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第I部 わが国を取り巻く安全保障環境

第4節 朝鮮半島

朝鮮半島では、半世紀以上にわたり同一民族の南北分断状態が続き、現在も、非武装地帯(DMZ:Demilitarized Zone)を挟んで140万人程度の地上軍が厳しく対峙している。

このような状況にある朝鮮半島の平和と安定は、わが国のみならず、東アジア全域の平和と安定にとって極めて重要な課題である。

参照図表I-3-4-1(朝鮮半島における軍事力の対峙)

図表I-3-4-1 朝鮮半島における軍事力の対峙

1 北朝鮮

1 全般

北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)国務委員長1(金委員長)は2016年5月、経済建設と核武力建設を並行して進めていくという、いわゆる「並進路線」を「先軍政治2」とあわせて堅持する旨明らかにした。実際に、北朝鮮は同年から翌2017年にかけて3回の核実験や多数の弾道ミサイルの発射を強行し、国家核武力の完成を実現した旨発表したが、こうした動きを受け、国連安保理決議による制裁が強化されたほか、わが国や米国が独自の措置を講じてきた。

転じて2018年に入ると、金委員長は「並進路線」が貫徹されたとし、「社会主義経済建設に総力を集中」する「新たな戦略的路線」を発表した。米朝や南北間の対話機運が高まるなか、金委員長は「核実験と大陸間弾道ロケット試験発射」の中止決定、核実験場の爆破公開などを進め、同年6月の米朝首脳会談で朝鮮半島の完全な非核化の意思を表明した。

しかし、2019年2月の米朝首脳会談は、双方が合意に達することなく終了し、金委員長は同年12月、米国の対北朝鮮敵視が撤回されるまで、戦略兵器開発を続ける旨表明した。また、2021年1月には、米国を敵視して「核戦争抑止力を一層強化」するなど、核・ミサイル能力の開発を継続する姿勢を示した。

その後も北朝鮮は米国の対北朝鮮姿勢を批判しつつ、「自衛的」な権利として核武力をはじめとする軍事力強化への意思を表明し続けている。2022年には、大陸間弾道ミサイル(ICBM:Intercontinental Ballistic Missile)級弾道ミサイルの発射を再開したほか、かつてない高い頻度で弾道ミサイルなどの発射を繰り返した。また、2023年9月には憲法に「核兵器発展を高度化」するとの内容を明記した。

北朝鮮は今後も、核・ミサイルをはじめとする戦力・即応態勢の維持と一層の強化に努めていくものと考えられる。

2026年3月の最高人民会議に関する北朝鮮の発表によれば、北朝鮮の同年度予算に占める国防費の割合は15.8%となっているが、これは実際の国防費の一部にすぎないとみられ、軍事面に資源を重点的に配分し続けている。

北朝鮮のこうした軍事動向は、わが国の安全保障にとって、従前よりも一層重大かつ差し迫った脅威となっており、地域と国際社会の平和と安全を著しく損なうものである。また、大量破壊兵器などの不拡散の観点からも、国際社会全体にとって深刻な課題となっている。

北朝鮮の核開発・保有が認められないことは当然であり、弾道ミサイルなどの開発・配備状況、朝鮮半島における軍事的対峙、大量破壊兵器やミサイルの拡散の動きなどともあわせ、わが国として強い関心を持って注視していく必要がある。また、拉致問題については、引き続き、米国をはじめとする関係国と緊密に連携し、一日も早い全ての拉致被害者の帰国を実現すべく、全力を尽くしていく。

2 軍事態勢
(1)全般

北朝鮮は、南北分断下で一貫して軍事力を増強してきた3が、通常戦力では韓国軍と在韓米軍に対して著しい質的格差がみられる。こうしたなか、北朝鮮は、核・ミサイル能力の増強に集中的に取り組んできた。他方、最近では、戦車や艦艇を含む通常兵器を広範に開発・改良するなど、通常戦力を強化する動きもみられており、2026年2月に開催された朝鮮労働党第9回大会においては、軍事力を強化していくにあたっての方針の一つに通常戦力の更新が掲げられた4

北朝鮮の総兵力は陸軍を中心に約128万人にのぼり、DMZ付近に展開する砲兵部隊を含め、依然として大規模な軍事力を維持している。また、情報収集や破壊工作などに従事する大規模な特殊部隊などを保有しているほか、全土にわたって多くの軍事関連の地下施設が存在するとみられていることも、北朝鮮の特徴の一つである。

さらに、北朝鮮は、大量破壊兵器や弾道ミサイルなどの増強に集中的に取り組んでいる。米国全土を射程に含むICBM級弾道ミサイルの開発推進と同時に、低空を変則的な軌道で飛翔することが可能な短距離弾道ミサイル(SRBM:Short-Range Ballistic Missile)などを繰り返し発射し、急速に関連技術や運用能力の向上を図っている。その発射態様も鉄道発射型や潜水艦発射型など多様化させつつ、より実戦的なSRBM戦力の拡充に努めているとみられる。

一連の開発・発射の背景には、体制維持・生存のため、核兵器や長射程弾道ミサイルの保有による核抑止力の獲得に加え、米韓両軍との間で発生しうる通常戦力や戦術核を用いた武力紛争においても対処可能な手段を獲得するという狙いがあるものとみられる5。北朝鮮はこれまで、2021年1月の朝鮮労働党第8回大会で提示されたとされる「国防科学発展および武器体系開発5か年計画」(「党第8回大会5か年計画」)に沿って核・ミサイルをはじめとする軍事力を強化していく旨を累次にわたって明らかにしてきた6。2026年2月の朝鮮労働党第9回大会においては、金委員長が今後5年間における新たな方針を提示したところ、今後はこの方針に基づき、各種兵器の研究開発・運用能力向上に注力していくものと考えられる。

(2)軍事力

陸上戦力は、約110万人を擁し、兵力の約3分の2をDMZ付近に展開しているとみられる。その戦力は歩兵が中心であるが、戦車3,500両以上を含む機甲戦力と火砲を有し、また、240mm多連装ロケットや170mm自走砲といった長射程火砲をDMZ沿いに配備していると考えられ、ソウルを含む韓国北部の都市・拠点などが射程に入っている。

海上戦力は、約790隻、約10万トンの艦艇を有するが、小型艦艇が主体である。他方、2025年4月および6月には、これまで北朝鮮が保有してきた艦艇の規模を大きく超える「新型多目的駆逐艦」を進水させており7、金委員長は「このような多目的駆逐艦建造計画事業を年次別に実現させる」と言及した8。また、旧式のロメオ級潜水艦約20隻のほか、特殊部隊の潜入などに用いるとみられる小型潜水艦約30隻とエアクッション揚陸艇約140隻を有している。2023年9月には、ロメオ級潜水艦を改修したとみられる新型の潜水艦を進水させ、これを「戦術核攻撃潜水艦」と呼称した。

航空戦力は、約550機の作戦機を有しており、その大部分は、中国や旧ソ連製の旧式機であるが、MiG-29戦闘機やSu-25攻撃機といった、いわゆる第4世代機も少数保有している。また、旧式ではあるが、特殊部隊の輸送に使用されるとみられるAn-2輸送機を多数保有している。

また、いわゆる非対称戦力として、大規模な特殊部隊9を保有している。近年は非対称的な戦力としてサイバー部隊を強化し、暗号資産の窃取を通じて核・ミサイル開発のための資金を調達しているとみられるほか、軍事機密情報の窃取や他国の重要インフラへの攻撃能力の開発を行っているとみられる。

3 大量破壊兵器・ミサイル戦力
(1)核兵器

ア 核兵器計画の現状

北朝鮮は寧辺(ヨンビョン)に5MWe黒鉛減速炉や実験用軽水炉といった原子炉10や再処理工場、ウラン濃縮施設などの核関連施設を保有している。5MWe黒鉛減速炉については、年間約6kgのプルトニウム(核弾頭1個~1.5個分)を生産可能との指摘がある11。実験用軽水炉については、2023年10月以降試運転を行い、その後、安定した稼働期間が確認されているとの指摘がある12

核兵器の原料となりうる核分裂性物質13であるプルトニウムについて、北朝鮮はこれまで製造・抽出を数回にわたり示唆してきており14、原子炉の再稼働や稼働開始は、北朝鮮によるプルトニウム製造・抽出につながりうることから、その動向が強く懸念される。

