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第III部 わが国防衛の三つの柱(防衛の目標を達成するための手段)

2 各国との防衛協力・交流の推進

安全保障分野での協力・交流を推進するに際しては、地域の特性、相手国の実情やわが国との関係なども踏まえつつ、最適な手段を組み合わせた二国間での防衛協力・交流が重要となる。

1 オーストラリア
(1)オーストラリアとの防衛協力・交流の意義など

オーストラリアは、ともに米国の同盟国として、普遍的価値2のみならず安全保障上の戦略的利益を共有するわが国にとって、インド太平洋地域の「特別な戦略的パートナー」である。特に近年、両国はインド太平洋地域において責任ある国として、災害救援や人道支援活動などの分野を中心とした相互協力や、能力構築支援に関する協力を強化している。

日豪防衛協力の深化を背景に、日豪両国は、2007年3月、わが国にとって米国以外で初の安全保障に特化した共同宣言である「安全保障協力に関する日豪共同宣言」を発表したほか、これまでに日豪ACSAや日豪情報保護協定、日豪防衛装備品・技術移転協定といった協力のための基盤を整備してきている。

日豪ACSA3については、両国の防衛協力・交流のさらなる進展などにより自衛隊が豪軍と共に活動するケースが拡大していることやわが国における平和安全法制の整備を踏まえ、2017年1月、物品又は役務の提供が可能な場面などを拡大する新たな協定の署名が行われ、同年4月の国会承認を経て同年9月に発効した。これにあわせて関連する国内法令も整備された。

防衛省・自衛隊は、地域における平和と安定の維持に共に貢献する意思と能力を兼ね備えた「特別な戦略的パートナー」であるオーストラリアとの間において、相互運用性の更なる向上等を図るため、協力を一層深化させていくこととしている。

(2)最近の主要な防衛協力・交流実績など

2020年11月、菅内閣総理大臣はモリソン首相との日豪首脳会談を東京において実施し、「特別な戦略的パートナーシップ」のもとでの二国間の安全保障・防衛協力を新たな次元に引き上げることを決意した。この観点から、両首脳は、日豪間の円滑化協定4がインド太平洋地域における両国間の戦略的協力のさらなる強化のための強固な基盤となるとの強い信念を表明し、同協定が大枠合意に至ったことを歓迎した。

同年5月及び10月には、河野防衛大臣及び岸防衛大臣は、レイノルズ国防大臣との間で電話会談を行った。両大臣は、東シナ海・南シナ海を含む地域情勢などについて意見交換し、日豪両国間の「特別な戦略的パートナーシップ」に基づき、FOIPの維持・強化に向け、日豪防衛協力・交流を引き続き強力に推進していくことで一致したほか、インド太平洋における新型コロナウイルス感染症の拡大及びその影響への対応をめぐる協力について議論した。

同年10月、岸防衛大臣は、レイノルズ国防大臣との間で、新型コロナウイルス感染症拡大後初となる、東京における対面での日豪防衛相会談を実施した。

訪日した豪国防大臣と共同記者会見を行う岸防衛大臣(2020年10月)

訪日した豪国防大臣と共同記者会見を行う岸防衛大臣(2020年10月)

同会談において両大臣は、東シナ海・南シナ海及び北朝鮮を含む地域情勢について意見交換を行った。東シナ海・南シナ海については、力を背景とした一方的な現状変更の試みに対し強く反対する旨の明確なメッセージを発出し、日豪間で緊密な連携を維持していくことで一致した。また、北朝鮮については、すべての大量破壊兵器及びあらゆる射程の弾道ミサイルの、完全な、検証可能な、かつ、不可逆的な廃棄を達成するための取組に日豪が引き続きコミットしていくことや、北朝鮮籍船舶が関与する違法な「瀬取り」に対する警戒監視活動について引き続き日豪でも連携していくことを確認した。

また、両大臣は、防衛・安全保障上の関心分野にわたって、さらに深い関係を築くためのあらゆる取組を進めることを決心し、インド太平洋地域における定期的な二国間・多国間の協力活動を強化すること、自衛隊・豪軍間の相互運用性を強化すること、人的交流を通じた相互理解の強化を継続すること、相互互恵的な分野における宇宙・サイバー協力を推進すること及び防衛科学・技術協力を深化することで一致した。

さらに、新型コロナウイルス感染症拡大時の人道支援・災害救援活動で得られた教訓を共有すること、地域の強靭性を高めるべく能力構築の新たな機会を模索すること、偽情報に共に対処することなどについて意見交換を継続することで一致した。

また、両大臣は、自衛隊法第95条の2(米軍等の部隊の武器等防護)にかかる自衛官による豪軍の武器等の警護任務の実施に向けた体制構築に必要な調整を開始するよう、事務当局に指示した。

さらに、能力構築支援、海洋安全保障、並びに、人道支援及び災害対処の分野において、太平洋島嶼国との協力に共同で取り組む意向を再度表明した。

軍種間の主な協力・交流として、2020年4月、統幕長は、キャンベル国防軍司令官との電話会談を行い、FOIPに基づき日豪防衛協力・交流を推進する重要性について確認した。陸幕長は同年7月及び12月、バー陸軍本部長と、海幕長は同年8月、ヌーナン海軍本部長と、空幕長は同年5月、8月及び10月、ハプフェルド空軍本部長とそれぞれ電話会談又はテレビ会談を行い、新型コロナウイルス感染症の影響下においてもFOIPの維持・強化のため、今後も各軍種間で緊密に協力していくことで一致した。

このほか、陸自は、2021年1月、国内で初めてとなる豪陸軍連絡将校の受入れを行い、人的交流を通じた相互理解の強化及び相互運用性の深化を推進している。また海自は、2020年9月に、インド太平洋方面派遣訓練部隊が南シナ海において、同年11月には護衛艦「しまかぜ」が九州西方海空域において、2021年3月には外洋練習航海実施中の護衛艦「あけぼの」が南シナ海において、それぞれ日豪共同訓練を実施し、戦術技量の向上及び豪海軍との連携強化を図った。

護衛艦「いせ」に帽子を振る豪海軍フリゲート艦「STUART」乗組員(2020年9月)

護衛艦「いせ」に帽子を振る
豪海軍フリゲート艦「STUART」乗組員(2020年9月)

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参照資料31(最近の日豪防衛協力・交流の主要な実績(過去3年間))

(3)日米豪の協力関係など

わが国とオーストラリアは、普遍的価値を共有しており、インド太平洋地域及び国際社会が直面する様々な課題の解決のため、緊密に協力している。このような協力をより効果的・効率的なものとし、地域の平和と安定に貢献していくためには、日豪それぞれの同盟国である米国を含めた日米豪3か国による協力を積極的に推進することが重要である。

2007年4月以降、計10回にわたって、3か国局長級会合である日米豪安全保障・防衛協力会合(SDCF:Security and Defense Cooperation Forum)が行われている。

また、2020年7月、河野防衛大臣は、エスパー米国防長官、レイノルズ国防大臣との間で、日米豪3か国防衛相テレビ会談を実施し、共通の価値観や長きにわたる同盟及び緊密なパートナーシップを維持しながら、インド太平洋地域の安全、安定及び繁栄を強化するという共同のコミットメントを再確認した。

軍種間の主な交流として、同年9月、陸幕長は、日米豪シニア・リーダーズ・セミナーにオンラインで参加した。米太平洋陸軍、米太平洋海兵隊及び豪陸軍のトップとの間で意見を交換し、FOIPの実現のため、引き続き連携していくことで認識を共有した。海自は、同年7月、10月及び11月、南シナ海やベンガル湾などにおいて、日米豪共同訓練を実施したほか、2021年1月には、海幕長がアクイリノ米太平洋艦隊司令官及びヌーナン海軍本部長とテレビ会談を行い、日米豪海軍種間の連携強化を図った。

また空自は、同年1月から2月にかけて、日米豪共同訓練等「コープ・ノース21」を共催した。

このように、日米豪3か国間での様々な機会を通じて、情勢認識や政策の方向性をすり合わせつつ、相互運用性を高める努力を続けている。

日米豪共同訓練において、米空軍機とともに編隊飛行する空自F-15J戦闘機(左から2機目)(2021年2月)

日米豪共同訓練において、米空軍機とともに編隊飛行する
空自F-15J戦闘機(左から2機目)(2021年2月)

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参照資料46(多国間共同訓練の参加など(過去3年間))

2 インド
(1)インドとの防衛協力・交流の意義など

インドは、世界第2位の人口と、高い経済成長や潜在的経済力を背景に影響力を増しており、わが国と中東、アフリカを結ぶシーレーン上のほぼ中央に位置するなど、極めて重要な国である。また、インドとわが国は、普遍的価値を共有するとともに、アジア及び世界の平和と安定、繁栄に共通の利益を有しており、特別な戦略的グローバル・パートナーシップを構築している。このため、日印両国は「2+2」などの枠組みも活用しつつ、海洋安全保障をはじめとする幅広い分野において協力を推進している。

日印間の防衛協力・交流は、2008年10月に「日印間の安全保障協力に関する共同宣言」が署名されて以来着実に深化し、防衛大臣などの各レベルでの協議や、二国間及び多国間の訓練を含む軍種間交流などが定期的に行われている。2014年9月には日印防衛協力及び交流の覚書が、2015年12月には日印防衛協力・交流の制度上の基礎をさらに整備する日印防衛装備品・技術移転協定及び日印秘密軍事情報保護協定がそれぞれ署名され、地域やグローバルな課題に対応できるパートナーとしての関係とその基盤が強化されている。

(2)最近の主要な防衛協力・交流実績など

2018年10月、日印物品役務相互提供協定(ACSA)の締結に向けた交渉が開始され、2020年9月に、日印ACSAへの署名が行われた。同月には、安倍内閣総理大臣とモディ首相との間で日印首脳電話会談が開催され、日印ACSAが署名に至ったことを歓迎した。

日印ACSAの署名(2020年9月)【外務省】

日印ACSAの署名(2020年9月)【外務省】

2019年11月には、日印間で初となる第1回外務・防衛閣僚会合「2+2」が開催され、新たな安全保障上の課題の認識を共有し、二国間の安全保障協力を進めることに対するコミットメントを改めて表明した。また、防衛当局間の日印共同訓練を定期的に実施し、さらに拡充するために継続的な努力を行うことで一致するとともに、海自とインド海軍間の協力の深化に係る実施取決めに基づき、情報交換が強化されたことを評価した。防衛装備・技術協力に関しては、事務レベル協議での生産的な議論に期待を表明するとともに、多国間協力や地域情勢についても意見交換を行った。

また、2020年5月、河野防衛大臣は、シン国防大臣と電話会談を行い、FOIPの維持・強化が日印両国共通の利益であることを強調した。そのうえで、両大臣は、新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえつつ、二国間の防衛協力・交流などについて意見を交換し、感染症収束後、初の日印戦闘機共同訓練に向けた調整を速やかに再開させ、日印防衛協力を具体化することで合意した。

同年12月には、岸防衛大臣が、シン国防大臣と電話会談を行い、両大臣は、日印ACSAの署名や日米印豪で実施された海軍種間共同訓練「マラバール」の成功による成果を確認し、二国間及び日印両国を含む多国間の防衛協力・交流が新型コロナウイルス感染症の拡大下においても推進されていることを歓迎した。また、東シナ海・南シナ海を含む地域情勢について意見交換を実施し、力を背景とした一方的な現状変更の試みに強く反対するメッセージを明確に発信していくことで一致した。

防衛装備・技術協力においては、2018年7月から「UGV5/ロボティクスのための画像による位置推定技術に係る共同研究」を継続している。

軍種間の主な交流については、2020年11月、統幕長はラワット国防参謀長と電話会談を行い、「日印特別戦略的グローバル・パートナーシップ」を一層促進すべく、二国間協力を強化するとともに、FOIPのもと、日米豪印の防衛協力を推進することの重要性について確認した。同年9月及び2021年3月には、陸幕長がナラヴァネ陸軍参謀長と電話会談し、FOIPの実現のため、日印陸軍種間の防衛協力・交流を推進していくことで一致した。

また、2020年9月には、海幕長がシン海軍参謀長とテレビ会談し、日印海軍種間の交流を活発化させ、共同訓練をより実効性の高い内容とすることで合意した。空幕長はバーダウリア空軍参謀長と、同年4月及び8月に電話会談を、9月にテレビ会談を実施し、空軍種間の強固な連携を維持することを再確認するとともに、同年12月には訪印し、バーダウリア空軍参謀長のほか、シン国防大臣、ラワット国防参謀長などと会談した。空自は、同年10月、インド空軍とヘリコプターの塩害対処にかかる専門家交流をオンラインで実施するなど、新型コロナウイルス感染症の影響下においても交流を継続している。

演習・訓練などを通じた軍種間交流については、同年6月、海自遠洋練習航海部隊が親善訓練を実施したほか、同年9月には、インド太平洋方面派遣訓練部隊が日印共同訓練(JIMEX)を実施した。

インド海軍と日印共同訓練(JIMEX)を実施する護衛艦「いかづち」(2020年9月)

