防衛省・自衛隊の取組をより簡潔に分かりやすくお伝えするため、「防衛省・自衛隊に関する質問」という取組などをQ&A形式で紹介する資料や、両面印刷等することで1枚の紙に印刷できる分量で作成したパンフレット等を掲載しています。
目次
防衛省・自衛隊に関する質問
パンフレット等資料
防衛省・自衛隊に関する質問
Q43 「電波は限られた資源」、「利用できる周波数は有限」と聞くけど、自衛隊は必要な電波を確保しているの?
A 平素から武力攻撃事態等に至るまで、自衛隊と自衛隊以外の機関の電波利用の両立を図りつつ、自衛隊の電波を確保することがとても重要です。これまでも、以下のような取組を行い、自衛隊に必要な電波を確保してきています。
-防衛省による電波確保の取組-
平素:電波を発する装備品を新たに導入する際、総務省に対して使用する電波を申請。総務省は、自衛隊と自衛隊以外の期間の間で電波干渉等が生じないか技術的に確認。平素から、このプロセスを通じ、自衛隊と自衛隊以外の機関の電波利用の両立を図りつつ、自衛隊の電波を確保。
災害などの緊急時:仮に電波が緊急に追加で必要となった場合でも、防衛省と総務省の間では平素から次のように緊密に連携しており、自衛隊に必要な電波の速やかな確保が可能。
- 緊急時に追加で使用する可能性がある電波をあらかじめ共有
- 24時間連絡が取れる体制を構築
武力攻撃事態等:武力攻撃事態における特定公共施設等の利用に関する法律(特定公共施設利用法)に基づき定められる「電波の利用指針」により、自衛隊による電波の優先利用が可能。
今後、無人機の活用促進など、自衛隊の電波所要の更なる拡大が見込まれます。電波は限られた資源ですが、このような中でも、自衛隊と自衛隊以外の機関の電波利用の両立と、自衛隊に必要な電波の確保を同時に実現するため、令和4年度、防衛省と総務省の間に調整枠組を新たに設置しました。総務省をはじめ、関係省庁と緊密に連携し、今後とも自衛隊に必要な電波を確保していきます。
Q42 電磁波領域で何をやっているの?
A 防衛省・自衛隊は、電磁波領域の優勢の確保のため、電子戦能力の強化に取り組んでいます。
-電子戦能力強化の例-
- 電子妨害能力の強化
妨害電波の発射など、相手方のレーダー利用や通信を無効化する能力を有する装備品を整備
- 電子戦支援能力の強化
相手方が利用する電波を収集・分析する能力の向上が図られた装備品を整備
Q41 電磁波と安全保障はどう関係しているの?
A みなさんが利用されているスマートフォン、Wi-Fi、位置情報サービス、これらは全て電磁波を利用しています。防衛分野でも、目標を探知するレーダーや衛星通信、ミサイルの誘導などで電磁波が欠かせません。電磁波は、自衛隊が能力を発揮するための重要な基盤となっています。
電磁波領域は、現在の戦闘様相の攻防の最前線となっています。例えば、ロシアによるウクライナ侵略では、電波利用の妨害が観測されたと指摘されているほか、電波を用いる無人アセットが活用されています。
Q40 宇宙分野で何をやっているの?
A 防衛省・自衛隊では、宇宙優勢を確保すべく、宇宙領域把握(SDA)態勢の整備を推進するとともに、
- 宇宙作戦群の新編
- JAXAとの連携強化
- 航空自衛隊を航空宇宙自衛隊へ(令和9年度までに)
など組織体制の強化を進めています。
また、令和5年12月、宇宙安全保障に必要な政策・運用・体制・法的な課題等に関する各種議論を実施する多国間枠組みである、連合宇宙作戦(CSpO)イニシアチブへ参加するなど、今後も、宇宙領域を活用した情報収集等の能力を含めた宇宙作戦能力の強化を進めていきます。
Q39 宇宙分野で何をやっているの?
A 防衛省・自衛隊では、「つなぐ」「とらえる」「まもる」という3つの方向性で様々な取組みを進めています。今回は、宇宙利用を「まもる」について、紹介します。
-宇宙利用を「まもる」-
課題:衛星軌道の混雑化対衛星兵器や妨害手段の開発・利用が進展
方向性:SDA(宇宙領域把握)を基盤として、サイバー攻撃を含む妨害から自衛隊の宇宙利用を「まもる」
<SDAの強化>
- 2026年度までの打上げに向けてSDA衛星の製造・取得等を行う。地上のレーダーやシステムの整備も行い、米軍や民間事業者との情報共有を行う。
Q38 宇宙分野で何をやっているの?