また、同じく核兵器の原料となりうる高濃縮ウランについては、北朝鮮は2009年6月にウラン濃縮活動への着手を宣言した。2010年11月には、訪朝した米国人の核専門家に対して寧辺所在のウラン濃縮施設を公開し、その後、数千基規模の遠心分離機を備えたウラン濃縮工場の稼動に言及した。このウラン濃縮工場は、近年も施設拡張が指摘されるなど、濃縮能力を高めている可能性もある。また、2024年9月と2025年1月には、金委員長による「核物質生産基地」の現地視察が報じられ、ウラン濃縮施設がそれぞれ公開された15。金委員長は、遠心分離機の台数増加や能力向上、さらには新型の遠心分離機導入に言及したほか、「兵器級核物質生産計画を超過遂行して国の核の盾を強化する」と言及するなど、核兵器開発のための濃縮ウランのさらなる増産を示唆する発言がみられた。北朝鮮は、プルトニウムに加えて、高濃縮ウランを用いた核兵器開発を推進していくものとみられる。

金正恩委員長による「核動力(原子力)戦略誘導弾潜水艦」現地指導の発表時に公開された画像【朝鮮通信=時事】

金正恩委員長による「核動力(原子力)戦略誘導弾潜水艦」現地指導の発表時に公開された画像【朝鮮通信=時事】

一般に、ウラン濃縮に用いられる施設の方がプルトニウム生産に用いられる原子炉よりも外観上の秘匿度が高く、外部からその活動を把握しがたいとされる。一方、プルトニウムの方がウランよりも臨界量が小さく、核兵器の小型化・軽量化が容易との指摘もある。これら双方の利点にかんがみ、北朝鮮は、今後もプルトニウム型・ウラン型の双方について開発を推進していく可能性がある。

北朝鮮は過去6回の核実験を通じて16、核兵器を弾道ミサイルに搭載するための小型化・弾頭化を追求し、核兵器計画を進展させた可能性が高い。例えば、2017年9月には、金委員長が核兵器研究所を視察し、ICBMに搭載できる水爆を視察した旨公表したほか、同日に強行された6回目の核実験について、「ICBM装着用水爆実験を成功裏に断行した」と発表している17

核兵器を弾道ミサイルに搭載するための小型化について、米国、旧ソ連、英国、フランス、中国が1960年代までにこうした技術力を獲得したとみられることや過去6回の核実験を通じた技術的成熟が見込まれることなどを踏まえれば、北朝鮮は少なくともノドンやスカッドER(Extended Range)といったわが国を射程に収める弾道ミサイルについては、必要な核兵器の小型化・弾頭化などを既に実現し、これによりわが国を攻撃する能力を保有しているとみられる。また、北朝鮮が約50発(全体としては最大90発分の核弾頭を生産するだけの核分裂性物質を貯蔵)の核弾頭を保有しているとの指摘もある18

加えて、2022年3月以降、北朝鮮が2018年に爆破を公開していた北部の核実験場の復旧を進めているという指摘がなされるなど、北朝鮮がさらなる核実験を実施するための準備が整っている可能性がある。近い将来、ICBM級弾道ミサイルの多弾頭化や戦術核兵器を実用化するため、北朝鮮がさらなる核実験を通じて核兵器の一層の小型化を追求する可能性も考えられる19

イ 核兵器計画の背景

北朝鮮の究極的な目標は体制の維持であるとみられ、北朝鮮はこの目標を達成するために、独自の核抑止力を構築して核兵器を含む米国の脅威に対抗すべく、核開発を推進してきている。こうした認識は、米国の目的は「わが政権」を崩壊させることであって、絶対に核を放棄することはできないとする金委員長の演説20などからも明らかであり、今後も、北朝鮮は米国全土を射程に含む長距離ミサイルの開発推進とあわせて核開発を進め、対米抑止力の獲得に注力していくものと考えられる。

一方で、北朝鮮は、韓国を「敵国」などと表現し、核攻撃の対象から排除しない旨も繰り返し言明しており、対米抑止力としての核兵器とあわせ、朝鮮半島で生じうる武力紛争への対処を念頭に置いた戦術核兵器の開発も追求していく姿勢を示している。

2022年9月、北朝鮮は、「戦争を抑止することを基本使命」とし、抑止が失敗した場合には「侵略と攻撃を撃退して戦争の決定的勝利を達成する」といった核兵器の使命や指揮統制、使用条件などについて定めた法令「核武力政策について」を採択した。金委員長は、この法令により「核保有国としての地位が不可逆的なものになった」などと核開発の正当性を主張した。また、この法令によれば、核攻撃か通常攻撃かを問わず、「指導部」や「重要戦略対象」に対する攻撃が差し迫っていると判断される場合には核兵器を使用できることとされているほか、特に「国家核武力に対する指揮・統制体系」が危険にさらされた場合には、自動的・即時に「核打撃」を実施する旨が定められていることから、北朝鮮は、核兵器の実戦での使用を想定している可能性が考えられる21

また、2026年2月の朝鮮労働党第9回大会においては、金委員長が、核兵器の運用に習熟するための各種演習を通じて「核戦闘武力の実戦化を高度化する」と言及し、核兵器による即応態勢を整備していく方針を示した。これまでも北朝鮮は、「戦術核運用部隊」の訓練や「核反撃想定総合戦術訓練」などと称してミサイル発射を重ねているところ、今後も引き続き、今回の大会で示された方針にしたがって、核兵器の実戦での使用を念頭においた訓練を実施していく可能性も考えられる。

(2)生物・化学兵器

北朝鮮の生物兵器や化学兵器の開発状況などについては、北朝鮮の閉鎖的な体制に加え、これらの製造に必要な資材・技術の多くが軍民両用であり偽装が容易であるため、その詳細は不明である。しかし、化学兵器については、化学剤を生産できる複数の施設を維持し、すでに相当量の化学剤などを保有しているとみられるほか、生物兵器についても一定の生産基盤を有しているとみられる22。化学兵器としては、サリン、VX、マスタードなどの保有が、生物兵器に使用されうる生物剤としては、炭疽菌(たんそきん)、天然痘(てんねんとう)、ペストなどの保有が指摘されている。

また、北朝鮮が弾頭に生物兵器や化学兵器を搭載しうる可能性も否定できないとみられている。

(3)ミサイル戦力

北朝鮮が保有・開発しているとみられる各種ミサイルは次のとおりである。

参照図表I-3-4-2(北朝鮮が保有・開発してきた弾道ミサイルなど)、図表I-3-4-3(北朝鮮の弾道ミサイルの射程)、図表I-3-4-4(北朝鮮の弾道ミサイルなどの発射の主な動向)、図表I-3-4-5(北朝鮮の弾道ミサイルがわが国上空を通過した事例)

図表I-3-4-2 北朝鮮が保有・開発してきた弾道ミサイルなど

図表I-3-4-3 北朝鮮の弾道ミサイルの射程

図表I-3-4-4 北朝鮮の弾道ミサイルなどの発射の主な動向

図表I-3-4-5 北朝鮮の弾道ミサイルがわが国上空を通過した事例

ア 北朝鮮が保有・開発する主な弾道ミサイルなど23

(ア)短距離弾道ミサイル(SRBM)A~E(鉄道発射型を含む)

北朝鮮は2019年以降、従来保有していたスカッドなどの液体燃料推進方式の弾道ミサイルとは異なる、複数種類の短距離弾道ミサイルを発射した。公表画像では、装輪式または装軌式(キャタピラ式)の発射台付き車両24(TEL:Transporter-Erector-Launcher)や鉄道車両から発射される様子、固体燃料推進方式のエンジンの特徴が確認できる。

① 短距離弾道ミサイルA(北朝鮮は「新型戦術誘導兵器」や「火星砲11カ」などと呼称)

短距離弾道ミサイルAは、実績に基づく最大飛翔距離が800km程度であり、外形上、ロシアの短距離弾道ミサイル「イスカンデル」と類似点がある。通常の弾道ミサイルよりも低空を、変則的な軌道で飛翔することが可能とみられるほか、核弾頭の搭載が可能との指摘もある25

また、北朝鮮は、鉄道発射型の短距離弾道ミサイルも発射している26。北朝鮮の公表画像に基づけば、このミサイルは一般の貨車を改装したとみられる鉄道車両から発射されているが、短距離弾道ミサイルAと外形上の類似点があり、このミサイルをベースとして開発された可能性がある。北朝鮮は「鉄道機動ミサイル連隊」による射撃訓練と発表した。

② 短距離弾道ミサイルB(北朝鮮は「新兵器」や「戦術誘導兵器」などと呼称)

短距離弾道ミサイルBは、実績に基づく最大飛翔距離が400km程度であり、また、通常の弾道ミサイルよりも低空を、変則的な軌道で飛翔することが可能とみられる。

③ 短距離弾道ミサイルC(北朝鮮は「超大型放射砲」や「600mm多連装放射砲」などと呼称)