インド海軍と日印共同訓練(JIMEX)を実施する
護衛艦「いかづち」(2020年9月)

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さらに、日米印3か国では、2017年より海軍種の日米印共同訓練「マラバール」を実施している。2020年11月には、豪海軍を加えた日米印豪共同訓練「マラバール2020」を実施し、FOIPを維持・強化していくという4か国の一致した意思を具現化するとともに、民主主義や法の支配といった基本的価値を共有する4か国の連携・結束を内外に示した。このような4か国の協力は極めて重要であり、2021年3月には、初の日米豪印首脳テレビ会議が開催されるなど、政府としても日米豪印4か国の連携が強化されている中、防衛省としても、日米豪印4か国の協力を引き続き追求していく方針である。

インド空軍から栄誉礼を受ける井筒空幕長(2020年12月)

インド空軍から栄誉礼を受ける井筒空幕長(2020年12月)

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URL:https://youtu.be/eKuZ1EZFaz4(別ウィンドウ)

参照資料32(最近の日印防衛協力・交流の主要な実績(過去3年間))

3 東南アジア(ASEAN)諸国

高い経済成長を続け、「世界の開かれた成長センター」としての潜在力を世界各国から注目されているASEAN(Association of Southeast Asian Nations)諸国とわが国は、50年近くに及ぶ交流の歴史と密接な経済関係を有する伝統的パートナーである。

わが国のシーレーンの要衝を占め、戦略的に重要な地域に位置するASEAN諸国は、わが国及び地域全体の平和と繁栄の確保においても重要な役割を果たしており、地域協力の要となるASEANの中心性・一体性・強靭性の強化の動きを支援しつつ、ASEAN諸国との間で安全保障・防衛分野における協力・交流を一層強化し、信頼関係を増進することは重要である。

このような考えに基づき、ASEAN諸国との間では、ハイレベル・実務レベル交流を通じた信頼醸成及び相互理解の促進を行うとともに、能力構築支援、共同訓練、防衛装備・技術協力などの実質的な協力を推進している。また、ASEAN諸国との二国間協力に加え、拡大ASEAN国防相会議(ADMM(ASEAN Defence Ministers' Meeting)プラス)やASEAN地域フォーラム(ARF:ASEAN Regional Forum)といった多国間の枠組みでの協力も強化しており、2016年11月の第2回日ASEAN防衛担当大臣会合で今後の日ASEAN防衛協力の指針として表明した「ビエンチャン・ビジョン」は、ASEAN全体への防衛協力の方向性について、透明性をもって重点分野の全体像を初めて示したものであった。

また、2019年11月、タイで開催された第5回日ASEAN防衛担当大臣会合において、河野防衛大臣は「ビエンチャン・ビジョン」のアップデート版である「ビエンチャン・ビジョン2.0」を発表し、ASEAN各国の大臣から歓迎の意が示された。

防衛省としては、こうした二国間・多国間の協力を積極的に促進し、インド太平洋地域の安全保障環境を安定化させる観点から、ASEAN諸国との防衛協力・交流のさらなる強化を図ることとしている。

参照本節3項(多国間における安全保障協力の推進)
本節4項(能力構築支援への積極的かつ戦略的な取組)
資料33(最近のASEAN諸国との防衛協力・交流の主要な実績(過去3年間))
資料45(ビエンチャン・ビジョン2.0)

(1)インドネシア

インドネシアとの間では、防衛分野においてもわが国と活発な協力・交流が行われており、2015年3月の日インドネシア首脳会談において、安倍内閣総理大臣とジョコ大統領は、海洋と民主主義に支えられた戦略的パートナーシップの強化で一致し、日インドネシア「2+2」を開催することについて再確認した。同年12月に東京で初めて開催された同会合では、防衛装備品・技術移転協定の交渉の開始、多国間共同訓練「コモド」への積極的な参加、能力構築支援を進展させることなどで合意した。2017年1月の日インドネシア首脳会議の際に発出された共同声明では、日インドネシア「2+2」の定期開催や外務・防衛当局間協議の開催を含め、外務・防衛当局間の様々なレベルで対話を継続することの重要性が確認された。

2020年10月、菅内閣総理大臣がインドネシアを訪問し、ジョコ大統領と日インドネシア首脳会談を行った。会談では、日インドネシア「2+2」の早期実施や、防衛装備品移転に向けた協議の推進について一致した。

また、同年5月、河野防衛大臣は、プラボウォ国防大臣との間で電話会談を、同年8月には、テレビ会談を実施した。両会談において、新型コロナウイルス感染症の拡大を踏まえた情報共有などを通じて防衛当局間のコミュニケーションを継続するとともに、FOIPの維持・強化に向け、両国の防衛協力・交流を引き続き強力に推進していくことで一致した。さらに、同年11月には、岸防衛大臣が、プラボウォ国防大臣とテレビ会談を行った。東シナ海・南シナ海などの地域情勢について意見交換し、法の支配に基づく自由で開かれた海洋秩序の重要性を再確認したほか、防衛装備・技術協力や感染症対策分野での協力などを含め、幅広い分野で一層協力を強化することで合意した。

また、2021年3月には、岸防衛大臣がプラボウォ国防大臣との間で対面による防衛相会談を行った。岸防衛大臣から、中国海警法に関する深刻な懸念を表明し、両大臣は、国連海洋法条約をはじめとする国際法を遵守する必要性を再確認するとともに、共同訓練を含む防衛協力・交流のさらなる推進について一致した。

日インドネシア防衛装備品・技術移転協定の署名(2021年3月)【外務省】

日インドネシア防衛装備品・技術移転協定の署名(2021年3月)【外務省】

同月には、第2回日インドネシア「2+2」が東京で開催され、日インドネシア防衛装備品・技術移転協定に署名、即日発効するとともに、地域情勢や二国間協力などについて議論を行った。両国は、東シナ海及び南シナ海などの情勢について意見交換を行ったうえで、力による一方的な現状変更の試みの継続・強化について深刻な懸念を共有した。また、戦略的パートナーシップに基づき、地域及び世界の平和と安定のために共に協力していくことを確認し、繁栄のための牽引力となるため、連携を密にしていくことで一致した。

このほか、実務レベルでも、各種交流が行われている。

軍種間の主な交流については、2020年9月、統幕長が、チャフヤント国軍司令官と電話会談を行い、二国間の防衛交流の重要性について確認した。また、陸幕長は、同年11月、プルカサ陸軍参謀長と電話会談を行い、日インドネシア陸軍種間の防衛協力・交流について意見交換し、人道支援・災害救援(HA/DR)分野における協力・交流を中心に関係進展を図ることで一致した。

さらに、同年10月、海自インド太平洋方面派遣訓練部隊がインドネシア海軍と親善訓練を実施し、戦術技量の向上、相互理解の増進及び信頼関係の強化を図った。また、同年11月には、海幕長がマルゴノ海軍参謀長とテレビ会談し、親善訓練や艦艇・航空機の寄港・寄航などにより、防衛協力・交流を継続することで合意した。

日インドネシア親善訓練において護衛艦「いかづち」に近接するインドネシア海軍フリゲート艦「ジョン・リー」(2020年10月)

日インドネシア親善訓練において護衛艦「いかづち」に近接する
インドネシア海軍フリゲート艦「ジョン・リー」(2020年10月)

能力構築支援においては、同年2月、インドネシアに対するHA/DRの能力構築支援事業として、インドネシア国軍関係者8名を招へいした。陸自や日米共同統合防災訓練の研修などを通じ、自衛隊の災害対処能力向上のための取組について理解の促進を図った。

(2)ベトナム

約9,500万の人口を擁する南シナ海の沿岸国であるベトナムとの間では、防衛当局間の協力・交流が進展している。2014年3月の日ベトナム首脳会談においては、両国関係を「広範な戦略的パートナーシップ」へと発展させることが合意され、また、2018年5月の日ベトナム首脳会談においては、安全保障及び防衛分野における協力を強化することが確認された。

同年4月の日ベトナム防衛相会談では、両国の今後の防衛協力をさらに推進すべく、「防衛協力に関する日ベトナム共同ビジョン(日越共同ビジョン)」に署名した。また、南シナ海情勢に関して、軍事化を含む、現状変更の一方的行動の自制を求めるとともに、国際法に基づいた紛争の平和的解決、実効的な南シナ海における行動規範の早期妥結の重要性について一致した。

2019年5月には、岩屋防衛大臣(当時)が防衛大臣として約3年半ぶりにベトナムを訪問し、リック国防大臣との日ベトナム防衛相会談を実施した。同会談では、2018年に発出した共同ビジョンを踏まえ、幅広い分野で日ベトナム防衛協力を進めていく方針を共有した。また地域情勢について、北朝鮮の非核化に向けて連携することで一致するとともに、南シナ海における一方的な現状変更及びその既成事実化に対する懸念を共有し、両国で連携していくことで一致した。

加えて、防衛産業間協力の促進に係る覚書に日ベトナム防衛当局間の次官級で署名し、本覚書に基づき、両国の防衛装備・技術協力の促進を図ることで一致した。また2019年7月の日ベトナム首脳ワーキングランチにおいて、防衛装備品・技術移転協定の正式交渉を開始することで一致した。2020年10月には、ベトナムで実施された日ベトナム首脳会談において、両首脳は、防衛装備品・技術移転協定が実質合意に至ったことを歓迎した。同年11月、岸防衛大臣はリック国防大臣と日ベトナム防衛相テレビ会談を行い、同協定の実質合意を歓迎するとともに、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ、感染症対策分野においても防衛協力を推進していくことで一致した。

このほか、同年6月には、防衛審議官がヴィン国防次官との次官級協議を行い、両国の防衛協力・交流に関する意見交換を行った。

また、ADMMプラスの枠組みで行われている専門家会合(EWG:Experts' Working Group)においては、2021年から2024年までの間、わが国とベトナムがPKO分野の共同議長国を務めることとなっている。

軍種間の主な交流については、2020年4月、海自P-3C哨戒機が海賊対処行動の帰投のためベトナムに寄航した際、エンジン不具合が発生したものの、ベトナム政府の協力も受け、同年6月無事帰国を果たした。さらに、同年10月、インド太平洋方面派遣訓練を実施中の護衛艦「かが」、「いかづち」及び潜水艦「しょうりゅう」が補給のためカムラン国際港に寄港した。

また、2021年3月には、空自U-4多用途支援機、C-2輸送機及びC-130H輸送機がベトナムへの国外運航訓練を実施し、アジア方面における航空路及び地域特性の把握、国外任務遂行能力の向上を図った。

国外運航訓練のため、タンソンニャット国際空港(ベトナム)に着陸したC-130H輸送機(2021年3月)

国外運航訓練のため、タンソンニャット国際空港(ベトナム)に
着陸したC-130H輸送機(2021年3月)

能力構築支援においては、空自が2020年1月、ハノイにおいて、ベトナム人民軍サイバーセキュリティ基幹要員17名に対し、インシデント対応能力の向上を図ることを目的にサイバーセキュリティセミナーを実施した。また、同年3月、ハノイにおいて、航空救難セミナーを実施し、航空救難の重要性に関する認識を共有した。

今後も、「日越共同ビジョン」などを基礎として、より具体的・実務的な協力を実現すべく、関係を強化していく方針である。

(3)シンガポール

シンガポールは2009年12月、東南アジア諸国の中で、わが国との間で最初に防衛交流に関する覚書に署名した国である。以後、覚書に基づき寄港を含めた協力関係が着実に進展している。また、シンガポールとの間では、定期的に防衛当局間協議を行っており、これまで16回の開催実績があるほか、英国国際戦略研究所(IISS:The International Institute for Strategic Studies)が主催するシャングリラ会合には、ほぼ毎年防衛大臣が参加し、わが国の安全保障政策について説明するなど、ハイレベル交流も活発に行われている。

2020年5月、河野防衛大臣は、ウン国防大臣と日シンガポール防衛相電話会談を行い、地域情勢や新型コロナウイルス感染症の世界的拡大を封じ込めるための協力のあり方を含め、両国の防衛協力・交流に関する意見交換を実施した。また、同年12月には、岸防衛大臣がウン国防大臣とテレビ会談を実施し、感染症流行下においても、防衛協力・交流が着実に進展していることを歓迎するとともに包摂的で、開かれた地域の安全保障枠組みを支援する両国間の連携をさらに強化することで一致した。

実務者レベルでも、感染症の影響で直接的な交流が限られる中、同年11月に、シンガポールにて約3年半ぶりの防衛当局間協議を対面で実施し、二国間・多国間の防衛協力・交流や地域情勢につき意見交換を行った。

シンガポール国防次官を表敬する野口防衛政策局次長(2020年11月)【シンガポール国防省】

シンガポール国防次官を表敬する
野口防衛政策局次長(2020年11月)【シンガポール国防省】

軍種間の主な交流については、同年8月、統幕長が、オン国軍司令官とテレビ会談を行い、日シンガポール防衛協力の推進の重要性などについて確認した。また同年11月、陸幕長がゴー陸軍司令官と電話会談し、FOIPの維持・強化のため、日シンガポール陸軍種間の防衛協力・交流を一層強化していくことで一致した。

