連憲章の深刻な違反であり、決して認められない行為であるとともに、このような力による一方的な現状変更は、国際秩序の根幹を揺るがすものであるとして、ロシアを最大限非難している。

参照資料43(最近の日露防衛協力・交流の主要な実績(過去3年間))

8 太平洋島嶼国
(1)太平洋島嶼国との防衛協力・交流の意義

太平洋島嶼国は、海洋国家であるわが国と法の支配に基づく自由で、開かれた、持続可能な海洋秩序の重要性についての認識を共有するとともに、わが国と歴史的にも深い関係を持つ重要な国々である。わが国としては、2018年に開催された第8回太平洋・島サミットにおいて、この地域の安定と繁栄により深くコミットしていく考えを表明した。さらに、同年に発表された防衛大綱においても、太平洋島嶼国との協力や交流を推進する旨が初めて言及された。

(2)最近の主要な防衛協力・交流実績

2020年6月及び同年8月、河野防衛大臣(当時)は、太平洋島嶼国の中で軍隊を保有する三か国であるフィジー、パプアニューギニア(PNG:Papua New Guinea)及びトンガの各国防大臣とそれぞれ電話会談を実施した。各会談において、新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえ意見交換を行い、防衛当局間のコミュニケーションを継続するとともに、FOIPの維持・強化に向け、防衛協力・交流を引き続き強力に推進していくことで一致した。

2021年9月、防衛省は、防衛省主催として初の多国間の国防大臣会合である日・太平洋島嶼国国防大臣会合(JPIDD:Japan Pacific Islands Defense Dialogue)をテレビ会議形式で開催した。同会合において、岸防衛大臣は議長を務め、フィジー、PNG及びトンガの各国防大臣級が出席した17。本会合では、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」、海洋安全保障、新型コロナウイルスへの対応、気候変動とHA/DR(人道支援・災害救援)について意見交換を行い、議論の成果として「日・太平洋島嶼国国防大臣会合共同声明」を採択した18

JPIDDの様子

JPIDDの様子

(3)各軍種の取組

ア 統合幕僚監部

2022年2月、統幕長はフィエラケパ・トンガ王国軍参謀総長との電話会談を行い、同年1月に発生したフンガトンガ・フンガハアパイ火山噴火によるトンガの被災に対するお見舞いを伝えるとともに、自衛隊の援助活動に関する意見交換を実施した。同年2月、統幕長はカロニワイ・フィジー国軍司令官と電話会談を行い、火山噴火の被害にあったトンガの被災者支援の状況について意見交換を行うとともに、自衛隊とフィジー軍が今後とも防衛協力・交流を通じて連携し、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けて協力していくことを確認した。

イ 陸上自衛隊

PNGとの間では、2015年以降、陸自中央音楽隊が同国の軍楽隊の新設・育成に関する能力構築支援を実施しており、関係強化が図られてきた。2017年の政府開発援助(ODA:Official Development Assistance)による楽器供与、防衛省の能力構築支援を経て、同軍楽隊は、2018年11月に同国で開催されたAPEC首脳会議の場において、各国首脳の前で高い技術で演奏を披露した。2021年9月にも、ポートモレスビーにおいて演奏や楽器整備に関する技術指導を行った。

ウ 海上自衛隊

2021年7月、海自護衛艦「まきなみ」がポートモレスビーに寄港した。また、同年9月、海自インド太平洋方面派遣部隊の護衛艦がパラオに寄港し、外務省との省庁間協力事業として、柔道着75着を輸送するとともに、日パラオ親善訓練を実施した。さらに、同部隊は同月にバヌアツ警察海上部隊と日バヌアツ親善訓練を実施した。加えて、同年10月には、海自遠洋練習航海部隊がマーシャル諸島に寄港した。

エ 航空自衛隊

2015年以降、空自は、ミクロネシア連邦などにおける人道支援・災害救援共同訓練「クリスマス・ドロップ」に参加し、物料投下訓練としてミクロネシア連邦、パラオ共和国及び北マリアナ諸島に対して寄付物品の投下を実施している。