A 防衛省・自衛隊では、「つなぐ」「とらえる」「まもる」という3つの方向性で様々な取組みを進めています。今回は、宇宙から「とらえる」について、紹介します。
-宇宙から「とらえる」-
課題:従来のミサイル防衛システムのみでは脅威への対応が困難
方向性:地上目標やHGV(極超音速滑空兵器)等を宇宙センサで「とらえる」
<目標の探知・追尾能力の獲得を目的とした衛星コンステレーションの構築>
- 宇宙領域にある衛星から画像を高頻度で撮像し、目標情報の一層効果的な収集を行う。
<衛星を活用したHGV探知・追尾等の対処能力の向上に必要な技術実証>
- 宇宙機に赤外線センサ等を搭載し、HGVを模擬した熱源の観測や背景情報を取得する実証を行う。
<宇宙領域の活用に必要な共通キー技術の先行実証>
- 衛星で取得した情報をリアルタイムで処理し、他の衛星に高速で伝送するための技術を早期に確立するための技術実証を行う。
Q37 宇宙分野で何をやっているの?
A 防衛省・自衛隊では、宇宙分野において「つなぐ」「とらえる」「まもる」という3つの方向性から様々な取組みを進めています。今回は、宇宙から「つなぐ」について、紹介します。
-宇宙から「つなぐ」-
課題:作戦の現場において通信の安全性や容量が不足している
方向性:意思決定に資する情報伝達やデータ伝送において、保全・容量・遅延の改善により情報を「つなぐ」
<PATS(Protected Anti-jamTacticalSATCOM)加盟の実証>
- 米国を中心とする加盟国間で通信帯域を共有する枠組であるPATSへ参加するため、通信機材の整備・実証を行い、通信の抗たん性を確保する。
<次期防衛通信衛星の開発・製造>
- 防衛衛星通信「きらめき」の後継機となる次期防衛通信衛星の開発・製造を行う。
- 妨害に対して抗たん性を有する技術等に関して技術実証を行う。
<低軌道通信衛星コンステレーションのサービス利用>
- 民間コンステレーションの通信サービスの利用について、陸・海・空各部隊における実証を行い、通信容量の不足に対応する。
Q36 宇宙分野の情勢はどうなっているの?
A 主要国は、早期警戒、通信、測位、偵察機能を持つ各種衛星の能力強化や機数増加に注力しています。
昨今は、中国の増加が顕著であり、2012年からの11年間で約 4.9倍に急増しています。
宇宙領域は今や国民生活や安全保障の基盤であり、宇宙利用の優位を確保することは、日本にとって極めて重要です。
防衛省・自衛隊では、宇宙領域を活用した情報収集等の能力を含めた宇宙作戦能力の強化を進めています。
Q35 装備品の研究開発ってどういうことをしているの?
A いかなる事態においても国民の生命と財産を守り抜くよう、日本の技術的優越を確保し、先進的な防衛装備品を創製するため、
- 自衛隊のニーズに対応した先進的な研究
- 技術シーズに基づく将来性の高い技術提案
- 先進技術を取り込んだ装備品の試作と試験評価
といった取組みを行っています。
近年、格段に速度を増す安全保障環境の変化に対応するための優先事項として以下の内容に取り組んでいます。
- 次期戦闘機(F-2後継機)の開発
日英伊で共同開発し、3カ国の優れた技術を結集
- 重要技術への重点的な投資
スタンド・オフ電子戦機開発、サイバー攻撃へ対処する技術研究、UUV技術に関する研究など
- 研究開発期間の大幅な短縮
装備品開発のブロック化、モジュール化、オープンアーキテクチャ化といった手法の取組を推進
- 民生技術の積極的な活用
革新技術とこれまでの技術を組み合わせ最先端技術を早期獲得するための研究開発への取組
Q34 実際に企業が防衛産業から撤退した事例はあるの?