海軍種間では、同年6月、海自遠洋練習航海部隊がシンガポール海軍との親善訓練を実施し、相互理解及び信頼関係の促進を図ったほか、同年9月、海幕長がベン海軍司令官とテレビ会談を実施し、艦艇・航空機の寄港・寄航を継続するとともに、海軍種間の関係強化を図ることで一致した。

そのほか、国連PKOや海賊対処活動などの国際協力業務遂行に際した寄港や軍種間交流も積極的に行われている。

(4)フィリピン

南シナ海の沿岸国であり、米国の同盟国でもあるフィリピンとの間では、ハイレベル交流のほか、艦艇の訪問や防衛当局間協議をはじめとする実務者交流、軍種間交流が頻繁に行われている。2015年1月の中谷防衛大臣とガズミン国防大臣(いずれも当時)との日フィリピン防衛相会談では、日フィリピン防衛協力・交流に関する覚書の署名が行われ、防衛相会談・次官級協議の定期的な実施、統幕長をはじめとする各幕僚長とフィリピン国軍司令官及び各軍司令官の間の相互訪問、訓練・演習への参加のほか、海洋安全保障をはじめとする非伝統的安全保障分野における協力を実施することとした。

また、同年11月の安倍内閣総理大臣とアキノ大統領(当時)との日フィリピン首脳会談では、防衛装備品・技術移転協定について大筋合意に達し、2016年4月に同協定が発効した。

さらに、同年9月の日フィリピン首脳会談において、安倍内閣総理大臣とドゥテルテ大統領はHA/DR、輸送及び海洋状況把握にかかるフィリピンの能力向上を図るため、海自TC-90練習機の移転などについて合意し、2017年3月には2機、2018年3月には3機を引き渡し、フィリピン海軍へ計5機のTC-90練習機の移転が完了した。

また、同年6月のシャングリラ会合で行われた小野寺防衛大臣(当時)とロレンザーナ国防大臣との日フィリピン防衛相会談において、陸自で不用となったUH-1H多用途ヘリコプターの部品などのフィリピン空軍への無償譲渡が確認され、2019年3月から部品などの引渡しを開始し、同年9月に引渡しを完了した。

同年4月、岩屋防衛大臣(当時)とロレンザーナ国防大臣との日フィリピン防衛相会談において、両大臣は、TC-90練習機及びUH-1H多用途ヘリコプターの部品などの無償譲渡などの協力が順調に進展しており、このような協力が、フィリピンのHA/DRや警戒監視能力の向上に貢献していることを歓迎した。また、艦艇の寄港をはじめとする日フィリピン防衛協力が幅広い分野で進展していることを確認し、今後も防衛協力を一層強化していくことで一致した。さらに、2020年8月、フィリピン国防省と三菱電機株式会社との間で、同社製警戒管制レーダーを納入する契約が成立し、防衛装備移転三原則に基づいたわが国初の完成装備品の海外移転案件となった。

2017年6月の護衛艦「いずも」への乗艦に続き、2018年9月、インド太平洋方面派遣訓練のためスービック港に寄港中の護衛艦「かが」にドゥテルテ大統領が乗艦し、大野防衛大臣政務官(当時)と日フィリピンの二国間関係について意見交換を行うなど、ハイレベル交流も深化している。

また、2020年5月には、河野防衛大臣は、ロレンザーナ国防大臣との電話会談を行った。会談では、東シナ海・南シナ海における事象も踏まえ、力を背景とした一方的な現状変更の試みや緊張を高めるいかなる行為にも強く反対する考えを両大臣で共有した。

同年10月には、岸防衛大臣がロレンザーナ国防大臣とテレビ会談を実施し、岸防衛大臣から、警戒管制レーダーの移転に関する契約が成立したことを歓迎したほか、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ、感染症対策分野においても日フィリピン防衛協力を推進したい旨意向を示した。

フィリピン国防大臣とテレビ会談を行う岸防衛大臣(2020年10月)

フィリピン国防大臣とテレビ会談を行う岸防衛大臣(2020年10月)

軍種間の主な協力・交流については、同年8月に、陸幕長がソベハナ陸軍司令官と電話会談し、フィリピンへの警戒管制レーダーの移転が決定したことを歓迎するとともに、FOIP維持・強化のため、日フィリピン陸軍種間の防衛協力・交流を促進することで一致した。

同年7月には、海幕長がバコルド海軍司令官とテレビ会談し、新型コロナウイルス感染症の影響下における海軍種間交流の重要性について確認するとともに、共同訓練の実効性を高めていくことで一致した。また同月には、護衛艦「てるづき」が、南シナ海において、フィリピン海軍との共同訓練を実施し、戦術技量の向上及び連携強化を図った。なおこの際、フィリピン海軍からは、海自が供与したC-90が参加した。

空幕長はパレデス空軍司令官と、同年4月に電話会談を、11月にテレビ会談を実施し、安全保障情勢や空軍種間の防衛協力などに関して意見交換を行うとともに、フィリピンへの警戒管制レーダーの移転が決定したことを踏まえ、地域の平和と安定の確保に向け引き続き連携を強化していくことで一致した。

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参照IV部2章5節3項(新たな防衛装備・技術協力の構築)

(5)タイ

タイとの間では、早くから防衛駐在官の派遣や防衛当局間協議を開始するなど、伝統的に良好な関係のもと、長きにわたる防衛協力・交流の歴史を有している。また、防衛大学校では、1958年に初めて外国人留学生として受け入れたのがタイ人学生であり、その累計受入れ数も最多となっている。

また、防衛省・自衛隊は、2005年から米タイ共催の多国間共同訓練「コブラ・ゴールド」に継続的に参加しており、直近では2020年1月から3月にかけて実施された、多国間共同訓練「コブラ・ゴールド20」に参加して、在外邦人等の保護措置に関する訓練を実施し、統合運用能力の向上を図った。

また、2019年11月には、河野防衛大臣は、第6回ADMMプラスに際してプラユット首相兼国防大臣と会談を行った。会談において河野防衛大臣は、艦艇・航空機の寄港・寄航、多国間共同訓練「コブラ・ゴールド」への参加、政策協議の実施などの協力を進めていきたい意向を示し、プラユット首相兼国防大臣から、これらを歓迎する旨述べられた。両大臣は、日タイ防衛協力・交流に関する覚書への両大臣による署名を踏まえ、防衛協力を幅広い分野で一層強化していくことで一致した。

2020年7月には、防衛審議官が国防省政策企画局長とテレビ会談を行った。

軍種間の主な交流については、同年9月、統幕長は、ポンピパット国軍司令官とテレビ会談を行い、地域情勢や両国の防衛協力・交流の強化について認識を共有した。

(6)カンボジア

カンボジアは、1992年にわが国として初めて国連PKOに自衛隊を派遣した国である。また、2013年から能力構築支援を開始するなど、両国間での防衛協力・交流は着実に進展している。同年12月の日カンボジア首脳会談において、両国関係は「戦略的パートナーシップ」へと格上げされ、同会談後、小野寺防衛大臣(当時)は日カンボジア防衛協力・交流に関する覚書に署名した。

2017年9月、小野寺防衛大臣(当時)はティア・バニュ副首相兼国防大臣と会談し、日カンボジア防衛協力が能力構築支援や軍種間交流など幅広い分野で進展していることを高く評価した。

軍種間の主な交流については、2020年9月、陸幕長がフン・マネット王国軍副司令官兼陸軍司令官と電話会談を行った。会談では、新型コロナウイルス感染症の対応状況や陸軍種間の防衛協力・交流について意見交換し、一層の連携強化を図ることで一致した。

能力構築支援においては、2021年2月、陸自が、カンボジア軍に対して、防衛省・自衛隊として初となる、オンライン形式での事業活動として、国連PKOにおける施設活動(道路測量教官の育成)に関する教育を実施した。このように、新型コロナウイルス感染症の影響下においても、可能な手段により能力構築支援を継続している。

カンボジア軍に対し、道路測量についてオンライン講義を行う陸自隊員(2021年2月)

カンボジア軍に対し、道路測量についてオンライン講義を行う
陸自隊員(2021年2月)

(7)ミャンマー

ミャンマーとの間では、2011年3月の民政移管後、事務次官がミャンマーを初訪問したほか、わが国側主催の多国間会議にミャンマーからの参加を得る形で交流を発展させてきた。2013年11月には、第1回防衛当局間協議をネーピードーで開催した。2014年11月には、江渡防衛大臣(当時)が第1回日ASEAN防衛担当大臣会合に出席するため、議長国であったミャンマーを訪問し、その際にウェイ・ルイン国防大臣(当時)と会談し、防衛交流を促進することを確認した。

また、日本財団の主催により、同年から始まった「日ミャンマー将官級交流プログラム」では、同国軍の将官級軍人を招へいし、自衛隊施設の視察が実施されている。2019年10月にはミン・アウン・フライン国軍司令官が初めて統幕長を訪問し、FOIPのもと、自衛隊とミャンマー軍との防衛協力・交流の推進について確認した。また、同年11月、河野防衛大臣は、第6回ADMMプラスに際してセイン・ウィン国防大臣と会談を実施し、防衛協力を幅広い分野で一層強化していくことで一致し、地域情勢について意見交換を行った。

能力構築支援においては、2020年1月、航空気象分野に関するセミナーを実施した。潜水医学分野においても、同月、ミャンマー国軍を招へいし、深海潜水訓練装置や高気圧酸素治療装置などの研修を行うとともに、活発な意見交換を実施した。また、同月には、ヤンゴンにおいて潜水医学セミナーを開催し、潜水医学に関する症例の発表及び意見交換を通じ、理解の促進を図った。さらに、2018年5月には、ミャンマー国軍士官学校日本語学科において、日本語教育の環境整備支援を開始した。

(8)ラオス

わが国は、2014年から、ラオスと共にADMMプラスにおけるHA/DR-EWGの共同議長を務め、マルチの枠組みにおける協力を通じ、日ラオス防衛当局間の関係は大きく進展した。2016年11月には、稲田防衛大臣(当時)がわが国の防衛大臣として初めてラオスを訪問し、チャンサモーン国防大臣との間でハイレベル交流や能力構築支援など、さらなる防衛協力の方策について意見交換を実施し、防衛協力・交流を推進することで一致した。

また、2019年10月、山本防衛副大臣は、第11回ASEAN防衛当局次官級会合の特別講演者として招へいされていたオンシー国防副大臣と会談した。会談後、日ラオス防衛協力・交流に関する覚書への署名が行われ、両副大臣は、今後、覚書に基づき、HA/DRをはじめ幅広い分野で防衛協力を具体化していくことで一致した。

能力構築支援においては、2020年2月にラオス人民軍の指揮官要員及び操作要員(工兵)をHA/DRの施設分野の教育として初めて日本に招へいした。同軍の災害対処能力の向上のため、陸自施設学校において、指揮官要員に対しては道路復旧などの工事管理(工程管理・品質管理・安全管理)について指導するとともに、操作要員に対しては施設機械(重機)の基本操作要領を教育した。

(9)マレーシア

南シナ海の沿岸国であるマレーシアとの間では、2018年4月、防衛装備品・技術移転協定の署名・発効に続き、同年9月にはモハマド国防大臣(当時)の訪日に際し、小野寺防衛大臣(当時)とともに日マレーシア防衛協力・交流に関する覚書に署名した。署名後の防衛相会談では、今後、覚書に基づき、軍種間交流をはじめ幅広い分野で防衛協力を具体化していくことで一致した。

また、2020年7月、河野防衛大臣は、イスマイル・サブリ国防大臣との電話会談を行った。会談では、新型コロナウイルス感染症に対する防衛当局の取組について共有したほか、東シナ海・南シナ海を含む地域情勢などについて意見交換を行った。河野防衛大臣から力を背景とした一方的な現状変更の試みに強く反対することや法の支配に基づく自由で開かれた海洋秩序の重要性を共有するとともに、両国の共通利益に基づき、二国間の防衛関係をより深化させることを再確認した。

軍種間の交流については、同年9月、統幕長が、アフェンディ国軍司令官とのテレビ会談を行い、日マレーシア防衛協力の推進の重要性について確認した。

マレーシア国軍司令官とテレビ会談を行う山崎統幕長(2020年9月)

マレーシア国軍司令官とテレビ会談を行う山崎統幕長(2020年9月)

(10)ブルネイ

南シナ海の沿岸国であるブルネイとの間では、2013年8月、同国で開催された第2回ADMMプラスの際、小野寺防衛大臣がヤスミン首相府エネルギー大臣(いずれも当時)と会談を行い、ADMMプラスの取組について意見交換を行った。2020年3月、防衛審議官がブルネイを訪問してハルビ第2国防大臣へ表敬し、二国間防衛協力をさらに発展させることで意見の一致をみたとともに、同年7月には、シャフリル国防次官と電話会談を行った。

4 韓国
(1)韓国との防衛協力・交流の意義と最近の主要な実績など

日韓両国が直面している安全保障上の課題は、北朝鮮の核・ミサイル問題をはじめ、テロ対策や、大規模自然災害への対応、海賊対処、海洋安全保障など、広範かつ多岐にわたるものとなってきている。

