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第V部 人的基盤の強化

2 人的基盤強化の取組

防衛力の中核は自衛隊員である。防衛力を発揮するにあたっては、必要な人材を確保するとともに、全ての隊員が高い士気と誇りを持ち、個々の能力を発揮できる環境を整備すべく、人的基盤の強化を進めていく。

1 採用段階の取組強化
(1)募集

防衛省・自衛隊が各種任務を適切に遂行するためには、少子化による募集対象者人口の減少という厳しい採用環境のなかにあっても、優秀な人材を安定的に確保しなければならない。2025年度の募集については、特に、いわゆる「士」となる一般曹候補生と自衛官候補生の採用者数は、約9,300人となり、一般曹候補生の採用者数が5年ぶりに増加に転換し、自衛官候補生の採用者数も2024年度と比べて大幅に増加している。一方で、自衛官全体の充足率は約9割にとどまり、人材の確保は喫緊の課題であるため、募集対象者などに対して、より一層自衛隊の任務や役割、職務の内容などを丁寧に説明し、確固とした入隊意思を持つ人材を募る必要がある。

防衛省・自衛隊では、特に若年層に職業としての自衛官の魅力を伝えるために、採用広報動画の配信・バナーなどのWeb広告の発信・自衛官募集ホームページにおけるコンテンツの充実化など、これまで実施してきたSNS(Social Networking Service)やWebを利用した募集広報活動を引き続き推進していくほか、従来の広報のみならず、SNSの更なる活用など思い切った募集広報・スピード感のある発信に努めていく。このほか、現役隊員向けの周知、隊員募集に向けた広報および広く国民に向けた広報とそれぞれの層に対する情報発信を複合的に実施し、基本方針による処遇改善などの周知を行った。

また、全国に50か所ある自衛隊地方協力本部では、地方公共団体、学校、募集相談員などの協力を得ながら、きめ細やかに自衛官などの募集・採用を行っている。

さらに、基本方針に基づき、地方協力本部の人的・物的な体制の充実を図ることで募集活動を強化することとしている。

なお、地方公共団体は、自衛隊法などに基づき、募集期間などの告示や広報宣伝などを含め、募集に関する事務の一部を行うこととされており、防衛省はこれに要する経費を負担している。自衛隊が募集対象者に関する情報の提供を受けた市区町村は、2025年度にはおおよそ全体の3分の2となっている。防衛省としては、総務省と連携し、募集に関する事務の円滑な遂行のために必要な募集対象者情報を有する全ての市区町村から電子データまたは紙媒体の提出が得られることを目指すとともに、所要の協力が得られるよう地方公共団体などとの連携を強化していく。

(2)採用

ア 自衛官

自衛官は、個人の自由意思に基づく志願制度のもと、様々な区分に応じて採用される。また、自衛隊の精強性を保つため、階級ごとに職務に必要とされる知識、経験、体力などを考慮し、大半が50歳代半ば以降で退職する「若年定年制」や2年または3年を1任期として任用する「任期制」など、一般の公務員とは異なる人事管理1を行っている。

士と曹で約5年間の勤務を経て将来幹部として活躍する者を採用する「幹部候補曹制度」を新設し、2025年度から募集を開始した。また、陸自においてはサイバーなどの専門分野に特化した幹部を採用する「一般幹部候補生(専門)」を新設し、2025年度から募集を開始した。さらに、基本方針に基づき、2年または3年の任期で任用される任期制自衛官について、自衛官候補生制度を廃止し、当初から自衛官として採用する新たな任期制士を設け、2026年度から募集を開始した。当初から自衛官として採用することにより、初任給は一般曹候補生と同等になる。加えて、新たな任期制士の制度が創設されるまでの措置として、2025年度に自衛官任用一時金をそれまでより12万3,000円増の34万4,000円に引き上げた。このほか、将来の戦い方を見据えた自衛隊の人的基盤の強化のため、自衛隊奨学生制度2をさらに拡充し、改正前よりも年額31万2,000円増の96万円に引き上げるとともに、自衛官として様々なスキルを培い、任期を全うして次のステップに進んでいく「自衛隊新卒」としての援護広報の強化や再就職先の拡充も推進している。また、採用試験に関しては、自衛官候補生と一般曹候補生の採用試験の一部オンライン化に加え、一般曹候補生試験の陸海空各自衛隊での併願を2025年度から可能とした。その他の採用種目においても、受験者の負担軽減に向けた見直しを引き続き検討していく。

