ウクライナ侵略においては、無人アセットを活用した新しい戦い方が現出している。一般に、無人アセットは、長期間、過酷な環境下においても人的損耗を伴わない運用が可能であるとされており、ウクライナの戦場が消耗戦の様相を呈するなか、相手の戦力を損耗させつつ自らの戦力を温存するうえで無人アセットが重要な役割を帯びている。ロシア・ウクライナ双方が、無人航空機(UAV:Unmanned Aerial Vehicle)をはじめ、多様かつ安価な無人アセットを大量に投入し、目標捜索や、高価な装備品や生活インフラへの攻撃など、多様な用途に使用されている。また、伝統的な砲弾やミサイルを組み合わせ、大規模な複合攻撃も展開されている。
ロシアは、ウクライナに対する大規模なミサイル攻撃とあわせて、シャヘド型UAVをはじめ長距離を飛行可能な自爆型UAVを多数投入することでウクライナの防空網を飽和させ、ミサイルが防空網を突破する確率を高めているとされている。また、ロシアは、2024年10月頃から、自爆型UAVとの識別が困難とされるおとりUAVの投入も拡大しており、より安価で大量に生産可能なUAVも組み合わせて運用することで、ウクライナに対して効果的に長距離攻撃を展開しているものとみられる。
一方で、ウクライナにとってロシアからの攻撃の発生源であるロシア国内のミサイル・UAV発射施設や生産工場などを破壊する必要性が指摘されているところ、ウクライナも長距離飛行が可能な国産のUAVなどにより、ロシア国内の後方拠点への攻撃を頻繁に実施しているとみられる。

ロシア軍のUAVにより破壊されたハルキウ市の集合住宅【ウクライナ国家非常事態庁】

シャヘド型無人機【ウクライナ国防省情報総局】
ウクライナの戦場では、偵察・観測、長距離攻撃、前線における精密攻撃など、無人アセットの用途が急速に拡大している。
まず、大量のUAVなどによる情報収集活動により、敵の装甲車両や歩兵部隊の位置を把握することで、戦場が「透明化」され、両軍の戦場における状況認識能力の向上が指摘されている。
こうした偵察・観測目的での使用に加えて、ロシア・ウクライナ双方が、装甲車両、敵塹壕陣地、兵士一人一人に対する攻撃に至るまで前線における一人称視点タイプのUAV(FPV(First Person View)ドローン)の使用を増加させている。

一人称視点タイプのUAV(FPVドローン)とそれを操作する様子【ウクライナ軍】
UAVによる攻撃は、自国から大規模にUAVを投入する手法のほか、敵国内で奇襲効果を最大限活用した例もみられる。例えば、2025年6月、ウクライナが実施した「蜘蛛の巣」と呼ばれる作戦においては、117機のUAVを貨物に偽装した木製キャビンの中に隠してロシア国内に移送したうえで、遠隔操作により同国内の複数の基地を攻撃し、戦略爆撃機など数十機に損害を与えたと指摘されている。同月、ウクライナ保安庁は、「蜘蛛の巣」作戦におけるロシアの被害総額を70億ドルと推定している旨発表しており、安価な手段を活用して相手の高価な装備品を破壊する手法がみられている。

「蜘蛛の巣」作戦【ウクライナ保安庁】
無人アセットは洋上でも効果的に活用されている。ウクライナは、無人水上航走体(USV:Unmanned Surface Vehicle)とUAVやミサイルを組み合わせて運用することにより、ロシア艦艇のウクライナ沿岸への接近を阻止し、遠方に退避させることで、ロシア艦艇の活動を制限している。例えば、ウクライナ国防省情報総局によれば、自国が開発したUSV「MAGURA V5」により、2024年5月末までにロシア黒海艦隊に所属する大型揚陸艦、哨戒艇を含む8隻を撃沈したとしているほか、同局は、同年12月に、改良型「MAGURA V5」がロシア軍ヘリコプター2機を、2025年5月には、USV「MAGURA V7」がロシア軍戦闘機2機を対空ミサイルによりそれぞれ撃墜した旨発表しており、USVは対空アセットとしても機能しているとみられる。また、同年12月、ウクライナ保安庁は、無人水中航走体(UUV:Unmanned Underwater Vehicle)「サブ・シーベイビー」により、ロシア軍潜水艦への攻撃を実施した旨発表しており、ウクライナにおけるUUVの活用についても今後の動向が注目される。

