普天間飛行場代替施設について

令和5(2023)年5月

Q1 なぜ、普天間飛行場の全面返還を実現する必要があるのですか?

危険性除去の実現

沖縄県宜野湾市に所在する普天間飛行場は、市街地に位置し、住宅や学校で囲まれ、これを利用する航空機が市街地上空を飛行するため、世界で最も危険な飛行場と言われています。

過去の事件や普天間飛行場内での航空機墜落事故などを契機に、沖縄県からの要請を受けて、平成8(1996)年4月に橋本総理(当時)とモンデール米駐日大使(当時)が会談し、普天間飛行場の県内移設と全面返還に日米で合意しました。この日米合意後も、飛行場近傍の大学へのヘリコプター墜落、小学校への部品落下などの事故も発生しており、普天間飛行場の一日も早い危険性の除去(=全面返還)を実現しなければなりません。

(写真提供:宜野湾市)

沖縄の更なる発展

普天間飛行場の全面返還が実現すれば、飛行場の跡地476ha(東京ドーム約100個分)を活用した、宜野湾市を始めとする沖縄のまちづくりの更なる発展が期待されます。現在、沖縄県や宜野湾市も跡地利用計画の策定に向けて取り組んでいます。

また、内閣府において、今後返還される普天間飛行場を始めとする在日米軍施設・区域について、跡地利用の核となる施設・機能のありうるオプションを検討するため、様々な分野の有識者による「基地跡地の未来に関する懇談会」を開催するなど、県及び跡地関係市町村との密接な連携の下、跡地利用の推進に向けて取り組んでいます。

返還跡地利用の例

キャンプ瑞慶覧 泡瀬ゴルフ場跡地(北中城村)(出典:国土地理院(平成22(2010)年撮影))
平成22(2010)年
7月返還
(写真提供:北中城村アワセ土地区画整理組合)
キャンプ瑞慶覧 西普天間住宅地区跡地(宜野湾市)(出典:国土地理院(平成22(2010)年撮影))
平成27(2015)年
3月返還
跡地利用として琉球大学医学部及び大学病院が令和6年度末移設完了予定
(写真引用:琉球大学HP)

Q2 沖縄県には、既に多数の米軍基地があるのに、普天間飛行場の移設先はなぜ沖縄県内でなければならないのですか?

沖縄は安全保障上、極めて重要な位置に

沖縄は、米国本土、ハワイなどと比較して、東アジアの各地域に近い位置にあると同時に、わが国の周辺諸国との間に一定の距離を置いているという利点を有しているなど、安全保障上、極めて重要な位置にあります。

地理的に重要な位置にある沖縄に、優れた即応性・機動性を持ち、武力紛争から自然災害に至るまで、多種多様な広範な任務に対応可能な米海兵隊が駐留することは、わが国のみならず、東アジア地域の平和や安全の確保のために重要な役割を果たしています。

このような海兵隊の部隊は、航空、陸上、後方支援の部隊や司令部機能から構成されています。優れた機動性と即応性を特徴とする海兵隊の運用では、これらの部隊や機能が相互に連携し合うことが不可欠であり、普天間飛行場に駐留する回転翼機が、訓練、演習などにおいて日常的に活動をともにする組織の近くに位置するよう、代替施設も沖縄県内に設ける必要があります。

Q3 キャンプ・シュワブに建設される代替施設は、どのような規模・機能になるのですか?

