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第I部 わが国を取り巻く安全保障環境

10 ソマリア情勢

ソマリアでは、1991年に政権が崩壊し、無政府状態に陥ると、大量の避難民が発生するなど、深刻な人道危機に直面した。2005年には周辺国の仲介により「暫定連邦政府」が発足し、2012年には21年ぶりに統一政府が成立した。

ソマリアでは統一政府成立後も、テロと海賊という2つの大きな課題に直面している。中南部を拠点とするイスラム教スンニ派の過激派組織アル・シャバーブは、政府などを標的としたテロを繰り返している。2007年にアフリカ連合ソマリア・ミッション(AMISOM:African Union Mission in Somalia)が国連安保理の承認を受けて創設された。その後、AMISOM軍や、欧米諸国の支援を受けて再建が進められているソマリア国軍などによる掃討により、アル・シャバーブは支配下にあった主要な都市を失い、勢力はある程度弱体化した。しかし、その脅威は依然として存在し、ソマリア国軍やAMISOM軍の基地への攻撃、ソマリア国内やAMISOM参加国でのテロを頻発させている。近年はISILの戦闘員がソマリアに流入しているとの指摘もある。

さらに、2020年12月、米国は、ソマリアから部隊の大部分を撤収し東アフリカの域内外に再配置する旨を発表した。また、同月にソマリア政府が対テロにおいては協力的だったケニアとの断交を発表するなど対テロを取り巻く環境は変化しつつある。

また、ソマリアには、北東部を中心に、ソマリア沖・アデン湾などで活動する海賊の拠点が存在するとされる。国際社会は、海賊対処活動に継続的に取り組むとともに、ソマリアの不安定性が海賊問題を引き起こすとの認識のもと、ソマリアの治安能力向上のために様々な取組を行っており、2019年及び2020年の海賊被害の報告件数はいずれも0件となっている。

2020年末に実施予定だった議会選挙及び大統領選挙は、2021年2月8日にファルマージョ大統領の任期が終了した後も未だ実施のめどが立っておらず、国際社会の動きも含めて、今後のソマリア情勢が安定化していくか注目される。

参照III部3章2節2項(海賊対処への取組)