参照資料44(最近の太平洋島嶼国との防衛協力・交流の主要な実績(過去3年間))

9 中東諸国
(1)中東諸国との防衛協力・交流の意義

中東地域の平和と安定は、わが国を含む国際社会の平和と繁栄にとって極めて重要であることから、防衛省・自衛隊としても、同地域の国と協力関係の構築・強化を図るため、ハイレベル交流や部隊間交流を進めてきている。最近の取組として、防衛省・自衛隊は、2021年12月から2022年4月にかけて、海自掃海艦による令和3年度インド太平洋・中東方面派遣(IMED:Indo-Pacific and Middle East Deployment)を実施し、わが国が同地域の安定と繁栄に深くコミットしていくという意思を示した。

参照IV部1章1節2項1(2)(中東方面派遣(IMED21))

(2)アラブ首長国連邦

ア 最近の主要な防衛協力・交流実績

アラブ首長国連邦(UAE:United Arab Emirates)との間では、2018年5月に防衛交流に関する覚書が署名され、同年12月には防衛当局間協議が開催された。

2020年1月、安倍内閣総理大臣(当時)がUAEを訪問して、ムハンマド・アブダビ皇太子と意見交換を行い、中東における日本関係船舶の航行の安全を確保するためのわが国の取組について直接説明し、その支持を得ている。2021年11月には、岸防衛大臣がボワルディ国防担当国務大臣との間でテレビ会談を行い、二国間の防衛協力・交流を推進していくとともに、中東地域における平和と安定及び航行の安全の確保のため、連携していくことで一致した。

イ 各軍種の取組

(ア)統合幕僚監部

2019年6月、統幕長が歴代統幕長として初めてUAEを訪問し、ムハンマド・アブダビ皇太子を表敬した。2020年7月及び2021年3月には、統幕長がルメーシー国軍参謀長とテレビ会談を実施し、国際社会及び地域の平和と安定のため、共通の課題に対し、引き続きともに対応していくことで一致した。

(イ)航空自衛隊

2021年11月には、空幕長がアラブ首長国連邦空軍の主催する空軍司令官等ドバイ国際会議及びドバイ・エアショーに参加し、ボワルディ国防担当国務大臣を表敬訪問するとともに、アラウィ空軍司令官と会談を行った。また同月には、空自C-2輸送機が2019年に続き、同エアショーに参加した。参加期間中には、アラウィ空軍司令官が、派遣された空自C-2輸送機を視察するなど、二国間の防衛交流は深化を続けている。

ドバイ・エアショーに参加中の空自C-2輸送機において、機体の説明を行う井筒空幕長

ドバイ・エアショーに参加中の空自C-2輸送機において、
機体の説明を行う井筒空幕長

(3)イスラエル

ア 最近の主要な防衛協力・交流実績

イスラエルとの間では、2018年10月に続き、2021年1月、第2回外務・防衛当局間協議をテレビ会議形式で開催し、地域情勢、安全保障問題など、幅広い事項について意見交換を実施した。2018年11月、第4回日イスラエル・サイバー協議が開催され、2019年9月には、防衛当局間で「防衛省とイスラエル国防省の間の防衛装備・技術に関する秘密情報保護の覚書」に署名するなど、安全保障分野での関係を強化している。

イ 各軍種の取組

2019年6月、統幕長が歴代統幕長として初めてイスラエルを訪問したほか、2020年6月には、コハビ国軍参謀総長と電話会談を実施した。2021年11月には空幕長がノルキン空軍司令官と会談するなど、軍種間でも交流を推進している。