A 企業の規模を問わず、防衛産業からの撤退や防衛関連事業の縮小が起きています。
特に、特定の部品を製造する唯一の事業者が撤退する場合には、代替調達先の確保が必須となります。
防衛産業はいわば防衛力そのものであるため、国内の防衛生産・技術基盤を維持・強化するために、防衛産業の取組を促進するための財政措置・資金の貸付けなど、防衛力整備の一環としてより踏み込んだ取組を実施していきます。
Q33 自衛隊の装備品を作れるのは、大企業だけなのでは?
A 自衛隊の装備品は、大企業だけで製造できるものではなく、様々な分野の多くの企業が関わっています。
装備品の製造には多くの企業が関わるため、防衛力の抜本的強化は国内産業にも寄与しています。
-装備品(戦車)の参画業種の例-
【プライム企業 機械業】
- 車体部→自動車部分品業・附属品製造業 等
- 主砲/履帯→鋳鍛造品業・その他の鉄鋼製品製造業 等
- 射撃装置→産業用電気機械器具製造業 等
- 制御・通信機器→電子計算機・同附属装置製造業 電子部品・デバイス・電子回路製造業 等
- 照準・測距装置→光学機械器具・レンズ製造業 等
- 計測機器→その他の業務用機械器具製造業 等
- その他全般→ゴム製品製造業 等
戦車に関連する企業は、約1,300社ともいわれている。
Q32 自衛官独自の手当にはどんなものがあるの?
A 職務の複雑・困難性が高く、勤務条件が著しく特殊な配置には配置手当を支給しています。
その他、著しく危険、困難な勤務には特殊勤務手当を支給しています。
自衛官の給与制度は防衛省職員の給与等に関する法律を基本法とし、自衛官の任務の特殊性を考慮して独自に規定されています。
Q31 自衛官は一般の国家公務員と比べて早く退職するけど退職後の生活は大丈夫?
A 退職後の生活に不安を抱くことなく、安心して勤務してもらうため、退職する際の再就職支援を行っています。
また、一般の国家公務員より早く定年を迎える自衛官には、退職金とは別に、若年定年退職者給付金が支給されます。
雇用主たる国が責任をもって退職後の生活基盤の安定を図ることは、多くの方に自衛官を目指していただくためにも重要です。
Q30 自衛官に定年ってあるの?
A 自衛隊は精強性を保つため、一般の国家公務員とは異なり、多くの自衛官は、50代半ば以降【若年定年制自衛官】または20代~30代半ば【任期制自衛官】で退職することとなります。
防衛省・自衛隊では、雇用主たる国の責務として、退職する自衛官に対する再就職に有効な職業訓練などの様々な再就職支援施策を行っています。
Q29 自衛隊は海外でどのような活動をしているの?
A 近年では、以下のような活動を行っています。
- ソマリア沖・アデン湾における海賊対処行動
- 海賊行為に対処するため、護衛艦による民間船舶の護衛や海域の警戒監視、固定翼哨戒機P-3Cによる海域上空からの情報提供等
- 中東地域における情報収集活動
- 中東地域における日本関係船舶の安全確保のため、護衛艦や固定翼哨戒機P-3Cによる情報収集活動を実施
- 南スーダンにおける国際平和協力業務
- 司令部要員を派遣
- トルコにおける国際緊急援助活動
- B-777特別輸送機及びKC-767空中給油・輸送機による物資輸送を実施
- 在イスラエル邦人等の輸送
- 2023年10月および11月、イスラエル・パレスチナ情勢の悪化を受けて、KC-767空中給油・輸送機により邦人等を輸送
Q28 反撃能力はどうして必要なの?/反撃能力は憲法違反にならないの?
「反撃能力はどうして必要なの?」
A 近年日本の周辺では、質・量ともにミサイル戦力が大きく増強されており、今後、既存のミサイル防衛網だけでこれらのミサイルの脅威に完全に対応することが難しくなりつつあります。
こうした状況を踏まえ、
- 相手にミサイル発射を思いとどまらせる
- 日本に被害が出ないようにする
ために反撃能力を保有する必要があります。
「反撃能力は憲法違反にならないの?」
A 反撃能力は、日本に対する弾道ミサイルなどによる攻撃を防ぐために、やむを得ない必要最小限度の措置として、憲法及び国際法の範囲内で行使するものです。
また、武力攻撃が発生していない段階で自ら先に攻撃する「先制攻撃」は許されないものであり、もちろん日本は行いません。
Q27 最近よく耳にするけど…反撃能力ってなに?/スタンド・オフ防衛能力ってなに?