民間の人材を活用するという点では、部内での効率的な養成が困難な専門的技術に関する国家資格や専門的な技能・知識などを有する者を採用するため、キャリア採用幹部制度や技術曹制度を設けている。また、中途退職した元自衛官の採用数の拡大など、中途採用の強化に取り組んでいる。さらに、専門的な知識・経験を有する者を採用する任期付隊員制度において、2025年度から自衛官の募集も開始した。

参照図表V-2-2-1(募集対象人口の推移)、図表V-2-2-2(自衛官の任用制度の概要)、2項6(退職、再就職などの取組)資料81(自衛官の定員と現員、自衛官の定員と現員の推移(過去10年間))資料82(自衛官などの応募と採用状況)

図表V-2-2-1 募集対象人口の推移

図表V-2-2-2 自衛官の任用制度の概要

イ 事務官、技官、教官など

防衛省・自衛隊には、自衛官のほか、2万人を超える事務官、技官、教官など3が勤務している。職員の採用は、人事院が行う国家公務員採用総合職試験や国家公務員採用一般職試験、防衛省が行う防衛省専門職員採用試験の合格者から面接を経て行っているほか、近年では、経験者採用、最大5年の任期付採用、非常勤の採用などにも力を入れて取り組んでいる。

わが国の生産年齢人口は減少傾向にあり、今後、人材の獲得競争はより一層厳しさが増していくことが予想される一方、防衛行政は拡大・多様化・複雑化している。こうした状況の中で、自衛官とともに防衛力の中核を担う事務官・技官などについて、戦略的な視点と明確な方向性の下、採用していくことが極めて重要である。

このため、防衛省では、これまで行ってきている大学3、4年生を対象とした業務説明会やセミナーの開催に加えて、防衛省で働く魅力について、より幅広い層にわかりやすく発信するために、大学1、2年生や高校生を対象とした説明会の実施や採用特設サイトの整備を進めている。さらに、民間で広く利用されている就職・転職情報媒体を積極的に活用し、経験者採用の充実にも取り組んでいる。

さらに、これらの取組を通じて確保した職員が「働き続けたい」と思う、魅力ある組織文化を築き上げることも重要である。このため防衛省では、2025年度から、異動の内示時期の前倒しや趣旨説明、省内公募、省内副業、エンゲージメント調査の実施・分析など、働いている職員一人ひとりがそれぞれの可能性を最大限に発揮して、活き活きと働ける環境を実現するための取組を行ってきている。こうした取組の一環として、2026年3月、防衛省として初めて、事務官・技官などを対象とした「人財戦略」を策定した。防衛省では、この「人財戦略」において職員一人ひとりを人財と位置づけ、「働きがい」の向上と、個人の可能性を最大限に引き出すような施策を進めている。昨今の様々な取組と、「人財戦略」に基づく様々な施策を通じて、一人ひとりの職員が、成長実感や国防に貢献している実感を持ち、戦後、最も厳しく複雑な安全保障環境において、国民の期待に真に応えられる組織を目指していく。

参照資料83(防衛省の職員等の内訳)

動画アイコンQRコード動画:自衛官募集チャンネル
URL:https://www.youtube.com/channel/UCwvH00eFWmfs-FGkRCorzdA

2 予備自衛官などの活用

有事などの際は、事態の推移に応じ、必要な自衛官の所要数を早急に満たさなければならない。この所要数を迅速かつ計画的に確保するため、わが国では予備自衛官、即応予備自衛官および予備自衛官補の3つの制度4を設けている。

予備自衛官は、防衛招集命令などを受けて自衛官となり、後方支援、基地警備などの要員として、即応予備自衛官は、防衛招集命令などを受けて自衛官となり、第一線部隊などの一員として、それぞれ現職自衛官とともに任務につく。また、予備自衛官補は、自衛官未経験者などから採用され、教育訓練を修了した後、予備自衛官に任用される。