一方、日韓防衛当局間にある課題が日韓の防衛協力・交流に影響を及ぼしている。その例として、2018年10月、韓国主催国際観艦式における海自の自衛艦旗6をめぐる韓国側の対応、同年12月の韓国海軍駆逐艦による自衛隊機への火器管制レーダー照射事案7、韓国海軍による、竹島を含む周辺海域における軍事訓練、日韓GSOMIAの終了通告(ただし、のちに終了通告の効力を停止)に関する対応がある。韓国防衛当局側による否定的な対応が継続していることから、防衛省・自衛隊としては、こうした懸案について、日韓・日米韓の連携が損なわれることのないよう、引き続き韓国側の適切な対応を強く求めていくこととしている。

2019年11月、河野防衛大臣は、第6回ADMMプラスに際して鄭景斗(チョン・ギョンドゥ)韓国国防部長官と会談を行い、2018年来、日韓の間には様々な課題が生じ、両国間の防衛当局間においても非常に厳しい状況が続いているが、両国を取り巻く安全保障環境が大変厳しい状況である中で、日韓・日米韓の連携は極めて重要であり、日韓防衛当局間の意思疎通を継続していく旨を確認した。

(2)日米韓の協力関係

日米韓3か国は、この地域の平和と安定に関して共通の利益を有しており、機会を捉えて緊密に連携を図っていくことが、北朝鮮問題を含めた様々な安全保障上の課題に対処するうえで重要である。

日米韓3か国では、例年、シャングリラ会合に際して日米韓防衛相会談を実施しており、2019年6月、岩屋防衛大臣はシャナハン米国防長官代行(いずれも当時)及び鄭景斗(チョン・ギョンドゥ)韓国国防部長官と日米韓3か国防衛相会談を実施し、北朝鮮の完全な非核化を検証可能なかつ不可逆的な方法で求める、全ての関連国連安保理決議に従って、北朝鮮が国際的な義務を完全に遵守することが、国際社会の共通目標であることを確認した。

また、北朝鮮による違法な「瀬取り」を抑止し、中断させ、最終的に撲滅するための持続的な国際協力を含む、北朝鮮に関連する国連安保理決議の完全かつ厳格な履行のため、国際社会と連携していくことでも一致した。地域安全保障問題に関しては、航行及び上空飛行の自由が確保されなければならず、すべての紛争は、国際法の原則に従って、平和的手段により解決されるべきであることを再認識し、そのうえで3か国間の安全保障協力を強化していくことで一致した。

さらに、同年11月、河野防衛大臣は、第6回ADMMプラスに際して実施した日米韓防衛相会談において、北朝鮮の完全な非核化及び弾道ミサイルの放棄を検証可能な、かつ、不可逆的な方法で求めるという国際社会の共通目標、安保理決議の完全な履行の重要性、法の支配に基づく秩序の重要性などの共通認識を共有し、情報共有、ハイレベルの政策協議、共同訓練を含む、3か国の安全保障協力を促進することに合意した。

実務レベルでは、日米韓防衛実務者協議(DTT:Defense Trilateral Talks)の枠組みにおける局長級・課長級の協議及びテレビ会談の実施、日米韓参謀総長級会談などを通じて、様々なレベルで緊密に情報共有を図りつつ連携してきている。

2020年5月には、局長級の全体会合がテレビ会議形式で実施され、北朝鮮情勢を含む地域における安全保障上の課題について議論した。3か国の代表は、北朝鮮に関連する国連安保理決議の完全な履行のため、日米韓3か国及び国際社会との連携が重要であることを確認するとともに、新型コロナウイルス感染症への各国の対応状況などについても意見交換を行った。

軍種間の交流として、同年11月、統幕長が日米韓参謀総長級会議にテレビ会議形式で参加した。本会議には、統幕長のほかミリー米統合参謀本部議長、ウォン韓国合同参謀本部議長などが参加し、北東アジアの長期的な平和と安定を増進する観点から日米韓3か国の防衛協力について議論した。また、同年9月、海自が、グアム島周辺海空域において、日米豪韓共同訓練「パシフィック・ヴァンガード20」を実施し、戦術技量の向上及び米豪韓海軍との連携強化を図った。

今後も様々な機会を活用して、あらゆる分野において日米韓3か国の安全保障協力を強化していくことが求められている。

日米豪韓共同訓練「パシフィック・ヴァンガード20」(2020年9月)

日米豪韓共同訓練「パシフィック・ヴァンガード20」(2020年9月)

参照資料46(多国間共同訓練の参加など(過去3年間))

(3)日韓GSOMIAについて

日韓の防衛当局間において、2014年12月に署名した日米韓情報共有に関する防衛当局間取決めに基づき、米国を経由する形で北朝鮮の核・ミサイルに関する秘密情報の交換・共有を行ってきた。

一方、北朝鮮により頻繁に繰り返される弾道ミサイルの発射や核実験など、北朝鮮を巡る情勢がさらに深刻化していることを踏まえ、日韓間の協力をさらに進めるべく、2016年11月、日韓GSOMIAを締結した。これにより、日韓政府間で共有される秘密軍事情報が適切に保護される枠組みが整備された。2019年8月には、韓国政府から、同協定を終了させる旨の書面による通告があったが、同年11月、韓国政府から、同通告の効力を停止する旨の通告があった8。韓国政府がこのような決定を行ったことに対し、河野防衛大臣から、東アジアの安全保障環境が厳しい中で、日米、日韓及び日米韓の連携が重要であり、そのような状況を韓国側も戦略的に考えた決定と考えている旨をコメントした。

参照資料34(最近の日韓防衛協力・交流の主要な実績(過去3年間))

5 欧州諸国、カナダ及びニュージーランド

欧州諸国、カナダ及びニュージーランドは、わが国と普遍的価値を共有し、また、テロ対策や「瀬取り」対応などの非伝統的安全保障分野や国際平和協力活動を中心に、グローバルな安全保障上の共通課題に取り組むための中核を担っている。そのため、これらの国と防衛協力・交流を進展させることは、わが国がこうした課題に積極的に関与する基盤を提供するものであり、わが国と欧州諸国、カナダ及びニュージーランドの双方にとって重要である。

参照資料35(最近の欧州諸国、カナダ及びニュージーランドとの防衛協力・交流の主要な実績(過去3年間))

(1)英国

英国は、欧州のみならず世界に影響力を持つ大国であるとともに、わが国と歴史的にも深い関係があり、安全保障面でも米国の重要な同盟国として戦略的利益を共有している。このような観点から、国際平和協力活動、テロ対策、海賊対処、サイバーなどのグローバルな課題における協力や地域情勢などに関する情報交換を通じ、日英間で協力を深めることは、わが国にとって非常に重要である。

英国との間では、2012年6月に防衛協力のための覚書が取り交わされたのに続き、2013年7月に防衛装備品・技術移転協定が発効したほか、2014年1月には日英情報保護協定が発効し、二国間の防衛装備・技術協力及び情報共有の基盤が整備されている。2014年5月の日英首脳会談において、両首脳は、安全保障分野の協力強化のため、日英「2+2」の開催、ACSAの交渉開始などについて一致した。

オンラインで実施された日英「2+2」(2021年2月)

オンラインで実施された日英「2+2」(2021年2月)

2017年1月には、日英ACSA9への署名が行われ、同年4月の国会承認を経て同年8月に発効した。これにあわせて関連する国内法令も整備された。日英ACSAの発効により、共同訓練や大規模災害対処などにおいて、自衛隊と英軍との間で、水・食糧・燃料・輸送などの物品や役務を統一的な手続により相互に融通することが可能となり、日英間の戦略的パートナーシップが一層円滑・強固なものとなった。

また、同年8月の日英首脳会談の際に発表された「日英安全保障共同宣言」においては、二国間の安全保障協力に関する関係当局間の具体的措置を伴う行動計画を策定することで一致し、2019年1月の日英首脳会談では、同宣言を再確認したうえで、日英関係が次の段階に引き上げられたことを確認した。

2020年4月には、河野防衛大臣は、ウォレス国防大臣と電話会談を実施した。両大臣は、新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえつつ、防衛当局の役割や二国間の防衛協力・交流などについて意見交換を行い、FOIPの維持・強化に向け、日英間の防衛協力・交流を引き続き強力に深化させることで認識を共有した。

2021年1月、岸防衛大臣は、ウォレス国防大臣と日英防衛相テレビ会談を行い、安全保障に影響を与えうる感染症リスクに対する取組について協力していくことで一致した。同年2月には約3年ぶりとなる日英「2+2」がテレビ会議形式で実施された。四大臣は、日英を取り巻く安全保障環境が大きく変化し、基本的価値や原則が挑戦を受けている中で、グローバルな戦略的パートナーである日英両国が、FOIPの実現に向けて協力をさらに進展させていくことを確認した。

また、2021年中の英空母「クイーン・エリザベス」を含む空母打撃群の、東アジアを含む地域への展開の機会に、共同訓練の実施などに向けて調整していくことで一致したほか、海洋安全保障協力の深化に係る取決めが海自と英海軍との間で署名されたことや陸軍種間共同訓練の着実な進捗、防衛装備・技術協力の進捗を歓迎した。

さらに、岸防衛大臣から中国海警法について強い懸念を伝達するとともに、四大臣は東シナ海・南シナ海情勢への深刻な懸念を共有したうえで、力を背景とした一方的な現状変更の試みに強く反対することを確認した。

同年3月、英国が安全保障、防衛、開発及び外交政策の「統合的見直し」などを発表したことを受け、岸防衛大臣はウォレス国防大臣と電話会談を行い、英国側の新たな政策に関する説明を受けた。その際、岸防衛大臣は「統合的見直し」の中で打ち出された英国の「インド太平洋への傾斜」という戦略的決定を高く評価するとともに、このたびの「統合的見直し」は、FOIPの維持・強化に向け、両国が中長期にわたり協力関係を強化していくとの方向性を明確に示すものとして歓迎した。

また、両大臣は、東シナ海や南シナ海をめぐる情勢について、現状を変更するいかなる活動にも、圧力にも、また緊張を高めるいかなる行為にも強く反対するとの意思を改めて表明し、法の支配に基づく自由で開かれた海洋秩序、特に国連海洋法条約が重要であるという認識で一致し、岸防衛大臣から、中国海警法に対する日本側の深刻な懸念を改めて伝えた。このほか両大臣は、会談当日、北朝鮮が合計2発の弾道ミサイルを発射したことに言及し、北朝鮮による弾道ミサイル発射は国連安保理決議違反であり、地域の平和と安全を脅かすものとして強く非難するとともに、これまでの弾道ミサイル等の度重なる発射を含め、国際社会全体にとっての深刻な課題であるとの認識で一致した。

同年4月、英国政府は、空母「クイーン・エリザベス」を中心とする英空母打撃群の日本への寄港を発表した。これは、近年深化している実践的な日英安全保障・防衛協力関係を一層推進するものであり、わが国として歓迎する旨表明した。

軍種間の主な交流については、2020年7月、統幕長がカーター国防参謀長とのテレビ会談を行い、厳しさを増す安全保障環境に対して日英防衛協力・交流を一層強化することで合意した。また、2021年2月にも、カーター国防参謀長とテレビ会談を行い、日英防衛協力・交流の重要性について確認するとともに、国際社会及び地域の平和と安定のため、共通の課題に対し連携を強化していくことで一致した。

海自は、2020年8月にアラビア海北部西方海域において海賊対処共同訓練を実施し、海賊対処に関する連携を確認した。また、同年9月には、海幕長がラダキン第1海軍卿兼海軍参謀長とテレビ会談を行い、新型コロナウイルス感染症の影響下においても日英海軍種間で緊密に協力していくことで一致した。2021年1月には、海幕長とラダキン第1海軍卿兼海軍参謀長との間で「日本国海上自衛隊と英国海軍との間の協力の深化に係る取決め」に署名し、日英海軍種間協力を一層進展させることで合意したほか、同年3月にもテレビ会談を実施した。

空自は、2020年5月、空幕長がウィグストン空軍参謀長と電話会談し、地域情勢や日英協力の重要性について再確認するとともに、FOIPのもと、日英空軍種間の連携をさらに発展させることで認識を共有した。

(2)フランス

フランスは、欧州やアフリカのみならず、世界に影響力を持つ大国であるとともに、インド洋及び太平洋島嶼部に領土を保有する関係上、インド太平洋地域に常続的な軍事プレゼンスを有する唯一のEU加盟国であり、わが国と歴史的にも深い関係を持つ特別なパートナーである。

2014年1月には、パリで第1回日仏「2+2」が開催され、同年7月にはル・ドリアン国防大臣(当時)が訪日し、防衛協力・交流に関する意図表明文書が署名された。2015年から2018年の間において4回の「2+2」が開催され、国際テロ、海洋安全保障、防衛装備・技術協力、日仏ACSA、共同訓練、宇宙分野での協力、途上国の能力構築支援に関する連携などの協議が行われた。