短距離弾道ミサイルCは、実績に基づく最大飛翔距離が400km程度である。発射の間隔が1分未満と推定されるものもあり、飽和攻撃などに必要な連続射撃能力の向上を企図していると考えられるほか、金委員長は戦術核の搭載が可能である旨言及している27

④ 短距離弾道ミサイルD(北朝鮮は「新型戦術誘導弾」と呼称)

短距離弾道ミサイルDは、短距離弾道ミサイルAをベースに開発されたと指摘される弾道ミサイルである。通常の弾道ミサイルよりも低空を、変則的な軌道で飛翔することが可能とみられ、最大射程は約750kmに及ぶ可能性がある。

⑤ 短距離弾道ミサイルE(北朝鮮は「火星砲11ラ」と呼称)

短距離弾道ミサイルEは、2026年4月19日に発射された短距離弾道ミサイルであり、北朝鮮の公表画像からは、装輪式3軸のTELから発射される様子が確認できる。

この弾道ミサイルは、2022年4月に北朝鮮が公表した「新型戦術誘導兵器」と称するミサイルに外形上類似している28。また、短距離弾道ミサイルA、B、C、Dと比較して小型であり、より射程の短い弾道ミサイルであるとみられる29

参照図表I-3-4-6(SRBM A~E(鉄道発射型を含む)の発射日一覧)

図表I-3-4-6 SRBM A~E(鉄道発射型を含む)の発射日一覧

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(イ)スカッド

スカッドは単段式の液体燃料推進方式の弾道ミサイルで、TELに搭載されて運用される。

スカッドBは射程約300km、スカッドCは射程約500kmの短距離弾道ミサイルで、北朝鮮はこれらを生産・保有するとともに、中東諸国などへ輸出してきたとみられている。

スカッドERは、スカッドの胴体部分の延長や弾頭重量の軽量化などにより射程を延長した弾道ミサイルで、射程は約1,000kmに達し、わが国の一部が射程内に入るとみられる34

(ウ)ノドン

ノドンは、単段式の液体燃料推進方式の弾道ミサイルで、TELに搭載されて運用される。射程約1,300kmに達し、わが国のほぼ全域がその射程内に入るとみられる。

弾頭部の改良により精度の向上を図った改良型は、弾頭重量の軽量化により射程が約1,500kmに達するとみられる。

(エ)潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM:Submarine-Launched Ballistic Missile)

北朝鮮はSLBMを1発搭載・発射することが可能なコレ級潜水艦(排水量約1,500トン)を1隻保有し、主に試験艦として運用しているとみられる。これに加え、2023年9月には、従来保有しているロメオ級潜水艦を改修したとみられる「戦術核攻撃潜水艦」と称する潜水艦が登場した。金委員長は、既存の中型潜水艦を全て戦術核が搭載可能な潜水艦に改造する旨表明している。また、2021年1月には、金委員長が、原子力潜水艦の保有という目標に言及しており、実際に、2025年12月には、「核動力(原子力)戦略誘導弾潜水艦」の建造事業を現地指導した旨発表された。この際、北朝鮮は、この建造事業が「党第8回大会の提示した国防力発展五大重点課題の一つ」である旨言及しており、原子力潜水艦の建造に引き続き注力していくものとみられる。

金正恩委員長による「核物質生産基地」現地指導(2025年1月)の発表時に公開された画像【朝鮮通信=時事】

金正恩委員長による「核物質生産基地」現地指導(2025年1月)の発表時に公開された画像【朝鮮通信=時事】

北朝鮮はこれらに搭載するSLBMの開発も進めてきており、2015年5月に初めて、SLBMの試験発射に成功したと発表するなど35、弾道ミサイルによる打撃能力の多様化と残存性の向上を企図しているものと考えられる。

① 「北極星」型潜水艦発射弾道ミサイル(北朝鮮は「北極星」型と呼称)

コレ級潜水艦から発射される固体燃料推進方式のSLBMである。北朝鮮が公表した画像や映像から判断すると、空中にミサイルを射出した後に点火する、いわゆる「コールド・ローンチシステム」の運用に成功している可能性がある。通常の軌道で発射すれば、射程は1,000kmを超えるとみられる。

② 「北極星3」型潜水艦発射弾道ミサイル(北朝鮮は「北極星3」型と呼称)

「北極星」型とは異なる固体燃料推進方式のSLBMであり、通常の軌道で発射されれば、射程は約2,000kmとなる可能性がある。

さらに、北朝鮮は、2020年10月と2021年1月の軍事パレードに、それぞれ「北極星4」、「北極星5」と記載された、これまで発射が確認されていないSLBMの可能性のあるものを登場させている36

③ 小型SLBM

北極星系列よりも小型のSLBMである。実績に基づく最大飛翔距離が約650km程度であり、通常の弾道ミサイルよりも低空を、変則的な軌道で飛翔することが可能とみられる。

この小型SLBMは短距離弾道ミサイルAと外形上の類似点があることから、このミサイルをベースとして開発された可能性がある。

(オ)北極星系列の地上発射型弾道ミサイル(北朝鮮は「北極星2」型と呼称)

北朝鮮が「北極星」型SLBMを地上発射型に改良したとみられる固体燃料推進方式の弾道ミサイルであり、通常の軌道で発射されたとすれば、射程は1,000kmを超えるとみられる。

北朝鮮の公表画像からは、装軌式(キャタピラ式)TELから、いわゆる「コールド・ローンチシステム」により発射される様子が確認される。

参照図表I-3-4-7(SLBMと北極星系列の地上発射型弾道ミサイルの発射日・発射プラットフォーム一覧)

図表I-3-4-7 SLBMと北極星系列の地上発射型弾道ミサイルの発射日・発射プラットフォーム一覧

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(カ)中距離弾道ミサイル(IRBM)級弾道ミサイル

① 「火星12」型(北朝鮮の呼称による)

2017年5月以降発射された液体燃料推進方式のIRBM級弾道ミサイルであり、その射程は最大で約5,000kmに達するとみられる。

2017年8月と同年9月には、北朝鮮は、渡島半島(北海道)付近と襟裳岬(北海道)付近のわが国領域の上空を通過する形で1発ずつ発射した38

② 固体燃料推進方式の中距離弾道ミサイル(IRBM)級弾道ミサイル

北朝鮮は、2024年1月に初めて固体燃料推進方式のIRBM級弾道ミサイルを発射した。これ以降、複数種類の固体燃料推進方式のIRBM級弾道ミサイルが確認されている。

2024年1月14日、北朝鮮は新型のIRBM級弾道ミサイルを発射した。発射の翌日、「極超音速機動型制御弾頭」を搭載した「中長距離固体燃料弾道ミサイル」の試験発射を成功裏に実施した旨発表した。公表画像からは、この弾頭が円錐形状であることが確認できる。

同年4月2日には、前述の1月14日に発射されたものとは異なる、新型のIRBM級弾道ミサイルを発射した。発射の翌日、北朝鮮は、「極超音速滑空飛行弾頭」を搭載した「火星16ナ」型(北朝鮮の呼称による)の試験発射を実施した旨発表した。この「火星16ナ」型について、北朝鮮は「新型の中長距離固体弾道ミサイル」であるとしており、公表画像からは、扁平型の弾頭を有していることや、7軸のTELに搭載されている様子が確認できる。また、2025年1月6日にも、扁平型の弾頭を有するIRBM級弾道ミサイルを発射した。「火星16ナ」型に外形上酷似していることなどを踏まえれば、この弾道ミサイルは「火星16ナ」型またはその改良型であったと推定される39

IRBM級弾道ミサイル「火星16ナ」発射時に北朝鮮が公表した画像【朝鮮通信=時事】

IRBM級弾道ミサイル「火星16ナ」発射時に北朝鮮が公表した画像【朝鮮通信=時事】

これらの弾道ミサイルについて、北朝鮮は「極超音速ミサイル」であったと主張しているが、防衛省としては、これらが極超音速兵器であったかも含め、分析を行っているところである。

(キ)大陸間弾道ミサイル(ICBM)級弾道ミサイル

① 「火星17」型(北朝鮮の呼称による)

2段式・液体燃料推進方式のICBM級弾道ミサイルであり、11軸のTELに搭載されて運用される。北朝鮮は、2022年2月に「火星17」型を初めて発射した。

搭載する弾頭の重量などによっては、1万5,000kmを超える射程となりうるとみられる。

② 「火星18」型(北朝鮮の呼称による)