これまで地震や台風などの大規模災害、新型コロナウイルス感染症の際に予備自衛官および即応予備自衛官を招集しており、令和6年能登半島地震災害派遣においては、医師または看護師の資格を持つ予備自衛官および即応予備自衛官を招集し、被災地において、衛生支援(巡回診療)の活動や生活支援(物資輸送)の活動にそれぞれ従事した。

予備自衛官などの大半は、平素はそれぞれの職業などに就いているため、訓練などへの参加には、雇用企業の理解と協力が不可欠である。このため、即応予備自衛官が安心して訓練などに参加できるよう、必要な措置を行っている雇用企業などに対する「即応予備自衛官雇用企業給付金」を支給している。

また、予備自衛官または即応予備自衛官が、防衛出動や災害派遣などにおいて招集に応じた場合や、招集中の公務上の負傷などにより本業を離れざるを得なくなった場合に、その職務に対する理解と協力の確保に資するため、雇用主に対する「雇用企業協力確保給付金」を、防衛出動や災害派遣などにおいて招集に応じた場合や、招集中の公務上の負傷などにより本業を離れざるを得なくなった場合において、個人事業主などの事業を営む予備自衛官または即応予備自衛官に対する「予備自衛官事業継続給付金」を、それぞれ支給することとしている。さらに、予備自衛官補を経て予備自衛官に任用された者が、所定の教育訓練を終え、即応予備自衛官に任用された場合に、雇用企業に対して「即応予備自衛官育成協力企業給付金」を支給している。

防衛省では、防衛力整備計画に基づき、予備自衛官などを安定的に確保するため、年齢要件の緩和など制度の見直しを進めてきた。

2025年度には、基本方針に基づき、処遇改善として、予備自衛官手当および即応予備自衛官に対する手当を増額5したほか、1任期を優良な成績で勤務した予備自衛官に「勤続報奨金」を支給することとした。6加えて、進学支援給付金制度7の拡充や、予備自衛官などが使用する被服や装具などの更新を促進したほか、個人事業主など自ら事業を営む予備自衛官または即応予備自衛官に対する「予備自衛官事業継続給付金」を新設した。

2026年度には、予備自衛官などに支給する手当額の引上げのほか、予備自衛官などが使用する被服や装具などの更新を着実に進めることとしている。また、予備自衛官などの兼業を行う国家公務員および地方公務員が招集に応ずるための環境を整備するべく、「予備自衛官等の職務の円滑な遂行を図るための国家公務員及び地方公務員の兼業の特例に関する法律案」を国会に提出した。

参照図表V-2-2-3(予備自衛官などの制度の概要)

図表V-2-2-3 予備自衛官などの制度の概要

動画アイコンQRコード資料:予備自衛官等制度の概要
URL:https://www.mod.go.jp/gsdf/reserve/

3 処遇の向上など

基本方針に基づき、わが国を取り巻く安全保障環境が厳しさを増すなかにあって、任務や勤務環境の特殊性を正当に評価し、自衛官として質の高い人材を確保し続けるため、自衛官のなかでも特殊な業務に従事する者に対して、手当を充実させる。2025年度には、航空管制業務を担う自衛官に支給する手当、対領空侵犯措置などに対処する航空機の整備員に支給する手当、主要な野外演習などに従事する隊員に支給する手当などを新設8し、航空機の乗員に支給する航空手当や災害派遣等手当などを引き上げる9とともに、各自衛隊のサイバー専門部隊などの隊員に特殊作戦隊員手当など10を新たに支給するなどの拡充を行った。

なかでも、士の採用は厳しく喫緊の課題となっていることから、任期制・非任期制にかかわらず、入隊後に営舎内などの特殊な生活環境下で即応のための集団生活を送る自衛官に対する給付金(指定場所生活調整金)が新設され、採用後6年間で120万円を給付することとした。

