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第III部 防衛目標を実現するための3つのアプローチ

2 各国との防衛協力・交流の推進

安全保障分野での協力・交流を推進するに際しては、地域の特性、相手国の実情やわが国との関係なども踏まえつつ、最適な手段を組み合わせた二国間での防衛協力・交流が重要となる。

1 オーストラリア
(1)オーストラリアとの防衛協力・交流の意義

オーストラリアは、ともに米国の同盟国として、基本的価値のみならず安全保障上の戦略的利益を共有するわが国にとって、インド太平洋地域の特別な戦略的パートナーである。

日豪防衛協力の深化を背景に、変化する安全保障環境への対応や自由で開かれた国際秩序の維持・強化のため、2022年10月、新たな「安全保障協力に関する日豪共同宣言」を発表したほか、日豪ACSA1や日豪情報保護協定、日豪防衛装備品・技術移転協定、日豪円滑化協定(RAA)2といった協力のための基盤を整備してきている。

(2)最近の主要な防衛協力・交流実績など

2022年6月、岸防衛大臣(当時)は、マールズ・オーストラリア副首相兼国防大臣と東京において会談を実施し、インド太平洋地域において共通の安全保障課題と利益を有する「特別な戦略的パートナー」である日豪の防衛関係は極めて重要であるとの認識のもと、次の6点を含む防衛協力を引き続き野心的かつ前向きに進めていくことで一致した。

  • 日豪円滑化協定(RAA)により促進される防衛協力をさらに強化すること
  • 各領域において演習や活動を高度化し、相互運用性の向上を図ること
  • 各国の強みを活かし、科学技術及び戦略能力における協力を推進し、防衛装備庁(ATLA)と国防科学技術グループ(DSTG)との間で、科学技術協力を促進する長期的な枠組みの構築に向けた調整を加速化すること
  • 宇宙・サイバー分野における協力を推進すること
  • サプライチェーンにおける協力を通じ、相互の産業基盤を強化すること
  • 太平洋やASEAN諸国のパートナーとの協力などにあたり、日豪の活動の調整を強化すること

同年10月、岸田内閣総理大臣は、アルバニージー首相と日豪首脳会談を行い、日豪は同志国連携の中核となるまで発展した旨述べた。また、両首脳は、新たな「安全保障協力に関する日豪共同宣言」は、日豪安全保障・防衛協力の今後10年の方向性を示す羅針盤であること、これに従い、安全保障・防衛協力を一層強化していくことで一致した。

同年12月、浜田防衛大臣は、林外務大臣とともに、マールズ副首相兼国防大臣及びウォン外務大臣と第10回日豪外務・防衛閣僚協議(「2+2」)を東京において実施した。この協議において、浜田防衛大臣は、日豪の安全保障協力が次の時代に向けて進んでいく準備が整ったとの認識を示し、日豪の防衛協力の実効性を向上させる方策を探求する旨述べた。四大臣は、首脳間の共通の認識を踏まえ、早急に実施すべき二国間協力を特定し、速やかに実施していくことで一致した。また、四大臣は、日豪が戦略文書見直しのプロセスを進めていることを背景に、日豪協力の方向性につき、さらに議論することを確認した。

日豪防衛相会談(2022年12月)

日豪防衛相会談(2022年12月)

2023年5月、岸田内閣総理大臣は、G7広島サミットの機会にアルバニージー首相と日豪首脳間の懇談を実施した。懇談において、岸田内閣総理大臣は、日豪が戦略認識及び進むべき方向性を共有していることは明らかであり心強い旨述べた。また、両首脳は、昨年10月に署名した新たな「安全保障協力に関する日豪共同宣言」で示した方向性のもとでの日豪の安全保障協力の進展を歓迎し、この宣言の実施に資する日豪円滑化協定の早期発効に向けた期待を表明した。

初公開された陸自特殊作戦群と豪陸軍特殊作戦コマンドとの実動訓練

初公開された陸自特殊作戦群と豪陸軍特殊作戦コマンドとの実動訓練

(3)各軍種の取組

2022年4月以降、統幕長はキャンベル豪軍司令官と7回にわたる会談を行った。会談では、インド太平洋地域の安全保障の礎である日豪間の連携・協力を一層深化させていくことで一致した。また、国際社会の平和と安定及びFOIPの実現のため、特別な戦略的パートナーの関係にある日豪間の連携を強化することで一致した。

2022年4月以降、陸幕長はスチュアート豪陸軍本部長と3回にわたる懇談を行った。会談では、FOIPの実現のため、共同訓練や共同での能力構築支援など、多層的な防衛協力を引き続き活発に行っていくことで一致した。特に2023年2月の会談では、日豪陸軍種防衛協力のロードマップへの署名を果たした。

また、陸自は、各種の共同訓練の一環として、陸自特殊作戦群と豪陸軍特殊作戦コマンドとの実動訓練についても継続的に実施してきた。最高度の練度を保持した部隊同士が交流できる段階まで陸軍種間協力が発展・深化したことの象徴であり、日豪の一層の連携強化に寄与してきた。さらに2022年4月には、陸自初となる豪陸軍への連絡官派遣を行い、人的交流を通じた相互理解の強化及び相互運用性の深化を推進している。

同年5月、海幕長は、豪海軍主催のインド太平洋シーパワー会議に参加した。会議では、インド太平洋地域の安全保障上の課題について意見を交換し、今後の連携の強化の方向性などについて確認した。

インド太平洋シーパワー会議での海幕長(2022年5月)

インド太平洋シーパワー会議での海幕長(2022年5月)

同年9月、空幕長は、豪空軍演習(ピッチ・ブラック22)視察のため訪豪した際に、チップマン豪空軍本部長と会談を行った。会談では、日豪空軍種間の防衛協力・交流を一層強化していくことやFOIPを実現していくことなどで一致した。

参照資料42(最近の日豪防衛協力・交流の主要な実績(2019年度以降))

(4)日米豪の協力関係など

わが国とオーストラリアは、基本的価値を共有しており、インド太平洋地域及び国際社会が直面する様々な課題の解決のため、緊密に協力している。このような協力をより効果的・効率的なものとし、地域の平和と安定に貢献していくためには、日豪それぞれの同盟国である米国を含めた日米豪3か国による協力を積極的に推進することが重要である。

2022年6月、岸防衛大臣(当時)は、シンガポールにおいて、日米豪防衛相会談を実施し、インド太平洋地域の安全、安定及び繁栄を確保するために具体的、実践的な手段をとるための協力にコミットした。

また、同年10月には、浜田防衛大臣が、ハワイにおいて同年2回目となる日米豪防衛相会談に臨み、引き続き、3か国の協力を進めていくことで一致した。特に、3か国の相互運用性を向上させるため、共同訓練や活動を拡大・強化することや、防衛装備・技術協力を促進すること、情報交換を効果的に実施することを改めて確認した。

また、日米豪3か国による共同訓練及び日米豪3か国にそのほかの国も加えた多国間共同訓練も継続して行っている。

陸自は、2022年5月、豪州においてサザン・ジャッカルー22(米海兵隊及び豪陸軍との実動訓練)を実施し、相互運用性などの向上を図った。同年8月、陸幕長は、日米豪シニア・リーダーズ・セミナーに参加し、米太平洋陸軍、米太平洋海兵隊及び豪陸軍に加え、オブザーバーとして参加していた韓国陸軍のそれぞれトップとの懇談を行った。懇談では、トップ間で構築した信頼関係を基盤として、多国間協力を促進し、FOIPの実現に向けた取組を加速していくことで同意した。

海自は、インド太平洋方面派遣(IPD22)部隊が、ノーブル・パートナー22(日米豪共同訓練)に参加するとともに、日米豪に韓国やカナダを加えた多国間の枠組みで複数の訓練を実施し、戦術技量の向上及び各国海軍などとの連携強化を図った。

空自は、豪空軍が実施する豪空軍演習(ピッチ・ブラック22)に初めて参加した。本訓練に際し、空幕長は現地を訪問し、米太平洋空軍司令官や豪空軍本部長をはじめとする参加国空軍のトップとの間で共同訓練の充実や協力の更なる推進について意見交換した。また、グアムを拠点とする多国間共同訓練「コープ・ノース23」において、日米豪共同訓練及び人道支援・災害救援共同訓練を実施し、相互運用性のさらなる向上を図った。

このように、日米豪3か国間での様々な機会を通じて、情勢認識や政策の方向性をすり合わせつつ、相互運用性を高める努力を続けている。

参照資料58(多国間共同訓練の参加など(2019年度以降))

2 インド
(1)インドとの防衛協力・交流の意義

インドは、世界第2位の人口と、高い経済成長や潜在的経済力を背景に影響力を増しており、わが国と中東、アフリカを結ぶシーレーン上のほぼ中央に位置するなど、極めて重要な国である。また、インドとわが国は、基本的価値を共有するとともに、アジア及び世界の平和と安定、繁栄に共通の利益を有しており、特別戦略的グローバル・パートナーシップを構築している。このため、日印両国は「2+2」などの枠組みも活用しつつ、海洋安全保障をはじめとする幅広い分野において協力を推進している。

インドとの間では、これまで「日印間の安全保障協力に関する共同宣言」、日印防衛装備品・技術移転協定、日印秘密軍事情報保護協定、日印ACSAがそれぞれ署名され、地域やグローバルな課題に対応できるパートナーとしての関係とその基盤が強化されている。

(2)最近の主要な防衛協力・交流実績など

2022年9月、浜田防衛大臣は、シン印国防大臣と会談を行った。両大臣は、二国間の相互運用性が向上していることを歓迎し、防衛装備・技術協力について引き続き連携していくことを確認した。また、ウクライナ情勢を含む地域情勢について意見交換するとともに、防衛協力・交流を活発に進めていくことで一致した。同日、浜田防衛大臣は、東京において第2回日印「2+2」に参加し、FOIPの実現という共通の目標に向けて協力していくことを確認した。また、ASEANとの協力の重要性について議論し、引き続きASEANの一体性・中心性を支持していくことや、FOIP及びインドの「インド太平洋海洋イニシアティブ(IPOI)」と「インド太平洋に関するASEANアウトルック(AOIP:ASEAN Outlook on the Indo-Pacific)」との具体的協力の重要性を確認した。そのほか、防衛装備・技術協力分野における具体的な協力実現に向けた議論の継続、統幕とインド統合国防参謀本部の連携強化を目的とする、「統合幕僚協議」の立ち上げに向けた調整、サイバー含め経済安全保障分野における議論の強化などについて認識を共有した。

日印「2+2」(2022年9月)

日印「2+2」(2022年9月)

2023年5月、岸田内閣総理大臣は、G7広島サミットの機会にモディ首相と日印首脳会談を行い、主権、領土の一体性という国連憲章の原則を守ることの重要性、世界のどこであれ力による一方的な現状変更を許してはならないこと、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を堅持するといった点を強調し、平和の実現に向けて協力していくことで一致した。両首脳は二国間関係についても議論し、FOIPの重要性につき認識を共有するとともに、安全保障を含む様々な分野で協力を進めていくことを確認した。

(3)各軍種の取組

2022年4月、統幕長はクリシュナ印統合国防参謀本部参謀長とライシナ・ダイアローグ2022に併せて会談を行い、多角的・多層的な安全保障協力を戦略的に推進していく観点から意見交換を行った。2023年3月には、統幕長がチョーハン印国防参謀長と会談を行い、FOIP実現のため、自衛隊とインド軍の関係をさらに深化させていくことで一致した。

2022年6月、陸幕長がパンデ印陸軍参謀長とテレビ会談を行い、力による一方的な現状変更を断じて認めてはならないことで一致した。また、日印陸軍種トップ同士の強固な関係を構築することができた。なお、2023年2~3月、陸自は、日本国内において初めてとなる日印共同訓練「ダルマ・ガーディアン」を実施し、さらなる陸軍種間の連携強化を図った。

