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第III部 防衛目標を実現するための3つのアプローチ

2 在日米軍再編に向けた取組

1 在日米軍再編計画
(1)経緯・概要

在日米軍再編については、2006年5月の「再編の実施のための日米ロードマップ」(ロードマップ)において示された。その後、①沖縄の目に見える負担軽減を早期かつ着実に図る方策を講ずる必要があること、②2012年1月に公表された米国の国防戦略指針にも示されている、アジア太平洋地域重視の戦略と米軍再編計画の調整を図る必要があること、③米国議会においては、グアム移転にかかる経費の削減が求められていること、などの要因を踏まえ、2012年4月の「2+2」において、再編計画を調整した。

ロードマップでは、沖縄に所在する第3海兵機動展開部隊(IIIMEF(Marine Expeditionary Force))の司令部要素をグアムへ移転することとしていたが、部隊構成を変更し、司令部・陸上・航空・後方支援の各要素から構成される海兵空地任務部隊(MAGTF:Marine Air Ground Task Force)を日本、グアム及びハワイに置くとともにオーストラリアへローテーション展開させることとした。また、海兵隊の沖縄からグアムへの移転及びその結果として生ずる嘉手納(かでな)以南の土地の返還の双方を、普天間(ふてんま)飛行場の代替施設に関する進展から切り離すことなどを決定した。

参照資料31(再編の実施のための日米ロードマップ(仮訳))

(2)在日米軍再編計画の再調整

厳しさを増す安全保障環境に対応して日米同盟の抑止力・対処力を一層強化するため、2023年1月の「2+2」において、日米両国は、在日米軍の戦力態勢を、さらに多面的な能力を有し、より強靱で、より機動的なものに強化し、2012年に調整された再編計画を再調整し、米軍の態勢を最適化することとした。具体的には、第3海兵師団司令部及び第12海兵連隊を沖縄に残留させ、同連隊を2025年までに「海兵沿岸連隊(MLR:Marine Littoral Regiment)」に改編させることについて一致した。

再編計画の再調整に際しては、現行再編計画の基本的な原則は維持するなど、沖縄の負担軽減に最大限配慮している。具体的には、①再編終了後の在沖米海兵隊の定員を引き続き約1万人とすること、②沖縄統合計画において返還予定の土地に影響を及ぼさず、キャンプ・シュワブにおける普天間飛行場代替施設の進展に影響を及ぼさないこと、③2024年から開始される沖縄からグアムへの海兵隊の移転開始などに変更がないことを日米間で確認している。

本取組は、強化された自衛隊の能力・態勢とあいまって、日米同盟の抑止力・対処力を大きく向上するものである。引き続き、在日米軍の態勢を一層最適化するための緊密な協議を継続していく。

2 米軍再編の進捗状況

在日米軍再編については、これまで、空母艦載機の厚木飛行場から岩国飛行場への移駐、KC-130空中給油機の普天間飛行場から岩国飛行場への移駐及び鹿屋飛行場へのローテーション展開など、様々な取組が行われてきた。

防衛省では、引き続き、空母艦載機着陸訓練(FCLP:Field Carrier Landing Practice)にも使用する馬毛島における自衛隊の施設の整備、普天間飛行場を含む嘉手納以南の土地の返還、在沖米海兵隊のグアム移転などの取組を進めている。

参照図表III-2-5-3(「再編の実施のための日米ロードマップ」に示された在日米軍などの兵力態勢の再編の進捗状況①及び②)

図表III-2-5-3 「再編の実施のための日米ロードマップ」に示された在日米軍などの兵力態勢の再編の進捗状況①

図表III-2-5-3 「再編の実施のための日米ロードマップ」に示された在日米軍などの兵力態勢の再編の進捗状況②

3 空母艦載機着陸訓練(FCLP)

2006年5月のロードマップにおいては恒常的な空母艦載機着陸訓練施設について検討を行うための二国間の枠組みを設け、恒常的な施設をできるだけ早い時期に選定することが目標とされた。防衛省は、鹿児島県西之表市馬毛島の大部分の土地を取得し、整備に向け、地元である、鹿児島県、西之表市、中種子町及び南種子町への説明を積み重ねている。