また、自衛官の俸給表は、1950年の警察予備隊発足時に、主として警察官などに適用される公安職俸給表(一)11をベースに、その約1割を超過勤務手当相当分として上乗せした構造とし、自衛隊創設から約70年間、大きく見直すことなく現在に至っている。自衛官の任務や勤務環境の特殊性、課された制約や負担に見合った給与とするため、防衛力整備計画に基づき、自衛官の超過勤務の実態調査や諸外国の軍人の給与制度などの調査を進めているところ、2024年に実施された勤務実態調査の結果や公平性・公正性を確保するための部外の専門家の意見を踏まえ、防衛人事審議会に新たな部会「処遇・給与部会」を設置し、あるべき俸給表の水準や俸給月額の算定の仕組みについて検討している。そして、総理大臣の指示に基づき自衛隊創設以来、約70年間で初めてとなる自衛官の給与体系の独自の改定を2027年度中に実現すべく、着実に検討を進めている。

そのほか、隊員が高い士気と誇りを持ちながら任務を遂行できるよう、功績の適切な顕彰をはじめ、栄典・礼遇に関する施策を推進することとしている。

動画アイコンQRコード資料:自衛官の処遇改善
URL:https://www.mod.go.jp/gsdf/jieikanbosyu/treatment/index.html

4 生活・勤務環境の改善

国家防衛戦略において、全ての自衛隊員が高い士気と誇りを持ちながら個々の能力を発揮できるよう、生活・勤務環境の改善に引き続き取り組むこととしている。さらに、基本方針においても、自衛隊という組織全体のパフォーマンスを向上させていくにあたっては、やりがいと働きやすさの双方を向上し、自衛官一人ひとりが働きがいを感じられる環境を構築していくことが不可欠としている。

このため、自衛隊としても社会の変化をしっかりと直視し、若い世代のライフスタイルに合った生活・勤務環境を構築する。具体的には、隊員一人ひとりの関係が希薄化しないよう留意し、基本的な集団行動について習得する機会は確保しつつも、営舎内においてもプライバシーに配慮された生活環境を構築できるよう、隊舎居室の個室化についてスピード感をもって計画的に推進している。

プライバシーを確保し、くつろぎの空間に生まれ変わった隊舎居室

プライバシーを確保し、くつろぎの空間に生まれ変わった隊舎居室

そのほか、庁舎や隊舎などの生活・勤務環境の改善に向けて隊員のニーズをくみ取りつつ、必要な改修や修繕などきめ細やかな対応を継続する。さらに、自衛官は、緊急時の対応などのため、様々な待機態勢があることから、そのあり方を検証のうえ、所要の見直しを行う。また、艦艇乗組員に対しては、新型艦の居住区の魅力化や乗員待機所の拡充など艦艇乗組員の生活・勤務環境の改善を行う。自衛隊員がその能力を十分に発揮し、士気高く任務を全うするためには、隊員とそのご家族の居住環境を改善することも重要であるため、宿舎について、これまでも老朽化対策などに継続的に取り組んでいるが、今後もこれをさらに推進する必要がある。この際、引き続き宿舎の改修やPFI(Private Finance Initiative)による建替えなどスピード感をもって計画的に推進していくとともに、近年の住宅事情を踏まえた住宅設備の充実や生活の利便性と即応性との調和に留意した取組を進める。さらに、現代社会において通信環境は必須のインフラであることを踏まえ、自衛隊においても隊員一人ひとりの生活の充実感を確保するため通信環境を整備する。2026年度までに全国の駐屯地・基地などの厚生棟や生活隊舎の共用区画に1か所以上の無線LAN環境を整備する。

また、2027年度までに主要艦艇においては、業務用通信の補完として整備される商用低軌道衛星通信網12を活用して、隊員とご家族との連絡に加え、インターネットの閲覧などを可能とする通信環境を構築する。さらに、自衛隊の基地・駐屯地などには、僻地に所在し、公共交通機関も少なく、生活の利便性に乏しいものもあるところ、部外力を活用し、最寄り駅へのバスの運行の拡充やカーシェアリングのサービスの導入などを推進することで、生活の利便性向上に努める。13

このほか、隊員が日ごろから身に着ける制服や作業服といった被服などの適切な整備・更新を進め、使用実態に応じて定数の増加や仕様の改善を行う。糧食については、隊員が活動するために必要な栄養摂取基準をもとに健康管理を充実させ、継続的に魅力化を図っていく。また、全国の駐屯地などにおける実態を把握するとともに、物価上昇にかかる経費を適切に反映する。健康管理体制についても、各種健康診断の充実、トレーニング用備品の購入などの基盤整備を引き続き実施し、教育訓練時における各隊員の健康状態の把握のための器材整備を新規に検討する。