2022年7月、海幕長は、クマール印海軍参謀長とテレビ会談を行い、今後の日印海軍種間の連携強化の方向性などについて確認した。なお、2022年度内において、海自はJIMEX2022を含む計4回の日印共同訓練を実施した。

同年5月、空幕長はチョウダリ印空軍参謀長の訪日に伴い会談を実施し、日印防衛協力・交流を一層活発化させていくことで一致した。2023年1月には、日印戦闘機共同訓練「ヴィーア・ガーディアン23」、また、同年3月には日印輸送機共同訓練「シンユウ・マイトゥリ23」をそれぞれ日本国内で初めて実施した。

参照資料43(最近の日印防衛協力・交流の主要な実績(2019年度以降))

3 欧州諸国

欧州諸国は、わが国と基本的価値を共有し、また、テロ対策や「瀬取り」対応などの非伝統的安全保障分野や国際平和協力活動を中心に、グローバルな安全保障上の共通課題に取り組むための中核を担っている。そのため、これらの国と防衛協力・交流を進展させることは、わが国がこうした課題に積極的に関与する基盤を提供するものであり、わが国と欧州諸国の双方にとって重要である。

参照資料44(最近の欧州諸国との防衛協力・交流の主要な実績(2019年度以降))

(1)英国

ア 英国との防衛協力・交流の意義

英国は、欧州のみならず世界に影響力を持つ大国であるとともに、わが国と歴史的にも深い関係があり、安全保障面でも米国の重要な同盟国として戦略的利益を共有している。このような観点から、国際平和協力活動、テロ対策、海賊対処、サイバーなどのグローバルな課題における協力や地域情勢などに関する情報交換を通じ、日英間で協力を深めることは、わが国にとって非常に重要である。

英国との間では、過去4回の日英「2+2」を開催するとともに、防衛装備品・技術移転協定、日英情報保護協定、日英ACSAの締結により、日英間の戦略的パートナーシップが一層円滑・強固なものとなっている。

2022年12月には、日英伊による次期戦闘機開発に関する首脳共同声明が発表された。

また、2023年1月、岸田内閣総理大臣は、ロンドンにおいてスナク英首相との間で、日英円滑化協定に署名した。本協定により、両国部隊間の協力活動の実施が円滑化され、両国間の安全保障・防衛協力がさらに促進されるとともに、インド太平洋地域の平和と安定が強固に支えられることになる。次期戦闘機にかかる協力と日英円滑化協定の署名をはじめとする日英防衛協力の進展は、かつてなく緊密かつ強固となっている両国関係を象徴するものである。

さらに、2023年5月のG7広島サミットに出席するために来日したスナク英首相との間で行われた日英首脳ワーキング・ディナーでは、次期戦闘機の共同開発の協力機会の活用、日英円滑化協定を活用した共同演習などの拡充や相互運用性の向上、自衛隊によるアセット防護措置の適用の可能性を視野に入れた二国間活動のより高いレベルへの引き上げ、地域及び国際的な安全保障上の重要課題について協議し、対応を検討することなどを記載した共同文書「日英広島アコード」を発出した。この共同文書に基づき、両首脳は幅広い分野で日英関係を深化させていくことで一致し、欧州・アジアにおける互いに最も緊密な安全保障上のパートナーとして、安全保障・防衛協力に一層取り組んでいくことを確認した。

イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など

2022年10月には、浜田防衛大臣がウォレス英国防相とテレビ会談を実施し、日英防衛協力が陸・海・空全ての軍種において深化していることを歓迎するとともに、特に、将来の戦闘機プログラムにかかる協力の全体像の合意に向けて、協議を加速することで改めて一致した。

2023年3月には、ウォレス英国防相が来日し日英防衛相会談を実施した。浜田防衛大臣からは、新たな安保戦略などについて説明し、ウォレス英国防相から強い支持が表明された。また、浜田防衛大臣は同年3月13日(現地時間)に英国が公表した「統合的見直し」の刷新(Integrated Review Refresh 2023)の中で、インド太平洋地域への一層の関与を英国の国際政策の恒久的な柱とする方針が示されたことを歓迎した。AUKUSの取組については、英米豪間の安全保障・防衛協力の強化は、インド太平洋地域の平和と安定にとって重要であり、オーストラリアの原子力潜水艦取得も含め、わが国として支持する旨発言した。

さらに、両大臣は、日英円滑化協定の発効後、相互運用性の向上につながるさらなる協力についても検討を進めていくことで一致した。

2023年5月のG7広島サミット出席に先立ち、来日したスナク英首相は横須賀に停泊中の護衛艦「いずも」を視察し、「いずも」甲板において栄誉礼を受けるとともに、艦内の視察などを実施した。

ウ 各軍種の取組

統幕長は、2022年4月のライシナ・ダイアローグ、同年5月のNATO参謀長会議、同年6月のシャングリラ会合、同年7月のインド太平洋参謀長会議において英国防参謀長との会談を行った。会談では、ウクライナ情勢を含む安全保障環境全般について意見交換し、欧州とアジアの安全保障が不可分であるとの認識のもと、両地域の平和と安定のため、日英連携の重要性について確認した。また、共同訓練や防衛装備・技術協力といった幅広い分野における両国間の防衛協力・交流の取組をより一層深化させていくことで一致した。

同年7月、陸幕長は、英国を訪問し、クイン英国防閣外相やサンダース英陸軍参謀長などと会談を行った。また、同年11月、陸自は、日本国内においてヴィジラント・アイルズ22(令和4年度英陸軍との実動訓練)を行い、英陸軍との相互理解及び信頼関係の促進を図ることができた。英陸軍はさらに2023年1月の陸自第1空挺団が実施する降下訓練始めにも初めて参加している。

2022年5月、海幕長は、オーストラリアにおいて、キー第一海軍卿と会談を行った。会談では、日英防衛協力が「新たな段階」に入ったことを具現化し、FOIPの実現及び国際社会の平和と安定に寄与することを確認した。また、同年6月、海自は、遠洋練習航海部隊の英国寄港に際し、大西洋において英海軍との共同訓練を実施した。

同年4月、空幕長は、米国において行われた宇宙シンポジウムに際し、スマイス英宇宙局長(当時)との会談を行い、宇宙利用に関する安全保障上の課題などを共有した。また、宇宙領域における日英協力を一層強化していくことで一致した。

また、同年7月、空幕長は英国において行われた英国際航空宇宙軍参謀長等会議などに際し、クイン英国防閣外相(当時)、ラダキン英国防参謀長、ウィグストン英空軍参謀長(当時)などと会談を行い、地域情勢、防衛政策及び防衛協力・交流などについて意見交換した。2023年3月には空幕長とウィグストン英空軍参謀長(当時)は日英宇宙幕僚協議にかかる覚書に署名した。

(2)フランス

ア フランスとの防衛協力・交流の意義

フランスは、欧州やアフリカのみならず、世界に影響力を持つ大国であるとともに、インド洋及び太平洋島嶼部に領土を保有し、インド太平洋地域に常続的な軍事プレゼンスを有する唯一のEU加盟国であり、わが国と歴史的にも深い関係を持つ特別なパートナーである。

フランスとは、これまで日仏「2+2」などのハイレベル交流を継続的に実施し、日仏情報保護協定、日仏防衛装備品・技術移転協定及び日仏ACSAが締結されている。

イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など

2023年1月、岸田内閣総理大臣は、パリにおいてマクロン大統領との間で日仏首脳会談を実施し、日本の新たな国家安全保障戦略について説明の上、同志国である日仏が連携を一層強化していきたい旨述べ、マクロン大統領から理解を得たほか、岸田内閣総理大臣から、欧州とインド太平洋の安全保障は不可分であり、両国のアセットの往来や日仏共同訓練など、実質的な協力が進展していることを歓迎する旨述べ、マクロン大統領からは、フランスにおける戦略の見直しに言及があり、両国の連携を深めていきたい旨の発言があった。2023年5月、第7回日仏「2+2」を実施し、インド太平洋地域における寄港や二国間及び多国間での共同訓練を通じた自衛隊とフランス軍との間の運用面での交流が定期的、かつ、質の高いものであることを歓迎した。また、同月、G7広島サミットの機会に開催された日仏首脳会談では、サイバーや宇宙分野などでの連携、共同訓練などの具体的協力を進展させることで一致するとともに、東アジア情勢について、中国をめぐる諸課題への対応、核・ミサイル問題、拉致問題を含む北朝鮮への対応において引き続き連携していくことを確認した。

ウ 各軍種の取組

2022年5月、統幕長は、フランスにおいてビュルカール・フランス統合参謀総長と会談を行った。会談では、ウクライナを含む地域情勢、インド太平洋地域への関与などについて意見交換し、幅広い分野における防衛協力・交流を推進していくことで一致した。自衛隊は、同年5月以降、「MARARA22」及び「赤道22」において人道支援・災害救援(HA/DR)にかかる訓練を実施し、参加国との相互理解の増進及び信頼関係の強化を図った。

統幕長と仏統合参謀総長との会談(2022年5月)

統幕長と仏統合参謀総長との会談(2022年5月)

同年9月、海幕長は、ヴァンディエ・フランス海軍参謀長とテレビ会談を行った。インド太平洋地域にも海外領土を有するフランスと同地域の安全保障上の課題について意見交換し、今後の連携の強化の方向性などについて確認した。

また、海自は、同年5月以降、フランス領ポリネシア及びニューカレドニアに駐留するフランス軍と、オグリ・ヴェルニー22及びラ・ペルーズ22といった共同訓練を実施した。また、2023年3月には、ラ・ペルーズ23を実施した。

空幕長は、米国で開催された宇宙シンポジウムなどに参加し、ミル・フランス航空宇宙軍参謀長及びフリードリング・フランス宇宙コマンド司令官(当時)と会談した。会談では、地域情勢及び空・宇宙軍種間における防衛協力・交流の方向性などに関して共有し、より一層推進することで一致した。

(3)ドイツ

ア ドイツとの防衛協力・交流の意義

ドイツは、わが国と基本的価値を共有し、G7などにおいて国際社会の問題に対し協調して取り組むパートナーであり、2020年に策定された「インド太平洋ガイドライン」に基づき、インド太平洋地域への関与を強めている。ドイツとの間では、日独防衛装備品・技術移転協定、日独情報保護協定が締結されている。また、日独「2+2」が開催されるなど、ハイレベルを含む交流が進展している。

イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など

2022年11月、第2回日独「2+2」が実施され、FOIPの実現に向けた協力の強化及び経済安全保障を含む、日独安全保障・防衛協力の深化に向けた具体的取組の推進で一致した。また、日NATO間の協力強化や日EU間の安全保障・防衛協力の発展の重要性について一致した。

2023年3月、浜田防衛大臣は、ドイツの国防大臣として約16年ぶりに来日したピストリウス・ドイツ国防大臣と日独防衛相会談を実施した。会談では、ドイツ軍のインド太平洋地域へのさらなる展開及びその際の日独共同訓練や部隊間交流などの実現に向け、緊密に連携していくことで一致した。また、自衛隊とドイツ軍の共同活動を促進するための法的枠組みの整備を目指すことや、防衛装備・技術協力を深めていくことでも一致した。

日独防衛相会談(2023年3月)

日独防衛相会談(2023年3月)

2023年5月、岸田内閣総理大臣は、G7広島サミットの機会にショルツ・ドイツ首相と会談を行い、東アジア情勢について、中国をめぐる諸課題への対応、核・ミサイル問題、拉致問題を含む北朝鮮への対応において、引き続き連携していくことを確認した。