代替施設の規模・機能は普天間飛行場より縮小

代替施設の埋立面積は、普天間飛行場の面積の3分の1程度(約476ha⇒約150ha)となります。滑走路の長さも3分の2程度(2,740m⇒約1,800m(オーバーランを含む。))に短縮されます。

代替施設に移転する機能は一部のみ

現在の普天間飛行場の全ての機能が、キャンプ・シュワブに移転するわけではありません。普天間飛行場の主要な3つの機能のうち、2つは県外に移転し(※)、キャンプ・シュワブには、オスプレイなどの運用機能のみ移転します。

空中給油機の運用機能については、KC-130、15機全機を山口県へ移駐(平成26(2014)年8月に完了)、緊急時における航空機の受入れ機能については、福岡県及び宮崎県へ移転予定

安全性の向上・騒音の軽減

普天間飛行場は市街地に位置しており、これを利用する航空機の飛行経路は市街地上空になってしまいますが、キャンプ・シュワブに移設後の飛行経路は、滑走路をV字型に配置することにより、離陸・着陸のいずれの飛行経路も海上となります。そのため、周辺地域における安全性が格段に向上するとともに、騒音による影響も大幅に軽減されます。また、住宅防音工事も普天間飛行場周辺での1万数千戸からゼロになります。

普天間飛行場での飛行経路
キャンプ・シュワブ移設後の飛行経路

Q4 建設予定地は地盤が軟弱と言われていますが、代替施設の建設工事は可能なのですか?

地盤の安定性を確保した工事が可能

キャンプ・シュワブ北側(大浦湾側)の海域については、ボーリング調査等の結果から、地盤改良は必要であるものの、東京国際空港や関西国際空港でも用いられた一般的で施工実績が豊富な工法(SCP工法、SD工法、PD工法)によって、最大で水面下約70mまで地盤改良工事を行うことにより、護岸や埋立などの工事を所要の安定性を確保して行うことが可能であることが確認されています。

その上で、地盤改良に係る具体的な設計等の検討に当たっては、より合理的な設計・施工が普天間飛行場の早期返還にも資することから、有識者の知見も得つつ、十分に検討を行った上で、令和2(2020)年4月に、沖縄防衛局から、公有水面埋立法に基づき地盤改良の追加等に伴う埋立の変更承認申請書を沖縄県に提出しております。

また、キャンプ・シュワブ南側(辺野古側)の海域については、平成29(2017)年11月に護岸工事を開始し、平成30(2018)年12月から埋立工事を進めているところです。

事業 地盤改良の規模 事業者
普天間飛行場代替施設建設事業 (SCP+SD+PD)約7万1千本 国(沖縄防衛局)
東京国際空港(沖合展開事業) (SD+PD)約260万本 国(関東地方整備局)
東京国際空港(D滑走路) (SCP+SD)約25万本 国(関東地方整備局)
関西国際空港第Ⅰ期事業 (SCP+SD)約100万本 関西国際空港株式会社(当時)
関西国際空港第Ⅱ期事業 (SCP+SD)約120万本 関西国際空港用地造成株式会社(当時)

環境保全にも十分配慮

サンゴ類に関する取組としては、護岸で閉め切ると、周囲の海と切り離され、海水の出入りが止まり、その生息に影響が生じるため、海域を閉め切る前に埋立区域に生息していた保護対象のサンゴ類を移植することとしており、既に移植を実施した小型サンゴ類については、経過が順調である旨のモニタリング結果を得ています。

既に移植を実施したレッドリストサンゴのオキナワハマサンゴについては、移植先において幼生の放出による再生産が確認されており、移植先の環境に順応していると考えられます。これまでオキナワハマサンゴに関する知見は少なく、生態について不明な点が多かったものの、移植に伴う一連の観察により、貴重な知見を得ることができています。

また、埋立にともなうサンゴ類の生息域減少への代償措置として、有性生殖による種苗生産を実施しています。採苗した幼サンゴは、陸上施設にて順調に成長しており、今後、これらを大浦湾内に移植する環境保全措置を実施していく方針です。

採取状況
運搬状況
再生産の様子
幼サンゴの飼育

絶滅危惧ⅠA類であるジュゴンについては、大浦湾に来遊することを前提に、日々の工事において、施工区域へのジュゴンの接近を警戒・監視するなどの環境保全措置を講じています。

その他、工事による改変区域内に生息・生育する重要な動植物種から選定した移動・移植対象種についても、工事の着手前に各種の生息・生育に適した改変区域外の場所へ移動・移植を実施しています。

これらの環境保全措置は、部外の専門家からなる「環境監視等委員会」の指導・助言を踏まえつつ講じており、引き続き、同委員会の指導・助言を踏まえつつ、環境保全に十分配慮しながら工事を進めてまいります。

Q5 地盤改良工事の追加に伴い、工期や経費はどのように変わりますか?