5 人材の育成

防衛力整備計画に基づき、陸自高等工科学校において、2028年度からの陸・海・空自の共同化や男女共学化に取り組むとともに、各自衛隊などにおける統合教育の強化や、各自衛隊・防衛大学校におけるサイバー領域などを含む教育・研究の強化、課程教育の共通化、先端技術の活用などを進めることとしている。さらに、防衛大学校では、語学力、諸外国の士官候補生との人脈などを有し、諸外国の国防政策にも通じた人材を確保・輩出するため、米国士官学校などに4年間留学する課程を新設し、2025年度から学生を米国士官学校へ留学させている。

なお、教育には、特殊な技能を持つ教官の確保、装備品や教育施設の整備など、非常に大きな人的・時間的・経済的努力が必要である。専門の知識・技能をさらに高める必要がある場合や、自衛隊内で修得することが困難な場合などには、海外を含む部外教育機関、国内企業、研究所などに教育を委託している。

6 退職、再就職などの取組
(1)定年年齢の引上げ

装備品の高度化や任務の多様化、国際化などに対応するため、知識・技能・経験を豊富に備えた人材の一層の有効活用が重要となっている。このため、2020年から2024年の間で1佐から3曹までの自衛官の定年を2歳ずつ引き上げた。また、基本方針に基づき、これまで培った知識・技能・経験を活かした人材の有効活用や自衛官の生涯設計の観点から、健康寿命の延伸と精強性の確保の均衡に考慮しつつ、将から3曹までの自衛官の定年を、2028年から2032年までの間で2歳ずつ引き上げることとした。さらに、60歳定年の対象者についても、看護師である幹部自衛官、宇宙職域の自衛官、サイバー関連業務に従事する自衛官に拡大し、2028年から2年で1歳ずつ段階的に60歳まで引き上げることとした。

参照図表V-2-2-4(自衛官の階級と定年年齢)

図表V-2-2-4 自衛官の階級と定年年齢

(2)再任用

定年後、退職自衛官を65歳に達するまでの間、任期を定めて再び自衛官に採用する再任用についてもさらに推進していく。これまで、再任用自衛官が従事できる業務として、補助艦船の乗組および航空機操縦業務、サイバーおよび飛行点検の業務、宇宙領域の把握に関する業務を追加してきた。これらに加え、2026年4月に航空機を用いた調査などおよび研究開発に関する業務を追加した。また、2025年度には自衛官の再任用の対象を定年退職後に自衛官としての勤務から一旦離れた者にも拡大し、定年後再任用者の確保のための施策を推進している。

さらに、任期満了退職した隊員や、育児・介護などのやむを得ない事情や民間企業への就職などにより中途退職した隊員について、元自衛官の再任用制度を活用し、2025年度は元自衛官を170名(陸上自衛隊は約100名)採用した。自衛隊退職時などの階級に応じて採用年齢、勤務経験などの採用要件が存在するものの、2017年度以降、採用者は年々増加傾向にあるため、引き続き制度を広く活用し、より一層再任用者の確保を図ることとしている。

(3)再就職

自衛隊の精強性を保つため、多くの自衛官は50代半ば以降、任期制自衛官は20代から30代半ばで退職し、その多くは、生活基盤の確保のために再就職が必要である。現役の自衛官が将来への不安を解消し、職務にまい進するため、ひいては自衛官の確保のためにも、再就職支援は極めて重要である。

防衛力整備計画においても、自衛官の退職後の生活基盤の確保は国の責務であるとしており、また、基本方針においても、関係省庁と防衛省が連携して再就職先の拡充を図るとともに、再就職に向けた職業訓練機会の充実、広報の強化などにより、再就職支援の一層の充実・強化を図ることとしている。