これらを契機として、2016年12月には日仏防衛装備品・技術移転協定が発効したほか、2017年3月には、第2回日仏包括的宇宙対話が開催され、「日本国の権限のある当局とフランス共和国国防大臣との間の宇宙状況把握にかかる情報共有に関する技術取決め」に署名した。また、2018年7月には日仏ACSAへの署名が行われ、2019年5月の国会承認を経て、同年6月に発効した。

同年1月、フランス・ブレストで開催された第5回日仏「2+2」では、共に「海洋国家」かつ「太平洋国家」である両国が、自由で開かれたインド太平洋の維持・強化に向け、具体的な協力を推進し、特に海洋分野での協力を具体化するべく、日仏包括的海洋対話を立ち上げることを決定した。また、次世代機雷探知技術に係る共同研究の開始を歓迎し、インド洋に展開する空母「シャルル・ド・ゴール」との日仏共同訓練や東南アジア諸国や太平洋島嶼国における能力構築支援などの協力を推進するとともに、日仏サイバー協議、日仏包括的宇宙対話を通じてサイバー・宇宙分野での協力を一層強化していくことを確認した。

同年9月には、第1回日仏包括的海洋対話が開催され、わが国は、「瀬取り」を含む違法な海上活動への警戒監視のため、フランスが艦艇及び航空機を派遣したことを高く評価し、両国が引き続き緊密に連携することを確認した。

また、2020年4月、河野防衛大臣は、パルリ軍事大臣と電話会談を行った。会談において、両大臣は、新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえつつ、引き続き、自由で開かれたインド太平洋を推進するパートナーとして、日仏防衛協力・交流を強力に進めていくことで一致した。また同年11月には、ヴァンディエ海軍参謀長が訪日した際、岸防衛大臣を表敬した。

訪日したフランス海軍参謀長を防衛省で出迎える山村海幕長(2020年11月)

訪日したフランス海軍参謀長を防衛省で出迎える山村海幕長(2020年11月)

2021年1月には、岸防衛大臣は、パルリ軍事大臣とテレビ会談を行い、東シナ海・南シナ海をめぐる情勢について力を背景とした一方的な現状変更の試みに強く反対するとのメッセージを明確に発信していくことで一致した。また、両大臣は、安全保障に影響を与えうる感染症リスクに対する取組について、日仏防衛当局間で協力していくことで一致するとともに、自由で開かれたインド太平洋の維持・強化に向け、早期の「2+2」開催を含め、防衛協力・交流を引き続き活発に進めていくことで合意した。

軍種間における主な交流として、自衛隊は、2014年からニューカレドニア駐留仏軍主催HA/DR訓練(「赤道」)に参加している。

2020年7月、統幕長が、ルコワントル軍統合参謀長とテレビ会談を行い、安全保障情勢や新型コロナウイルス感染症の状況について意見交換するとともに、共通の課題に対し連携を強化することで認識を共有した。同年12月、陸幕長が、ビュルカール陸軍参謀長とテレビ会談を実施し、日仏陸軍種間で防衛協力・交流を推進することで一致した。

海自については、2018年9月、日仏海軍参謀長間で、今後、太平洋地域のみならずインド洋方面においても協力を強化していくことで一致した「戦略的指針」が署名され、2020年10月には、海幕長がヴァンディエ海軍参謀長とテレビ会談を、同年11月には防衛省にて会談を実施し、自由で開かれたインド太平洋の維持・強化に向け、共同訓練などのあらゆる分野で協力していくことで一致した。

また、同年12月には護衛艦「ひゅうが」が、2021年2月には補給艦「はまな」がそれぞれ日米仏共同訓練に参加した。同年3月には護衛艦「ありあけ」が日米仏ベルギー共同訓練に参加し、戦術技量の向上及び各国海軍との連携強化を図ったほか、同年4月には、護衛艦「あけぼの」が日仏米豪印共同訓練「ラ・ペルーズ21」に参加するなど、海軍種間の交流を一層深化させている。

動画アイコンQRコード動画:日米仏ベルギー共同訓練
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同年5月には、日仏米豪4か国は陸上と海上において共同訓練「ARC21(アーク21)」を実施し、島嶼防衛にかかる自衛隊の戦術技量の向上を図るとともに、自由で開かれたインド太平洋というビジョンを共有する4か国の協力関係を一層深化させた。

なお、2020年11月には、アラビア海北部西方海域において、日仏が連携してインド籍船舶から急患救助を行った。

さらに、同年6月、空幕長がラヴィニュ空軍参謀長と電話会談し、日仏空軍参謀長間で「戦略的指針」の合意について確認するとともに、空軍種間協力を推進することで一致した。

(3)ドイツ

ドイツとの間では、2017年7月、日独防衛装備品・技術移転協定が発効したほか、同月、防衛審議官が第1回日独次官級戦略的対話出席のために訪独するなど、ハイレベルを含む交流が進展している。また、2019年2月の、メルケル首相訪日時に大筋合意した情報保護協定について、2021年3月、茂木外務大臣とレーペル駐日ドイツ大使との間で署名され、両国政府間でより一層有益な情報交換を行っていくことを確認した。

2020年4月、河野防衛大臣は、クランプ=カレンバウアー国防大臣と電話会談し、新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえつつ、FOIPに基づき、日独防衛協力・交流を引き続き強力に推進していくことで一致した。同年11月には、岸防衛大臣が、クランプ=カレンバウアー国防大臣とテレビ会談を行い、ドイツが発表した「インド太平洋ガイドライン」を歓迎し、高く評価するとともに、同地域におけるドイツのコミットメント強化への強い期待を表明した。このほか、両大臣は、力を背景とした一方的な現状変更の試みに強く反対するとのメッセージを明確に発信するとともに、感染症リスクに対し結束した活動を実施していく旨合意した。

同年12月には、日独防衛相フォーラム「インド太平洋:地域における日本とドイツのエンゲージメント」がオンラインで開催され、岸防衛大臣はクランプ=カレンバウアー国防大臣と基調講演を行い、インド太平洋地域の安全保障環境や今後の日独防衛協力について意見交換を行った。この中で、クランプ=カレンバウアー国防大臣から、2021年にも、ドイツ海軍艦艇をインド太平洋地域に派遣する方向で検討している旨言及があった。岸防衛大臣からは、これを強く支持するとともに、ドイツ海軍艦艇の派遣に向け、緊密に連携していく考えを示した。

日独防衛相フォーラム(オンライン)において基調講演する岸防衛大臣(2020年12月)

日独防衛相フォーラム(オンライン)において基調講演する
岸防衛大臣(2020年12月)

2021年2月には、防衛審議官がツィンマー国防次官との間でテレビ会談を行い、両国の防衛協力・交流に関する意見交換を実施した。

同年4月には、日独で初めてとなる「2+2」がテレビ会議形式で実施され、四大臣は、FOIPの実現に向けて、両国で緊密に連携していくことを確認した。ドイツ側から、インド太平洋ガイドラインの策定や、ドイツ海軍フリゲートのインド太平洋地域の派遣について説明があり、日本側は、ドイツのインド太平洋地域への関与の強化を歓迎するとともに、ドイツ海軍フリゲートの派遣の機会に、共同訓練や北朝鮮関連船舶による違法な「瀬取り」に対する警戒監視活動における協力を実施する可能性などを提起し、四大臣は引き続き調整していくことで一致した。

また、四大臣は、日独情報保護協定の署名・発効を歓迎するとともに、同協定に基づいて、防衛装備品分野での協力など、両国の安全保障協力を一層推進していくことで一致した。さらに、四大臣は、国際社会における力による一方的な現状変更の試みについて深刻な懸念を共有し、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持・強化していくことが重要との点で一致したほか、東シナ海及び南シナ海などの情勢について意見交換を行い、日本側から海警法を含む最近の中国の動向について深刻な懸念を表明した。

四大臣は、北朝鮮情勢についても意見交換を行い、北朝鮮によるミサイル発射は国際社会全体にとって深刻な課題であること、北朝鮮のすべての大量破壊兵器及び弾道ミサイルの完全な、検証可能な、かつ不可逆的な廃棄に向け、安保理決議の完全な履行が不可欠であることを改めて確認するとともに、拉致問題の早期解決に向け、引き続き緊密に協力することで一致した。

軍種間では、2020年10月、陸幕長がマイス陸軍総監と電話会談し、両国が基本的価値を共有するパートナーとして、陸軍種間で一層の関係強化を促進することで認識を共有した。また同年11月には、海幕長がクラウゼ海軍総監とテレビ会談を実施し、インド太平洋地域への積極的な関与に向け、多分野で協力することで一致した。

(4)カナダ

カナダとの間では、2018年4月に日加ACSAの署名が行われ、2019年5月の国会承認を経て、同年7月に発効したほか、これまで、ハイレベル交流や防衛当局間協議などが行われてきた。2018年12月、第4回日加次官級「2+2」対話を開催し、日加間での協力をこれまで以上に強化していくことを確認した。また、カナダにおける日加修好90周年である2019年6月、岩屋防衛大臣(当時)は、カナダの国防大臣として13年ぶりに訪日したサージャン国防大臣と3年ぶりの日加防衛相会談を行い、同会談後、今後の防衛協力の推進に関する具体的な指針となる共同声明を、日加防衛当局間で初めて発表した。

2020年5月、河野防衛大臣は、サージャン国防大臣と電話会談を行い、新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえ、防衛当局の役割や取組などについて意見交換を行った。両大臣は、FOIPの維持・強化に向け、同地域におけるカナダのコミットメント強化に期待を表明し、日加防衛協力・交流を継続・強化していくことの重要性を指摘した。

同年11月には、岸防衛大臣が、サージャン国防大臣との電話会談を実施し、北朝鮮や東シナ海・南シナ海を含む地域情勢について意見交換した。会談では岸防衛大臣から、感染症の影響下にもかかわらず、北朝鮮の「瀬取り」に対する警戒監視活動にカナダがアセットを派遣したことを評価する旨述べるとともに、両大臣は力を背景とした一方的な現状変更の試みに強く反対するとの明確なメッセージを発信していくことで一致した。

また、両大臣は、安全保障に影響を与えうる感染症にかかるリスクに対する取組で協力していくことを確認した。さらに、日加共同訓練「KAEDEX」をはじめとする両国間の継続的な連携を歓迎するとともに、引き続き、このような機会を最大限に活かし、FOIPの維持・強化に向け、防衛協力・交流を活発に推進することで一致した。

2021年3月、岸防衛大臣は、カナダのNPO「国防協会会議」が主催する「第89回 安全保障・防衛に関するオタワ会議」にわが国の防衛大臣として初めて参加し、スピーチを行った10。このスピーチでは、FOIPの維持・強化に向けた防衛省・自衛隊の取組、カナダとの防衛協力・交流の現状を紹介しつつ、中国海警法をめぐる問題について、国際的に声を上げ、関係国と連携していく旨改めて表明したうえで、普遍的価値を守るため、各国が連携していくことの重要性を訴えた。

軍種間の主な交流については、2020年6月、統幕長が、ヴァンス軍参謀総長と電話会談を実施し、国際社会及び地域の平和と安定のため共通の課題に対し連携を強化していくことで合意した。同年11月、海幕長は、マクドナルド海軍司令官とテレビ会談を行い、新型コロナウイルス感染症の影響下においても、日加海軍種間で緊密に協力していくことを確認した。また、同月には、護衛艦「しまかぜ」が、九州西方海空域において、カナダ海軍フリゲート艦「ウィニペグ」と日加共同訓練「KAEDEX20」を実施し、戦術技量の向上及び連携強化を図った。2021年1月、空幕長は、マインジンガー空軍司令官とテレビ会談を行い、FOIPの維持・強化に向け、引き続き空軍種間協力・交流を深化していくことで一致した。

カナダ海軍フリゲート艦「ウィニペグ」と日加共同訓練「KAEDEX」を実施する護衛艦「しまかぜ」(2020年11月)【カナダ国防省】

カナダ海軍フリゲート艦「ウィニペグ」と日加共同訓練「KAEDEX」を
実施する護衛艦「しまかぜ」(2020年11月)【カナダ国防省】

(5)ニュージーランド

ニュージーランドとの間では、2013年8月、防衛協力・交流に関する覚書の署名が行われたほか、2014年7月の日ニュージーランド首脳会談では、ACSAに関する研究を行うことで一致した。また、2019年9月の日ニュージーランド首脳会談では、情報保護に関する国際約束についての予備協議開始について一致した。

2020年5月には、河野防衛大臣がマーク国防大臣とテレビ会談を実施し、北朝鮮や東シナ海・南シナ海を含む地域情勢や二国間の防衛協力・交流などについて意見交換を行った。両大臣は、2019年12月に日米豪ニュージーランドの4か国で実施された人道支援・災害救援共同訓練「クリスマス・ドロップ」などを通じ、太平洋島嶼国に対する両国の協力が進展していることを歓迎するとともに、この地域における協力を拡大していくこと、感染症対策上の新たな協力も含め、日ニュージーランド協力・交流を引き続き強力に推進していくことで一致した。