令和元(2019)年12月、有識者による「普天間飛行場代替施設建設事業に係る技術検討会」 (※)等の検討結果を踏まえ、変更後の計画に基づく工事に着手してから工事完了までに9年3か月、提供手続完了までに約12年を要し、また、経費の概略として、約9,300億円が必要であることをお示ししたところです。

護岸や埋立地等の設計・施工・維持管理を合理的なものとするため、外部の有識者より技術的・専門的見地から客観的に提言・助言を行うことを目的として開催

十分に合理的な工程を作成

平成25(2013)年の公有水面埋立承認申請時には想定されていなかった地盤改良工事の追加に伴い、それに係る作業には一定の期間を要することとなりますが、工程の作成に当たっては、これまでの土質調査等の結果をより詳細に整理・分析した上で、技術検討会における提言・助言等を踏まえながら、より合理的な設計・施工を追求してきたところです。護岸や埋立等の工事の施工順序の工夫等、工程短縮のための検討をしっかり経た上で作成しており、十分に合理的な工程となっているものと考えています。

また、経費の概略については下表のとおりですが、いずれも普天間飛行場の一日も早い返還を実現するために不可欠な経費であると考えており、引き続き、各年度の予算要求の段階において所要額を精査し、工事の進捗を踏まえつつ、必要な経費を計上するとともに、その後の現場状況に応じた効率的な施工等を追求するなどして、適切な予算執行に努め、辺野古移設に要する全体経費の抑制に努めてまいります。

項目 変更後の内訳
環境保全措置等に要する経費 約700億円
埋立工事に要する経費 仮設工事(警備費含む) 約2,000億円
護岸工事 約1,500億円
埋立工事 約3,600億円
付帯工事 約125億円
飛行場施設整備に要する経費 約625億円
キャンプ・シュワブ再編成工事に要する経費 約750億円
合計 約9,300億円

Q6 普天間飛行場の返還条件には、代替施設の建設以外のものもあり、このため代替施設が完成しても、普天間飛行場は返還されないと聞きましたが、本当ですか?

返還条件の中核は辺野古への移設

普天間飛行場の返還条件は、平成25(2013)年に日米両政府で作成し、公表した「沖縄における在日米軍施設・区域に関する統合計画」において、以下の計8項目が返還条件として示されており、これらについて、着実に進捗しているところです。そして、返還条件の中核は辺野古への移設であり、その他の条件は、これに関連したものです。したがって、辺野古移設完了後も、普天間飛行場が返還されないという状況は全く想定されません。

普天間飛行場の返還条件と進捗状況

最後に

住宅や学校で囲まれ、世界で最も危険と言われる普天間飛行場が固定化され、危険なまま置き去りにされることは、絶対に避けなければなりません。これは、地元の皆様との共通認識であると思います。

辺野古移設が唯一の解決策であるという方針に基づいて着実に工事を進めていくことこそが、普天間飛行場の一日も早い全面返還を実現し、その危険性を除去することにつながると考えています。

防衛省としては、普天間飛行場の一日も早い全面返還を実現すべく、引き続き、作業の安全に留意した上で、関係法令に基づき、自然環境や住民の生活環境にも最大限配慮しつつ、辺野古移設に向けた工事を着実に進めてまいります。

また、普天間飛行場の危険性除去と辺野古移設に関する考え方や、沖縄の負担軽減を目に見える形で実現するという政府の取組について地元の皆様に丁寧に説明しつつ、全力で取り組んでまいります。