ウクライナUSV「MAGURA V5」【ウクライナ国防省情報総局】

ウクライナUSV「MAGURA V5」による攻撃を受けたとみられるロシア海軍艦艇(2024年3月)【ウクライナ国防省情報総局】
ウクライナ軍は、自軍アセットの分散配置などを実施し、ウクライナ航空・防空戦力の大半が緒戦のロシア軍による攻撃から残存したことなどにより、ロシアは、航空優勢を獲得できず、航空戦力の運用に一定の制限を受けていたものとみられる。
一方で、ロシアによるUAVとミサイルを組み合わせた複合的な大規模攻撃は、ウクライナ軍の防空能力に継続的に負担を強いる状況となっている。実際、2025年12月には、ウクライナ空軍は、同年11月だけで約9,600機のUAV、約120発のミサイルを迎撃した旨発表している。
こうした大規模攻撃に対応するため、ウクライナは、欧米諸国などによる装備品供与を受け、従来の高価な迎撃ミサイルのみに頼らない、防空能力の構築を継続しており、携行型を含む様々な射程の地対空ミサイル、機関砲・機関銃、迎撃用UAV、電子戦システムなどに至るまで、多層的に防空アセットを活用している1。

地対空ミサイルシステム「NASAMS(National Advanced Surface-to-Air Missile System)」【EPA=時事】

携帯式対空ミサイル「スティンガー」【AFP=時事】

迎撃用UAV「Octopus」【ウクライナ国防省】
ウクライナ軍においては、状況監視システム「デルタ」などにより、前線部隊、無人アセット、衛星などをネットワークで連接し、収集した膨大なデータをAIで処理・分析したうえで、即座に部隊間で共有することで、迅速かつ的確な意思決定が行われている。これにより、例えば、目標情報を入力すれば、情報が自動的に「デルタ」にアップロードされ、最適な火力割当てがなされるなど、効果的な火力統制が展開されている。

状況監視システム「デルタ」を使用する様子【ウクライナ国防省】
こうした意思決定の迅速化のほかにも、ロシア・ウクライナ双方がAIを搭載したUAVの開発に力を入れており、AIによりUAVを自律制御することで、電子妨害下においても攻撃可能となる旨指摘されているところ、開発動向が注目される。
ウクライナ軍は、ロシアによる侵略当初から、国内の基地通信局や電波塔などの通信インフラがロシア軍の攻撃により破壊されるも、米民間企業の衛星コンステレーションである「スターリンク」を活用することで通信体制を維持することができたとみられる。高速で安定したデータ通信により、各部隊・アセット間で情報が即時に共有されたことで、ウクライナ軍による迅速で効果的な攻撃が可能となったとされている。こうした衛星通信の活用は、ロシア軍に対し戦力比で劣勢であってもウクライナ軍が継戦可能となっている理由の一つとみられる。

「スターリンク」の地上局を展開【NurPhoto=AFP】
ウクライナでは、ロシアによる侵略前から重要インフラや衛星通信網を標的とした多数のサイバー攻撃が発生し、侵略開始以降は、サイバー攻撃が常態化している。こうしたサイバー攻撃に対して、ウクライナは官民をあげたサイバーセキュリティ強化にかかる自国の取組に加えて、欧米諸国や海外IT企業からの支援を得て対応している。
衛星測位システムを使用した精密攻撃やUAVによる攻撃などに対抗するため、ウクライナの戦場においては電子戦兵器の活用が活発化している。こうした電子戦の展開に対して、装備品の対電子戦能力の向上、UAVの光ファイバーによる有線接続に加え、AI搭載による一部自律飛行などがみられるようになっており、互いの戦術に対抗する形で電子戦をめぐる技術革新の連鎖が継続している。

対FPVドローン用バックパック型妨害装置「KVERTUS AD COUNTER FPV BACKPACK F3U」【AFP=時事】

電子戦耐性の高いウクライナUAV「ヴァンパイア」【ウクライナ国防省】

光ファイバーFPVドローン【Brave1】
情報戦に関し、ロシアは、侵略開始に前後して、偽旗(にせはた)作戦の実行、偽情報の流布を強化したとされている。こうしたロシアの影響工作に対抗するため、ウクライナは、侵略当初から、戦略的コミュニケーション(SC:Strategic Communication)を積極的に実施しており、SCの分野において自らに有利な状況を形成するため、ウクライナ独自のSC専門組織の対応に加え、欧米諸国との協力も行っている。