3段式・固体燃料推進方式のICBM級弾道ミサイルであり、北朝鮮は、2023年4月に「火星18」型を初めて発射した。北朝鮮の公表画像からは、キャニスター(発射筒)を搭載した9軸のTELから、いわゆる「コールド・ローンチシステム」で発射される様子が確認できる。

搭載する弾頭の重量などによっては、1万5,000kmを超える射程となりうるとみられる。

③ 「火星19」型(北朝鮮の呼称による)

3段式・固体燃料推進方式の新型のICBM級弾道ミサイルであり、北朝鮮は、2024年10月に「火星19」型を発射した。このとき発射された弾道ミサイルは、約86分間飛翔し、その最高高度は約7,000kmを超えると推定され、過去最長の飛翔時間かつ過去最高の飛翔高度となった。北朝鮮の公表画像からは、11軸のTELから、いわゆる「コールド・ローンチシステム」で発射される様子が確認できる。

発射の翌日、北朝鮮は「火星19」型について、「最終完結版の大陸間弾道ミサイル」と言及したほか、「火星18」型とともに運用していく弾道ミサイルである旨明らかにした。

搭載する弾頭の重量などによっては、1万5,000kmを超える射程となりうるとみられる。また、「火星19」型は「火星18」型を超える大きさとみられ、多弾頭化を企図した弾道ミサイルである可能性が指摘されている。

(ク)テポドン2

テポドン2は、固定式発射台から発射される長射程の弾道ミサイルである40。2段式のものは射程約6,000kmとみられ、3段式である派生型は、ミサイルの弾頭重量を約1トン以下と仮定した場合、射程約10,000km以上に及ぶ可能性があると考えられる。テポドン2またはその派生型は、2016年2月までに合計5回発射された。

(ケ)千里馬1(北朝鮮の呼称による)

「千里馬1」は、北朝鮮が「軍事偵察衛星」を打ち上げるための「新型衛星運搬ロケット」とするもので、固定式発射台から発射し、3段式である。

北朝鮮は、この「千里馬1」を用いて2023年5月、8月、11月に合計3回の衛星打上げを目的とする弾道ミサイル技術を使用した発射を行い、先の2回の発射については失敗したとみられる。11月の発射については、このとき発射した物体が地球を周回していることが確認されている41

(コ)「極超音速ミサイル」と称する弾道ミサイル

北朝鮮は、2021年1月の朝鮮労働党第8回大会において「極超音速滑空飛行弾頭」を開発・導入するという目標を表明した。以降、「極超音速ミサイル」と称して複数種類のミサイルの発射を繰り返している。

これまでの動向を踏まえれば、北朝鮮が、ミサイル防衛網の突破を企図して極超音速兵器などの開発や能力向上を引き続き追求していることは明らかである。さらに、円錐形状と扁平型の弾頭が確認されていることに関しては、異なる弾頭を並行して整備することにより、射程や飛翔の態様が異なる極超音速兵器を開発し、相手方の対応を複雑化させることを企図している可能性も考えられ、今後の技術進展を注視していく必要がある。

参照図表I-3-4-8(北朝鮮が「極超音速ミサイル」などと称して発射した事例)

図表I-3-4-8 北朝鮮が「極超音速ミサイル」などと称して発射した事例

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イ 北朝鮮が開発する巡航ミサイル

2021年1月に金委員長が「中長距離巡航ミサイルをはじめとする先端核戦術兵器」の開発に言及するなど、北朝鮮は、核兵器の搭載を念頭に置いた巡航ミサイルを開発する意思を表明している。

実際に同年9月、北朝鮮は、新たに開発した新型長距離巡航ミサイルの試験発射を行ったことなどを発表したほか、2022年1月には、このミサイルとは異なる種類とみられる長距離巡航ミサイルの発射を行った旨発表した。これらの巡航ミサイルについては、それぞれ「戦略巡航ミサイル『矢(ファサル)1』型」、「戦略巡航ミサイル『矢(ファサル)2』型」と呼称されていることが明らかになっている。北朝鮮の発表によれば、これらの巡航ミサイルは最長で2,000km飛翔したとされている44

また、2023年3月には潜水艦から、同年8月には警備艦からの「戦略巡航ミサイル」の発射も発表された。このほか、2025年4月には、「新型多目的駆逐艦」から「超音速巡航ミサイル」や「戦略巡航ミサイル」などの試験発射を実施した旨発表している。

北朝鮮が弾道ミサイルのみならず、核兵器の搭載が可能な長距離巡航ミサイルの実用化を追求していることは明らかであり、その飛翔距離など一連の発表内容が事実であれば、地域の平和と安全を脅かすものとして懸念される。

ウ 弾道ミサイル開発の動向

北朝鮮は、極めて速いスピードで継続的に弾道ミサイル開発を推進し、関連技術・運用能力の向上を図ってきているが、その動向には次のような特徴がある。

(ア)ミサイル関連技術の向上

① 発射の秘匿性・即時性の向上

北朝鮮は、発射の兆候把握を困難にするための秘匿性や即時性を高め、奇襲的な攻撃能力の向上を図っているものとみられる。

北朝鮮は、TELや潜水艦、鉄道といった様々なプラットフォームからのミサイル発射を繰り返している。これらのプラットフォームを使用することで、発射機の隠蔽や任意の地点からの発射を可能にし、発射の秘匿性を向上させ、兆候把握や探知、ひいては迎撃を困難にさせることを企図しているものとみられる。

また、北朝鮮は2019年以降、特に、固体燃料を使用した弾道ミサイルの発射を繰り返している。一般的に、固体燃料推進方式のミサイルは、保管や取扱いが比較的容易であるのみならず、また、固形の推進薬が前もって充填されていることから、発射機へのミサイルの再装填をより迅速に行い、比較的短時間で再発射できるという点で、軍事的に優れているとされる。こうした特徴は、奇襲的な攻撃能力や、報復攻撃能力の向上に資するとみられる。

② 弾道ミサイル防衛(BMD:Ballistic Missile Defense)突破能力の向上

北朝鮮は、他国のミサイル防衛網を突破することを企図し、低空を変則的な軌道で飛翔する弾道ミサイルの開発を進めている45

また、北朝鮮は、「極超音速滑空飛行弾頭」の開発を優先目標の一つに掲げ、「極超音速ミサイル」と称してミサイルの発射を繰り返している。特に、2024年以降は、固体燃料推進方式の「極超音速ミサイル」と称する弾道ミサイルの発射を強行している。固体燃料化により、発射の即時性を向上させつつ、円錐形状と扁平型という異なる弾頭を並行して整備することにより、射程や飛翔の態様が異なる極超音速兵器を開発し、相手方の対応を複雑化させることを企図している可能性も考えられる。このように北朝鮮は、迎撃を困難にしてミサイル防衛網を突破するためのミサイル開発を執拗に追求している。

③ 長射程ミサイルの開発

北朝鮮は、米国を射程に収める長射程ミサイルの開発も一貫して追求している。北朝鮮が保有するICBM級弾道ミサイル「火星17」型、「火星18」型や「火星19」型は、搭載する弾頭の重量などによっては1万5,000kmを超える射程となりうるとみられ、その場合、東海岸を含む米国全土を射程に収めることになる。また、2025年10月の軍事パレードでは、キャニスター(発射筒)を搭載した11軸のTELが登場し、北朝鮮メディアは「最強の戦略核兵器体系・大陸間弾道ミサイル「火星砲20」型」と言及した。北朝鮮が引き続き、対米抑止力の獲得に向けて長射程ミサイルの開発に注力していく意図を有していることは明らかである。

2025年10月10日の軍事パレードに登場した「「火星砲20」型」【朝鮮通信=時事】

2025年10月10日の軍事パレードに登場した「「火星砲20」型」
【朝鮮通信=時事】

こうした弾道ミサイルを実用化するためには、弾頭部の大気圏外からの再突入の際に発生する超高温の熱などから再突入体を防護する技術が必要とされるが、北朝鮮が実際にこうした技術を確立しているかについては、引き続き慎重な分析が必要である。

一方で、北朝鮮が長射程の弾道ミサイルの開発をさらに進展させた場合、米国に対する戦略的抑止力を確保したとの認識を一方的に持つに至る可能性がある。仮に、北朝鮮がそのような抑止力に対する過信・誤認をすれば、北朝鮮による地域における軍事的挑発行為の増加・重大化につながる可能性もあり、わが国としても強く懸念すべき状況となりうる。