ウ 各軍種の取組

2022年5月、統幕長は、ベルギーにおいて開催されたNATO参謀長会議に際して、ツォルン独連邦軍総監(当時)と会談を行った。会談では、FOIP実現のため、フリゲート艦「バイエルン」の日本への派遣に引き続き、インド太平洋地域に関与するドイツ軍とさらなる防衛協力・交流を進めていくことについて、意見交換した。また、2023年3月、統幕長はドイツを公式訪問し、ツォルン独連邦軍総監(当時)との会談において、ルールに基づく国際秩序を守るため、日独をはじめとする同志国の連携が不可欠であることを確認した。

2022年7月、陸幕長はドイツを訪問し、マイス・ドイツ陸軍総監と懇談するとともに試験・試行部隊を訪問した。懇談においては、信頼関係強化のため、引き続き、ハイレベル交流や専門分野における人材交流などの多層的な交流について具体的な調整を進めていくことで合意した。また、部隊訪問においては、デジタル化された最新の戦い方に関する試験について、ドイツ陸軍の取組を把握することができた。

同年6月、海幕長は、カーク・ドイツ海軍総監とテレビ会談を行った。両国が抱える安全保障上の課題について意見交換し、今後の連携強化の方向性などについて確認した。

同年9月、ゲルハルツ・ドイツ空軍総監が自らドイツ空軍戦闘機ユーロファイターを操縦して来日した。その際、日独戦闘機による共同飛行を行うなど連携強化を図った。また、同年6月のテレビ会談や2023年3月の会談において、FOIPの実現に向けて一層緊密に連携していくことで一致した。

(4)イタリア

ア イタリアとの防衛協力・交流の意義

日伊両国はともにG7の一員であり、基本的価値を共有する戦略的パートナーである。イタリアとの間では、日伊情報保護協定及び日伊防衛装備品・技術移転協定の締結、日伊防衛協力・交流に関する覚書への署名など、防衛協力を行っていくうえでの制度面の整備が進んでいる。

イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など

2022年4月、岸防衛大臣(当時)は、グエリーニ・イタリア国防相(当時)と会談を行った。両大臣は、地域情勢について力による一方的な現状変更の試みに強く反対するとともに、国際法を遵守していくことが重要であるとのメッセージを発信し、共に自由、民主主義、人権、法の支配といった基本的価値を強く推進することが重要であるとの認識で一致した。

同年11月、浜田防衛大臣は、クロセット・イタリア国防相と電話会談を行った。両大臣は、今後も、防衛当局間のコミュニケーションを継続することを確認した。また、次期戦闘機にかかる協力について、検討作業を加速させることで一致し、FOIPの実現に向け、両国の防衛協力を一層進展させていくことを確認した。

これらの会談を踏まえ、同年12月、日英伊による次期戦闘機開発に関する首脳共同声明が発表された。

2023年1月、岸田内閣総理大臣は、ローマにおいてメローニ首相との間で日伊首脳会談を実施し、日英伊3か国による次期戦闘機共同開発合意を歓迎し、また、日伊関係を「戦略的パートナー」に格上げすることで一致したほか、岸田内閣総理大臣から、新たな国家安全保障戦略について説明し、同志国である日本とイタリアが連携を一層強化していきたい旨述べ、メローニ首相から理解と歓迎を得た。両首脳は、外務・防衛当局間の協議を立上げ、安全保障分野での連携を更に推進することで一致した。2023年2月には、鈴木事務次官がクロセット・イタリア国防相を表敬したほか、同年3月には、クロセット・イタリア国防相の来日に際して日伊防衛相会談を実施し、さらなる防衛協力・交流を進めていくことを確認した。

鈴木事務次官によるクロセット・イタリア国防大臣への表敬

鈴木事務次官によるクロセット・イタリア国防大臣への表敬

2023年5月、岸田内閣総理大臣は、G7広島サミットに際し、メローニ・イタリア首相と会談を行い、外務防衛当局間協議を通じ、具体的協力について議論を深化させることで一致するとともに、東アジア情勢について、中国をめぐる諸課題への対応、核・ミサイル問題、拉致問題を含む北朝鮮への対応において、引き続き連携していくことを確認した。

ウ 各軍種の取組

2022年10月、海幕長は、イタリアにおいて開催されたイタリア海軍主催地域シーパワー・シンポジウムに際し、クレデンディノ・イタリア海軍参謀長と懇談を行った。両国が抱える安全保障上の課題について意見交換し、今後の連携強化の方向性などについて合意した。

同年11月、空自は、国外運航訓練として初めてKC-767空中給油・輸送機をイタリアに寄航させ、プラティカ・ディ・マーレ空軍基地においてイタリア空軍の空中給油部隊と部隊間交流を実施した。2023年3月、空幕長は、ゴレッティ・イタリア空軍参謀長と会談を行い、幅広い分野、各レベルにおいて日伊空軍種間の防衛協力・交流の実施を確認した。

(5)オランダ

ア オランダとの防衛協力・交流の意義

オランダは、わが国と400年以上の歴史的関係を有し、基本的価値を共有する戦略的パートナーである。オランダとの間では、2016年12月にヘニス・オランダ国防大臣(当時)が訪日し、日蘭防衛相会談に際して防衛協力・交流の覚書の署名が行われた。

イ 各軍種の取組

2022年5月以降、統幕長は、エイヘルセイム・オランダ軍参謀総長と2回にわたる会談を行った。会談では、国際社会の平和と安定及びFOIP実現のため、日蘭の防衛協力・交流を引き続き推進することで一致した。また、オランダのインド太平洋地域への継続的な関与などについて確認した。

同年10月、海幕長は、イタリアにおいてタス・オランダ海軍司令官との懇談を行った。インド太平洋地域の安全保障上の課題について意見交換し、今後の日蘭の関係強化の方向性などについて確認した。

同年7月以降、空幕長は、ラウト・オランダ空軍司令官(当時)と2回にわたる会談を行い、日蘭空軍種間の防衛協力・交流を進展させていることを確認した。

(6)スペイン

ア スペインとの防衛協力・交流の意義

スペインは、わが国と基本的価値を共有する戦略的パートナーである。2014年11月に署名された防衛協力・交流に関する覚書に基づき、防衛当局間の関係をさらに強化することで一致している。2022年3月には、防衛駐在官を新規派遣した。

イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など

2022年6月、海自練習艦がスペイン海軍との共同訓練を実施し、相互理解の推進を図った。また、同年、海自の派遣海賊対処行動水上部隊及び航空部隊は、アデン湾においてそれぞれスペイン海軍及び空軍(EU海上部隊)と共同訓練を実施し、連携の強化を図った。

(7)NATO

ア NATOとの防衛協力・交流の意義

NATOはわが国と基本的価値とグローバルな安全保障上の課題に対する責任を共有するパートナーである。2014年には、「日・NATO国別パートナーシップ協力計画」(IPCP:Individual Partnership and Cooperation Programme between Japan and NATO)3に署名した(2018、2020年改訂)。この計画に基づき、2014年以降、女性・平和・安全保障分野における日NATO協力として、初めてNATO本部に女性自衛官を派遣するとともに、「ジェンダー視点のNATO委員会(NCGP:NATO Committee on Gender Perspectives)年次会合」に防衛省・自衛隊から参加している。現在は、国際機関/NGO協力幕僚として、自衛官をNATO本部軍事幕僚部協調的安全保障局(NHQIMSCS:NATO Headquarters International Military Staff, Cooperative Security Division)に派遣し、NATOと国連、アフリカ連合(AU:African Union)、欧州安全保障協力機構(OSCE:Organization for Security and Co-operation in Europe)、NGOなどとの協力案件の調整業務に携わっている。

さらに防衛省は、欧州連合軍最高司令部(SHAPE:Supreme Headquarters Allied Powers Europe)及びNATO海上司令部(MARCOM:NATO Allied Maritime Command)にそれぞれ連絡官を派遣している。

2018年、在ベルギー日本国大使館が兼轄する形で、NATO日本政府代表部が開設された。

2022年4月には、NATOサイバー防衛協力センター(CCDCOE:NATO Cooperative Cyber Defence Centre of Excellence)主催のサイバー防衛演習「ロックド・シールズ2022」に英国と合同チームを編成し、参加した。同年10月、CCDCOEの活動への参加にかかる手続が完了し、防衛省は正式にCCDCOEの活動に参加することとなった。

同年6月、岸田内閣総理大臣は、わが国の内閣総理大臣として初めてNATO首脳会合に参加し、日NATO間の協力文書を大幅にアップグレードする作業を加速化することにより、サイバー、新興技術、海洋安全保障といった分野での協力を進めていく方針について述べた。

2023年1月、岸田内閣総理大臣は、訪日中のストルテンベルグ事務総長と会談し、NATO参謀長会合への日本の定期的な参加の意向を伝えるとともに、日NATO間の緊密な意思疎通を推進していくことを確認した。

NATO事務総長による入間基地訪問(2023年1月)

NATO事務総長による入間基地訪問(2023年1月)

動画アイコンQRコード動画:NATO及び欧州諸国等との緊密な連携
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イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など

2022年6月、岸防衛大臣(当時)は、バウアーNATO軍事委員長の表敬を受け、厳しい安全保障環境の中、日NATOの緊密な連携の重要性について認識を共有した。

同年6月、海自練習艦がNATO常設海上部隊と共同訓練を実施し、連携の強化を図った。

ウ 各軍種の取組

2022年5月、統幕長は、統幕長として初めてNATO軍事委員会が開催するNATO参謀長会議「アジア太平洋セッション」にアジア太平洋パートナーとして参加し、NATO加盟各国との相互理解を促進することができた。また、NATO加盟国の参謀総長との二国間会談を行い、今後の防衛協力・交流など、幅広い分野について意見交換した。また、同年6月及び7月、統幕長は、バウアーNATO軍事委員長と会談し、日本とNATOがより一層緊密に連携していくことを確認した。

NATO参謀長会議(2022年5月)

NATO参謀長会議(2022年5月)

同年7月、空幕長は、NATO本部を訪問し、バウアーNATO軍事委員長との会談を行ったほか、空幕長として初めてNATO軍事委員会に出席した。会談では、一層厳しさを増す安全保障環境について意見を交換し、日本とNATOがFOIPの実現に向け連携を強化していくことの重要性について一致した。

また、NATO軍事委員会ではインド太平洋の安全保障環境に関するブリーフィングを行い、ルールに基づく国際秩序に対する挑戦が国際社会共通の課題である旨を述べた。2023年1月には、NATO事務総長が空自入間基地を訪問し、日NATO間で緊密に連携していくことを確認した。

(8)EU

ア EUとの防衛協力・交流の意義

自由・民主主義・法の支配といった基本的価値を共有するEUとの間では、2019年の「日EU戦略的パートナーシップ協定」の暫定適用開始以降、安全保障・防衛分野における協力を着実に発展させてきている。2021年には、「インド太平洋戦略に関する共同コミュニケーション」、2022年3月には、パートナー国との海軍演習や寄港・哨戒の頻度を向上させる方針を盛り込んだ「戦略的コンパス」が発表されるなど、EUのインド太平洋地域への関与が強化されている中、防衛省・自衛隊は、同地域へのEUのコミットメントが不可逆的なものになるよう、積極的かつ主体的に協力を進めている。

イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など

2022年5月、統幕長は、ベルギーにおいて開催されたNATO参謀長会議に際し、ブリーガーEU軍事委員長との会談を行った。

2023年3月、井野防衛副大臣は、EUとして初の開催となる「シューマン安全保障・防衛フォーラム」に出席した。全体会合においては、パネリストとして登壇し、欧州とインド太平洋の安全保障はもはや不可分であるとの認識のもと、EUとの安全保障・防衛分野における連携を強化していきたい旨述べた。