2020年9月及び12月には、防衛審議官がブリッジマン国防次官と電話会談を行い、両国の防衛協力・交流に関する意見交換を実施し、より一層関係を深化させていくことを確認した。

北朝鮮による「瀬取り」に対する警戒監視活動に関して、ニュージーランド軍は、2018年、2019年に引き続き、2020年も感染症の影響下にもかかわらず哨戒機を派遣し、コミットメントを継続している。2020年11月には、派遣された哨戒機の搭乗員が海自鹿屋航空基地を訪問し、哨戒機を運用する海自隊員と交流を行った。

海自訓練施設を見学するニュージーランド哨戒機の搭乗員(2020年11月)

海自訓練施設を見学するニュージーランド哨戒機の搭乗員(2020年11月)

(6)NATO

2014年5月に安倍内閣総理大臣が欧州を訪問した際、NATO本部においてラスムセン事務総長(当時)と会談を行い、「日NATO国別パートナーシップ協力計画」(IPCP:Individual Partnership and Cooperation Programme between Japan and NATO11)に署名した(2018年5月、2020年6月改訂)。この計画に基づき、同年12月、女性・平和・安全保障分野における日NATO協力として、初めてNATO本部に自衛官を派遣するとともに、2015年以降、「ジェンダー視点のNATO委員会(NCGP:NATO Committee on Gender Perspectives)年次会合」に防衛省・自衛隊から参加している。

なお、2019年12月からは、情報通信担当幕僚として、自衛官をNATO本部諮問・指揮統制幕僚部(NHQC3S:NATO Headguarters Consultation, Command and Control Staff)に派遣し、NATOの様々な政策や事業に関する情報通信の管理業務に携わっている。

そのほか、防衛省は、2017年2月に欧州連合軍最高司令部(SHAPE:Supreme Headquarters Allied Powers Europe)に連絡官を派遣し、2019年6月にNATO海上司令部(MARCOM:NATO Allied Maritime Command)に連絡官を派遣している。また、2018年7月、在ベルギー日本国大使館が兼轄する形で、NATO日本政府代表部が開設された。サイバー分野については、2019年3月から、防衛省職員をNATOサイバー防衛協力センター(CCDCOE:NATO Cooperative Cyber Defence Centre of Excellence)に派遣し、同年12月には、エストニアにおいてNATO主催のサイバー防衛演習「サイバー・コアリション2019」へわが国として初めて正式に参加した。また、2021年4月には、CCDCOE主催のサイバー防衛演習「ロックド・シールズ2021」へわが国として初めて正式に参加した。

2020年7月、河野防衛大臣は、ストルテンベルグNATO事務総長と電話会談を実施した。両者は、東シナ海・南シナ海を含む地域情勢について意見交換を行い、力を背景とした一方的な現状変更の試みに強く反対することを再確認するとともに、新型コロナウイルス感染症の状況及び、IPCPが改訂されたことを踏まえ、FOIPの維持・強化に向け、日NATO防衛協力・交流を引き続き強力に推進していくことで一致した。

また、軍種間では、同年4月、11月及び2021年4月、統幕長がピーチ軍事委員長と電話会談を行い、日NATO間の防衛協力・交流の重要性について再確認した。

(7)その他の欧州諸国

イタリアとの間では、2016年6月に日伊情報保護協定が発効した。2017年5月には、日伊防衛協力・交流に関する覚書への署名が行われたほか、2019年4月に日伊防衛装備品・技術移転協定が発効するなど、防衛協力を行っていくうえでの制度面の整備が進んでいる。

2020年5月、河野防衛大臣は、グエリーニ国防大臣と日伊防衛相電話会談を実施した。両大臣は、地域情勢について力を背景とした一方的な現状変更の試みに強く反対することで同意したほか、同年がローマ・東京間横断初飛行100周年であり、空軍種間の協力が進展していることを歓迎するとともに、FOIPの維持・強化に向け、日伊防衛協力を引き続き強力に推進していくことで一致した。また、防衛装備・技術協力の分野を含め、今後一層協力を拡大する意思を表明した。

同年8月には、空幕長がロッソ空軍参謀長と電話会談を行うとともに、同年10月にはテレビ会談を実施し、空軍種間で一層の関係強化を促進することで一致した。

スペインとの間では、2018年1月、デ・コスペダル国防大臣が訪日し、日スペイン防衛相会談を実施した。同会談では2014年11月に署名された防衛協力・交流に関する覚書に基づき、防衛当局間の関係をさらに強化することで一致した。

また、2021年2月には、護衛艦「ゆうぎり」がグアム周辺海域において、スペイン海軍練習帆船と親善訓練を実施した。

オランダとの間では、2016年12月にヘニス国防大臣(当時)が訪日し、日オランダ防衛相会談に際して防衛協力・交流の覚書の署名が行われた。2018年9月、小野寺防衛大臣(当時)がオランダを訪問し、バイレフェルト国防大臣と日オランダ防衛相会談を実施した。同会談では、NATO・EUを通じた協力について意見交換を実施するとともに、小野寺防衛大臣(当時)から北朝鮮の「瀬取り」の状況及び国連安保理決議に基づく厳格な制裁履行が重要である旨説明し、国連安保理非常任理事国かつ北朝鮮制裁委員会議長国(当時)であるオランダと緊密に連携していくことで同意した。

また、2021年には、英空母打撃群に加わるオランダ海軍フリゲートも日本に寄港する予定であり、歴史ある日オランダ関係を一層発展させるものとして、わが国として歓迎する旨表明した。

エストニアとの間では、2018年9月、ルイク国防大臣が訪日し、日エストニア防衛相会談を実施した。同会談では、同年1月の安倍内閣総理大臣訪問時の成果を踏まえ、CCDCOEに対する防衛省からの職員派遣を含め、今後、二国間及び多国間の枠組みの中でサイバー分野での協力を深化させていくことで一致した。

ウクライナとの間では、2018年10月、ペトレンコ国防次官が訪日し、日ウクライナ防衛協力・交流に関する覚書に署名したほか、日ウクライナ安全保障協議を開催した。

2021年3月には、岸防衛大臣は、ウクライナ国防大臣として初訪日したタラン国防大臣との間で防衛相テレビ会談を実施した。岸防衛大臣から、わが国は一貫してウクライナの主権及び領土一体性を尊重することを表明し、両大臣は、防衛協力・交流の重要性を確認し、覚書に基づき、幅広い分野で協力を推進していくことで一致した。また、地域情勢について意見交換を行い、特に東シナ海や南シナ海情勢について、力を背景とした一方的な現状変更の試みや緊張を高めるいかなる行為にも強く反対することで一致し、この文脈で、中国の海警法に対する深刻な懸念について認識を一致した。

フィンランドとの間では、2019年2月、ニーニスト国防大臣(当時)が訪日し、日フィンランド防衛協力・交流に関する覚書への署名が行われた。また、2020年8月には、河野防衛大臣が、カイッコネン国防大臣と日フィンランド防衛相テレビ会談を実施し、新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえつつ、FOIPの維持・強化に向けて、防衛協力・交流を強力に推進していくことで一致した。

デンマークとの間では、2019年10月、河野防衛大臣は、ブラムセン国防大臣との間で電話会談を実施し、二国間の防衛交流や両国を取り巻く安全保障情勢などについて、意見交換を行ったほか、河野防衛大臣から中東地域における日本関係船舶の安全確保のための自衛隊による情報収集活動について説明した。

EUとの間では、2020年2月、河野防衛大臣は、第56回ミュンヘン安全保障会議に際してボレルEU上級代表と会談を実施し、日EU間で特に海洋安全保障の分野での協力が進展していることを歓迎しつつ、引き続き実質的な防衛協力・交流を進めることで一致し、地域情勢などについて意見交換を行った。

また、2021年5月に開催された日EU定期首脳協議において、両首脳は、自由で開かれたインド太平洋に向けた協力を強化すること、及び、東シナ海・南シナ海情勢について、一方的な現状変更の試みに強く反対することで一致した。また、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促すことで一致した。

EUとの軍種間の主な交流として、2020年6月、統幕長がグラツィアーノ軍事委員長と電話会談を行い、直面する安全保障情勢や新型コロナウイルス感染症への取組などを意見交換した。このほか、同年10月には、海賊対処行動に従事する護衛艦「おおなみ」が欧州連合海軍部隊(ソマリア・アタランタ作戦)との海賊対処共同訓練やジブチへの共同寄港を実施した。日EU双方は同寄港にあわせ、ジブチの小中学校に対し、文房具などを寄贈する共同物資供与式を行うとともに、高官級テレビ会議を実施するなど、幅広い分野で交流を深化させている。

日EU海賊対処共同訓練において近接するスペイン海軍フリゲート艦「SANTA MARIA」に敬礼する護衛艦「おおなみ」艦長(2020年10月)

日EU海賊対処共同訓練において近接するスペイン海軍フリゲート艦「SANTA MARIA」に敬礼する護衛艦「おおなみ」艦長(2020年10月)

日EU共同でジブチ小中学校へ文房具などを寄贈する隊員(2020年10月)

日EU共同でジブチ小中学校へ文房具などを寄贈する隊員(2020年10月)

これら諸行事にあたり、岸防衛大臣とボレルEU上級代表は各々のコメントを記載した共同声明を発出した。その中で岸防衛大臣は、日EUの海賊対処部隊が連携を図ることに極めて大きな意義があること、FOIPの維持・強化に向けて引き続きEUと協力してくことを述べた。

6 中国
(1)中国との防衛協力・交流の意義など

わが国と中国との安定的な関係は、インド太平洋地域の平和と安定に不可欠の要素である。日中は、大局的かつ中長期的見地から、安全保障を含むあらゆる分野において、「戦略的互恵関係」を構築し、それを強化できるよう取り組んでいく必要がある。

安全保障分野においては、防衛省・自衛隊は、中国との間で相互理解・信頼関係を増進するため、多層的な対話や交流を推進することとしている。この中で、尖閣諸島周辺海域を含む東シナ海情勢などについて、わが国の率直な懸念を伝達し、中国がインド太平洋地域の平和と安定のために責任ある建設的な役割を果たして、国際的な行動規範を遵守するとともに、国防政策や軍事力にかかる透明性を向上させることで、わが国を含む、国際社会の懸念を払拭していくよう強く促していく方針である。このほか、不測の事態の発生を回避すべく、「日中防衛当局間における海空連絡メカニズム」を両国間の信頼関係の構築に資する形で運用していくこととしている。

(2)最近の主要な防衛交流実績など

日中防衛交流は、2012年9月のわが国政府による尖閣三島(魚釣島、南小島及び北小島)の取得・保有以降、停滞していたが、2014年後半以降、交流が徐々に再開している。

近年の閣僚級の交流実績については、2015年11月のADMMプラスに際して中谷防衛大臣と常万全(じょう・ばんぜん)国務委員兼国防部長(いずれも当時)との間で、4年5か月ぶりとなる日中防衛相会談が実施されたほか、2019年6月には、岩屋防衛大臣(当時)と魏鳳和(ぎ・ほうわ)国務委員兼国防部長との会談が行われ、防衛大臣・国防部長間における相互訪問の早期実現が重要との認識で一致した。この共通認識に基づき、同年12月、河野防衛大臣が防衛大臣として10年ぶりに中国を訪問した。

2020年12月には、岸防衛大臣が魏鳳和国務委員兼国防部長と日中防衛相テレビ会談を実施した。同会談では、岸防衛大臣から、わが国固有の領土である尖閣諸島周辺海域などの東シナ海情勢について、力を背景とした一方的な現状変更の試みに対する強い懸念を伝達し、事態をエスカレートさせるような行動をとらないよう強く求めるとともに、南シナ海情勢の現状への懸念を表明し、法の支配や自制の重要性について指摘した。

中国国務委員兼国防部長とテレビ会談する岸防衛大臣(2020年12月)

中国国務委員兼国防部長とテレビ会談する岸防衛大臣(2020年12月)

さらに、自国の国防政策や軍事力の透明性を向上させ、国際社会の懸念を払拭するよう求めた。そのうえで、両大臣は、日中防衛当局間における意思疎通を継続していくことを確認したほか、「日中防衛当局間ホットライン」について、調整をさらに加速させていくことで一致した。

また、両国の外交・防衛当局が参加する日中安保対話(第13回)は、2015年3月に東京において4年ぶりに開かれ、以降、ほぼ毎年開催されている。また、日中防衛当局は日中高級事務レベル海洋協議にも参加しており、直近では2021年2月に第12回協議がオンラインで実施された。日本側から東シナ海をはじめとする海洋・安全保障分野の課題にかかるわが国の立場や懸念を改めて申し入れ、中国側の行動を強く求めるとともに、海警法などについてわが国の強い懸念を伝達した。

軍種間においては、2019年4月、護衛艦「すずつき」が海自艦艇として約7年半ぶりに訪中し、中国人民解放軍海軍成立70周年を記念した中国主催国際観艦式に参加したほか、同月に海幕長が約5年半ぶりに訪中し、同観艦式に合わせ実施されたハイレベルシンポジウムにおいて、自由で開かれた海洋の重要性などについて発信した。これに続き、同年10月には、中国海軍ミサイル駆逐艦「太原」が中国艦艇として約10年ぶりに日本に寄港したほか、海自護衛艦との間で、約8年ぶり3回目となる親善訓練を実施した。