(イ)ミサイル運用能力の向上

北朝鮮はこれまで、複数発の同時発射、極めて短い間隔での連続発射、特定目標に向けた異なる地点からの発射など、様々な形で弾道ミサイルを発射してきている。

第一に、早朝・深夜を問わず、様々な地点から、TELを用いて、複数発のミサイルを発射する事例がみられる。また、短距離弾道ミサイルと様々な火砲を組み合わせた射撃訓練なども実施しており、北朝鮮がこれらのミサイルを任意の地点から任意のタイミングで、複数発同時に発射する能力を有していることを示している。

第二に、北朝鮮は極めて短い間隔での連続発射も試みている。例えば、北朝鮮が「超大型放射砲」と称する短距離弾道ミサイルCについては、1分未満と推定される間隔で2発が発射される事例があるなど、連続射撃能力の向上を企図して開発されたとみられている。

第三に、北朝鮮が弾道ミサイルなどをそれぞれ異なる場所から発射し、特定の目標に命中させていることが確認できる事例がある。

こうした発射を通じ、北朝鮮は、飽和攻撃などを念頭に置いた、実戦的なミサイル運用能力の向上を追求しているものとみられる。

(4)北朝鮮における兵器開発の動向

ア 「党第8回大会5か年計画」

金委員長は、2021年1月の朝鮮労働党第8回大会において、今後の軍事的な目標として、様々な兵器の開発などに具体的に言及した。このときに提示された目標は、「党第8回大会5か年計画」に含まれていたものと考えられている。

核・ミサイルに関しては、核技術のさらなる高度化や核兵器の小型・軽量化、戦術兵器化を発展させるとして、「戦術核兵器」開発、「超大型核弾頭」生産の推進に言及するとともに、1万5,000km射程圏内の目標への命中率を向上させ、「核先制および報復打撃能力」を高度化するとした。加えて、多弾頭技術、「極超音速滑空飛行弾頭」、原子力潜水艦、「水中発射核戦略兵器」、固体燃料推進のICBMの開発や研究の推進に言及しており、攻撃態様のさらなる複雑化・多様化を追求する姿勢を示した。また、核・ミサイル以外にも、この大会では、軍事偵察衛星や、無人偵察機などの偵察手段の開発などが言及された。

実際に、北朝鮮は同年以降、この大会で提示した開発計画の工程を進めるようにミサイル発射などを繰り返しており、特に、計画の優先課題に掲げたものを中心に研究開発を進めてきた。

例えば、2021年9月に「極超音速ミサイル『火星8』型」と称するミサイルを発射した際には、極超音速ミサイル研究開発事業が「5か年計画の戦略兵器部門最優先五大課題に属する」と表明された。以降、北朝鮮は「極超音速ミサイル」と称して複数種類のミサイルの発射を繰り返し、ミサイル防衛網を突破するためのミサイル開発を執拗に追求してきた。

固体燃料推進のICBMの開発についても、「党第8回大会5か年計画」の優先課題に掲げられていたものとみられる46。実際に北朝鮮は、党第8回大会以降、固体燃料推進方式のICBM級の弾道ミサイルである「火星18」型、「火星19」型を開発し、複数回にわたって発射を強行した。

このほか、2023年12月の朝鮮労働党中央委員会第8期第9回総会においては、衛星の打上げをもって「党第8回大会の提示した共和国武力現代化の先決重大課題の実現において決定的な前進を成し遂げ」たと評価された。金委員長は、翌2024年の目標として「偵察衛星」3機の追加打上げに言及し、同年5月には、衛星打上げを目的とする弾道ミサイル技術を使用した発射が再度強行された47

このように北朝鮮は、「党第8回大会5か年計画」、特にその優先課題に沿って関連技術の研究開発に注力し、さらなる軍事力の増強を目指してきた。

イ 今後の兵器開発の展望

2026年2月には、朝鮮労働党第9回大会が開催された。金委員長は、党第8回大会以降の期間を総括し、「防衛力を現代化し、既に獲得している軍事技術的強勢を高度化するうえで飛躍的な成果を達成した」と評価した。

同時に、今後5年間における軍事力強化に関する方針も明らかにされた。金委員長は、「核保有国の地位を完全に不可逆的なもの」にしたと改めて主張し、核兵器の開発や増産に引き続き注力していく姿勢を示した。また、核兵器の運用に習熟するための各種演習を通じて「核戦闘武力の実戦化を高度化する」と言及し、核兵器による即応態勢を整備していく旨述べた。

また、こうした核兵器の開発のみならず、金委員長は、通常戦力の更新を進めていくとともに、「核武装化」を中心に海軍作戦能力を急速に強化していくことの重要性を強調した。

今回の大会では、各種兵器の就役や配備に向けた方針も提示された。例えば、今後就役させる新たな兵器として、強化された「地上および水中発射型のICBM」、「AI無人攻撃システム」、対衛星攻撃用兵器、「電子戦武器システム」、偵察衛星が言及された。また、既に開発が完了した「600mm放射砲」をはじめとする兵器についても実戦配備を進め、「戦争抑止力をさらに強化する」としている。

このように、金委員長は、今後5年間の方針として、核戦力を不断に強化していく姿勢を改めて明確に示した一方、無人アセットや電子戦システムなど、核・ミサイル以外の各種兵器の開発目標も提示した。北朝鮮は、今回の大会において、「世界的な国防科学の発展推移に即して共和国武力の軍事技術高度化・現代化目標に見合う先端武装装備を研究・開発」していくと強調していることから、今後、各国における軍事科学技術の動向を踏まえながら、多様な装備体系の開発を目指していくものとみられる。

4 ロシアとの軍事協力の進展
(1)軍事協力の動向

ロシアによるウクライナ侵略が継続するなか、北朝鮮はロシアとの協力関係を急速に進展させている。2024年6月には、ロシアのプーチン大統領が24年ぶりに北朝鮮を訪問し、金委員長と首脳会談を実施した。この際、武力侵攻を受けた際の軍事援助の提供などを規定した「包括的戦略的パートナーシップ条約」が署名され、金委員長は、露朝関係が同盟関係という新たな段階に入った旨述べた(同年12月に同条約は発効)。また、2025年9月にも、「中国人民抗日戦争・世界反ファシズム戦争勝利80周年記念大会」への参加を機に、北京において首脳会談が実施された。金委員長は、「包括的戦略的パートナーシップ条約」の締結以降、露朝関係があらゆる分野で拡大・発展していると評価したほか、プーチン大統領も北朝鮮との関係について「同盟的な性格を持つに至った」と表現しており、露朝の一層の関係強化が強調された。

露朝首脳会談(2025年9月)【朝鮮通信=時事】

露朝首脳会談(2025年9月)【朝鮮通信=時事】

ロシアとの関係強化の動きは、軍事面で顕著となっている。例えば、2023年以降、北朝鮮からロシアに対して、弾道ミサイルを含む武器・弾薬の供与が行われている。ロシアによるウクライナ侵略において北朝鮮製の砲弾が使用されていると指摘されているほか、2024年のうちに少なくとも100発もの弾道ミサイルが北朝鮮から供与されたことが指摘されており48、ウクライナに対するロシアの継戦能力に少なからず貢献している状況である。また、北朝鮮は、2024年後半以降、ロシアに兵士を派遣した49。これに関して、2025年4月、北朝鮮とロシアの双方は、ロシアのクルスク州をウクライナから奪還するための作戦に北朝鮮兵士が参加したこと、北朝鮮兵士の戦闘参加が「包括的戦略的パートナーシップ条約」第4条に基づく対応であったことを明らかにした50。このほか、北朝鮮は、同州における地雷除去のため、同年8月から工兵部隊を派遣した旨を発表した51

一方、ロシアから北朝鮮に対しては、2024年11月以降、短距離防空システムや電子戦システムが提供されたことが指摘されている52

(2)北朝鮮の軍事力に及ぼす影響

ロシアとの軍事協力を通じ、北朝鮮の軍事力が中長期的に増強されるおそれがある。

  • まず、ウクライナ侵略において使用されている北朝鮮の短距離弾道ミサイルに関しては、ロシアから提供されたデータにより、その精度が向上したことなどが指摘されている53。実戦使用を通じた北朝鮮製ミサイルのさらなる性能向上が懸念される。
  • また、北朝鮮製の弾道ミサイルがロシアに対して供与されるなか、金委員長はミサイルの生産能力の拡大に言及している54。生産体制が強化されることにより、今後、北朝鮮の弾道ミサイル戦力の整備がさらに進展するおそれがある。
  • 北朝鮮兵士のロシアへの派遣に関しては、ウクライナとの戦闘を通じて、北朝鮮兵士は無人アセットの使用を含む新しい戦い方を経験した。ウクライナとの戦闘で得られた教訓が将来的に北朝鮮軍全体に普及されるおそれがある。
  • 加えて、ロシアに対する支援の見返りとして、ロシアの核・ミサイル関連技術が北朝鮮に移転されるおそれについても深く懸念される。仮に移転された場合、極超音速兵器をはじめとする北朝鮮の核・ミサイル開発が今後大きく進展する可能性がある。