シューマン安全保障・防衛フォーラムに参加する井野防衛副大臣(2023年3月)

シューマン安全保障・防衛フォーラムに参加する井野防衛副大臣(2023年3月)

4 韓国
(1)韓国との防衛協力・交流の意義

北朝鮮の核・ミサイル問題をはじめ、テロ対策や、大規模自然災害への対応、海賊対処、海洋安全保障など、日韓両国を取り巻く安全保障環境が厳しさと複雑さを増す中、日韓の連携は益々重要となっている。

2023年3月、岸田内閣総理大臣は、東京において尹錫悦(ユン・ソンニョル)韓国大統領と日韓首脳会談を開催した。両首脳は、現下の戦略環境の中で日韓関係の強化は急務であり、国交正常化以来の友好協力関係の基盤に基づき、関係をさらに発展させていくことで一致した。また、日韓両国が共に裨益するような協力を進めるべく、政治・経済・文化など多岐にわたる分野で政府間の意思疎通を活発化していくこととし、具体的には日韓安全保障対話などを早期に再開することで一致した。さらに、北朝鮮による核・ミサイルの活動の活発化を踏まえ、日韓、日米韓の安保協力を推進していくことの重要性で一致した。

また、同年5月、両首脳は、ソウルにおいて日韓首脳会談を行い、3月の会談で示した方向性に沿って、日韓安全保障対話の再開など、多岐にわたる分野において両政府間の対話と協力が動き出していることを歓迎するとともに、日韓、日米韓の安全保障協力により抑止力・対処力を強化することの重要性について一致した。

さらに、同月、両首脳は、G7広島サミットに際して日韓首脳会談を行い、経済・安全保障分野を含む政府間の対話と協力の進展を改めて評価し、北朝鮮への対応に関して、引き続き日韓、日米韓で緊密に連携することを確認した。また、FOIPの実現に向けた協力を進めていくことも確認した。

現在、日韓防衛当局間には、2018年12月の韓国海軍駆逐艦による自衛隊機への火器管制レーダー照射事案4をはじめとする課題があるが、最近の日韓関係を一層発展させていく大きな流れの中で、防衛省・自衛隊としては、防衛当局間の懸案の解決のため、韓国側と緊密に意思疎通を図っていく。

(2)最近の主要な防衛協力・交流実績など

2022年9月、岡防衛審議官は、ソウルにおいて開催されたソウル・ディフェンス・ダイアログに際し、申範澈(シン・ボムチョル)国防部次官と6年ぶりとなる日韓次官級協議を行った。協議では、北朝鮮の核・ミサイルをめぐる状況を含め、日韓両国を取り巻く安全保障環境が厳しさと複雑さを増す中、日韓、日米韓の連携がますます重要であることを確認した。また、北朝鮮の課題に対応するための3か国協力を推進していくことを確認した。その上で、日韓防衛当局間で引き続き意思疎通を図っていくことで一致した。

同年11月、わが国が主催する国際観艦式に、韓国海軍の補給艦「昭陽(ソヤン)」が参加した。海自は、今般の国際観艦式を通じて、韓国を含む参加国海軍種間の信頼醸成や友好親善の増進を図った。

2023年3月の岸田内閣総理大臣と尹韓国大統領の日韓首脳会談において、両首脳が日韓安全保障対話などの早期再開で一致したことを受け、同年4月、日韓安全保障対話が約5年ぶりに実施された。本対話では、北朝鮮への対応やインド太平洋における協力を含む日韓、日米韓協力の強化などについて意見交換を行い、日韓安保・防衛協力の強化に向けて緊密に意思疎通をしていくことで一致した。

(3)日米韓の協力関係

2022年6月、岸防衛大臣(当時)は、シンガポールにおいて実施されたシャングリラ会合に際して李鍾燮(イ・ジョンソプ)韓国国防部長官及びオースティン米国防長官と日米韓防衛相会談を開催した。会談では、朝鮮半島の完全な非核化及び恒久的な平和の確立に向け密接に協力することや北朝鮮による大量破壊兵器及び弾道ミサイル開発への深い懸念を共有することなどが議論された。また、3か国によるミサイル警戒及び弾道ミサイル探知・追尾訓練の実施及び北朝鮮による弾道ミサイル発射に対処するための活動の具体化など、地域における各国間の信頼醸成の重要性について認識を共有した。さらに、FOIPを実現するため、情報共有、ハイレベル政策協議、共同訓練を含む重要課題における協力深化の重要性などについて同意した。

日米韓防衛相会談(2022年6月)

日米韓防衛相会談(2022年6月)

同年11月、岸田内閣総理大臣は、プノンペンにおいて、日米韓首脳会談を開催した。会談では、北朝鮮による前例のない頻度と態様での挑発行為が続き、さらなる挑発も想定される中、日米、日韓、日米韓での連携はますます重要であるとの認識を共有した。その上で、日米韓安保協力をはじめとする地域の抑止力強化を含め、毅然とした対応を行っていくことで一致した。加えて、北朝鮮のミサイル警戒データをリアルタイムで共有する意図を有することを表明した。

2023年4月には、米国において第13回日米韓防衛実務者協議を実施した。協議では、北朝鮮のミサイル警戒データのリアルタイム共有に関する2022年11月の日米韓首脳会合の表明を踏まえて、日米韓防衛当局間情報共有取決め(TISA:Trilateral Information Sharing Arrangement)を含む既存の情報枠組みを十分に活用するよう現在進行中の作業を再確認した。また、朝鮮半島及び地域の安全保障環境に関して意見交換したほか、北朝鮮による核及びミサイルの脅威を抑止し対応するためのミサイル防衛訓練及び対潜水艦訓練の定例化、海上阻止及び海賊対処訓練を含む3か国訓練の再開を含め、日米韓安全保障協力を深化させるための具体的な方法について協議した。

2023年5月には、岸田内閣総理大臣は、G7広島サミットのために訪日中のバイデン米大統領及び尹韓国大統領と短時間の意見交換を行った。その中で、それぞれ強化された二国間関係を土台として、日米韓連携を新たな高みに引き上げることで一致した。また、北朝鮮への対応とともに、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持のためにも、日米韓3か国の戦略的連携を一層強化することで一致した。その上で、北朝鮮のミサイル警戒データのリアルタイム共有を含む日米韓安全保障協力、インド太平洋に関する協議の強化、経済安全保障、太平洋島嶼国への関与など、様々な分野で3か国間の具体的協力を前進させることで一致した。

(4)各軍種の取組

2022年8月、陸幕長は、日米豪シニア・リーダーズ・セミナーに際し、オブザーバーとして参加していた朴正煥(パク・ジョンファン)韓国陸軍参謀長も含め、インド太平洋地域の戦略環境について意見交換した。

海自は、同年8月、パシフィック・ドラゴン2022(日米豪韓加ミサイル警戒演習)及びパシフィック・ヴァンガード22(日米豪韓加共同訓練)、9月には日米韓共同訓練を実施し、戦術技量の向上及び各国海軍などとの連携強化を図った。また、同年10月、海自は、北朝鮮がわが国上空を通過させる形で弾道ミサイルを発射するなどの情勢を踏まえ、日米韓共同訓練を実施し、わが国周辺海域において弾道ミサイル情報共有訓練、日本海において各種戦術訓練を行った。これらの共同訓練は、地域の安全保障上の課題に対応するための3か国協力を推進するものである。さらに、共通の安全保障と繁栄を保護するとともに、ルールに基づく国際秩序を強化していくという日米韓3か国のコミットメントを示すものである。

参照資料58(多国間共同訓練の参加など(2019年度以降))

(5)日韓GSOMIAについて

北朝鮮を巡る情勢がさらに深刻化していることを踏まえ、北朝鮮の核・ミサイルに関する秘密情報の交換・共有のため、日韓間の協力をさらに進めるべく、2016年11月、日韓GSOMIAを締結した。これにより、日韓政府間で共有される秘密軍事情報が適切に保護される枠組みが整備された。2019年8月には、韓国政府から、この協定を終了させる旨の書面による通告があったが、同年11月、韓国政府から、同通告の効力を停止する旨の通告があった5

。そして、2023年3月に、韓国政府から終了通告を撤回し、同協定が効力を有することを確認するとの正式通報があった。

参照資料45(最近の日韓防衛協力・交流の主要な実績(2019年度以降))

5 カナダ及びニュージーランド

カナダ及びニュージーランドは、わが国と基本的価値を共有し、また、テロ対策や「瀬取り」対応などの非伝統的安全保障分野や国際平和協力活動を中心に、グローバルな安全保障上の共通課題に取り組むための中核を担っている。これらの国と防衛協力・交流を進展させることは、わが国がこうした課題に積極的に関与する基盤を提供するものであり、わが国とカナダ及びニュージーランドの双方にとって重要である。

参照資料46(最近のカナダ及びニュージーランドとの防衛協力・交流の主要な実績(2019年度以降))

(1)カナダ

ア カナダとの防衛協力・交流の意義

日カナダ両国は、共にG7に所属し、同じ太平洋国家であるとともに、基本的価値を共有する戦略的なパートナーである。2019年の防衛協力に関する共同声明や、日加ACSAの発効、2017年以降毎年実施している日加共同訓練「KAEDEX(カエデックス)」や多国間共同訓練の実施など、日加防衛当局間の関係は、ここ数年で飛躍的に深化してきた。さらに、2022年12月には防衛駐在官を新規派遣した。

イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など

2022年6月、岸防衛大臣(当時)は、シンガポールで開催されたシャングリラ会合に際し、アナンド・カナダ国防大臣と日加防衛相会談を行った。両大臣は、今般のロシアによるウクライナ侵略は、欧州のみならず、アジアを含む国際秩序の根幹を揺るがすもので、断じて認められず、基本的価値を共有する国々が、一致団結して対応することが極めて重要であるとの認識で一致した。

2023年5月、岸田内閣総理大臣は、G7広島サミットの機会にトルドー・カナダ首相と日加首脳会談を行った。会談では、東アジア情勢に関する意見交換を行い、中国をめぐる諸課題への対応や核・ミサイル問題、拉致問題を含む北朝鮮への対応において、引き続き日加で緊密に連携していくことで一致した。また、日加情報保護協定の交渉実施などをはじめとした、2022年に日加両国で発表した「FOIPに資する日加アクションプラン」の着実な進展を歓迎した。

ウ 各軍種の取組

2022年5月、統幕長は、ベルギーで開催されたNATO参謀長会議に際し、エア・カナダ軍参謀総長と会談を行った。会談では、ロシアによるウクライナ侵略を含む情勢認識などを共有するとともに、力による一方的な現状変更の試みが断じて許されない、国際社会共通の課題であることで一致した。また、同年10月、統幕長はカナダ公式訪問に際し、エア・カナダ軍参謀総長と会談を行い、FOIPの実現に向け、自衛隊とカナダ軍の防衛協力・交流をより一層深化させていくことで一致した。

統幕長によるカナダ軍参謀本部訪問(2022年10月)

統幕長によるカナダ軍参謀本部訪問(2022年10月)

同年5月、海幕長は、オーストラリアにおいてべインズ・カナダ海軍司令官(当時)と会談を行った。日加海軍種間の更なる連携強化について確認した。また、海自は、ハワイ周辺におけるパシフィック・ドラゴン2022(日米豪韓加ミサイル警戒演習)、太平洋における日加新共同訓練、グアム島及び同周辺におけるパシフィック・ヴァンガード22(日米豪韓加共同訓練)、マレーシア沖からシンガポール沖におけるKAEDEX22(日加共同訓練)、南シナ海などにおけるノーブル・レイヴン22(日米加共同訓練)やノーブル・ミスト22(日米豪加共同訓練)を実施し、連携の強化を図った。