(4)イラン

ア 最近の主要な防衛協力・交流実績

イランとの間では、2019年12月の日イラン首脳会議において、安倍内閣総理大臣(当時)から、中東における日本関係船舶の航行の安全を確保するためのわが国の取組について詳細に説明した。また、同年10月及び2020年1月、河野防衛大臣(当時)は、ハータミ国防軍需大臣と防衛大臣として初の電話会談を実施し、両大臣は地域情勢などについて意見交換を行った。2021年2月には、岸防衛大臣がハータミ国防軍需大臣とテレビ会談を実施し、中東地域における日本関係船舶の安全確保のための自衛隊による情報収集活動の延長について説明するとともに、防衛当局間の意思疎通を継続していくことで一致した。

(5)エジプト

ア 最近の主要な防衛協力・交流実績

エジプトとの間では、2017年9月、山本防衛副大臣(当時)が防衛省の政務三役として初めてエジプトを訪問した。

2020年6月には、統幕長がヘガージ参謀総長(当時)と電話会談し、日エジプト防衛協力の推進の重要性について確認した。

(6)オマーン

ア 最近の主要な防衛協力・交流実績

オマーンとの間では、2019年3月、バドル国防担当大臣が訪日し、岩屋防衛大臣(当時)と会談した際、防衛協力に関する覚書が署名された。同年12月、河野防衛大臣(当時)は、防衛大臣として初めてオマーンを訪問し、バドル国防担当大臣と会談した。両大臣は、FOIPのもと、海軍種間での協力を中心とした防衛協力・交流を引き続き深化させていくことを確認した。2020年1月には、安倍内閣総理大臣(当時)がオマーンを訪問して、ハイサム国王と意見交換を行い、中東における日本関係船舶の航行の安全を確保するためのわが国の取組について直接説明して、その支持を得た。

(7)カタール

ア 最近の主要な防衛協力・交流実績

カタールとの間では、2015年2月、防衛交流に関する覚書が署名された。2019年5月に訪日したアティーヤ副首相兼防衛担当国務大臣は、岩屋防衛大臣(当時)と、初の防衛相会談を実施した。同年12月、河野防衛大臣(当時)は、同国が主催する第19回ドーハ・フォーラムに防衛大臣として初めて出席し、アティーヤ副首相兼防衛担当国務大臣と会談を実施した。会談において、両大臣は、日カタール防衛協力・交流が進展していることを歓迎し、教育・訓練などの分野での防衛協力・交流を引き続き深化させていくことを確認した。

イ 各軍種の取組

2021年10月、統幕長は、アル・ガーニム・カタール軍参謀総長とテレビ会談を実施し、アフガニスタンにおける邦人等輸送に際し、カタール軍から得た後方支援に対し、謝意を表明するとともに、日カタール間の防衛協力・交流について、FOIPの実現に向け、両国の協力関係を強化していくことで一致した。

カタール軍参謀総長とテレビ会談を行う山崎統幕長

カタール軍参謀総長とテレビ会談を行う山崎統幕長

(8)サウジアラビア

ア 最近の主要な防衛協力・交流実績

サウジアラビアとの間では、2016年9月、防衛交流に関する覚書が署名された。また、2020年1月には、安倍内閣総理大臣(当時)がサウジアラビアを訪問し、サルマン国王やムハンマド皇太子を表敬した。同年9月には、河野防衛大臣(当時)とムハンマド皇太子兼副首相兼国防大臣との電話会談が実施され、両大臣は、二国間の防衛協力・交流や地域情勢などについて意見交換を行ったほか、河野防衛大臣から中東地域における日本関係船舶の安全確保を目的とした自衛隊による情報収集活動について説明した。

また、2021年2月には、岸防衛大臣がハーリド国防副大臣と電話会談を行い、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ、感染症対策分野においても防衛協力・交流を推進していくことで一致するとともに、中東地域における平和と安定及び航行の安全の確保のため、引き続き連携していくことで合意した。

(9)トルコ

ア 最近の主要な防衛協力・交流実績

トルコとの間では、2012年7月に、事務次官がドゥンダル国防次官(当時)との会談において防衛協力・交流の意図表明文書に署名した。2019年7月には、アカル国防大臣がG20に伴う大統領随行で訪日し、岩屋防衛大臣(当時)と懇談した。同年6月には、ドゥンダル陸軍総司令官(当時)が訪日し、陸幕長と懇談したほか、防衛副大臣を表敬した。