北朝鮮の軍事動向は、わが国の安全保障にとって従前よりも一層重大かつ差し迫った脅威となっているところ、ロシアとの軍事協力を通じた北朝鮮の軍事力のさらなる増強は、わが国を取り巻く地域の安全保障の観点から深刻に憂慮すべきものである。露朝軍事協力の進展の動きについては、欧州・大西洋とインド太平洋の安全保障が不可分であるという認識のもと、引き続き重大な関心を持って注視していく必要がある。

参照4章1節2項6(同盟国・同志国などからの支援)

5 内政
(1)金正恩体制の動向

北朝鮮では、金委員長を中心とする権力基盤の強化が進んできた。憲法では国務委員長は「国家を代表する朝鮮民主主義人民共和国の最高領導者」であると規定されるほか、党を中心とした運営を行っているとの指摘があり、2021年1月には金委員長は党総書記に就任した。

(2)経済事情

経済面では、社会主義計画経済の脆弱性に加え、わが国や米国などによる独自の制裁措置の強化や、核実験や弾道ミサイル発射を受けて採択された関連の国連安保理決議による制裁措置などもあり、北朝鮮は慢性的な経済不振、エネルギーと食糧の不足に直面している55

2021年1月、金委員長は自力更生・自給自足を基本とする「国家経済発展の新たな5か年計画」を提示した。この計画に関して、金委員長は、2024年末には、「5か年計画を成功裏に完結しつつ次の段階の発展路程に入るための準備工程を効果的に推進する」ことを2025年の方向性として提示している。2026年2月の朝鮮労働党第9回大会では、5か年計画が基本的に完遂され、今後の経済発展の展望を確実に楽観することのできる重大な一歩となると評価された。また、この大会では、過去5年間で収めた成果を強固にし、経済を安定的・継続的に成長させることなどを基本とする新たな5か年計画が提示された。困難な状況下においても、北朝鮮は引き続き、経済状況の改善を図っていくものとみられる。

一方、北朝鮮が現在の統治体制の不安定化につながりうる構造的な改革を行う可能性は低いと考えられることから、経済の現状を根本的に改善することには、様々な困難がともなうと考えられる。困難な経済・食糧事情のなかで、外国からの情報の流入などにともなう社会の動揺を警戒し、思想的な統制を一層強めているといった指摘もなされており、体制の安定性という点から注目される。

また、北朝鮮は、国連安保理決議で禁止されている、洋上での船舶間の物資の積み替え(いわゆる「瀬取り」)などにより国連安保理の制裁逃れを図っているとみられる56

参照図表I-3-4-9(北朝鮮に対する国連安保理決議に基づく制裁)

図表I-3-4-9 北朝鮮に対する国連安保理決議に基づく制裁

6 対外関係
(1)米国との関係

2018年6月、史上初の米朝首脳会談において金委員長は朝鮮半島の完全な非核化に向けた意思を示したが、2019年2月の第2回米朝首脳会談では、双方はいかなる合意にも達しなかった。その後北朝鮮は、米国を「最大の主敵」としつつ、新たな米朝関係樹立の鍵は、米国による北朝鮮への敵視政策の撤回であるとする姿勢を示してきた。

北朝鮮は2018年4月、「大陸間弾道ロケット試験発射」の停止などを自ら表明していたが、米朝関係に進展がみられないなか、2022年1月には金委員長が「米国の敵視政策と軍事的脅威がもはや黙過することのできない危険ラインに至った」との評価のもと、「暫定的に中止していた全ての活動を再稼働する問題を迅速に検討」することを指示した。実際に同年以降、北朝鮮はICBM級弾道ミサイルの発射を再開し、米国との長期的対決を徹底的に準備していくなどと述べた57

2025年1月には、第2期トランプ政権が新たに発足した。トランプ大統領は、たびたび金委員長との対話に前向きな姿勢を示しているものの、現時点において米朝間の公式な対話の再開は確認されていない。一方、金委員長は、2026年2月の朝鮮労働党第9回大会において、「最強硬姿勢」を変わることのない対米政策基調として堅持するとしつつ、米国が北朝鮮の現在の地位を尊重し、対北朝鮮敵視政策を撤回するならば、米国と良好な関係を築けない理由はないとの立場を表明した。

また、同年1月に発表された米国の国家防衛戦略(NDS:National Defense Strategy)においては、現在の北朝鮮の核戦力に対する米国の認識が示された。NDSでは、北朝鮮の核戦力の規模が拡大し、かつ、高度化しており、米国本土に対する核攻撃という「明白かつ現在の危険」を構成しているとされた。また、北朝鮮を抑止するにあたり、韓国がその責任を一義的に担う意思と能力を有しており、米国は重要であるがより限定的な支援にとどめる旨明記された。引き続き、今後の米朝双方の動向や朝鮮半島情勢に対する米国の関与のあり方などが注目される。

(2)韓国との関係

2018年、3回にわたる南北首脳会談を通じ、南北関係は大きな進展をみせた58

一方、2019年に米朝首脳会談が決裂して以降、南北関係は進展せず、2022年に厳しい対北朝鮮姿勢を示す尹錫悦(ユン・ソンニョル)前政権が発足して以降は、北朝鮮の対南姿勢も厳しいものに転じ始めた。

金委員長は、2023年12月、南北関係を「敵対的な2つの国家の関係」と表現したほか、2024年1月には、最高人民会議において「憲法にある「北半部」「自主、平和統一、民族大団結」という表現は今や削除されるべき」であると主張するなど、これまでの韓国に対する認識を大きく転換した旨明らかにした。

2025年6月に発足した李在明(イ・ジェミョン)政権は、南北の「平和共存」、「共同成長」および「核のない朝鮮半島」を強調し、北朝鮮との対話を模索しているが、2026年2月、金委員長は、韓国と議論することは全くなく、韓国を「徹底的な敵対国」、「永遠の敵」として扱っていくと述べるなど、北朝鮮は、対話に応じる姿勢を示していない。

(3)中国との関係

北朝鮮にとって中国は極めて重要な政治的・経済的パートナーであり、北朝鮮に対して一定の影響力を維持していると考えられる。1961年に締結された「中朝友好協力および相互援助条約」が現在も継続しているほか、中国は北朝鮮にとって最大の貿易相手国であり、2024年の北朝鮮の対外貿易(南北交易およびウクライナ侵略以降公表していないロシアを除く)に占める中国との貿易額の割合は約9割超59と極めて高水準で、北朝鮮の中国への依存が指摘されている。

北朝鮮情勢や核問題に関して、中国は、「デュアルトラックの並進」(朝鮮半島の非核化と、休戦メカニズムから平和メカニズムへの転換)構想と「段階ごと、同時並行」という原則に基づき、対話と協議を通じて問題を解決すべきであると表明してきた。近年では、北朝鮮によるICBM級弾道ミサイルの発射を受けて米国が提案した国連安保理制裁決議案に対してロシアとともに拒否権を行使し、半島情勢がここまで推移した原因は米国にあるとするなど、北朝鮮が繰り返す挑発行為を擁護する姿勢も示している。

2025年9月3日、金委員長は北京で実施された「中国人民抗日戦争・世界反ファシズム戦争勝利80周年記念大会」に参加し、翌日4日には、習近平国家主席と約6年ぶりとなる中朝首脳会談を実施した。同会談にかかる双方の発表においては、朝鮮半島の非核化に関する言及はなされなかった。

(4)ロシアとの関係

参照4節1項4(ロシアとの軍事協力の進展)

1 2016年5月当時は国防委員会第1委員長。同年6月に開催された最高人民会議において、国防委員会を国務委員会に改め、金正恩氏が「国務委員長」に就任したことを受け、金正恩氏の役職は国務委員長に統一している。

2 朝鮮労働党第7回大会決定書「朝鮮労働党中央委員会事業総括について」(2016年5月8日)では、「軍事先行の原則で軍事を全ての事業に優先させ、人民軍隊を核心、主力として革命の主体を強化し、それに依拠して社会主義偉業を勝利のうちに前進させていく社会主義基本政治方式」とされる。

3 北朝鮮は、1962年に朝鮮労働党中央委員会第4期第5回総会で採択された、全軍の幹部化、全軍の近代化、全人民の武装化、全土の要塞化という四大軍事路線に基づいて軍事力を増強してきた。