同年4月、空幕長は米国で開催された宇宙シンポジウムに際し、マインジンガー・カナダ空軍司令官(当時)と会談を行った。また、同年9月、米国で開催された国際空軍参謀長等会同に際し、ケニー・カナダ空軍司令官と会談を行った。各会談では、カナダ空軍との宇宙分野を含めた連携強化などについて意見交換を行った。

(2)ニュージーランド

ア ニュージーランドとの防衛協力・交流の意義

戦略環境が厳しさを増すインド太平洋地域において、わが国と基本的価値を共有するニュージーランドは重要な戦略的協力パートナーである。防衛当局間においても、ハイレベル交流や共同訓練、部隊間交流などを活発に実施している。2022年3月には、防衛駐在官を新規派遣した。

2022年4月の日ニュージーランド首脳会談では、情報保護協定の正式交渉開始について両首脳が決定した旨を発表した。

イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など

2022年6月、岸防衛大臣(当時)は、シンガポールにおいて開催されたシャングリラ会合に際し、ヘナレ・ニュージーランド国防大臣(当時)と会談し、FOIPの実現に向けて、太平洋島嶼国地域における防衛協力を一層進めていくことで一致した。また、ロシアのウクライナ侵略などによって国際秩序の根幹が揺らぐ中で、両国が引き続き緊密に連携していくことを再確認した。また、東シナ海や南シナ海をめぐる情勢について、力による一方的な現状変更の試みや緊張を高めるいかなる行為にも強く反対するとの意思を改めて表明した。

ウ 各軍種の取組

2022年7月、統幕長は、オーストラリアにおいてショート・ニュージーランド国防軍司令官と会談を行った。会談では、統幕長からトンガ王国への国際緊急援助活動での自衛隊とニュージーランド軍の連携をはじめ、共同訓練や人的交流などにより関係が深化していることについて歓迎の意を表した。また、FOIPの実現のため日ニュージーランド間の連携をより一層緊密にしていく重要性について確認した。

同年6月、陸幕長は、東京において開催されたPALS22(水陸両用指揮官シンポジウム)に際し、ギルモア・ニュージーランド統合軍司令官と懇談を行い、津波などの災害派遣における水陸両用部隊の役割について、意見交換した。同じく、海幕長も懇談を行った。日ニュージーランド海軍種間の更なる連携強化について確認した。

また、同年8月、海自は、日加新共同訓練を実施し、戦術技量の向上及び参加各国との連携強化を図った。

6 北欧・バルト諸国
(1)フィンランド

ア フィンランドとの防衛協力・交流の意義

フィンランドは、基本的価値を共有する戦略的パートナーであり、2019年には、岩屋防衛大臣(当時)とニーニスト・フィンランド国防大臣(当時)との間で、日フィンランド防衛協力・交流に関する覚書への署名が行われた。

イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など

2022年10月、浜田防衛大臣は、カイッコネン・フィンランド国防大臣と会談し、ロシアのウクライナ侵略などによって国際社会が厳しい安全保障環境に直面する今こそ、国際社会が結束することが重要であることを確認した。

ウ 各軍種の取組

2022年9月、統幕長は、キヴィネン・フィンランド国防軍司令官と会談し、両国がルールに基づく国際秩序の維持に貢献するため引き続き連携していくことで一致した。

(2)スウェーデン

ア スウェーデンとの防衛協力・交流の意義

スウェーデンは基本的価値を共有するパートナーである。

イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など

2022年12月には、北欧諸国で初となる、防衛装備品・技術移転協定が署名され、発効した。

(3)デンマーク

ア デンマークとの防衛協力・交流の意義

デンマークは基本的価値を共有する戦略的パートナーである。

イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など

デンマークとの間では、2019年、河野防衛大臣(当時)は、ブラムセン・デンマーク国防大臣(当時)との間で電話会談を実施し、二国間の防衛交流や両国を取り巻く安全保障情勢などについて、意見交換などを行った。

(4)エストニア

エストニアは、基本的価値を共有するパートナーである。世界有数のIT立国として先進的な取組を行っており、防衛省・自衛隊との間でサイバー防衛分野における協力が進展している。また、国内にNATOサイバー防衛協力センター(CCDCOE)を擁すなど、日NATO協力の観点からも重要な役割を担っている。

7 中東欧諸国
(1)ウクライナ

ア ウクライナとの防衛協力・交流の意義

ウクライナは、自由、民主主義、法の支配といった基本的価値を共有するパートナーである。同国との間では、2018年、ペトレンコ国防次官(当時)が訪日し、日ウクライナ防衛協力・交流に関する覚書に署名したほか、日ウクライナ安全保障協議を開催した。

イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など

ロシアによるウクライナ侵略後、ウクライナ政府からの装備品などの提供要請を受け、2022年3月以降、防弾チョッキ、防護マスク、防護衣などの非殺傷の物資の提供を順次行っている。同月、岸防衛大臣(当時)は、レズニコフ・ウクライナ国防大臣と初めてのテレビ会談を実施した。さらに、同年4月、2回目となる日ウクライナ防衛相テレビ会談を行った。会談において、レズニコフ・ウクライナ国防大臣から、わが国の人道支援及び防衛省・自衛隊によるウクライナへの装備品などの提供について、改めて深い謝意が述べられた。岸防衛大臣(当時)からは、ロシア軍が占拠していたキーウ近郊の地域において、多数の無辜(むこ)の民間人が殺害されるといった残虐な行為が明らかになったことを受け、このような行為は重大な国際人道法違反であり、断じて許すことはできず、厳しく非難するとともに、ロシアは責任を問われなければならない旨述べた。2022年2月に開始されたロシアによるウクライナ侵略は、明らかにウクライナの主権及び領土一体性を侵害し、武力の行使を禁ずる国際法と国連憲章の深刻な違反であるとともに、このような力による一方的な現状変更は、国際秩序の根幹を揺るがすものであり、決して認められない旨改めて伝達した。

日ウクライナ防衛相テレビ会談(2022年4月)

日ウクライナ防衛相テレビ会談(2022年4月)

また、2023年5月、岸田内閣総理大臣は、G7広島サミットに出席するため訪日していたゼレンスキー・ウクライナ大統領と日ウクライナ首脳会談を実施し、ウクライナ側の要請を踏まえ、新たに100台規模のトラックなどの自衛隊車両及び約3万食の非常用糧食を提供すること及びウクライナ負傷兵を自衛隊中央病院に受け入れることを決定した旨伝達し、ゼレンスキー・ウクライナ大統領からは、感謝の意が述べられた。同月、ウクライナからの要請に基づき、費用を原則日本側が負担するかたちで、下腿切断(膝から下の足が切断された状態)のウクライナ負傷兵2名を自衛隊中央病院に受け入れ、必要なリハビリ治療を実施する旨公表した。

ウ その他

2022年4月、総理特使たる林外務大臣のポーランド訪問の復路運航において、日本への避難を希望するものの、自力での渡航手段の確保が困難なウクライナ避難民20名を政府専用機に同乗させた。加えて同月、「ウクライナ被災民救援国際平和協力業務実施計画」が閣議決定され、同年5月から国連難民高等弁務官事務所(UNHCR:Office of the United Nations High Commissioner for Refugees)がドバイに備蓄している人道救援物資を、自衛隊機によりポーランド及びルーマニアへ輸送した。

2023年3月、岸田内閣総理大臣は、ロシアによるウクライナ侵略後初めてウクライナを訪問し、キーウにおいて、ゼレンスキー・ウクライナ大統領と首脳会談を行った。首脳会談では、岸田内閣総理大臣から、祖国と自由を守るために立ち上がっているウクライナ国民の勇気と忍耐に敬意を表し、わが国が議長国を務めるG7広島サミットにおいて、法の支配に基づく国際秩序を守り抜くという決意を示したい旨述べた。ゼレンスキー・ウクライナ大統領からは、岸田内閣総理大臣のウクライナ訪問を心から歓迎するとともに、ロシアによるウクライナ侵略に対する日本の立場への謝意が示され、わが国とさらに協力を進めていきたい旨述べられた。また、情報保護協定の締結に向けた調整開始について、両首脳が合意した。

岸田内閣総理大臣によるブチャでの献花(2023年3月)【首相官邸HP】

岸田内閣総理大臣によるブチャでの献花(2023年3月)【首相官邸HP】

参照IV部1章3節3項1(8)(ウクライナ)3節2項(国連平和維持活動などへの取組)

(2)ポーランド

ア ポーランドとの防衛協力・交流の意義

ポーランドは、基本的価値を共有する戦略的パートナーである。同国との間では、「戦略的パートナーシップに関する行動計画」に基づき、政治・安全保障の分野を含めた協力が進められている。2022年2月には、日ポーランド防衛協力・交流に関する覚書が署名された。また、新たに策定された防衛戦略においては、ポーランドを含む中東欧諸国との連携を強化していくことが明記された。

イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など

2022年5月、統幕長は、ベルギーにおいて開催されたNATO参謀長会議に際し、アンジェイチャク・ポーランド軍参謀総長との会談を行った。会談では、ウクライナへの人道支援物資輸送における、輸送機の受け入れに対して謝意を伝えるとともに、ロシアによるウクライナ侵略を中心に意見交換し、力による一方的な現状変更の試みが断じて許されない、国際社会共通の課題であることで一致した。また、2023年2月、統幕長はポーランドを公式訪問し、アンジェイチャク・ポーランド軍参謀総長との会談において、日ポーランドの防衛協力・交流をより一層強化することで一致した。

(3)チェコ

ア チェコとの防衛協力・交流の意義

チェコは、基本的価値を共有する戦略的パートナーである。2017年には中東欧諸国との間では初となる防衛協力・交流に関する覚書が署名されており、新たに策定された防衛戦略においては、チェコを含む中東欧諸国との連携を強化していくことが明記された。

イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など

2023年1月、井野防衛副大臣は防衛副大臣としては初めてチェコを訪問し、シュルツ第一国防副大臣との会談などを行った。会談では、ウクライナ情勢を含む地域情勢のほか、両国の防衛協力・交流について意見交換を行い、引き続き緊密に連携していくことで一致した。

8 東南アジア(ASEAN)諸国
(1)ASEAN諸国との防衛協力・交流の意義

ASEAN(Association of Southeast Asian Nations)諸国は、高い経済成長を続けるなど、成長センターとしての高い潜在性を有している。また、ASEAN諸国は、わが国のシーレーンの要衝を占めるなど戦略的に重要な地域に位置し、わが国及び地域全体の平和と繁栄の確保に重要な役割を果たしている。

こうしたASEAN諸国の重要性を踏まえれば、防衛省・自衛隊が、地域協力の要となるASEANの中心性・一体性・強靱性の強化を支援しつつ、ASEAN諸国それぞれとの間で防衛協力・交流を強化することは、FOIP実現において大きな意義を有する。また、わが国にとって望ましい安全保障環境を創出することにつながるものである。

わが国は、このような考えに基づき、ASEAN諸国との間では、ハイレベル・実務レベル交流を通じた信頼醸成及び相互理解の促進を行うとともに、能力構築支援、共同訓練、防衛装備・技術協力などを推進している。また、二国間協力に加え、拡大ASEAN国防相会議(ADMMプラス:ASEAN Defence Ministers' Meeting-Plus)やASEAN地域フォーラム(ARF:ASEAN Regional Forum)といった多国間の枠組みでの協力も実施している。わが国が2016年に日ASEAN防衛協力の指針として表明した「ビエンチャン・ビジョン」は、ASEAN全体への防衛協力の方向性について、透明性をもって重点分野の全体像を初めて示したものであった。また、2019年、タイで開催された第5回日ASEAN防衛担当大臣会合において、河野防衛大臣(当時)は「ビエンチャン・ビジョン」のアップデート版である「ビエンチャン・ビジョン2.0」を発表し、ASEAN各国の大臣から歓迎の意が示された。防衛省としては、こうした二国間・多国間の協力を今後も積極的に推進する考えである。