また、部隊間においても、2018年11月、中国軍東部戦区副司令員(中将)を団長とする東部戦区代表団が訪日したのに続き、2019年11月には、陸自西部方面総監を団長とする自衛隊代表団が東部戦区などを訪問した。このほか2018年には、6年ぶりに、笹川平和財団が主催する「日中佐官級交流」が再開されており、同年4月及び2019年9月に中国軍佐官級代表団が訪日したほか、2018年9月及び2019年4月に自衛隊佐官級訪問団が訪中し要人表敬、部隊への訪問などを行った。

今後も、防衛省・自衛隊は、中国との間では、各種懸念が存在しているとの現状を踏まえ、わが国の率直な懸念を明確に伝えるべく、意思疎通を図っていくとともに、防衛交流を推進し、日中防衛当局間での相互理解・信頼醸成を進めつつ、わが国の領土・領海・領空を断固として守り抜くため、冷静かつ毅然と対応していくこととしている。

(3)日中防衛当局間の海空連絡メカニズム

2007年1月及び4月の日中首脳会談において、安倍内閣総理大臣と温家宝(おん・かほう)中国国務院総理(当時)との間で両国の防衛当局間の連絡体制の強化、特に海上における連絡体制の整備で一致したことを踏まえ、日中防衛当局は、2008年4月に第1回共同作業グループ協議を開催し、以降、防衛当局間で、2015年1月の第4回共同作業グループ協議以降は両国の外交当局も交えた形で協議を重ねてきた。

その後、2017年12月の第8回日中高級事務レベル海洋協議、2018年4月の第7回共同作業グループ協議などでの交渉を経て、同年5月に東京で開かれた日中首脳会談に際し、安倍内閣総理大臣と李克強(り・こくきょう)中国国務院総理の立ち合いのもと、日中防衛当局間で本メカニズムに関する覚書12の署名が行われ、同年6月8日、本メカニズムの運用が開始された。

本メカニズムは、日中防衛当局の間で、①日中両国の相互理解及び相互信頼を増進し、防衛協力・交流を強化するとともに、②不測の衝突を回避し、③海空域における不測の事態が軍事衝突又は政治外交問題に発展することを防止することを目的として作成されたものであり、主な内容は、①防衛当局間の年次会合・専門会合の開催、②日中防衛当局間のホットライン開設、③自衛隊と人民解放軍の艦船・航空機間の連絡方法となっている。

本メカニズムに基づき、同年12月には、防衛当局間において第1回年次会合・専門会合、2020年1月には、第2回年次会合・専門会合が実施された。2021年3月には第3回年次会合・専門会合が実施され、日本側からは、尖閣諸島周辺海空域を含む東シナ海情勢に関するわが国の立場について伝えるとともに、力を背景とした一方的な現状変更の試みに対する強い懸念を示したほか、緊張を高める如何なる行為にも強く反対する旨伝達した。

また、中国海警法に対する強い懸念を伝えるとともに、同法の制定により、わが国を含む関係国の正当な権益が損なわれ、東シナ海や南シナ海などの海域において緊張を高めることになることは、断じて受け入れられないとの立場を伝達した。そのうえで、本メカニズムが運用開始以後、適切に運用されてきたとの認識を共有したほか、「日中防衛当局間ホットライン」に関しても調整を行い、早期開設に向けた調整が着実に進展していることを確認した。

2020年12月に実施した日中防衛相テレビ会談においても、ホットラインの早期開設に向けた調整が着実に進展していることを改めて歓迎するとともに、その実現に向け、日中の両防衛相がリーダーシップを発揮し、調整をさらに加速させていくことで一致した。

参照資料36(最近の日中防衛協力・交流の主要な実績(過去3年間))

7 ロシア
(1)ロシアとの防衛協力・交流の意義など

ロシアは、インド太平洋地域における安全保障上の重要なプレーヤーであり、かつ、わが国の重要な隣国でもあることから、日露の防衛交流を通じて信頼関係を増進させることが極めて重要である。防衛省・自衛隊は、様々な分野で日露関係が進展する中、1999年に署名された日露防衛交流に関する覚書(2006年改定)に沿って、日露「2+2」や防衛当局間の各種対話、日露海上事故防止協定13に基づく年次会合、日露捜索・救難共同訓練などを継続的に行っている。

ロシアとの関係については、ウクライナ情勢などを踏まえ、政府としてG7(Group of Seven)の連帯を重視しつつ適切に対応することとしている。同時に、隣国であるロシアとの間で、不測の事態や不必要な摩擦を招かないためにも実務的コンタクトは絶やさないようにすることが重要であり、これらの点を総合的に勘案してロシアとの交流を進めている。

(2)最近の主要な防衛交流実績など

2013年4月に行われた日露首脳会談では、日露両国間の安全保障・防衛分野における協力を拡大することの重要性を確認し、日露「2+2」を立ち上げることで合意した。同年11月に実施された初の日露「2+2」において、陸軍種間の部隊間交流及び演習オブザーバー相互派遣の定例化、アデン湾における海自とロシア海軍の海賊対処部隊間の共同訓練の実施、日露サイバー協議の定例開催などで一致した。

2017年3月に実施された第2回目の日露「2+2」においては、地域情勢などについて意見交換を行い、北方領土への地対艦ミサイルの配備や、北方四島を含み得る諸島への師団配備といった北方四島におけるロシア軍の軍備強化にかかる動きについては、北方領土はわが国固有の領土であるとのわが国の立場と相容れないものであり、遺憾である旨を日本側から抗議した。

2018年7月、小野寺防衛大臣(当時)が防衛大臣として初めてロシアを訪問し、日露「2+2」及び防衛相会談を開催し、統幕長の訪露や艦艇の寄港を含む防衛交流の推進に加え、日露共通の目標である北朝鮮の非核化に向け、引き続き連携していくことで一致した。

2019年5月、日露防衛相会談及び第4回日露「2+2」が東京で開催され、防衛交流について、同年夏のロシア国際軍楽祭への陸自中央音楽隊の初参加などで一致するとともに、防衛政策に関して、わが国のミサイル防衛システムは純粋に防御的なものであり、ロシアに脅威を与えるものではない旨説明した。

日・太平洋島嶼国国防大臣会合の準備会合(テレビ会議形式)においてスピーチする松川防衛大臣政務官(2021年3月)

日・太平洋島嶼国国防大臣会合の準備会合(テレビ会議形式)において
スピーチする松川防衛大臣政務官(2021年3月)

参照資料37(最近の日露防衛協力・交流の主要な実績(過去3年間))

8 太平洋島嶼国

太平洋島嶼国は、海洋国家であるわが国と法の支配に基づく自由で、開かれた、持続可能な海洋秩序の重要性についての認識を共有するとともに、わが国と歴史的にも深い関係を持つ重要な国々である。わが国としては、2018年に開催された第8回太平洋・島サミットにおいて、この地域の安定と繁栄により深くコミットしていく考えを表明した。さらに、同年に発表された防衛大綱においても、太平洋島嶼国との協力や交流を推進する旨が初めて言及された。

2020年6月及び8月、河野防衛大臣は、太平洋島嶼国の中で軍隊を保有する三か国であるフィジー、パプアニューギニア(PNG:Papua New Guinea)及びトンガの各国防大臣とそれぞれ電話会談を実施した。各会談において、新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえ意見交換を行い、防衛当局間のコミュニケーションを継続するとともに、FOIPの維持・強化に向け、防衛協力・交流を引き続き強力に推進していくことで一致した。

2021年3月、フィジー、パプアニューギニア、トンガ及びわが国の4か国の局長級で、日・太平洋島嶼国国防大臣会合14(JPIDD:Japan Pacific Islands Defense Dialogue)の準備会合をテレビ会議形式で開催した。同会合においては、新型コロナウイルス感染症が世界的に拡大している現状を踏まえ、感染症対策、HA/DRと気候変動、海洋安全保障の分野における防衛当局の役割などについて意見交換を行った。そのうえで、日・太平洋島嶼国国防大臣会合の開催に向けて引き続き緊密に協力することを確認した。

PNGとの間では、2015年以降、陸自中央音楽隊が同国の軍楽隊の新設・育成に関する能力構築支援を実施しており、関係強化が図られてきた。能力構築支援を経て、同軍楽隊は、2018年11月に同国で開催されたAPEC首脳会議の場において、各国首脳の前で高い技術で演奏を披露した。また、2021年3月には、同国への新たな分野の能力構築支援として、HA/DR能力向上を目的とした、工兵部隊に対する施設機械整備教育をオンラインで行った。

施設機械整備についてオンライン教育を受講するパプアニューギニア軍(2021年3月)

施設機械整備についてオンライン教育を受講するパプアニューギニア軍(2021年3月)

こうした取組に加えて、海自及び空自においては、艦艇や航空機による寄港・寄航を通じて太平洋島嶼国との関係を強化している。2015年以降、空自は、ミクロネシア連邦等における人道支援・災害救援共同訓練「クリスマス・ドロップ」を実施し、物料投下訓練としてミクロネシア連邦、パラオ共和国及び北マリアナ諸島に対して寄付物品の投下を実施している。

参照資料38(最近の太平洋島嶼国との防衛協力・交流の主要な実績(過去3年間))

9 中東諸国

中東地域の平和と安定は、わが国を含む国際社会の平和と繁栄にとって極めて重要であることから、防衛省・自衛隊としても、同地域の国と協力関係の構築・強化を図るため、ハイレベル交流や部隊間交流を進めてきている。

アラブ首長国連邦(UAE:United Arab Emirates)との間では、2018年5月に防衛交流に関する覚書が署名され、同年12月には防衛当局間協議が開催された。2020年1月、安倍内閣総理大臣がUAEを訪問して、ムハンマド・アブダビ皇太子と意見交換を行い、中東における日本関係船舶の航行の安全を確保するためのわが国の取組について直接説明し、その支持を得ている。同年3月及び6月には河野防衛大臣が電話会談を、2021年3月には岸防衛大臣がテレビ会談を、それぞれボワルディ国防担当国務大臣との間で実施し、二国間の防衛交流や地域情勢などについて意見交換した。

軍種間交流では、2019年6月、統幕長が歴代統幕長として初めてUAEを訪問し、ムハンマド・アブダビ皇太子を表敬したほか、自衛隊は、同年11月に実施されたドバイ・エアショーにC-2輸送機を参加させた。また、2020年7月及び2021年3月には、統幕長がルメーシー国軍参謀長とテレビ会談を実施し、国際社会及び地域の平和と安定のため、共通の課題に対し引き続きともに対応していくことで一致したほか、2021年3月に空幕長がアル・アラウィ空軍司令官と電話会談を行うなど、二国間の防衛交流は深化を続けている。

UAE国軍参謀長とテレビ会談を行う山崎統幕長(2020年7月)

UAE国軍参謀長とテレビ会談を行う山崎統幕長(2020年7月)

イスラエルとの間では、2018年10月に初めて、外務・防衛当局間協議を開催し、第1回協議においては地域情勢、安全保障問題など、幅広い事項について意見交換を実施した。同年11月、第4回日イスラエル・サイバー協議が開催され、2019年9月には、防衛当局間で「防衛省とイスラエル国防省の間の防衛装備・技術に関する秘密情報保護の覚書」に署名するなど、安全保障分野での関係を強化している。

また同年6月、統幕長が歴代統幕長として初めてイスラエルを訪問したほか、2020年6月には、コハビ国軍参謀総長と電話会談を実施するなど、軍種間でも交流を推進している。

イランとの間では、2019年12月の日イラン首脳会議において、安倍内閣総理大臣から、中東における日本関係船舶の航行の安全を確保するためのわが国の取組について詳細に説明した。また、同年10月及び2020年1月、河野防衛大臣は、ハータミ国防軍需大臣と防衛大臣として初の電話会談を実施し、両大臣は地域情勢などについて意見交換を行った。2021年2月には、岸防衛大臣がハータミ国防軍需大臣とテレビ会談を実施し、中東地域における日本関係船舶の安全確保のための自衛隊による情報収集活動の延長について説明するとともに、防衛当局間の意思疎通を継続していくことで一致した。

エジプトとの間では、2017年9月、山本防衛副大臣が防衛省の政務三役として初めてエジプトを訪問したほか、2020年6月には、統幕長がヘガージ参謀総長と電話会談し、日エジプト防衛協力の推進の重要性について確認した。

オマーンとの間では、2019年3月、バドル国防担当大臣が訪日し、岩屋防衛大臣(当時)と会談した際、防衛協力に関する覚書が署名された。同年12月、河野防衛大臣は、防衛大臣として初めてオマーンを訪問し、バドル国防担当大臣と会談した。両大臣は、FOIPのもと、海軍種間での協力を中心とした防衛協力・交流を引き続き深化させていくことを確認した。2020年1月には、安倍内閣総理大臣がオマーンを訪問して、ハイサム新国王と意見交換を行い、中東における日本関係船舶の航行の安全を確保するためのわが国の取組について直接説明して、その支持を得た。

