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第I部 わが国を取り巻く安全保障環境

9 南スーダン情勢

1983年から続いたスーダンの第2次内戦は、2005年、スーダン南部の現政権の前身となるスーダン人民解放運動/戦線(SPLM/A:Sudan People's Liberation Movement Army;後の政府軍)とスーダンのバシール政権との間の南北包括和平合意(CPA:Comprehensive Peace Agreement)成立により終結した。2011年7月、CPAの合意に基づく住民投票を経て南スーダン共和国はスーダン共和国から分離独立した。

しかし、独立以前から存在したSPLA内での対立は継続し、2020年の現暫定政府設立に至るまでに、最大勢力であるディンカ族を代表するキール大統領と、第2勢力であるヌエル族を代表するマシャール副大統領との政治的対立に起因する大規模な武力衝突が2度発生している。

1度目は2013年12月に首都ジュバで発生し、国連とAUの支援を受けた「政府間開発機構」(IGAD:Intergovernmental Authority on Development)の仲介を経て、2015年8月に和平合意にあたる「衝突解決合意」(ARCSS:Agreement on the Resolution of the Conflict in South Sudan)が政府側とマシャール派の間で調印された。これに基づき、2016年4月には、キール氏を大統領、マシャール氏を第1副大統領とする国民統一暫定政府が設立された。

しかし、暫定政府設立から3か月後の2016年7月に、キール大統領の警護隊とマシャール第1副大統領の警護隊の間で2度目の武力衝突が発生した。マシャール第1副大統領が国外へ脱出し、キール大統領がマシャール第1副大統領を解任すると、以降、政府とマシャール派の間で再び衝突が生起するようになった。

この状況を受けて、IGADはARCSSの再活性化を図るため2017年6月にハイレベル再活性化フォーラムを開催し、翌年6月にはキール大統領、マシャール前第1副大統領らが恒久的停戦などを取り決めた「ハルツーム宣言」を採択した。同年7月に治安取決め、8月には暫定政府の体制に合意し、9月には「再活性化された衝突解決合意」(R-ARCSS:Revitalized Agreement on the Resolution of the Conflict in South Sudan)が正式に署名された。

当初、暫定政府の設立は2019年5月を予定していたが、2度の延期を経て、2020年2月に設立された。R-ARCSSは2022年3月の大統領選挙及び同年5月の正式政府発足を想定しているが、統一軍の形成など合意事項の履行は遅延する傾向にある。一方で、2020年12月には暫定議会や地方政府の設置に関して両勢力が合意するなどの進展もみられ、今後の正式政府発足に向けた動向が注目される。

参照図表I-2-10-1(現在展開中の国連平和維持活動)
III部3章5節2項2(国連南スーダン共和国ミッション)

図表I-2-10-1 現在展開中の国連平和維持活動