参照本節3項(多国間における安全保障協力の推進)本節5項(能力構築支援への積極的かつ戦略的な取組)資料47(最近のASEAN諸国との防衛協力・交流の主要な実績(2019年度以降))資料57(ビエンチャン・ビジョン2.0)

(2)インドネシア

ア インドネシアとの防衛協力・交流の意義

インドネシアとの間では、2015年3月の日インドネシア首脳会談において、安倍内閣総理大臣(当時)とジョコ大統領は、海洋と民主主義に支えられた戦略的パートナーシップの強化で一致し、日インドネシア「2+2」を開催することについて再確認しており、様々なレベルと分野で防衛協力・交流が活発に行われている。

また、2023年5月、岸田内閣総理大臣は、G7広島サミットに出席するため訪日したジョコ大統領と首脳会談を行い、岸田内閣総理大臣より、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を守っていくことの重要性に言及し、ジョコ大統領より同意する旨発言があった。

イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など

2022年6月、岸防衛大臣(当時)は、カンボジアで実施された日ASEAN防衛担当大臣会合に参加した際、プラボウォ国防大臣と会談を行った。会談において両大臣は、ロシアのウクライナ侵略によって国際秩序の根幹が揺らぐ中で、両国が引き続き緊密に連携していくことを再確認した。

ウ 各軍種の取組

2022年7月、統幕長は、オーストラリアで実施されたインド太平洋参謀長会議に参加した際、アンディカ国軍司令官(当時)と会談を行った。会談では、共に海洋国家である両国が、地域の平和と繁栄を支える自由で開かれた海洋秩序を維持し、FOIP実現のため、防衛協力・交流を一層進展させる重要性について確認した。

同年8月、陸幕長は、インドネシア陸軍の公式招待を受けて、ドゥドゥン・インドネシア陸軍参謀長と懇談し、両国の地政学的共通点について認識を共有するとともに、インドネシア陸軍とハイレベル交流、共同訓練などを多層的に実施し、陸軍種間における防衛協力・交流をさらに深化させていくことで合意した。陸自は、同年7~8月、ガルーダ・シールド22(米尼陸軍との実動訓練)に初めて参加した。さらに、同年8月から10月にかけて、国連三角パートナーシップ・プログラム(UNTPP:United Nations Triangular Partnership Programme)の一環として、インドネシアの工兵要員を対象とした重機の操作訓練に、陸上自衛官26名を派遣し、PKOにおけるインフラ整備、宿営地の造成などに必要な知識及び技能の修得に寄与した。

同年5月、海幕長は、オーストラリアにおいてマルゴノ海軍参謀長(当時)と懇談し、今後の連携の強化の方向性などについて確認した。2023年2月、海自は、インドネシア海軍との親善訓練を行った。

2022年12月、空幕長は、ファジャル・インドネシア空軍参謀長と会談を行った。会談では、ASEANの「インド太平洋に関するASEANアウトルック」(AOIP)とわが国のFOIPは、多くの本質的な共通点を有しており、それぞれの実現に向けて協力可能であるとの考えを述べた。

(3)ベトナム

ア ベトナムとの防衛協力・交流の意義

南シナ海の沿岸国であるベトナムとの間では、防衛当局間の協力・交流が進展している。2021年の防衛相会談を契機に、日越二国間だけではなく、地域や国際社会の平和と安定により積極的に貢献するための「新たな段階に入った日越防衛協力」のもと、ハイレベル交流などを推進している。

また、2023年5月、岸田内閣総理大臣はG7広島サミットに参加するために訪日したチン首相と首脳会談を実施し、東シナ海・南シナ海情勢及び北朝鮮への対応における連携を確認した。

イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など

2022年6月、岸防衛大臣(当時)は、カンボジアで実施された日ASEAN防衛担当大臣会合に参加した際、ザン国防大臣と会談を行った。会談において両大臣は、能力構築支援など様々な分野において協力が進展していることを歓迎するとともに、今後も協力を継続していくことで一致した。

ウ 各軍種の取組

2022年5月、ギア人民軍副総参謀長を公式招待し、陸幕長との会談を行い、HA/DRやPKOなどの能力構築支援をはじめとした多層的な日越陸軍種防衛協力・交流を推進していくことで一致した。

同年5月、海幕長は、オーストラリアにおいてフン海軍副司令官と会談し、今後の連携の強化の方向性などについて確認した。

同年6月、空幕長は、ベトナムを公式訪問し、カー防空・空軍司令官(当時)との会談を行い、空軍種間においても各種協力をより力強く推進していくことで一致した。

(4)シンガポール

ア シンガポールとの防衛協力・交流の意義

シンガポールは2009年、東南アジア諸国の中で、わが国との間で最初に防衛交流に関する覚書に署名した国である。以後、この覚書に基づき、各種の協力関係が着実に進展している。

イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など

2022年6月、岸防衛大臣(当時)はシンガポールにおいてシャングリラ会合に参加し、ウン国防大臣と会談するとともに、改定された日星防衛交流覚書に署名した。これを契機とした両国間の防衛協力・交流の更なる進展で一致した。また、防衛装備品・技術移転協定の正式交渉開始を歓迎した。

ウ 各軍種の取組

2022年6月、統幕長は、シャングリラ会合に参加し、オン国軍司令官(当時)との会談を実施した。会談では、インド太平洋地域における情勢認識などについて意見交換し、戦略的パートナーとして、防衛協力・交流などを引き続き強化していくことを確認した。

同年5月、海幕長はオーストラリアにおいてベン海軍司令官(当時)と会談を行い、両国の今後の連携強化の方向性などについて確認した。また、同年8月、シンガポール海軍は横須賀港に寄港し、親善訓練を実施した。

同年7月、空幕長は英国においてコン空軍司令官と会談を実施した。懇談では、地域情勢に関する認識を共有したほか、双方がともに導入するF-35Bなどについて意見交換した。

(5)フィリピン

ア フィリピンとの防衛協力・交流の意義

南シナ海の沿岸国であり、米国の同盟国でもあるフィリピンとの間では、ハイレベル交流のほか、艦艇の訪問や防衛当局間協議をはじめとする実務者交流、軍種間交流が頻繁に行われている。

イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など

2022年4月、岸防衛大臣(当時)は、日比間では初めてとなる「2+2」を行い、相互訪問及び後方支援分野における物品・役務の相互提供を円滑にするための枠組みの検討などを開始することで一致した。

2023年2月、自衛隊がHA/DRに関連する活動のためにフィリピンを訪問する際の手続きを簡素化する「防衛省とフィリピン国防省との間のフィリピンにおける自衛隊の人道支援・災害救援活動に関する取決め(TOR)」が署名された。さらに、同月、浜田防衛大臣はガルベス国防大臣代行と会談を行い、自衛隊とフィリピン国軍の間の訓練などの協力をさらに強化し、円滑にするための方途の検討を継続することで一致した。

ウ 各軍種の取組

2022年7月に、統幕長は、オーストラリアにおいて実施されたインド太平洋参謀総長会議に参加し、センティーノ国軍参謀長との会談を行った。会談では、ハイレベル交流や各軍種間交流、共同訓練、また、警戒管制レーダーの輸出といった防衛装備・技術協力などの様々な分野における両国間の協力が進展していることを歓迎した。

同年4月、陸幕長はブラウナー・フィリピン陸軍司令官とのテレビ懇談を実施した。また、同年6月、陸幕長は、東京で開催した水陸両用指揮官シンポジウム(PALS22)に併せて、フィリピン海兵隊司令官との会談を実施した。さらに、フィリピン陸軍司令官及び同海兵隊司令官を公式招待し、ハイレベル交流、共同訓練、専門家交流、能力構築支援など、ハイエンドにおける協力も含む日比陸軍種間の連携をさらに強化していくことについて意見の一致を確認した。同年12月には、フィリピン陸軍司令官及びフィリピン海兵隊司令官がYS-83(日米共同方面隊指揮所演習)を視察するのに併せ、初となる日米比ハイレベル懇談を行った。懇談において、日米比のハイレベル懇談を今後定例化するとの合意、さらに、日米・米比の共同訓練に対し、相互にオブザーバーを派遣することなど、具体的な日米比の防衛協力の方向性について合意し、日米比5人の陸軍種トップ間の強固な信頼関係を構築した。

日米比ハイレベル懇談(2022年12月)

日米比ハイレベル懇談(2022年12月)

同年10月、陸自はカマンダグ22(米比海兵隊との実動訓練)に参加し、災害救助などに関する訓練を実施した。同月、工兵部隊を日本に招へいし、HA/DR分野に関する能力構築支援を実施した。今回、招へいした隊員は、2021年、ODAで人命救助システムを供与した部隊の代表者であり、器材の取扱要領にかかる練度を向上させることができた。また、人命救助システムを装備した部隊は、2023年2月にトルコ南東部で発生した地震に際し、人命救助活動のため現地に派遣されるなど、同軍に対する取組が着実に成果をあげていることが確認できた。

2022年5月、海幕長は、オーストラリアにおいてヴァレンシア海軍参謀長(当時)と会談を行い、今後の連携の強化の方向性などについて確認した。また、同年4月及び11月、海自はフィリピン海軍との親善訓練を実施、同年10月には米豪比主催共同訓練「Exercise SAMA SAMA / LUMBAS 2022」に参加した。

同年6月、空自はフィリピン空軍とフィリピン国内でドウシン・バヤニハン2-22(日比人道支援・災害救援共同訓練)を実施しHA/DRにかかる能力の向上及び連携の強化を図った。本訓練に合わせて空幕長はフィリピンを訪問し、カンラス空軍司令官(当時)との会談や共同部隊視察のほか、フィリピン空軍主催のエア・フォース・シンポジウムに参加した。同年10月からは、フィリピン空軍への航空警戒管制レーダー移転に伴うフィリピン空軍学生に対する受託教育を行った。さらに、同年12月には、東南アジア諸国への初となる空自戦闘機(F-15)のフィリピンへの派遣を実施し、相互理解の促進を図った。

(6)タイ

ア タイとの防衛協力・交流の意義

タイとの間では、早くから防衛駐在官の派遣や防衛当局間協議を開始するなど、伝統的に良好な関係のもと、長きにわたる防衛協力・交流の歴史を有している。また、防衛大学校では、1958年に初めて外国人留学生として受け入れたのがタイ人学生であり、その累計受入れ数も最多となっている。

イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など

2022年5月、岸田内閣総理大臣のタイ訪問の際に防衛装備品・技術移転協定が署名され、発効した。

ウ 各軍種の取組

2022年6月、陸幕長はPALS22(水陸両用指揮官シンポジウム)においてタイ王立海兵隊司令官と会談を行った。

同年5月、海幕長は、オーストラリアにおいてニラサマイ海軍司令官(当時)との懇談を行い、今後の連携の強化の方向性などについて確認した。

(7)カンボジア

ア カンボジアとの防衛協力・交流の意義

カンボジアは、1992年にわが国として初めて国連PKOに自衛隊を派遣した国である。また、2013年から能力構築支援を開始するなど、両国間での防衛協力・交流は着実に進展している。

イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など

2022年6月、岸防衛大臣(当時)は、カンボジアで開催された第7回日ASEAN防衛担当大臣会合に参加し、ティア・バニュ副首相兼国防大臣と会談を行った。会談において、両大臣は、ロシアのウクライナ侵略によって国際秩序の根幹が揺らぐ中で、両国が引き続き緊密に連携していくことを再確認した。