(10)バーレーン

ア 最近の主要な防衛協力・交流実績

バーレーンとの間では、2019年10月、河野防衛大臣(当時)とハリーファ国軍司令官との電話会談が実施され、両大臣は、二国間の防衛交流や中東情勢などについて意見交換した。また、同年11月、河野防衛大臣は、同国で開催された第15回マナーマ対話に際してハリーファ国軍司令官と初の大臣級における防衛当局間での会談を実施し、今後ハイレベル交流や海軍種を中心とした交流を引き続き行っていくことで一致した。

イ 各軍種の取組

2020年8月、統幕長がヌアイミ国軍参謀長とのテレビ会談を実施し、両国の防衛交流や新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止への取組などについて意見交換した。また、2022年1月から同年2月にかけて、海自インド太平洋・中東方面派遣部隊が、バーレーンに寄港するとともに、周辺海空域で実施した米国主催国際海上訓練(IMX/CE22)に参加した。

(11)ヨルダン

ア 最近の主要な防衛協力・交流実績

ヨルダンとの間では、2016年10月、アブドッラー国王が訪日した際に、日ヨルダン防衛交流に関する覚書に署名した。2018年11月には、アブドッラー国王が訪日し、岩屋防衛大臣(当時)からの表敬及び習志野駐屯地への部隊訪問を通じ、両国間で防衛当局者協議や部隊間交流などが着実に進展していることを歓迎した。

また、2019年12月、河野防衛大臣(当時)は、防衛大臣として初めてヨルダンを訪問し、フネイティ統合参謀本部議長と会談した。会談では、フネイティ統合参謀本部議長から、同年7月に初の外務・防衛当局間協議が開催されるなど両国の防衛交流が進展していることや、今後も訓練や装備分野などでの協力を進めていきたい旨の発言に対し、河野防衛大臣から、当該分野での協力を検討していく旨述べた。

さらに、2020年10月に続き2021年11月には、第3回外務・防衛当局間協議がテレビ会議形式で開催された。

参照資料45(最近の中東諸国との防衛協力・交流の主要な実績(過去3年間))

10 アジア諸国
(1)スリランカ

ア スリランカとの防衛協力・交流の意義

スリランカは、インド洋のシーレーン上の要衝に位置する重要国であり、近年、同国との防衛協力・交流を強化している。

イ 最近の主要な防衛協力・交流実績

2018年8月、小野寺防衛大臣(当時)が、防衛大臣として初めてスリランカを訪問し、ウィジェワルダナ国防担当国務大臣(当時)と両国間で初となる防衛相会談を実施した。会談では、海洋安全保障及び海上の安全について議論するとともに、スリランカ側から今後、陸海空軍のHA/DR分野の能力向上を通じてスリランカ軍全体としての能力を高めていきたい旨述べられたことに対し、小野寺防衛大臣もこれを支援する意向を示した。

2019年7月には、原田防衛副大臣(当時)がスリランカを訪問し、ウィジェワルダナ国防担当国務大臣との会談やシリセーナ大統領兼国防大臣(いずれも当時)を表敬し、FOIPの推進に向けて、スリランカと日本の海洋国家間のパートナーシップを一層強化する必要性について認識を共有した。

2021年7月、岸防衛大臣とラージャパクサ大統領(国防省を所管)がテレビ会談を行い、海軍種間協力や空軍種間協力など、幅広い分野での交流が着実に進展していることを歓迎した。また、岸防衛大臣は、東シナ海や南シナ海における力を背景とした一方的な現状変更の試みにも強く反対していくことを述べ、両者は、法の支配に基づく自由で開かれた海洋秩序が重要とのメッセージを明確に発信していくことで一致した。