4 金委員長は2025年9月、国防科学院装甲防御武器研究所と電子武器研究所の事業を指導した際、「今後党第9回大会は国防建設分野で核武力と常用武力の並進政策を提示することになる」と言及していた。

5 例えば、金委員長は、2021年1月の朝鮮労働党第8回大会において、「現代戦において作戦任務の目的と打撃対象に応じ様々な手段で適用することのできる戦術核兵器を開発」する、「朝鮮半島地域における各種の軍事的脅威を、主動性を維持しつつ徹底的に抑止して統制、管理する」と表明したほか、2022年9月には「戦術核運用手段を不断に拡張し、適用手段の多様化をさらに高い段階で実現して核戦闘態勢を各方面から強化していく」と述べている。

6 2021年1月の大会時の北朝鮮による発表などにおいては「国防科学発展および武器体系開発5か年計画」という名称への直接的な言及はみられなかったが、同年9月13日に長距離巡航ミサイルの発射を発表した際、北朝鮮メディアによって、このミサイル開発事業が「党第8回大会が提示した国防科学発展および武器体系開発5か年計画重点目標の達成」のために意義を持つものであるとして、初めて公に言及されたとみられる。

7 この「新型多目的駆逐艦」について、北朝鮮は「崔賢(チェヒョン)」級に登録・分類されたと発表した。同級の艦艇は、2025年4月に南浦造船所で、同年6月に羅津造船所で進水しており、それぞれ「崔賢」号、「姜健(カンゴン)」号と呼称されている。金委員長は、「対空・対艦・対潜・対弾道ミサイル能力はもとより、攻撃手段すなわち超音速戦略巡航ミサイル、戦術弾道ミサイルをはじめ、陸上打撃作戦能力を最大に強化することのできる武装体系(システム)が搭載され」る旨主張した。南浦造船所における進水式の数日後には、同艦艇から「超音速巡航ミサイル」や「戦略巡航ミサイル」などの試験発射を実施した旨発表した。

8 「崔賢」号および「姜健」号の進水後、2025年7月に北朝鮮は、「「崔賢」級駆逐艦3号艦」を2026年10月までに建造する旨発表した。

9 サーマン在韓米軍司令官(当時)は、2012年10月の米陸軍協会における講演で「北朝鮮は、世界最大の特殊部隊を保有しており、その兵力は6万人以上に上る」と述べているほか、韓国の「2022国防白書」は、北朝鮮の「特殊作戦軍」について、「兵力約20万人に達するものと評価される」と指摘している。

10 原子炉には、使用される減速材の違いにより、黒鉛減速炉、重水炉、軽水炉がある。黒鉛減速炉と重水炉は燃料として天然ウランを使用するのに対し、軽水炉は燃料としてウラン235の濃度を3~5%に高めた低濃縮ウランを使用する。

11 5MWe黒鉛減速炉については、稼働が継続している可能性が高い旨指摘されている。また、IAEAのグロッシー事務局長は、同原子炉に関して、2024年8月中旬から同年10月中旬にかけて稼働が停止したこと、この期間が同原子炉の燃料を交換するのに十分な長さであったこと、さらに、同原子炉の使用済み燃料の再処理が行われていることと整合する兆候が確認されていることなどを指摘している。

12 IAEAのグロッシー事務局長は、実験用軽水炉について、2025年8月から同年11月まで稼働が停止していたものの、その後は稼働が継続している兆候が見られると指摘している。

13 プルトニウムは、原子炉でウランに中性子を照射することで人工的に作り出され、その後、再処理施設において使用済みの燃料から抽出し、核兵器の原料として使用される。一方、ウランを核兵器に使用する場合は、自然界に存在する天然ウランから核分裂を起こしやすいウラン235を抽出する作業(濃縮)が必要となり、一般的に、数千の遠心分離機を連結した大規模な濃縮施設を用いてウラン235の濃度を兵器級(90%以上)に高める作業が行われる。

14 北朝鮮は2003年10月に、5MWe黒鉛減速炉から、プルトニウムが含まれる8,000本の使用済み燃料棒の再処理を完了したことを、2005年5月には、新たに8,000本の使用済み燃料棒の抜き取りを完了したことをそれぞれ発表している。なお、韓国の「2022国防白書」は、北朝鮮が約70kgのプルトニウムを保有していると推定している。

15 2024年9月に公開された施設についてはカンソンに所在するウラン濃縮施設、2025年1月に公開された施設については寧辺に所在するウラン濃縮施設であると指摘されている。公開されたこれらの施設のほか、同年6月、IAEAのグロッシー事務局長は、寧辺において、カンソンの濃縮施設と規模や特徴が類似した施設が新設されている旨指摘している。

16 北朝鮮はこれまで、2006年10月9日、2009年5月25日、2013年2月12日、2016年1月6日、同年9月9日、2017年9月3日に核実験を実施した。

17 6回目となる2017年の核実験の出力は過去最大規模の約160ktと推定されるところであり、推定出力の大きさを踏まえれば、この核実験は水爆実験であった可能性も否定できない。なお、北朝鮮は4回目となる2016年1月の核実験についても、水爆実験であった旨主張しているが、この核実験の出力は6~7ktと推定されることから、一般的な水爆実験を行ったとは考えにくい。

18 「SIPRI(Stockholm International Peace Research Institute) Yearbook 2025」による。

19 金委員長は2021年1月の朝鮮労働党第8回大会において、「多弾頭個別誘導技術をさらに完成させるための研究事業」を進めていることや、「核兵器の小型・軽量化、戦術兵器化をさらに発展」させることなどに言及した。このほか、北朝鮮は、2024年6月にIRBM級弾道ミサイルを発射した際、多弾頭の「分離・誘導制御試験」を実施した旨発表し、分離した弾頭がそれぞれの目標地点へ正確に誘導された旨主張した。

20 金委員長は2022年9月に開催された最高人民会議において、米国の目的について「最終的には核を下ろさせて自衛権行使力まで放棄(させ)、または劣勢にしてわが政権をいつでも崩壊させようとすることである」と述べ、「いかなる困難な環境に直面しようとも、(中略)絶対に核を放棄することはできない」と演説した。さらに、2023年9月に開催された最高人民会議において、金委員長は、朝鮮民主主義人民共和国社会主義憲法第4章第58条に「核兵器の発展を高度化して国の生存権と発展権を保証し、戦争を抑止し、地域と世界の平和と安定を守る」旨を明記したと述べ、「共和国の核戦力建設政策がいかなる者も、何をもってしても手出しできないように国家の基本法として永久化された」と演説した。

21 実際に、北朝鮮は同月末から10月にかけて「戦術核運用部隊」の訓練としてミサイル発射を繰り返したほか、2023年3月にも、「核反撃想定総合戦術訓練」と称するものをはじめ、核弾頭を模擬した試験用弾頭を標的上空で起爆させたなどと実戦的訓練であることを主張しつつ、複数回のミサイル発射を重ねた。また、同月には、金委員長が担当部門から戦術核兵器の説明を受けたほか、兵器級核物質や核兵器の生産拡大を指示するなどして、「核兵器の兵器化事業を指導した」旨を発表した。

22 韓国の「2022国防白書」は、北朝鮮が1980年代から化学兵器を生産し始め、約2,500~5,000トンの化学兵器を貯蔵しており、また、炭疽菌、天然痘、ペストなど様々な種類の生物兵器を独自に培養し、生産しうる能力を保有していると推定される旨指摘している。北朝鮮は、1987年に生物兵器禁止条約に加入しているが、化学兵器禁止条約には加入していない。

23 「Jane's Country Intelligence Reports(2026年3月アクセス)」によれば、北朝鮮は弾道ミサイルを合計700~1,000発保有しており、そのうち45%がスカッド級、45%がノドン級、残り10%がその他の中・長距離弾道ミサイルであると推定されている。

24 固定式発射台からの発射の兆候は敵に把握されやすく、敵からの攻撃に対し脆弱であることから、発射の兆候把握を困難にし、残存性を高めるため、旧ソ連などを中心に発射台付き車両の開発が行われた。2021年10月に公表された米国防情報局「北朝鮮の軍事力」によれば、北朝鮮は、スカッドB・C用のTELを最大100両、ノドン用のTELを最大100両保有しているとされる。TEL搭載式ミサイルの発射については、TELに搭載され移動して運用されることに加え、全土にわたって軍事関連の地下施設が存在するとみられていることから、その詳細な発射位置や発射のタイミングなどに関する個別具体的な兆候を事前に把握することは困難であると考えられる。

