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令和8年版防衛白書の刊行に寄せて

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本年も、防衛白書を刊行する時期となりました。

防衛白書は、毎年、事務官や技官に加え、陸・海・空の各自衛官など、防衛省の様々な役割を担う人員を集めたチームを編成し、約1年をかけてその作成に当たっています。

今般の白書では、わが国を取り巻く安全保障環境や防衛省・自衛隊の取組を記述しており、防衛力強化の進捗について、変化事項やトピックスなどを丁寧に説明するよう努めました。

私からは、防衛省・自衛隊の取組について、国内外の有識者・専門家、諸外国の国防関係者のみならず、広く国民の皆さまにもお伝えできるよう工夫してほしいと指示を行い、チームが中心となり、省全体の知見を持ち寄り、より多くの皆さまに手に取っていただけるよう、動画発信や小冊子の作成など、様々な工夫をしてくれました。

今、わが国を取り巻く安全保障環境は、戦後最も厳しく複雑なものとなっています。東アジアにおいても、戦後の安定した国際秩序の根幹を揺るがしかねない深刻な事態が発生する可能性は排除できません。

国家安全保障戦略をはじめとする現行の「三文書」の策定以降、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序への挑戦が勢いを増し、インド太平洋では、中国・北朝鮮の更なる軍事力の増強や、中露や露朝の連携強化などがみられ、各国は、ロシアによるウクライナ侵略を教訓に、無人アセットの大量運用を含む「新しい戦い方」や長期戦への備えを急ぐなど、安全保障環境の変化が様々な分野で加速度的に生じています。今回の白書では、こうした「新しい戦い方」をめぐる動向などについても記載を厚くするとともに、防衛研究所の研究者の分析も紹介しています。

国民の皆さまの命と平和な暮らし、わが国の領土・領海・領空を断固として守り抜くため、さらに、それら任務に当たる自衛隊員一人一人とそのご家族を守り抜くため、これまで以上に強い危機感と切迫感をもって、防衛力の一層の強化、そして「変革」を進めることが急務です。こうした認識のもと、昨年度には、現行の国家安全保障戦略に定める「対GDP比2%水準」について、前倒して措置を講じました。令和8年度予算においては、SACO・米軍再編関係経費を含めると、はじめて9兆円を突破する金額を計上しています。そのうえで、「三文書」を前倒しで今年中に改定します。私は、就任直後、防衛省内に「防衛力変革推進本部」を設置し、様々な観点から議論を深めています。

一方、地域の平和と安定の確保は一国のみではなしえません。

日米同盟は、わが国の安全保障政策の基軸です。本年1月のヘグセス戦争長官との会談では、日米同盟に一切の揺るぎもなく、両国が緊密に連携できていることを確認し、今後の日米防衛協力を一層強化する具体的方策について率直な意見交換を行いました。引き続き、日米同盟を新たな高みに引き上げるため努力してまいります。

また、着任以来、会談を通じ様々なリーダーとの間で信頼関係を構築してきました。「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け、二国間の取組に加え、多国間の取組として、日米豪、日米韓、日米豪比などのミニラテラル協力1や、日ASEAN、NATO-IP42、PIPIR3における協力、JPIDD4などの国際会議の開催も推進しています。

安全保障環境が一層急速に厳しさを増す中で今必要なのは、危機に対する強靱性を、インド太平洋地域全体で高めていくことです。同盟国・同志国のネットワークを重層的に構築・拡大し、同志国などとの間で、訓練、部隊運用、装備品、産業基盤などのあらゆる面で相互連結性を高め、地域全体で抑止力を向上させてまいります。

さらに、防衛生産・技術基盤は、いわば防衛力そのものであり、その強化が不可欠です。今回の白書では、防衛生産・技術基盤を「部」として位置づけ直し、内容の充実を図りました。また、防衛産業を支える企業、スタートアップ、科学技術分野の研究者の幅広い声をコラムとして掲載しています。

引き続き、力強く持続可能な防衛産業を構築するため、産業界としっかりと連携し、関係省庁一丸となって取り組みます。その際、スタートアップ企業との連携も重要です。本年4月、防衛分野におけるスタートアップの更なる活用促進のためのイベント「Defense Innovation Meeting」を開催し、スタートアップ企業やベンチャーキャピタルから多数の参加をいただきました。

防衛装備移転は、同盟国・同志国の抑止力・対処力を強化するほか、同じ装備品を保有し、生産・維持整備基盤を共有することにより、相互に支援する環境を構築することを可能にすると同時に、持続的な対応能力を支える国内生産能力を確保するという大きな意義を有しています。こうしたことを踏まえ、いわゆる「5類型」の撤廃を含め、防衛装備移転三原則およびその運用指針を改正しました。

また、近年、民生用の技術と安全保障用の技術の区別が困難となり、防衛と民生のデュアルユースの領域が拡大しています。防衛生産・技術基盤の強化や研究開発への投資は防衛力を支えるために益々重要となっていますが、これらは結果として、経済波及効果を生むと同時に、新たなデュアルユース技術の創出などをもたらし得るものと考えています。

言うまでもなく、これらの取組を支える防衛力の根源は人であり、自衛隊員、そしてそのご家族も、わが国の防衛を支える大切な一員です。

今回の白書では、「プロフェッショナルな自衛隊員」と題する章を新たに設けました。自衛官のみならず、事務官、技官、教官などから構成される自衛隊員一人ひとりが、わが国の平和と独立を守る普遍の使命を担い、それぞれの分野で重責を果たしている姿を紹介しています。そして、そうした隊員を支えるご家族、お子様の声も取り上げました。

また、自衛隊創設以来初めてとなる、自衛官の給与体系の独自の改定に向けた取組など、時代や社会が変化する中にあっても全ての隊員が、職種や年齢、性別、勤務地を問わず、誇りと名誉をもって、任務に邁進できる環境を実現してまいります。着任以来、多くの部隊を視察してきましたが、今後も、現場の声を聴きながら、情報発信、募集活動の強化、働きがいのある組織作りにも積極的に取り組んでまいります。

防衛力の変革に向けた防衛省・自衛隊の取組は、国民の皆さま一人一人の、そして諸外国の理解と支持があって初めて成り立つものです。この白書が、わが国が置かれた安全保障環境や防衛省・自衛隊の取組について、より多くの皆さまの一層のご理解を賜るための一助となることを願っています。

1 3か国以上の少数の国々の間で実施される連携の形態

2 The Indo-Pacific Four:NATOのインド太平洋パートナー(日本、豪州、ニュージーランド、韓国)

3 Partnership for Indo-Pacific Industrial Resilience:インド太平洋における産業基盤強靭化パートナーシップ

4 Japan Pacific Islands Defense Dialogue:日・太平洋島嶼国国防大臣会合