2022年1月の「共同文書」においては、日本政府が馬毛島における自衛隊施設の整備を決定したことを米側も歓迎した。2022年度予算には馬毛島における滑走路、駐機場にかかる施設整備などの経費が計上されている。

2023年1月には、西之表市長、中種子町長及び南種子町長などからの意見も踏まえた鹿児島県知事の意見にも沿ったかたちで作成した環境影響評価書を公告し、馬毛島島内での工事を開始した。

同年3月には、馬毛島周辺海上での工事も開始し、施設整備に向けた取組を着実に進めている。

動画アイコンQRコード資料:在日米軍に関する諸施策
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動画アイコンQRコード資料:馬毛島(まげしま)における施設整備について
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4 普天間飛行場の移設・返還

普天間飛行場の全面返還を日米で合意してから、25年以上経た今もなお、返還が実現しておらず、もはや先送りは許されない。

沖縄県宜野湾(ぎのわん)市の市街地に位置し、住宅や学校で囲まれた普天間飛行場の固定化は、絶対に避けなければならず、これは政府と沖縄の皆様の共通認識であると考えている。

政府としては、名護(なご)市辺野古(へのこ)へ移設する現在の計画が同飛行場の継続的な使用を回避するための唯一の解決策であるという考えに変わりはなく、このことについては、日米両政府間でも、「2+2」や日米首脳会談の共同声明などの累次の機会において、確認してきている。

同飛行場の一日も早い全面返還の実現に向けて、長年にわたる沖縄の皆様との対話の積み重ねのうえに、これからも、丁寧な説明を行い全力で取り組んでいく。

なお、同飛行場の返還により、危険性が除去されるとともに、跡地(約476ha:東京ドーム約100個分)の利用により、宜野湾市をはじめとする沖縄のさらなる発展が期待される。

(1)普天間飛行場の移設と沖縄の負担軽減

普天間飛行場の移設は、同飛行場を単純に移設するものではなく、沖縄における基地の機能や面積の縮小を伴い、沖縄の負担軽減に十分資するものである。

ア 普天間飛行場が有する機能の分散

普天間飛行場の移設は、同飛行場が有する①オスプレイなどの運用機能、②空中給油機の運用機能、③緊急時における航空機受入機能という3つの機能のうち、②及び③を県外へ、残る①をキャンプ・シュワブに移して、同飛行場を全面返還するというものである。

「②空中給油機の運用機能」は2014年8月に山口県の岩国飛行場に移転完了し、「③緊急時における航空機受入機能」は、2018年10月、福岡県の築城基地及び宮崎県の新田原基地への機能移転に必要となる施設整備について日米間で合意し、2023年3月までに築城基地の滑走路延長を除く工事を完了した。引き続き、築城基地の滑走路延長工事に関し、環境影響評価などを進めているところである。

イ 面積の縮小

普天間飛行場の代替施設を建設するために必要となる埋立ての面積は、約150haであるが、同飛行場の面積約476haに比べ、約3分の1程度となり、滑走路も、1,200m(オーバーランを含めても1,800m)と、現在の同飛行場の滑走路長2,740mに比べ、大幅に短縮される。

ウ 騒音及び危険性の軽減

滑走路はV字型に2本設置されるが、これは、地元の要望を踏まえ、離着陸時の飛行経路が海上になるようにするためのものである。訓練などで日常的に使用される飛行経路が、普天間飛行場では市街地上空にあったのに対し、代替施設では、海上へと変更され、騒音及び危険性が軽減される。

例えば、同飛行場では、住宅防音が必要となる地域に1万数千世帯の住民が居住しているのに対し、代替施設ではこのような世帯はゼロとなる。

(2)代替施設に関する経緯

2004年8月の宜野湾市における米軍ヘリ墜落事故の発生を踏まえ、周辺住民の不安を解消するため、一日も早い移設・返還を実現するための方法について、在日米軍再編に関する日米協議の過程で改めて検討が行われた。

2005年10月の「2+2」共同文書において、代替施設をL字型に設置することとされたが、その後の名護市をはじめとする地元地方公共団体との協議及び合意を踏まえ、2006年5月のロードマップにおいて、代替施設の滑走路をV字型で設置することとなった。この代替施設の建設について、2006年5月、稲嶺沖縄県知事(当時)と額賀防衛庁長官(当時)との間でも「基本確認書」が取り交わされた。