25 米議会調査局「北朝鮮の核兵器とミサイル計画」(2023年1月)など。

26 北朝鮮は、2021年9月15日と2022年1月14日、各日2発の短距離弾道ミサイル(鉄道発射型)を発射した。

27 金委員長は、2022年12月、「超大型放射砲」を朝鮮労働党中央委員会第8期第6回総会に「贈呈」する行事に出席し、このミサイルは韓国全域を射程に収め、「戦術核搭載まで可能」であると述べた。また、2023年1月には、本ミサイルが量産体制に入った旨言及されている。

28 この「新型戦術誘導兵器」は、各前線の長距離砲兵部隊の火力打撃力を飛躍的に向上させ、「戦術核運用の効果性」を強化する意義を有するなどとする北朝鮮の発表内容を踏まえれば、米韓両軍との間で発生しうる通常戦力や戦術核を用いた武力紛争において対処可能な手段を獲得するという狙いのもと、戦術核兵器の搭載を念頭に置いて開発が進められている兵器の一つであると考えられる。

29 2026年4月19日の発射に関し、韓国合同参謀本部は、発射された弾道ミサイルが約140km飛翔したと発表した。

30 2022年11月3日に発射された6発の弾道ミサイルのうち、約350km程度飛翔した2発の弾道ミサイルは、いずれも「短距離弾道ミサイルC」であったと推定される。

31 2023年9月13日に発射された2発の弾道ミサイルは、約350km程度飛翔したのち、再度機動して上昇し、全体で約650km程度飛翔したものと推定される。

32 2025年5月8日に発射された複数発の弾道ミサイルのうち、約800km程度飛翔した1発の弾道ミサイルは、「短距離弾道ミサイルA」であったと推定される。

33 2026年1月27日に発射された少なくとも2発の弾道ミサイルは、いずれも「短距離弾道ミサイルC」であったと推定される。

34 さらに、北朝鮮は、スカッドを改良したとみられる弾道ミサイルも開発している。この弾道ミサイルは、2017年5月29日に1発が発射された。北朝鮮が公表した画像に基づけば、装軌式(キャタピラ式)TELから発射される様子や弾頭部に小型の翼とみられるものが確認されるなど、それまでのスカッドとは異なる特徴が確認された。この弾道ミサイルは、終末誘導機動弾頭(MaRV:Maneuverable Re-entry Vehicle)を装備しているとの指摘もある。

35 これまでに防衛省として、北朝鮮がSLBMを発射したものと推定しているもののほか、北朝鮮は、2015年5月9日にSLBMの試験発射に成功した旨発表した。また、2016年1月8日に、2015年5月に公開したものとは異なるSLBMの射出試験とみられる映像を公表している。

36 このほか、2022年4月25日の軍事パレードに、これまで北朝鮮から公表されたことがないとみられるSLBMの可能性があるものが登場したが、名称などの記載はなく、詳細は明らかにされていない。

37 2022年9月の発射について、北朝鮮は後日、北西部の「貯水池水中発射場」で戦術核弾頭搭載を模擬した弾道ミサイルの発射訓練を行ったことや、「貯水池水中発射場建設」計画の存在を明らかにしている。

38 このほか、2022年10月4日にも、北朝鮮は1発の弾道ミサイルをわが国の青森県上空を通過させる形で発射した。このときの飛翔距離が約4,600km程度に達したことを踏まえれば、このミサイルはIRBM以上の射程を有する弾道ミサイルであったと推定される。北朝鮮は後日、「新型地対地中長距離弾道ミサイル」を発射した旨発表した。このとき公表された画像からは、撮影日時への言及はなかったものの、液体燃料推進方式のエンジンの特徴や、「火星12」型のものと類似したTELが確認される一方で、「火星12」型とは異なる弾頭形状やエンジン構造が確認されることから、北朝鮮がこのときに新型のIRBM級弾道ミサイルを発射した可能性も否定できない。

39 北朝鮮は、発射の翌日、発射した弾道ミサイルについて、「新型極超音速中長距離弾道ミサイル」と言及したほか、弾道ミサイルのエンジン胴体に「新たな炭素繊維複合材料」を使用し、飛行・制御システムにも「新たな総合的かつ効果的な方式」を導入した旨発表している。

40 テポドン2は、1段目にノドンの技術を利用したエンジン4基、2段目に同様のエンジン1基をそれぞれ使用していると推定される。

41 発射された1発は複数に分離し、1つ目は朝鮮半島の西約150kmの黄海上、2つ目は朝鮮半島の西約350kmの東シナ海上、3つ目は沖縄本島と宮古島との間の上空を通過し、沖ノ鳥島の西約1,000kmの太平洋上、わが国EEZ外の、いずれも予告落下区域外に落下したものと推定される。

42 このほか、2022年12月23日に発射された弾道ミサイルは、2022年1月5日と同月11日に発射された「極超音速ミサイル」と称する弾道ミサイルであった可能性があると考えられる。また、2023年7月の「武装装備展示会2023」と題する展覧会や同月の閲兵式(軍事パレード)において、「火星8」型と外形上類似点のあるミサイルが登場したが、「火星8」とは異なる特徴もあり、詳細は明らかにされていない。

43 2026年1月4日に発射された2発の弾道ミサイルは、それぞれ約900km程度、約950km程度飛翔した。

44 2024年1月には「『火矢(プルファサル)3-31』型」と呼称する巡航ミサイルの試験発射も実施しているが、この巡航ミサイルと従来型の「矢」との差異も含めて、その詳細は不明である。

45 短距離弾道ミサイルA、B、Dや、短距離弾道ミサイルAと外形上類似点がある、鉄道発射型の弾道ミサイルや小型SLBMは、通常の弾道ミサイルよりも低空を、変則的な軌道で飛翔することが可能とみられる。

46 2022年12月、北朝鮮は「大出力固体燃料エンジン地上燃焼試験」を成功裏に実施したと主張した。この際、金委員長が「5か年計画の戦略兵器部門最優先五大課題実現のためのもう一つの重大問題を解決した」と評価したことなどを発表した。

47 2024年5月の発射は、衛星打上げに失敗したとみられる。

48 多国間制裁監視チーム(MSMT)第1回報告書による。

49 多国間制裁監視チーム(MSMT)第1回報告書によれば、北朝鮮は、2024年終盤に1万1,000人を超える兵士をロシアに派遣し、2025年1月から3月にかけて3,000人を超える兵士を追加で派遣したとされる。

50 同条約の第4条(朝鮮語正文)には、「双方のうちいずれか一方が個別の国家または諸国から武力侵攻を受けて戦争状態におかれることとなった場合、他方は、国連憲章第51条と北朝鮮、ロシア連邦の法に従って、遅滞なく自らが保有している全ての手段により、軍事的およびその他援助を提供する」と規定されている。

51 2025年6月、ロシア側は、北朝鮮がロシア領域における地雷除去のために工兵を、また、インフラ復旧のために軍事建設作業員を派遣することを決定した旨発表していた。

52 多国間制裁監視チーム(MSMT)第1回報告書による。

53 多国間制裁監視チーム(MSMT)第1回報告書による。

54 例えば、北朝鮮は2025年12月、金委員長が「重要軍需工業企業所」を現地指導した際、ミサイルおよび砲弾の生産について、「運用需要に即して2026年度の生産計画を発展志向的に向上」させ、「総体的な生産能力をさらに拡大すべき必要性について言及」した旨発表した。

55 近年、北朝鮮漁船や中国漁船が大和堆周辺のわが国排他的経済水域で違法操業を行っており、この海域で操業するわが国の漁船の安全を脅かす状況となっている。現場海域においては、水産庁と海上保安庁が連携し、違法操業を行う外国漁船への退去警告の対応を含め、わが国周辺海域の厳重な監視警戒・取締りを実施している。取締りなどの詳細については内閣府年次報告「海洋に関する施策の取り組み状況」、水産白書と海上保安レポートを参照。

56 2018年に入ってから2026年3月末までの間に、北朝鮮籍タンカーと外国籍タンカーが公海上で接舷(横付け)している様子を海自艦艇などが計24回確認している。これらの船舶は、政府として総合的に判断した結果、「瀬取り」を実施していたことが強く疑われる。

57 2023年7月17日、金与正党副部長が、米国が拡大抑止体制をさらに強化すれば「会談のテーブルがさらに遠くなるようにするだけだということを認識すべき」と述べている。

58 例えば、南北の敵対行為の全面的な中止や、朝鮮半島の非核化の実現を共通の目標として確認することなどを含む「板門店宣言文」、軍事的な敵対関係の終息などを含む「9月平壌共同宣言」、軍事的な緊張緩和のための具体的な措置について盛り込んだ「『板門店宣言文』履行のための軍事分野合意書」に合意した。

59 大韓貿易投資振興公社の発表による。