若年定年の自衛官が、年金受給開始年齢である65歳まで安心して社会で活躍できるよう、2026年度中には65歳に至るまでの再就職支援に向けた制度整備を目指す。若年定年制に伴い自衛官が被る経済的な不利益を補い、退職後の生活の安定を確保するため、若年定年退職者給付金制度について見直しを行い、2026年度から施行した。防衛人事審議会「処遇・給与部会」における最終提言を踏まえ、再就職後の活躍や自助努力が適切に評価され、就労意欲を阻害しない制度とする観点から制度全体の充実を図った。

なお、具体的には、次の4点について見直しを行った。

  • 給付水準を段階的に引き上げ、2026年度から2028年度にかけて退職時の給与水準を確保できる水準へと改善した。
  • 支給要件について、2026年度から通算勤続期間を基準とする仕組みに改め、多様な勤務形態や再任用後の勤務実績を適切に評価できるようにした。
  • 再就職後の就労による収入増が給付金の減額に直結しないよう、2028年度から支給制限を緩和することとし、就労意欲を阻害しない仕組みとした。
  • 再就職後の所得状況をより的確に反映できるよう、2028年度から支給要領を変更することとした。

これらの取組により、若年定年退職後における将来設計の見通しが立ち、現役自衛官の士気の維持・向上や、将来の自衛官志望者の確保に資する制度となった。

ア 再就職先の拡充

退職自衛官は、職務遂行と教育訓練によって培われた、優れた企画力・指導力・実行力・協調性・責任感などのほか、職務や職業訓練などにより取得した各種の資格・免許も保有している。このため、地方公共団体の防災や危機管理の分野をはじめ、金融・保険・不動産業や建設業のほか、製造業、サービス業など幅広い分野で活躍している。特に、地方公共団体の防災・危機管理部門には、2026年3月末現在、全国47都道府県に117名、494市区町村に575名の計692名の退職自衛官が危機管理監などとして在職している。

このような地方公共団体の防災・危機管理部門への再就職は、防衛省・自衛隊と地方公共団体の連携強化や地方公共団体の危機管理能力の向上につながることから、2025年3月に内閣府、消防庁および防衛省の連名にて、都道府県知事および市区町村長に対し、退職自衛官のより一層の活用を依頼し、再就職支援の強化に取り組んでいる。あわせて、2026年度には、地方公共団体が退職自衛官を含む防災・危機管理における専門人材を雇用しやすくするため、地域防災マネージャー14の採用・配置に要する経費にかかる特別交付税措置の拡充が予定されており、退職自衛官のより一層の活用を推進していく。

このほか、公的部門においては、2025年3月、消防庁および防衛省との間で、消防本部(自動車整備士、海技士など)および消防設備関連の企業における人材確保と退職自衛官の円滑な再就職支援などの連携強化を申し合わせたほか、海上保安庁(航空機職員をはじめ4職種)や総務省管区行政評価局などとの間においても退職予定自衛官への採用説明会を初めて行うなど、連携を推進している。

また、業界などとの連携強化として、2025年11月までの間に、警察庁、総務省、消防庁、厚生労働省、農林水産省、経済産業省および国土交通省との間で、それぞれの業界における人材確保と退職自衛官の円滑な再就職支援などに関する取組について連携することの申合せや依頼文の発出を行った。

イ 再就職に向けた職業訓練機会の充実、広報の強化など

再就職する退職自衛官に対する職業訓練の充実を図るため、関係省庁と連携し、業界などへの再就職に有用な資格取得のための研修や、大学や専門学校などにおける講習プログラムなどを、新たに職業訓練の課目に追加するとともに、防災・危機管理教育の受講対象者を拡充することとした。

また、退職自衛官が自衛隊の勤務を通じて培った技能を活かして、公的資格を取得しやすくするため、国土交通省と連携し、海技士、航空整備士の取得プロセスを簡素化し、資格取得に必要な講習の一部免除や養成期間の短縮などを行った。

さらに、再就職に関する広報強化として、再就職先拡充のため、自衛官のキャリアパスなどを紹介する動画を作成したほか、退職する自衛官の利便性の向上を図り、幅広い求人情報を閲覧し応募ができるよう、退職する自衛官と企業などとのマッチングを担っている自衛隊援護協会に就職援護情報ネットワークシステムを導入することなどに取り組んでいる。

参照図表V-2-2-5(再就職支援施策として行っている主な職業訓練)、図表V-2-2-6(2025年度再就職支援実績)