2009年9月の政権交代後、沖縄基地問題検討委員会が設けられた。この委員会による検討を経たのち、2010年5月の「2+2」において、普天間飛行場の代替施設をキャンプ・シュワブ辺野古崎地区及びこれに隣接する水域に設置する意図を確認した。その後、2011年6月の「2+2」において、滑走路の形状をV字型と決定した。

このような結論に至る検討過程では、まず、東アジアの安全保障環境に不安定性・不確実性が残る中、わが国の安全保障上極めて重要な位置にある沖縄に所在する海兵隊をはじめとして、在日米軍の抑止力を低下させることは、安全保障上の観点からできないとの判断があった。

また、同飛行場に所属する海兵隊ヘリ部隊を沖縄所在のほかの海兵隊部隊から切り離し、国外・県外に移転すれば、海兵隊の持つ機動性・即応性といった特性を損なう懸念があった。これは、米海兵隊が、航空、陸上、後方支援の部隊や司令部を一体的に運用しているためである。

こうしたことから、同飛行場の代替地は沖縄県内とせざるを得ないとの結論に至った。

参照資料32(普天間飛行場代替施設に関する経緯)資料33(嘉手納以南 施設・区域の返還時期(見込み))、図表III-2-5-4(代替施設と普天間飛行場の比較(イメージ))

図表III-2-5-4 代替施設と普天間飛行場の比較(イメージ)

(3)代替施設建設事業の推進

ア 埋立工事の進捗

沖縄防衛局長は、2013年3月、公有水面埋立承認願書を沖縄県に提出し、同年12月、仲井眞知事(当時)はこれを承認した。

工事開始後、翁長知事(当時)が当該埋立承認を取り消したことから、国と沖縄県との訴訟などを経たが、2018年12月に、キャンプ・シュワブ南側の海域において、埋立工事を開始した。2021年8月には、海水面から4.0mまでの埋立てが完了しており、引き続き、埋立工事を着実に進めているところである。(2023年5月現在)

イ 地盤改良などの検討

埋立地の地盤に関しては、ボーリング調査の結果などを踏まえ、キャンプ・シュワブ北側の海域における護岸などの構造物の安定性などについて検討を行った。その結果、東京国際空港や関西国際空港でも用いられた一般的で施工実績が豊富な工法6により地盤改良工事を行うことで、所要の安定性を確保して護岸や埋立てなどの工事を実施可能であることが確認された。このことは2019年9月から開催された、地盤、構造、水工、舗装の各分野の有識者で構成される「普天間飛行場代替施設建設事業に係る技術検討会」においても確認されている。

そして、同年12月、沖縄防衛局は、それまでの検討結果を踏まえ、変更後の計画に基づく工事に着手してから工事完了までに9年3ヵ月、沖縄統合計画に示されている「提供手続」を完了させるまでに約12年を要し、また普天間飛行場代替施設建設事業に要する経費として、約9,300億円が必要であることを示した。

ウ 環境保全にかかる取組

普天間飛行場代替施設建設事業の実施にあたり、2007年から約5年間にわたり、環境影響評価を行った。この評価に対しては、沖縄県知事から、1,561件の意見を受け、その全てに補正を行うとともに、環境影響評価書への記載に適切に反映している。

この評価書において、埋立区域に生息するサンゴ類は埋立てに伴い消失することになるため、避難措置として可能な限り移植することとしており、保護対象のサンゴ類の一部について沖縄県知事の許可を得て移植している。また、今後、残りの保護対象のサンゴ類についても避難措置を講ずることとしている。なお、同事業では、那覇空港第二滑走路の工事に伴う埋立ての際よりも、保護の対象を広げ、より手厚くサンゴ類を移植することとしている7

2018年11月

2018年11月

2023年4月埋立工事の進捗状況

2023年4月
埋立工事の進捗状況

動画アイコンQRコード資料:普天間飛行場及び代替施設の規模比較
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エ 公有水面埋立の変更承認申請

沖縄防衛局は、環境面も含めた有識者の知見も得つつ、十分に検討を行ったうえで、公有水面埋立法に基づき、2020年4月、地盤改良工事の追加などに伴う埋立の変更承認申請書を沖縄県知事に提出した。