ウ 各軍種の取組

2022年6月、陸自はカンボジア王国軍PKO訓練校に対し、能力構築支援事業として隊員を派遣し、測量技術に関する教育を行った。

2023年3月、海自は、カンボジア海軍との親善訓練を実施した。

(8)ミャンマー

2021年に発生した国軍によるクーデターに対し、同年、わが国や米国を含む12か国の参謀長などの連名により、国軍及び関連する治安機関による民間人に対する軍事力の行使を非難するとともに、国軍に対して暴力を停止するよう求める声明を発出した。

(9)ラオス

2023年3月、岡防衛審議官はラオスにおいて、チャンサモーン副首相兼国防大臣を表敬し、能力構築支援事業などについて意見交換を行うとともに、今後も日ラオス防衛協力・交流を推進していくことで一致した。

陸自は、2022年度内、ラオス人民軍に対し、HA/DR分野において、計4回の能力構築支援事業を実施した。

(10)マレーシア

ア マレーシアとの防衛協力・交流の意義

南シナ海の沿岸国であるマレーシアとの間では、防衛協力・交流に関する覚書に署名済みであるほか、防衛装備品・技術移転協定が締結されている。

イ 各軍種の取組

2022年11月、陸自は、マレーシア国防省・国軍職員などに対し、能力構築支援事業としてHA/DR分野に関する知見の共有などを行った。なお、本事業はマレーシアへの災害対処能力の段階的な定着を目指して開始したものであり、防衛省・自衛隊を含む関係省庁、地方自治体と方面総監部レベルの知見の共有やハイレベルの協議を実施し、今後の事業推進を図った。

同年5月、海幕長は、オーストラリアにおいてレッザ海軍司令官(当時)との懇談を行い、今後の連携の強化の方向性などについて確認した。

2023年2月、空幕長は、オーストラリアにおいて、アスガル・マレーシア空軍司令官と会談し、相互理解及び信頼関係の強化を図るとともに、日馬空軍種間の防衛協力・交流の重要性について確認した。

(11)ブルネイ

ア 最近の主要な防衛協力・交流実績

2022年6月、岸防衛大臣(当時)は、カンボジアにおいて開催された日ASEAN防衛担当大臣会合に参加し、併せてハルビ首相府大臣との会談を実施した。両大臣は、ハイレベルを含む各種交流、寄港・寄航、共同訓練などのプログラムを通じ、今後とも両国防衛当局間の関係を一層強化していくことで一致した。また、2023年2月にはラザック国防副大臣(当時)の訪日に際し、井野防衛副大臣と会談を行い、日ブルネイ防衛協力・交流覚書に署名した。また、新たに設置される両国防衛当局次官級の「防衛政策対話」などを通じ、両国防衛当局間の関係を一層強化していくことで一致した。

イ 各軍種の取組

2022年6月、陸幕長は、PALS22に併せてブルネイ陸軍司令部参謀長との懇談を行った。

9 モンゴル
(1)モンゴルとの防衛協力・交流の意義

モンゴルとの関係は、2022年11月に「平和と繁栄のための特別な戦略的パートナーシップ」に格上げされており、防衛協力・交流についても幅広い分野で進展している。

(2)各軍種の取組

2022年7月、統幕長は、オーストラリアで開催されたインド太平洋参謀総長会議に際し、ガンゾリグ・モンゴル軍参謀総長と会談を行った。会談では、2022年で国交50周年を迎える両国の協力が、「日モンゴル防衛協力・交流覚書」に基づき着実に進展していることを歓迎するとともに、PKO分野などにおける協力及び連携を一層進めていくことを確認した。

また、能力構築支援事業については、2022年も積極的に実施した。具体的には、PKOに関する施設分野及びHA/DR(衛生)分野についての助言などを行い、日・モンゴル外交樹立50周年事業の成功に寄与した。

2022年11月、モンゴル空軍司令官初の公式訪問に際し、空幕長は、ガンバト空軍司令官との間で、日モンゴル空軍種間の防衛協力・交流に関する覚書に署名し今後の関係強化に合意した。

10 アジア諸国
(1)スリランカ

ア スリランカとの防衛協力・交流の意義

スリランカは、インド洋のシーレーン上の要衝に位置する重要国であり、近年、同国との防衛協力・交流を強化している。

イ 各軍種の取組

2022年5月、海自は、スリランカ海軍との親善訓練を実施した。また、2023年1月、米海軍とスリランカ海軍が主催する共同訓練「CARAT2023」に参加した。

(2)パキスタン

ア パキスタンとの防衛協力・交流の意義

パキスタンは、南アジア、中東、中央アジアの連接点に位置し、わが国にとって重要なシーレーンにも面しているなど、インド太平洋地域の安定にとって重要な国家である。また、同国は、伝統的にわが国と友好的な関係を有する親日国でもあり、そのような観点から、同国との防衛協力・交流を推進している。

イ 各軍種の取組

2022年5月のインド太平洋シーパワー会議2022(IP22)や同年11月のWPNSにて、海幕長は、ニヤージー海軍参謀長との会談を行い、今後の連携の強化の方向性などについて確認した。また、2023年2月、海自は、パキスタンが主催する海軍種の多国間共同訓練「アマン23」へ参加した。

(3)バングラデシュ

ア バングラデシュとの防衛協力・交流の意義

バングラデシュは、南アジア、中東、中央アジアの連接点に位置し、わが国にとって重要なシーレーンにも面しているなど、インド太平洋地域の安定にとって重要な国家である。

イ 各軍種の取組

2022年7月、統幕長は、オーストラリアで開催されたインド太平洋参謀長会議に際し、ワカル・バングラデシュ首相府軍務局首席幕僚と会談を行った。

同年5月、海幕長はIP22や同年11月のWPNSにて、イクバル・バングラデシュ海軍参謀長と会談を行った。

2023年2月、空幕長は、ハンナン・バングラデシュ空軍参謀長の初の訪日に際して会談し、空軍種間の防衛協力・交流について意見交換した。

参照資料48(最近のアジア諸国との防衛協力・交流の主要な実績(2019年度以降))

11 太平洋島嶼国
(1)太平洋島嶼国との防衛協力・交流の意義

太平洋島嶼国は、海洋国家であるわが国と法の支配に基づく自由で、開かれた、持続可能な海洋秩序の重要性についての認識を共有するとともに、わが国と歴史的にも深い関係を持つ重要な国々である。わが国としては、2021年、第9回太平洋・島サミットにおいて、菅内閣総理大臣(当時)から、わが国と太平洋島嶼国間の協力を強化する「太平洋のキズナ政策」を発表した。また、防衛戦略では、重要なパートナーとして、同盟国・同志国などとも連携して能力構築支援などの協力に取り組むこととした。なお、軍隊のみならず沿岸警備隊などを対象とすることも検討する旨明記された。

(2)最近の主要な防衛協力・交流実績など

2022年6月、岸防衛大臣(当時)は、シンガポールにおいて開催されたシャングリラ会合に際し、セルイラトゥ・フィジー共和国防衛・国家安全保障・警察大臣(当時)との会談を行った。両者は今後も両国間の防衛協力・交流を一層推進しFOIPの実現のために、緊密に連携していくことで一致した。

同年7月、岸防衛大臣(当時)は、フアカヴァメイリク・トンガ王国首相兼国防大臣とテレビ会談を行った。

(3)各軍種の取組

2022年7月、統幕長は、オーストラリアで開催されたインド太平洋参謀長会議に際し、フィエラケパ・トンガ王国軍参謀総長との会談を行った。会談では、統幕長から同年1月にトンガ王国にて発生した火山噴火による被害について、改めて心からのお見舞いを伝えた。また、同じ海洋国家としてFOIPの実現に向けて引き続き協力していくことを確認した。

同様に、統幕長はカロニワイ・フィジー国軍司令官とも会談を行った。会談では、トンガ王国への国際緊急援助活動に際し、自衛隊とフィジー軍が良好に連携できたことを高く評価するとともに、同じ海洋国家としてFOIPの実現に向けて引き続き協力していくことを確認した。

2022年6月、陸幕長は、東京において開催されたPALS22(水陸両用指揮官シンポジウム)に際し、ボサウェル・フィジー海軍支援指揮官と懇談を行い、シンポジウムを通じた多国間の協力やフィジーに対する能力構築支援などにより、日フィジー間の防衛協力・交流を深めていくことで認識を一致した。PNG及びフィジーとの間では、能力構築支援事業を実施しており、施設分野、衛生分野に加え、軍楽隊育成の分野に関する技術指導などを行い、関係強化を図っている。

海自は、2022年6~10月にかけて行われたインド太平洋方面派遣(IPD22)において、フィジー共和国海軍、トンガ王国海軍、ミクロネシア連邦国境管理・海上監視部、パラオ共和国海上保安局、ソロモン諸島海上警察、バヌアツ警察海上部隊と、それぞれ親善訓練を実施した。多国間訓練時も含め、これらの訓練に際しては、各国に寄港することにより、さらなる防衛協力・交流の推進を図った。

パラオ共和国海上保安局との親善訓練

パラオ共和国海上保安局との親善訓練

空自は、ミクロネシア連邦などにおける人道支援・災害救援共同訓練「クリスマス・ドロップ」に参加した。また、2023年1月、空自U-4多用途支援機が、国外運航訓練のためパラオ共和国に寄航した際、センゲバウ・シニョール副大統領などを招待し、機体視察会を実施した。副大統領からは、わが国のFOIPビジョンとそれに基づく取組に対して支持が表明された。

参照資料49(最近の太平洋島嶼国との防衛協力・交流の主要な実績(2019年度以降))

12 中東諸国
(1)中東諸国との防衛協力・交流の意義

中東地域の平和と安定は、シーレーンの安定的利用やエネルギー・経済の観点から、わが国を含む国際社会の平和と繁栄にとって極めて重要であることから、防衛省・自衛隊としても、同地域の国と協力関係の構築・強化を図るため、ハイレベル交流や部隊間交流を進めてきている。2023年1~5月、防衛省・自衛隊は、海自掃海母艦などによる令和4年度インド太平洋・中東方面派遣(IMED:Indo-Pacific and Middle East Deployment)を実施し、わが国が同地域の安定と繁栄に深くコミットしていくという意思を示した。

(2)アラブ首長国連邦

アラブ首長国連邦(UAE:United Arab Emirates)との間では、2018年に防衛交流に関する覚書が署名された。これ以降、防衛大臣や統幕長などによるハイレベル交流から防衛当局間協議の定期開催、空軍種間協力などを通じて、二国間防衛協力・交流を深化し続けている。

2023年5月には、中東の国との間では初めてとなる防衛装備品・技術移転協定が署名された。

(3)イスラエル

2022年8月、浜田防衛大臣は、ガンツ・イスラエル副首相兼国防大臣(当時)の訪日に際して会談を行い、「日本国防衛省とイスラエル国防省との間の防衛交流に関する覚書」の改訂版に署名した。また、両大臣は、防衛装備・技術協力や軍種間協力を含む両国間の防衛協力・交流を引き続き強化していくことで一致した。

同年7月、空幕長は、英国において開催された英国際航空宇宙軍参謀長等会議に際し、バール・イスラエル空軍司令官と会談を行い、空軍種間の防衛協力・交流を引き続き発展させていくことに合意した。