図表V-2-2-5 再就職支援施策として行っている主な職業訓練

図表V-2-2-6 2025年度再就職支援実績

動画アイコンQRコード資料:防衛省の再就職支援(援護)について
URL:https://www.mod.go.jp/j/profile/reemploy/index.html

動画アイコンQRコード資料:退職自衛官雇用ガイド(陸上自衛隊)
URL:https://www.mod.go.jp/gsdf/retire/index.html

動画アイコンQRコード動画:自衛官のキャリアパスについて紹介
URL:https://youtube.com/playlist?list=PL1LEgzQHG9LyH6UHox1U1T4zf89UKJtGo&si=NbS1Sn16NySQ6nQL

動画アイコンQRコード動画:陸自は人材の宝庫~あなたのニーズに応えます!~(陸上自衛隊)
URL:https://youtu.be/Qaz9KwOeX2U?si=EAOTGgKJed7CXLXb

動画アイコンQRコード動画:海を護った力が、社会を支える力へ~元海上自衛官たちが歩む、新たな未来~(海上自衛隊)
URL:https://www.youtube.com/playlist?list=PLhD6Y9WpnWDO6BcHkuFAPVjygQTkHZDW-

動画アイコンQRコード資料:退職自衛官採用のご案内(海上自衛隊)
URL:https://www.mod.go.jp/msdf/recruit/engo/

1 国家公務員法第2条に定められた特別職の国家公務員として位置づけ。

2 学校教育法に規定する大学(短期大学および大学院を含む。)、高等専門学校、専門学校またはこれらの学校に相当する外国の学校において、理学、工学、文学(語学)または法学を専攻している者(今後、専攻しようとしているもの含む。)で卒業(修了)後その専攻した学術を活かして、引き続き自衛隊に勤務する意思を持つ者に対し防衛省より学資金が貸与される制度。一定の期間、自衛官として勤務することで返還が免除される。

3 防衛省の職員のうち、特別職の国家公務員を「自衛隊員」といい、自衛隊員には、自衛官のほか、事務官、技官、教官などが含まれる。

4 諸外国においても、予備役制度を設けている。

5 2025年9月1日から予備自衛官および即応予備自衛官に対する手当額の引上げを行い、2026年4月1日からは、予備自衛官補の教育訓練招集手当を含むすべての予備自衛官等に支給する手当額の引上げを行っている。

6 勤続報奨金について、予備自衛官に新たに7万円、即応予備自衛官に21万5,000円(9万5,000円増)を支給する。

7 任期制自衛官の任期満了退職後に国内の大学などに進学した者が、その在学期間中、予備自衛官などに任用された場合、一定額の給付金を支給する制度

8 航空管制業務を担う自衛官に支給する手当は、例として、1尉であれば月額約3万2,000円が支給され、対領空侵犯措置などに対処する航空機の整備員に支給する手当は、日額1,200円が支給される。また、主要な野外演習などに従事する隊員に支給する手当は、日額1,400円が支給される。

9 航空機の乗員に支給する航空手当は、例として、戦闘機パイロットの1尉であれば、月額約28万9,000円が支給され、災害派遣等手当は、日額2,160円が支給される。

10 各自衛隊のサイバー専門部隊などの隊員に支給する特殊作戦隊員手当などは、例として、1尉であれば月額約3万2,000円が支給される。

11 国家公務員のうち、警察官、皇宮護衛官、入国警備官および刑務所などに勤務する職員に適用される。

12 低高度の軌道をとる衛星を活用したブロードバンドインターネット。低高度、多量の衛星が周回して回線を接続することから高速・低遅延の通信が可能とされている。

13 2024年度までに、百里基地、新田原基地、防府南基地では部外に委託して、基地から最寄り駅までの隊員の移動手段としてバスの運行を行っている。2025年度からは小松基地でも運行が開始した。また、カーシェアリングのサービスについては、全国の駐屯地・基地などのうち、隊員のニーズを踏まえ、2025年度までに50か所において導入している。

14 防災の専門性を有する外部人材を、地方公共団体の「防災監」や「危機管理監」などで採用・配置するにあたり、必要となる知識・経験などを有するものとして証明する制度