沖縄県知事は、2021年11月、埋立予定地の地盤の調査や環境保全対策が十分でないとして、変更承認申請を不承認とした。これを受け、同年12月、沖縄防衛局長は国土交通大臣に対し、行政不服審査法に基づく審査請求を行い、2022年4月、国土交通大臣は、沖縄県知事による不承認処分を取り消す裁決を行うとともに、変更承認申請を承認するよう、地方自治法に基づく是正の指示を行った。

これに対し、同年5月、沖縄県知事は国土交通大臣の裁決及び是正の指示を不服として国地方係争処理委員会にそれぞれ審査申出を行った。同年7月、国地方係争処理委員会が裁決に関する審査申出を却下したことを受け、同年8月、沖縄県知事は、国の関与(裁決)の取消訴訟を福岡高裁那覇支部に提起した。また、国地方係争処理委員会が是正の指示は違法でないと決定したことを受け、同月、沖縄県知事は、国の関与(是正の指示)の取消訴訟を福岡高裁那覇支部に提起した。これらの訴訟に関しては、2023年3月、福岡高裁那覇支部において裁決に関する訴訟については沖縄県知事の訴えを却下する判決が、是正の指示に関する訴訟については、沖縄県知事の請求を棄却する判決が、それぞれ言い渡された。これらの訴訟については、沖縄県知事が最高裁に上告受理申立てを行ったところである。これらに加え、2022年9月、沖縄県は、国土交通大臣の裁決を不服とし、行政事件訴訟法に基づく裁決の取消訴訟を那覇地裁に提起しており、国と沖縄県の間においては、変更承認申請にかかる3件の訴訟が係属中である(2023年5月現在)。

動画アイコンQRコード資料:地盤改良工法について
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5 嘉手納飛行場以南の土地の返還

2006年5月のロードマップでは、普天間飛行場の代替施設への移転、普天間飛行場の返還及びグアムへの第3海兵機動展開部隊(IIIMEF)要員の移転に続いて、沖縄に残る施設・区域が統合され、嘉手納飛行場以南の相当規模の土地の返還が可能となるとされていた。

その後、2012年4月の「2+2」において、IIIMEFの要員の沖縄からグアムへの移転及びその結果として生ずる嘉手納以南の土地の返還の双方を、普天間飛行場の代替施設への移転に関する進展から切り離すことを決定した。さらに、返還される土地については、①速やかに返還できるもの、②機能の移転が完了すれば返還できるもの、③国外移転後に返還できるもの、という3区分に分けて検討していくことで合意した。

(1)沖縄における在日米軍施設・区域に関する統合計画

2012年末の政権交代後、沖縄の負担軽減に全力で取り組むとの基本方針のもと、引き続き日米間で協議が行われ、沖縄の返還要望が特に強い牧港(まきみなと)補給地区(キャンプ・キンザー)(浦添市)を含む嘉手納以南の土地の返還を早期に進めるよう強く要請し、米側と調整を行った。その結果、2013年4月、具体的な返還年度を含む返還スケジュールが明記される形で沖縄における在日米軍施設・区域に関する統合計画(統合計画)が公表されることになった。

本計画に基づき、全ての返還が実現すれば、沖縄本島中南部の人口密集地に所在する6つの米軍専用施設8の約7割の土地(約1,048ha:東京ドーム約220個分)が返還されることとなる。統合計画においては、本計画を可能な限り早急に実施することを日米間で確認しており、政府として一日も早い嘉手納以南の土地の返還が実現するよう、引き続き全力で取り組んでいくこととしている。

参照図表III-2-5-5(沖縄における在日米軍施設・区域に関する統合計画)

図表III-2-5-5 沖縄における在日米軍施設・区域に関する統合計画

(2)返還の進展

2013年4月の統合計画の公表以降、返還に向けた取組を進め、2020年3月末には統合計画で「必要な手続の完了後速やかに返還となる区域」(図表III-2-5-7の赤色の区域)とされている区域全ての返還が実現した。返還地では順次跡地利用が進められており、例えば、2015年3月に返還された西普天間住宅地区跡地では、地元の要望している沖縄健康医療拠点の形成を推進している。