ウ 各軍種の取組

(ア)海上自衛隊

2021年6月、海自護衛艦「ゆうぎり」がトリンコマリー沖で米スリランカ主催共同訓練「CARAT」に参加するとともに、同年10月、海自インド太平洋方面派遣部隊は、コロンボ周辺で日スリランカ共同訓練「JA-LAN EX」を実施し、戦術技量の向上及びスリランカ海軍との連携強化を図った。また、2022年1月には、海自インド太平洋・中東方面派遣部隊が、トリンコマリー沖で、さらに同年2月にはコロンボ沖で日スリランカ親善訓練を実施し、戦術技量の向上及び相互理解の増進を図った。

日スリランカ共同訓練「JA-LAN EX」の様子

日スリランカ共同訓練「JA-LAN EX」の様子

(イ)航空自衛隊

スリランカ空軍への能力構築支援として、2021年5月、オンライン形式により、同国空軍関係者約7名に対し、第2回目となる航空救難セミナーを実施した。セミナーでは、空自の航空捜索救難に関する能力や要領について紹介した。

(2)パキスタン

ア パキスタンとの防衛協力・交流の意義

パキスタンは、南アジア、中東、中央アジアの連接点に位置し、わが国にとって重要なシーレーンにも面しているなど、インド太平洋地域の安定にとって重要な国家である。また、同国は、伝統的にわが国と友好的な関係を有する親日国でもあり、そのような観点から、同国との防衛協力・交流を推進している。

イ 最近の主要な防衛協力・交流実績

同国との間では、2004年以来おおむね2年に1回の頻度で局長級の防衛政策対話を実施しているが、2019年6月には、2年連続となる防衛政策対話を実施し、日パキスタン防衛協力・交流の覚書に署名した。2021年6月には、第11回目となる防衛政策対話をテレビ会議形式で実施した。2020年8月には、河野防衛大臣(当時)がバジュワ陸軍参謀長とテレビ会談を実施し、新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえ、両国間の防衛協力・交流などについて意見交換を行った。

ウ 各軍種の取組

(ア)海上自衛隊

海自は、パキスタンが主催する海軍種の多国間共同訓練「アマン」への参加や教育交流などを実施しているほか、2021年7月には、海自護衛艦「ゆうぎり」が、カラチ沖でパキスタン海軍と親善訓練を行った。

(イ)航空自衛隊

2021年11月、ドバイ・エアショーにおいて、パキスタン空軍との部隊間交流を実施し、相互の参加航空機にかかる知見交換を実施するなど、相互理解と信頼醸成を図った。

(3)バングラデシュ

ア バングラデシュとの防衛協力・交流の意義

バングラデシュは、南アジア、中東、中央アジアの連接点に位置し、わが国にとって重要なシーレーンにも面しているなど、インド太平洋地域の安定にとって重要な国家である。

イ 各軍種の取組

2022年は日本がバングラデシュとの外交関係樹立50周年を迎える節目の年となり、同年1月には、海自インド太平洋・中東方面派遣部隊は、チッタゴン沖においてバングラデシュ海軍と親善訓練を実施し、戦術技量の向上及び相互理解の増進を図った。

(4)モンゴル

ア モンゴルとの防衛協力・交流の意義

モンゴルは、わが国と普遍的価値を共有する重要なパートナーであり、防衛省・自衛隊としても、「戦略的パートナーシップ」の発展に向け、同国との防衛協力・交流を推進している。

イ 最近の主要な防衛協力・交流

2020年6月、河野防衛大臣(当時)は、エンフボルド国防大臣とテレビ会談を実施し、東シナ海・南シナ海情勢を含む地域情勢などについて意見交換したほか、新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえつつ、FOIPの維持・強化に向け、日モンゴル防衛協力・交流を引き続き強力に推進していくことで一致した。

また、能力構築支援については、2021年8月、人道支援・災害救援(HA/DR)に関する衛生分野のオンラインセミナーを開催し、自衛隊中央病院が行っている訓練概要を紹介したほか、両国の感染症対策などの知見を共有し、相互理解を深めた。また、同年8月から同年9月にかけて、モンゴル軍工兵部隊のPKO派遣に向けた能力向上を目的として道路建設及び測量の技術支援の事業を実施した。