(4)イラン

2022年4月、岸防衛大臣(当時)はアーシュティヤーニ・イラン国防軍需大臣とテレビ会談を実施し、防衛当局間の意思疎通を継続していくことで一致した。

(5)エジプト

エジプトとの間では、防衛副大臣などのエジプト訪問を含むハイレベル交流を通じて、二国間防衛協力・交流の推進の重要性について確認している。

(6)オマーン

オマーンとの間では、2019年に防衛協力に関する覚書が署名された。ハイレベル往来のほか、寄港・訓練を含む海軍種間協力を継続している。2022年6月には、海自がオマーン海軍と編隊航行訓練を実施した。

(7)カタール

カタールとの間では、2015年、防衛交流に関する覚書が署名された。2019年の初の防衛相会談以降、防衛大臣や統幕長によるハイレベル交流など、防衛協力・交流を引き続き深化させている。

(8)サウジアラビア

サウジアラビアとの間では、2016年、防衛交流に関する覚書が署名された。コロナ禍においても防衛相電話会談を実施するなど、防衛協力・交流を継続的に深化させてきている。

2022年5月、海幕長は、オーストラリアにおいてゴファイリー海軍司令官と会談を行い、今後の連携の強化の方向性などについて確認した。

(9)トルコ

トルコとの間では、2012年に防衛協力・交流の意図表明文書が署名された。

2022年5月、統幕長は、ベルギーにおいて開催されたNATO参謀長会議に際し、ギュレル・トルコ軍参謀総長と会談を行った。会談では、ウクライナ情勢を受け、国際社会が協力していく必要性について確認した。

同年10月、海自の派遣海賊対処行動水上部隊は、トルコ海軍との海賊対処共同訓練を実施した。

(10)バーレーン

バーレーンとの間では、2012年に防衛交流に関する覚書が署名され、ハイレベル交流などを実施してきた。2023年2月から3月にかけて、海自インド太平洋・中東方面派遣部隊がバーレーンに寄港するとともに、周辺海域で実施した米国主催国際海上訓練(IMX/CE23)に参加した。

(11)ヨルダン

ヨルダンとの間では、2016年に防衛交流に関する覚書が署名され、外務・防衛当局間協議を継続的に開催している。

2022年12月、自衛隊は、中東地域において初となる、統合展開・行動訓練をヨルダンにおいて行った。

2023年2月、統幕長はヨルダンを公式訪問し、アブドッラー2世国王陛下への謁見のほか、ハサーウネ首相兼国防大臣などを表敬するとともに、フネイティ統合参謀議長と会談を行い、今後の防衛協力・交流について確認した。

参照資料50(最近の中東諸国との防衛協力・交流の主要な実績(2019年度以降))

13 ジブチ
(1)ジブチとの防衛協力・交流の意義

ジブチは、海賊対処のため、海外で唯一自衛隊の拠点が存在する重要な国家である。同拠点はUNMISS派遣部隊への物資の輸送に活用されたほか、わが国がジブチに対して実施している災害対処能力強化支援における教育の際にも活用されている。今後、在外邦人等の保護・輸送など、アフリカ諸国などにおける運用基盤強化のため、本活動拠点を長期的・安定的に活用することとしている。

(2)最近の主要な防衛協力・交流実績など

2023年2月、統幕長は、ジブチを公式訪問し、ザッカリア国軍参謀総長と会談を行った。会談では、今後の日ジブチ間防衛協力・交流の方向性などについて意見交換を実施した。また、陸自は2022年11月から2023年1月の間、ジブチ災害対処能力強化支援事業として、施設分野に関する教育などを行った。2022年5月、海自は、ジブチ海軍との親善訓練を行った。

参照資料51(最近のその他の諸国との防衛協力・交流の主要な実績(2019年度以降))

14 中南米諸国
(1)中南米諸国との防衛協力・交流の意義

中南米諸国には、太平洋に面する国や、わが国と基本的価値を共有する国が多く存在しており、そのような国々との防衛協力・交流を推進している。

(2)最近の主要な防衛協力・交流実績など

コロンビアとの間では、2016年12月、防衛交流に関する覚書に署名した。

2022年7月、海自はカリブ海においてコロンビア海軍との親善訓練を実施した。

ブラジルとの間では、2020年、岸防衛大臣(当時)は、シルヴァ・ブラジル国防大臣(当時)と両国間で初となる日ブラジル防衛相会談をオンラインで実施した。その際、日ブラジル防衛協力・交流に関する覚書に署名し、今後も防衛協力・交流を強力に推進していくことで合意した。

ジャマイカとの間では、2019年12月、ホルネス首相兼国防大臣が来日し、河野防衛大臣(当時)と会談した。

2022年8月、海自は、ハワイ周辺においてチリ海軍及びメキシコ海軍との親善訓練を実施した。

ペルーとの間では、2022年6月、陸幕長は、東京で開催したPALS22(水陸両用指揮官シンポジウム)に際し、ペルー海兵部隊コマンド参謀総長との懇談を実施した。

参照資料51(最近のその他の諸国との防衛協力・交流の主要な実績(2019年度以降))

15 中国
(1)中国との防衛協力・交流の意義

わが国は、中国との間で、様々なレベルの意思疎通を通じ、主張すべきは主張し、責任ある行動を求めつつ、諸懸案も含め対話をしっかりと重ね、共通の課題については協力をしていくとの「建設的かつ安定的な関係」を構築していく。

防衛省・自衛隊としては、中国がインド太平洋地域の平和と安定のために責任ある建設的な役割を果たし、国際的な行動規範を遵守するとともに、軍事力強化や国防政策にかかる透明性を向上するよう引き続き促す。一方で、わが国の懸念を率直に伝達していく。また、両国間における不測の事態を回避するため、ホットラインを含む「日中防衛当局間の海空連絡メカニズム」を運用していく。

(2)最近の主要な防衛協力・交流実績など

日中防衛交流は、2012年9月のわが国政府による尖閣三島(魚釣島、南小島及び北小島)の取得・保有以降、停滞していたが、2014年後半以降、交流が徐々に再開している。

2022年6月、岸防衛大臣(当時)は、シンガポールにおいて開催されたシャングリラ会合に際し、魏鳳和(ぎほうわ)国務委員兼国防部長(当時)と会談を行った。会談において、ロシアによるウクライナ侵略は、国連憲章をはじめ国際法の明確な違反であり、力による一方的な現状変更は、欧州のみならず、アジアを含む国際秩序の根幹を揺るがすものであり、断じて認められないと指摘した上で、安保理常任理事国である中国が、国際社会の平和と安全の維持のため、責任ある役割を果たすよう求めた。

また、東シナ海情勢に関し、尖閣諸島周辺海域を含む東シナ海において力による一方的な現状変更の試みが継続していることや、空母「遼寧」によるわが国近海での訓練をはじめとした中国による懸念すべき活動が継続していることについて、改めて中国側に強く自制を求めた。台湾情勢については、台湾に関するわが国の基本的立場に変更はない旨述べた上で、台湾海峡の平和と安定はわが国のみならず、国際社会にとっても極めて重要である旨述べた。

南シナ海問題については、係争地形における滑走路建設などの南シナ海の軍事化を含め国際社会が共有する懸念について、中国側が真摯に耳を傾けるよう求めるとともに、わが国として力による一方的な現状変更の試みや緊張を高める如何なる行動にも強く反対する旨伝達した。さらに、日中関係については懸念があるからこそ率直な意思疎通を図ることが必要である旨述べ、双方は、今後も日中防衛当局間において対話や交流を推進していくことで一致した。

また、同年11月、第14回日中高級事務レベル海洋協議がオンラインで実施され、日本側から東シナ海情勢、南シナ海情勢に関する深刻な懸念を表明するとともに、中国側の自制ある行動を強く求めた。

さらに2023年2月、約4年ぶりに日中安保対話が東京で実施され、日中双方の安全保障政策について率直な意見交換を行った。日本側からは、尖閣諸島を含む東シナ海情勢、ロシアとの連携を含むわが国周辺における中国による軍事活動の活発化などについて深刻な懸念を改めて表明した。わが国領空内で確認されていた特定の気球型の飛行物体についてわが国の立場を改めて明確に申し入れた。また、台湾海峡の平和と安定の重要性などについても、わが国の立場を改めて明確に伝達した。また、海洋分野に関する日中高級事務レベル海洋協議など、日中間の様々な対話の枠組みを重層的に活用し、安全保障・防衛分野における日中間の意思疎通を継続・強化していくことで一致した。

(3)日中防衛当局間の海空連絡メカニズム

2018年6月、海空連絡メカニズムの運用が開始された。本メカニズムは、日中防衛当局の間で、①日中両国の相互理解及び相互信頼を増進し、防衛協力・交流を強化するとともに、②不測の衝突を回避し、③海空域における不測の事態が軍事衝突又は政治外交問題に発展することを防止することを目的として作成されたものであり、主な内容は、①防衛当局間の年次会合・専門会合の開催、②日中防衛当局間のホットライン開設、③自衛隊と人民解放軍の艦船・航空機間の連絡方法となっている。

日中防衛当局間のホットラインについては、2023年3月に設置され、同年5月、浜田防衛大臣と李尚福(りしょうふく)国務委員兼国防部長との間で初回の通話を行い、運用を開始した。

参照資料52(最近の日中防衛協力・交流の主要な実績(2019年度以降))

16 ロシア

2022年2月に発生したロシアによるウクライナ侵略について、政府は、明らかにウクライナの主権及び領土一体性を侵害し、武力の行使を禁ずる国際法と国連憲章の深刻な違反であり、決して認められない行為であるとともに、このような力による一方的な現状変更は、国際秩序の根幹を揺るがすものであるとして、ロシアを最も強い言葉で非難している。

ロシアとの関係については、ウクライナ情勢を踏まえ、政府としてG7の連帯を重視しつつ適切に対応することとしている。同時に、隣国であるロシアとの間で、不測の事態や不必要な摩擦を招かないためにも、最低限の必要なコンタクトは絶やさないようにすることも必要である。

参照資料53(最近の日露防衛協力・交流の主要な実績(2019年度以降))

1 物品役務相互提供協定(ACSA)は、共同訓練、国際連合平和維持活動、人道的な国際救援活動、大規模災害への対処のための活動などのために必要な物品又は役務の相互の提供に関する基本的な条件を定めるものである。

2 円滑化協定は、一方の国の部隊が他方の国を訪問して協力活動を行う際の手続及び同部隊の地位などを定めることにより、共同訓練や災害救助などの両国部隊間の協力活動の実施を円滑化するものである。

3 IPCPは、日NATO協力の一層の進展を目的として、ハイレベル対話の強化や防衛協力・交流の促進などの協力を推進する旨定めるとともに、実務的な協力の優先分野を特定している。2020年6月にIPCPが改訂され、実務的な協力の優先分野として「人間の安全保障」が追加された。

4 2018年12月、能登半島沖(わが国排他的経済水域内)において警戒監視中の海自P-1哨戒機が韓国海軍「クァンゲト・デワン」級駆逐艦から火器管制レーダーを照射されるという事案が発生した。防衛省は本件事案を重く受け止め、2019年1月に客観的事実を取りまとめた最終見解を公表し、韓国側に再発防止を強く求めている。なお、自衛隊の哨戒機は、十分な高度と距離を確保して飛行しており、韓国の艦艇に脅威を与えるような飛行は行っていない。防衛省としては、今後とも安全に十分配意しつつ、警戒監視及び情報収集に万全を期すこととしている。なお、詳細については、防衛省HPを参照(https://www.mod.go.jp/j/approach/defense/radar/index.html

5 日韓GSOMIAにおける協定の終了に関する規定は、次のとおり。
第二十一条 効力発生、改正、有効期間及び終了(抜粋)
3 この協定は、一年間効力を有し、一方の締約国政府が他方の締約国政府に対しこの協定を終了させる意思を九十日前に外交上の経路を通じて書面により通告しない限り、その効力は、毎年自動的に延長される。