また、そのほかの区域で地元からの返還要望が強かった一部の区域については、統合計画上の予定よりも前倒しでの返還を実現している。これにより、例えば、普天間飛行場の東側沿いの土地では、2021年3月に市道宜野湾11号の全線開通が実現し、これにより地元の道路交通状況が改善されている。さらに、2022年5月、キャンプ瑞慶覧のロウワー・プラザ住宅地区について、返還に先立って、緑地公園として一般利用することを日米間で合意する旨を、現地を訪問した岸田内閣総理大臣より公表した。

政府としては、引き続き、統合計画における嘉手納飛行場以南の土地の返還を着実に実施し、沖縄の負担軽減を目に見える形で実現するため、全力で取り組んでいくこととしている。

参照資料33(嘉手納以南 施設・区域の返還時期(見込み))、図表III-2-5-6(嘉手納飛行場以南の土地の返還実績)、図表III-2-5-7(嘉手納飛行場以南の土地の返還(イメージ))

図表III-2-5-6 嘉手納飛行場以南の土地の返還実績

図表III-2-5-7 嘉手納飛行場以南の土地の返還(イメージ)

6 海兵隊のグアムへの移転

2006年5月にロードマップが発表されて以降、沖縄に所在する兵力の削減について協議が重ねられてきた。

(1)移転時期及び規模

ロードマップでは、沖縄に所在する第3海兵機動展開部隊(IIIMEF)の要員約8,000人とその家族約9,000人が2014年までに沖縄からグアムに移転することとされたが、2011年6月の「2+2」などで、その時期は2014年より後のできる限り早い時期とされた。

その後、2012年4月の「2+2」において、IIIMEFの要員の沖縄からグアムへの移転及びその結果として生ずる嘉手納以南の土地の返還の双方を、普天間飛行場の代替施設に関する進展から切り離すことを決定するとともに、グアムに移転する部隊構成及び人数についての見直しがなされた。

これにより、海兵空地任務部隊(MAGTF)は日本、グアム、ハワイに置くこととされ、約9,000人が日本国外に移転することになった。一方で、沖縄における海兵隊の最終的なプレゼンスは、ロードマップの水準(約1万人)に従ったものにすることとされた。

それに伴い、2013年10月の「2+2」においては、グアムへの移転時期について、2012年の「2+2」で示された移転計画のもとで、2020年代前半に開始されることとされ、この計画は2013年4月の沖縄における在日米軍施設・区域に関する統合計画の実施の進展を促進するものとされた。

また、2023年1月の「2+2」においては、沖縄からグアムへの移転が2024年に開始されることなどが確認された。

米海兵隊基地キャンプ・ブラズ再発足・命名式典

米海兵隊基地キャンプ・ブラズ再発足・命名式典

(2)移転費用

ロードマップでは、施設及びインフラの整備費算定額102.7億ドル(2008米会計年度ドル)のうち、わが国が28億ドルの直接的な財政支援を含め60.9億ドルを提供し、米国が残りの41.8億ドルを負担することで合意に至った。わが国が負担する費用のうち、直接的な財政支援として措置する事業について、日米双方の行動をより確実なものとし、これを法的に確保するため、2009年2月、日米両政府は「第3海兵機動展開部隊の要員及びその家族の沖縄からグアムへの移転の実施に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定」(グアム協定)に署名した。

本協定に基づく措置として、2009年度から、わが国が財政支援する事業にかかる米国政府への資金提供を行っている9

その後、2012年4月の「2+2」では、グアムに移転する部隊構成及び人数が見直され、米国政府による暫定的な移転費用の見積りは86億ドル(2012米会計年度ドル)とされた。わが国の財政的コミットメントは、グアム協定第1条に規定された28億ドル(2008米会計年度ドル)を限度とする直接的な資金提供となることが再確認されたほか、わが国による家族住宅事業やインフラ事業のための出融資などは利用しないことが確認された10

また、グアム協定のもとですでに米国政府に提供された資金は、わが国による資金提供の一部となることとされ、グアム及び北マリアナ諸島連邦の日米両国が共同使用する訓練場の整備についても、前述の28億ドルの直接的な資金提供の一部を活用して実施することとされた。このほか、残りの費用及び追加的な費用は米国が負担することや、両政府が二国間で費用内訳を完成させることについても合意された。