参照資料46(最近のアジア諸国との防衛協力・交流の主要な実績(過去3年間))

11 アフリカ諸国
(1)ジブチ

ア ジブチとの防衛協力・交流の意義

ジブチは、海賊対処のため、海外で唯一自衛隊の拠点が存在する重要な国家である。同拠点はUNMISS派遣部隊への物資の輸送に活用されたほか、2021年11月から同年12月にかけて、わが国がジブチに対して災害対処能力強化支援として実施している陸自教官によるジブチ軍工兵部隊要員に対する重機操作・整備訓練の際に、教官の事務室などとして活用された。

イ 最近の主要な防衛協力・交流実績

2019年12月、河野防衛大臣(当時)が、ジブチを訪問し、ブルハン国防大臣と会談を実施した。会談では、両大臣は、日ジブチ防衛協力・交流の深化のため、防衛当局間で引き続き連携を密にしていくことを確認した。また、この会談の中で、河野防衛大臣はジブチにおける自衛隊の活動拠点の運用に関する同国政府の支持に対する感謝を伝えたほか、中東地域における日本関係船舶の安全確保のための自衛隊による情報収集活動に関し、ジブチを拠点に活動する海賊対処部隊の固定翼哨戒機を活用することについて説明した。2021年7月には、ジブチとの防衛協力・交流の一環として、ジブチ国防省の文官(1名)を招へいして、国防大臣を支える官房機能強化を目的とした研修プログラムを実施した。

今後、本活動拠点について、中東・アフリカ地域における安全保障協力などのための長期的・安定的な活用に向けて取り組むこととしている。

参照資料47(最近のその他の諸国との防衛協力・交流の主要な実績(過去3年間))

12 中南米諸国
(1)中南米諸国との防衛協力・交流の意義

中南米諸国には、太平洋に面する国や、わが国と基本的価値を共有する国が多く存在しており、そのような国々との防衛協力・交流を推進している。

(2)コロンビア

ア 最近の主要な防衛協力・交流実績

コロンビアとの間では、2016年12月、防衛交流に関する覚書に署名した。

(3)ブラジル

ア 最近の主要な防衛協力・交流実績

ブラジルとの間では、2020年12月、岸防衛大臣は、シルヴァ国防大臣と両国間で初となる日ブラジル防衛相会談をオンラインで実施した。その際、日ブラジル防衛協力・交流に関する覚書に署名し、今後も防衛協力・交流を強力に推進していくことで合意した。

(4)ジャマイカ

ア 最近の主要な防衛協力・交流実績

ジャマイカとの間では、2019年12月、ホルネス首相兼国防大臣が来日し、河野防衛大臣(当時)と会談した。

(5)チリ

ア 各軍種の取組

2021年1月、海幕長がレイヴァ海軍司令官とテレビ会談を行い、海軍種間交流を促進することで一致した。

(6)ペルー

ア 各軍種の取組

2021年11月、海自護衛艦「あぶくま」が、ペルー海軍コルベット「ギセ」と東シナ海において親善訓練を実施し、戦術技量の向上及び相互理解の増進を図った。また、その後「ギセ」は横須賀港に寄港した。

参照資料47(最近のその他の諸国との防衛協力・交流の主要な実績(過去3年間))

2 国家安全保障戦略においては、「自由、民主主義、基本的人権の尊重、法の支配など」を普遍的価値としている。

3 正式名称:日本国の自衛隊とオーストラリア国防軍との間における物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とオーストラリア政府との間の協定  従来の適用対象となる活動に加え、①国際連携平和安全活動、②国際平和共同対処事態、③重要影響事態、④武力攻撃事態等及び⑤存立危機事態における活動のほか、⑥在外邦人等の保護措置、⑦海賊対処行動、⑧機雷等の除去及び⑨情報収集活動についても新たにその適用対象となった。