カタールとの間では、2015年2月、防衛交流に関する覚書が署名された。2019年5月に訪日したアティーヤ副首相兼防衛担当国務大臣は、岩屋防衛大臣(当時)と、初の防衛相会談を実施した。同年12月、河野防衛大臣は、同国が主催する第19回ドーハ・フォーラムに防衛大臣として初めて出席し、アティーヤ副首相兼防衛担当国務大臣と会談を実施した。会談において、両大臣は、日カタール防衛協力・交流が進展していることを歓迎し、教育・訓練などの分野での防衛協力・交流を引き続き深化させていくことを確認した。

サウジアラビアとの間では、2016年9月、防衛交流に関する覚書が署名された。また、2020年1月には、安倍内閣総理大臣がサウジアラビアを訪問し、サルマン国王やムハンマド皇太子を表敬した。同年9月には、河野防衛大臣とムハンマド皇太子兼副首相兼国防大臣との電話会談が実施され、両大臣は、二国間の防衛協力・交流や地域情勢などについて意見交換を行ったほか、河野防衛大臣から中東地域における日本関係船舶の安全確保を目的とした自衛隊による情報収集活動について説明した。

また、2021年2月には、岸防衛大臣がハーリド国防副大臣と電話会談を行い、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ、感染症対策分野においても防衛協力・交流を推進していくことで一致するとともに、中東地域における平和と安定及び航行の安全の確保のため、引き続き連携していくことで合意した。

トルコとの間では、2012年7月に、事務次官がドゥンダル国防次官(当時)との会談において防衛協力・交流の意図表明文書に署名した。2019年6月、ドゥンダル陸軍総司令官が訪日し、陸幕長と懇談したほか、防衛副大臣を表敬した。同年7月には、アカル国防大臣がG20に伴う大統領随行で訪日し、岩屋防衛大臣(当時)と懇談した。

バーレーンとの間では、2019年10月、河野防衛大臣とハリーファ国軍司令官との電話会談が実施され、両大臣は、二国間の防衛交流や中東情勢などについて意見交換した。また、同年11月、河野防衛大臣は、同国で開催された第15回マナーマ対話に際してハリーファ国軍司令官と初の大臣級における防衛当局間での会談を実施し、今後ハイレベル交流や海軍種を中心とした交流を引き続き行っていくことで一致した。さらに、2020年8月には、統幕長がヌアイミ国軍参謀長とのテレビ会談を実施し、両国の防衛交流や新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止への取組などについて意見交換した。

ヨルダンとの間では、2016年10月、アブドッラー国王が訪日した際に、日ヨルダン防衛交流に関する覚書に署名した。2018年11月には、アブドッラー国王が訪日し、岩屋防衛大臣(当時)からの表敬及び習志野駐屯地への部隊訪問を通じ、両国間で防衛当局者協議や部隊間交流などが着実に進展していることを歓迎した。

また、2019年12月、河野防衛大臣は、防衛大臣として初めてヨルダンを訪問し、フネイティ統合参謀本部議長と会談した。会談では、フネイティ統合参謀本部議長から、同年7月に初の外務・防衛当局間協議が開催されるなど両国の防衛交流が進展していることや、今後も訓練や装備分野などでの協力を進めていきたい旨の発言に対し、河野防衛大臣から、当該分野での協力を検討していく旨述べた。

さらに、2020年10月には、第2回外務・防衛当局間協議がテレビ会議形式で開催された。

参照資料39(最近の中東諸国との防衛協力・交流の主要な実績(過去3年間))

10 アジア諸国
(1)スリランカ

スリランカは、インド洋のシーレーン上の要衝に位置する重要国であり、近年、同国との防衛協力・交流を強化している。2018年8月、小野寺防衛大臣(当時)が、防衛大臣として初めてスリランカを訪問し、ウィジェワルダナ国防担当国務大臣(当時)と両国間で初となる防衛相会談を実施した。会談では、海洋安全保障及び海上の安全について議論するとともに、スリランカ側から今後、陸海空軍のHA/DR分野の能力向上を通じてスリランカ軍全体としての能力を高めていきたい旨述べられたことに対し、小野寺防衛大臣(当時)もこれを支援する意向を示した。

2019年7月には、原田防衛副大臣(当時)がスリランカを訪問し、ウィジェワルダナ国防担当国務大臣との会談やシリセーナ大統領兼国防大臣(いずれも当時)を表敬し、FOIPの推進に向けて、スリランカと日本の海洋国家間のパートナーシップを一層強化する必要性について認識を共有した。

軍種間の主な交流については、同年2月、両国海軍種間で初となる幕僚協議において、HA/DR分野の共同訓練「JA-LAN」を年1回実施することなどで合意したことを受け、2020年9月、インド太平洋方面派遣訓練部隊が、コロンボ港周辺海空域で日スリランカ共同訓練(JA-LAN EX)を実施し、戦術技量の向上及びスリランカ海軍との連携強化を図った。

能力構築支援においては、同年2月、スリランカ空軍司令部において同国空軍関係者約15名に対し、航空救難セミナーを実施した。セミナーでは、空自の航空救難に関する知見、能力について紹介するとともに、スリランカ空軍のための捜索救難マニュアルの制定について協議した。

(2)パキスタン

パキスタンは、南アジア、中東、中央アジアの連接点に位置し、わが国にとって重要なシーレーンにも面しているなど、インド太平洋地域の安定にとって重要な国家である。また、同国は、伝統的にわが国と友好的な関係を有する親日国でもあり、そのような観点から、同国との防衛協力・交流を推進している。

同国との間では、2004年以来おおむね2年に1回の頻度で局長級の防衛政策対話を実施しているが、2019年6月には、2年連続となる防衛政策対話を実施し、日パキスタン防衛協力・交流の覚書に署名した。2020年8月には、河野防衛大臣がバジュワ陸軍参謀長とテレビ会談を実施し、新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえ、両国間の防衛協力・交流などについて意見交換を行った。

軍種間においては、パキスタンが主催する海軍種の多国間共同訓練「アマン」への参加や教育交流などを実施している。

パキスタン海軍主催多国間共同訓練「アマン21」に参加する護衛艦「すずなみ」(2021年2月)【パキスタン海軍】

パキスタン海軍主催多国間共同訓練「アマン21」に参加する
護衛艦「すずなみ」(2021年2月)【パキスタン海軍】

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(3)モンゴル

モンゴルは、わが国と普遍的価値を共有する重要なパートナーであり、防衛省・自衛隊としても、「戦略的パートナーシップ」の発展に向け、同国との防衛協力・交流を推進している。

2020年6月、河野防衛大臣は、エンフボルド国防大臣とテレビ会談を実施し、東シナ海・南シナ海情勢を含む地域情勢などについて意見交換したほか、新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえつつ、FOIPの維持・強化に向け、日モンゴル防衛協力・交流を引き続き強力に推進していくことで一致した。

また、能力構築支援については、2012年以降、PKO(施設)や衛生分野における事業を実施している。

参照資料40(最近のアジア諸国との防衛協力・交流の主要な実績(過去3年間))

11 アフリカ諸国

ジブチは、海賊対処のため、海外で唯一自衛隊の拠点が存在する重要な国家である。同拠点はUNMISS派遣部隊への物資の輸送に活用されたほか、2019年10月から12月にかけて、わが国がジブチに対して災害対処能力強化支援として実施している陸自教官によるジブチ軍工兵部隊要員に対する重機操作訓練の際に、教官の生活拠点として活用された。同年12月には、河野防衛大臣が、ジブチを訪問し、ブルハン国防大臣と会談を実施した。会談では、両大臣は、日ジブチ防衛協力・交流の深化のため、防衛当局間で引き続き連携を密にしていくことを確認した。

また、この会談の中で、河野防衛大臣はジブチにおける自衛隊の活動拠点の運用に関する同国政府の支持に対する感謝を伝えたほか、中東地域における日本関係船舶の安全確保のための自衛隊による情報収集活動に関し、ジブチを拠点に活動する海賊対処部隊の固定翼哨戒機を活用することについて説明した。

今後、本活動拠点について、中東・アフリカ地域における安全保障協力などのための長期的・安定的な活用に向けて取り組むこととしている。

参照資料41(最近のその他の諸国との防衛協力・交流の主要な実績(過去3年間))

12 中南米諸国

中南米諸国には、太平洋に面する国や、わが国と基本的価値を共有する国が多い。

コロンビアとの間では、2016年12月、防衛交流に関する覚書に署名した。

日ブラジル防衛協力・交流に関する覚書に署名する岸防衛大臣(2020年12月)

日ブラジル防衛協力・交流に関する覚書に署名する
岸防衛大臣(2020年12月)

ブラジルとの間では、2020年12月、岸防衛大臣は、シルヴァ国防大臣と両国間で初となる日ブラジル防衛相会談をオンラインで実施した。その際、日ブラジル防衛協力・交流に関する覚書に署名し、今後も防衛協力・交流を強力に推進していくことで合意した。

ジャマイカとの間では、2019年12月、ホルネス首相兼国防大臣が来日し、河野防衛大臣と会談した。

チリとの間では、2021年1月、海幕長がレイバ海軍司令官とテレビ会談を行い、海軍種間交流を促進することで一致した。

参照資料41(最近のその他の諸国との防衛協力・交流の主要な実績(過去3年間))

2 国家安全保障戦略においては、「自由、民主主義、基本的人権の尊重、法の支配など」を普遍的価値としている。

3 正式名称:日本国の自衛隊とオーストラリア国防軍との間における物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とオーストラリア政府との間の協定
従来の適用対象となる活動に加え、①国際連携平和安全活動、②国際平和共同対処事態、③重要影響事態、④武力攻撃事態等及び⑤存立危機事態における活動のほか、⑥在外邦人等の保護措置、⑦海賊対処行動、⑧機雷等の除去及び⑨情報収集活動についても新たにその適用対象となった。

4 一方の部隊が他方の国の領域を訪問する際の手続きの確立や法的地位の明確化を通じて自衛隊と豪州国防軍との間の共同訓練や災害救援活動等の協力活動を円滑化する二国間協定

5 UGV(Unmanned Ground Vehicle)とは、陸上無人車両のことを指す。

6 海自の自衛艦旗については、防衛省HPを参照(https://www.mod.go.jp/j/publication/shiritai/flag/index.html(別ウィンドウ)

7 2018年12月、能登半島沖(わが国排他的経済水域内)において警戒監視中の海自P-1哨戒機が韓国海軍「クァンゲト・デワン」級駆逐艦から火器管制レーダーを照射されるという事案が発生した。防衛省は本件事案を重く受け止め、2019年1月に客観的事実を取りまとめた最終見解を公表し、韓国側に再発防止を強く求めている。なお、自衛隊の哨戒機は、十分な高度と距離を確保して飛行しており、韓国の艦艇に脅威を与えるような飛行は行っていない。防衛省としては、今後とも安全に十分配意しつつ、警戒監視及び情報収集に万全を期していく。なお、詳細については、防衛省HPを参照(https://www.mod.go.jp/j/approach/defense/radar/index.html(別ウィンドウ)

8 日韓GSOMIAにおける協定の終了に関する規定は、次のとおり。
第二十一条 効力発生、改正、有効期間及び終了(抜粋)
3 この協定は、一年間効力を有し、一方の締約国政府が他方の締約国政府に対しこの協定を終了させる意思を九十日前に外交上の経路を通じて書面により通告しない限り、その効力は、毎年自動的に延長される。

9 対象となる活動として、①共同訓練、②国際連合平和維持活動、③国際連携平和安全活動、④人道的な国際救援活動、⑤大規模災害への対処、⑥在外邦人等の保護措置及び輸送、⑦連絡調整その他の日常的な活動、⑧それぞれの国内法令により物品又は役務の提供が認められるその他の活動が挙げられている。

10 「第89回安全保障・防衛に関するオタワ会議」における岸防衛大臣スピーチについては、防衛省HPを参照(https://www.mod.go.jp/j/approach/exchange/area/2021/20210313_can-j.html(別ウィンドウ)

11 IPCPは、日NATO協力の一層の進展を目的として、ハイレベル対話の強化や防衛協力・交流の促進などの協力を推進する旨定めるとともに、実務的な協力の優先分野を特定している。2020年6月にIPCPが再度改訂され、実務的な協力の優先分野として「人間の安全保障」が追加された。

12 正式名称:日本国防衛省と中華人民共和国国防部との間の海空連絡メカニズムに関する覚書

13 正式名称:領海の外側に位置する水域及び上空における事故の予防に関する日本国政府とロシア連邦政府との間の協定

14 防衛省は、PNG、フィジー、トンガの国防大臣やその他の軍を保有しない太平洋島嶼国及び米国、オーストラリア、ニュージーランド、英国、フランス、カナダの局長級を交えた多国間会合を東京で開催し、地域の諸課題について議論し相互理解・信頼醸成を促進するため、日・太平洋島嶼国国防大臣会合の開催を計画している。当初、2020年4月に開催を計画していたが、新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から延期し、現在、感染症の状況を踏まえつつ、適切な時期の開催を追求している。