2013年10月の「2+2」では、グアム及び北マリアナ諸島連邦における訓練場の整備及び自衛隊による訓練場の使用に関する規定の追加などが盛り込まれたグアム協定を改正する議定書の署名も行われた。しかし、わが国政府からの資金提供については、引き続き28億ドル(2008年度価格)が上限となることに変更はない。

(3)環境影響評価

グアムにおける環境影響評価については、再編計画の調整によって変更した事業内容を反映し、所要の手続が進められ、2015年8月に終了した。

さらに、北マリアナ諸島連邦における訓練場整備に関する環境影響評価は、現在実施中である。

(4)グアム移転事業の進捗状況

グアムにおける環境影響評価が実施されていた間、米国政府は、その評価の影響を受けない事業としてアンダーセン空軍基地及びグアム海軍基地アプラ地区における基盤整備事業などを実施してきた。米国防授権法によるグアム移転資金の凍結が解除されたことや、グアムにおける環境影響評価が終了したことを受け、現在、米国政府により、各地区において移転工事が実施されている。

参照図表III-2-5-8(グアム移転事業の進捗状況(イメージ))

図表III-2-5-8 グアム移転事業の進捗状況(イメージ)

7 その他の再編事業
(1)訓練移転

ア 航空機訓練移転(ATR:the Aviation Training Relocation)

当分の間、嘉手納、三沢(青森県三沢市、東北町)及び岩国の3つの在日米軍施設・区域の航空機が、自衛隊施設における共同訓練に参加することとされたことに基づき、2007年以降、航空機訓練移転(ATR)11を行っており、防衛省は、必要に応じ訓練移転のためのインフラの改善を行っている。

ATRは、日米間の相互運用性の向上に資するとともに、これまで嘉手納飛行場を利用して実施されていた空対地射爆撃訓練の一部を移転するものであり、嘉手納飛行場周辺の騒音軽減につながることから、沖縄の負担軽減にも資するものである。

防衛省・自衛隊は、米軍の支援に加え、周辺住民の安心、安全を図るため、現地連絡本部の設置、関係行政機関との連絡や周辺住民への対応など、訓練移転の円滑な実施に努めている。

参照図表III-2-5-9(航空機訓練移転に関する主な経緯)

図表III-2-5-9 航空機訓練移転に関する主な経緯

イ MV-22などの訓練移転

日米両政府は、2013年10月の「2+2」共同発表において、同盟の抑止力を維持しつつ、わが国本土を含め沖縄県外における訓練を増加させるため、MV-22の沖縄における駐留及び訓練の時間を削減し、わが国本土及び地域における様々な運用への参加の機会を活用すると決定した。これを踏まえ、普天間飛行場のMV-22の沖縄県外での訓練などが進められてきた。

2016年9月、日米合同委員会において、沖縄県外での訓練の一層の推進を図り、訓練活動に伴う沖縄の負担を軽減するため、現在普天間飛行場に所在するAH-1やCH-53といった回転翼機やMV-22などの訓練活動を日本側の経費負担により沖縄県外に移転することについて合意した。

2022年度は、2022年10月に北海道、同年11月に、長崎県、熊本県、鹿児島県、2023年2~3月に熊本県、大分県、鹿児島県の演習場などにおいて、日米共同訓練に組み込んで、MV-22などの訓練移転を実施した。なお、合意から2023年3月までに、上記に加え国外ではグアム、国内では青森県、岩手県、宮城県、群馬県、神奈川県、新潟県、静岡県、滋賀県、香川県、宮崎県の演習場などにおいて、計18回実施してきた。

政府としては、引き続き、MV-22の参加を伴う訓練を、沖縄からわが国本土やグアムなどに移転することにより、MV-22の沖縄における駐留及び訓練の時間を削減し、沖縄の一層の負担軽減に寄与する取組を推進することとしている。

なお、MV-22の安全性については、2012年、普天間飛行場への配備に先立ち、政府内外の専門家、航空機パイロットなどからなる分析評価チームを設置するなどして、政府として独自に安全性を確認している。加えて、2014年、わが国自身がオスプレイ導入を決定するにあたり、その検討過程のみならず、導入決定後においても、各種技術情報を収集・分析し、安全な機体であることを改めて確認している。

さらに、2016年から米海兵隊の教育課程に陸自のオスプレイ要員を派遣し、実際の機体を用いて操縦・整備を行い、オスプレイが安定した操縦・整備が可能であり、信頼できる機体であることを改めて確認している。