4 一方の部隊が他方の国の領域を訪問する際の手続きの確立や法的地位の明確化を通じて、自衛隊と豪州国防軍との間の共同訓練や災害救援活動等の協力活動を円滑化する二国間協定

5 南太平洋に位置する諸国(トンガ、オーストラリア、ニュージーランド、パプアニューギニア、チリ、フランス、フィジーの7か国)の国防大臣が集まり、同地域の平和と安定の維持に不可欠な安全保障にかかるあらゆる議題について議論する会議。

6 第9回日豪外務・防衛閣僚協議(「2+2」)共同声明については防衛省HPを参照(https://www.mod.go.jp/j/approach/exchange/area/2021/20210609_aus-j.html

7 UGV(Unmanned Ground Vehicle)とは、陸上無人車両のことを指す。

8 海自の自衛艦旗については、防衛省HPを参照(https://www.mod.go.jp/j/publication/shiritai/flag/index.html

9 2018年12月、能登半島沖(わが国排他的経済水域内)において警戒監視中の海自P-1哨戒機が韓国海軍「クァンゲト・デワン」級駆逐艦から火器管制レーダーを照射されるという事案が発生した。防衛省は本件事案を重く受け止め、2019年1月に客観的事実を取りまとめた最終見解を公表し、韓国側に再発防止を強く求めている。なお、自衛隊の哨戒機は、十分な高度と距離を確保して飛行しており、韓国の艦艇に脅威を与えるような飛行は行っていない。防衛省としては、今後とも安全に十分配意しつつ、警戒監視及び情報収集に万全を期すこととしている。なお、詳細については、防衛省HPを参照(https://www.mod.go.jp/j/approach/defense/radar/index.html

10 日韓GSOMIAにおける協定の終了に関する規定は、次のとおり。  第二十一条 効力発生、改正、有効期間及び終了(抜粋)  3 この協定は、一年間効力を有し、一方の締約国政府が他方の締約国政府に対しこの協定を終了させる意思を九十日前に外交上の経路を通じて書面により通告しない限り、その効力は、毎年自動的に延長される。

11 対象となる活動として、①共同訓練、②国際連合平和維持活動、③国際連携平和安全活動、④人道的な国際救援活動、⑤大規模災害への対処、⑥在外邦人等の保護措置及び輸送、⑦連絡調整その他の日常的な活動、⑧それぞれの国内法令により物品又は役務の提供が認められるその他の活動があげられている。

12 本訓練には日英米蘭4か国が参加し、3回目及び4回目にはカナダも参加した。

13 岸防衛大臣スピーチについては、防衛省HPを参照(https://www.mod.go.jp/j/approach/exchange/area/2021/20210617_eu-j.html

14 IPCPは、日NATO協力の一層の進展を目的として、ハイレベル対話の強化や防衛協力・交流の促進などの協力を推進する旨定めるとともに、実務的な協力の優先分野を特定している。2020年6月にIPCPが再度改訂され、実務的な協力の優先分野として「人間の安全保障」が追加された。

15 「欧州議会安全保障・防衛小委員会」における岸防衛大臣スピーチについては、防衛省HPを参照(https://www.mod.go.jp/j/approach/exchange/area/2021/20210617_eu-j.pdf

16 正式名称:日本国防衛省と中華人民共和国国防部との間の海空連絡メカニズムに関する覚書

17 本会合には、そのほかオーストラリア、カナダ、クック諸島、フランス、ミクロネシア連邦、キリバス共和国、マーシャル諸島共和国、ナウル共和国、ニュージーランド、ニウエ、パラオ共和国、ソロモン諸島、ツバル、英国、米国及びバヌアツの代表者が参加した。

18 日・太平洋島嶼国国防大臣会合(JPIDD)共同声明については、防衛省HPを参照(https://www.mod.go.jp/j/approach/exchange/dialogue/jpidd/20210902_j-jpidd.html