逃亡したとの偽情報に対抗するためキーウで撮影した動画を公開【ゼレンスキー大統領Facebook】

拡散されたディープフェイク動画【AFP=時事】
ロシアは、必要な装備品を国内で調達する体制を一定程度確立しているとみられ、軍需企業の操業体制の強化のほか、旧ソ連時代に生産された戦車・弾薬などの保管装備品の再整備、デュアルユース製品(軍民両用品)の活用などにより、継戦能力を確保しているとされている。2024年9月、プーチン大統領は、2023年に約14万機のUAVを軍に供給し、2024年には10倍になる旨言及したほか、2025年4月には、2024年に150万機以上のUAVを供給した旨言及した。一方で、ウクライナも、継戦能力の確保のための装備品や弾薬の供給を欧米諸国の支援に依存しつつも、それらの国産化や生産能力の拡充に力を入れており、2025年3月、ウクライナは、2024年に少なくとも230万機のUAVを生産した旨発表した。
また、ウクライナの戦場では、従来と比べ、極めて短いサイクルで装備品や戦術が更新されており、迅速かつ柔軟な技術革新が重要になっている。例えば、侵略当初は、ロシア・ウクライナ双方が主に火力攻撃の精度を向上させるための偵察・観測目的で無人アセットを多用していたものの、侵略の長期化に伴い、長距離攻撃や前線での攻撃など、徐々に多様な用途で使用されるようになってきている。こうした無人アセット運用への対抗手段として、電子戦がさらに活発に展開され、そして電子妨害への対応として光ファイバーにより有線接続されたUAVの活用がみられている。また、侵略当初は、装甲車両などによる大規模戦闘が展開されていたものの、機動力が高いUAVによる攻撃の増加に伴い、UAVや地雷を回避しやすいとされるオートバイ、バギー、電動スクーターなどを用いる攻撃が増加している。
このような新しい戦術や装備品の更新速度に対応するため、ウクライナにおいては、現場の個々の兵士による装備品のレビューシステムや現場部隊による装備品の直接調達サイクルなども導入されており、ウクライナの装備品・戦術の迅速なアップデートを可能としているものとみられる。

ウクライナ国産巡航ミサイル「Flamingo」【AFP=時事】
欧米諸国は携行型ミサイルから戦闘機に至るまでウクライナに多数の装備品を供与するとともに、情報面や教育訓練面でも支援を重ねており、ウクライナとの装備品の共同生産も推進している。ウクライナにとって、継戦能力の確保のために同盟国・同志国からの支援が不可欠になっている。

ウクライナへの供与が発表された主な装備品「ジャベリン」【AFP=時事】

ウクライナへの供与が発表された主な装備品「F-16戦闘機」【ウクライナ大統領府】
一方で、ロシアも国外からの装備品の取得などにより戦力を維持しているものとみられる。ロシアはイランが開発したUAVも用いてウクライナ各地への攻撃を実施しているほか、中国もデュアルユース製品(軍民両用品)の移転によりロシアの継戦能力を下支えしているとの指摘もある。
また、北朝鮮はウクライナ侵略が継続するなか、ロシアとの軍事協力を強化しており、2023年以降、ロシアに対して、弾道ミサイルを含む武器・弾薬を供与しているほか、2024年後半以降には、兵士をロシアに派遣し、ウクライナとの戦闘に参加するに至っている。ウクライナ侵略において北朝鮮の砲弾が使用されているとの指摘や、ウクライナに対する戦闘の経験を通じて、北朝鮮が戦術面での能力を強化する可能性があるとの指摘もあり、露朝軍事協力の進展の動きについて、注視していく必要がある。
参照2章3項2(NATO加盟国などの対応)、2章3項3(そのほかの地域の対応)
ウクライナ侵略においては、次のような新しい戦い方がみられている。
一方で、ウクライナ侵略における戦闘様相は、戦車や火砲、塹壕戦といった、伝統的な戦い方も組み合わされたものとなっており、従来の装備品の活用も重要となっている。新しい戦い方に関し、それぞれが対抗する形で次々に戦い方が更新されていくなか、ウクライナ侵略における今後の戦い方の動向について注視していく必要がある。