なお、CV-22については、MV-22と同じ推進システムを有し、基本的な構造も共通していることから、機体の安全性はMV-22と同等である。

政府としては、米軍の運用に際して、安全面の確保が大前提と考えており、累次の機会を捉え、防衛大臣から米国防長官などに対し地元への配慮と安全確保について申し入れを行うなど、引き続き、安全面に最大限配慮するよう求めていく。

参照資料34(米軍オスプレイのわが国への配備の経緯)

ウ 災害発生時などにおける米軍オスプレイの有用性

2013年11月にフィリピン中部で発生した台風被害に対する救援作戦「ダマヤン」を支援するため、沖縄に配備されているMV-22(14機)が人道支援・災害救援活動に投入された。MV-22は、アクセスの厳しい被災地などに迅速に展開し、1日で数百名の孤立被災民と約6トンの救援物資を輸送した。また、2014年4月に韓国の珍島(チンド)沖で発生した旅客船沈没事故に際しても、沖縄に配備されているMV-22が捜索活動に投入された。さらに、2015年4月のネパールにおける大地震に際し、沖縄に配備されているMV-22(4機)が派遣され、人員・物資輸送に従事した。

国内においても、2016年熊本地震に際し、MV-22が派遣され、被災地域への生活物資の輸送に従事した。

このように、MV-22は、その高い性能と多機能性により、大規模災害が発生した場合にも迅速かつ広範囲にわたって人道支援・災害救援活動を行うことが可能であり、2014年から防災訓練でも活用されている。2016年9月には、長崎県佐世保市総合防災訓練に2機のMV-22が参加し、離島への輸送訓練などを行った。なお、CV-22についても、MV-22と同様、大規模災害が発生した場合には、捜索救難などの人道支援・災害救援活動を迅速かつ広範囲にわたって行うことが可能とされている。

今後も、米軍オスプレイは、このような様々な事態において、その優れた能力を発揮していくことが期待されている。

参照図表III-2-5-10(オスプレイの有用性(イメージ))、資料34(米軍オスプレイのわが国への配備の経緯)

図表III-2-5-10 オスプレイの有用性(イメージ)

8 在日米軍再編を促進するための取組

2006年5月のロードマップに基づく在日米軍の再編を促進するため、2007年8月に駐留軍等の再編の円滑な実施に関する特別措置法(再編特措法)が施行され、これに基づき、再編交付金や公共事業に関する補助率の特例などの制度が設けられた。

加えて、再編の実施により施設・区域の返還や在沖米海兵隊のグアムへの移転などが行われ、在日米軍従業員の雇用にも影響を及ぼす可能性があることから、雇用の継続に資するよう技能教育訓練などの措置を講ずることとしている。

なお、再編特措法については、2017年3月31日限りで効力を失うこととなっていたが、今後も実施に向けた取組が必要な再編事業があることから、同年3月31日、同法の有効期限を2027年3月31日まで10年間延長するなどの同法の一部を改正する法律が施行された。

参照資料35(駐留軍等の再編の円滑な実施に関する特別措置法の概要)

6 サンドコンパクションパイル工法、サンドドレーン工法、ペーパードレーン工法であり、他事業の例として、東京国際空港再拡張事業などがある。

7 具体的には、那覇空港の第二滑走路の工事に伴い、小型サンゴ約3万7,000群体の移植が行われたが、仮に、代替施設建設事業と同じ基準を当てはめれば、移植対象の小型サンゴ類は約17万群体となる。

8 那覇港湾施設、牧港補給地区、普天間飛行場、キャンプ瑞慶覧、キャンプ桑江及び陸軍貯油施設第1桑江タンク・ファーム

9 わが国が財政支援する事業について、これまで2009年度から2022年度までの予算を用いて総額約3,721億円(提供した資金から生じた利子の使用を含む)が米側に資金提供された。

10 これを受け、駐留軍等の再編の円滑な実施に関する特別措置法に規定されていた株式会社国際協力銀行の業務の特例(出融資)については、2017年3月31日に施行された同法の一部を改正する法律により廃止された。

11 在日米軍航空機が自衛隊施設などにおいて共同訓練などを行うこと。