「最近よく耳にするけど…反撃能力ってなに?」
A 反撃能力とは、武力攻撃そのものを抑止するためのものです。
弾道ミサイルなどによる攻撃が行われた場合、ミサイル防衛により飛来するミサイルを防ぎつつ、相手からの更なる攻撃を防ぐために、やむを得ない必要最小限度の自衛の措置として、相手の領域において日本が有効な反撃を可能とする、スタンド・オフ防衛能力などを活用した自衛隊の能力です。
「スタンド・オフ防衛能力ってなに?」
A スタンド・オフ防衛能力とは、攻撃されない安全な距離から相手部隊に対処する能力です。
Q26 隊員がトイレットペーパーを自費で購入しているって本当?
A 令和2年度下半期以降、日用品等の自費購入等は確認されていません。
- 令和2年度下半期(令和2年10月~令和3年3月)以降に実施された内部規則に基づく陸海空自衛隊に対する調査において、個人の嗜好のためや個人で所有するためといったものを除き、日用品等の自費購入等は確認されていません。
令和5年度予算においては、トイレットペーパーを含む日用品等の整備のための経費として約12.8億円を計上しています。
この金額は、1年間を通して、日用品等の自費購入等が発生していないことが確認された令和3年度予算と同等以上の規模です。
令和6年度予算案においても約13.6億円を計上しています。
今後も、自費購入等に関する実態調査を継続的に行い、引き続き、生活・勤務環境の改善に取り組んでまいります。
Q25 古い自衛隊宿舎をどうにかしてあげてほしいのですが。
A 外壁改修及び内装のリノベーションなどの大規模な全面改修などを計画的に実施していくことで、居住環境を長期にわたり一定に維持していくこととしています。
このための経費として令和5年度予算では、令和4年度予算の約1.2倍となる約210億円を計上し、しっかりと対応しています。
令和6年度予算案においても約295億円を計上しています。
(令和5年度予算の約1.4倍)
今後も引き続き、既存宿舎の老朽化対策に着実に取り組んでいきます。
Q24 エアコンがない部屋があると聞きました。隊員の健康が心配です。
A エアコンや空調設備は、その老朽化や不具合が隊員の健康にも直接影響するため、早期に解消できるよう対応しています。
現に不具合が生じており、早急に対応が必要な空調設備は、令和5年度に約429億円を計上し、集中的に整備を進めています。
令和6年度予算案においても約339億円を計上しています。
(エアコン:約9億円 大規模空調機の整備:約330億円)
引き続き、エアコンや空調設備の整備を進めるため、必要な予算の確保に努めていきます。
Q23 防衛省はサイバー分野で何を取り組んでいるの?
A サイバー攻撃を受けると、情報が勝手に抜き取られたり、システムの動作を妨害されたりしてしまう可能性があり、国の防衛に重大な影響を及ぼします。
こういったことを防ぐためにも、サイバー攻撃への対処能力を向上することは非常に重要です。
こうした中、防衛省・自衛隊においては、以下の取組を行っています。
- 2022年3月に自衛隊サイバー防衛隊という専門部隊を設置し、2027年度までに防衛省・自衛隊全体のサイバー専門部隊を約890人から約4,000人に拡充
- サイバー教育基盤の拡充や高度な知識・知見を持つ部外人材の活用を推進
- 情報システムの運用開始後も常時継続的にリスクを分析・評価し、必要なセキュリティ対策を実施するリスク管理枠組み(RMF)を導入
Q22 ロシアとウクライナの軍事力の差は?
A ロシアによるウクライナ侵略については、
- ウクライナは、ロシアに侵略を思い止まらせるような十分な防衛力をもっていなかった
- ウクライナは、同盟国を持っておらず、核の傘にも守られていなかった
といったことからロシアを抑止することができず、数万人が死傷しました。
こうしたウクライナ侵略の経緯から、国民の命と平和な暮らしを守るための教訓として、次のようなことが挙げられます。
- 「力による一方的な現状変更は困難」と思わせる抑止力が必要
- そのためには相手の「能力」に着目した防衛力(備え)が必要
Q21 地球規模の課題である気候変動、防衛省は何か取り組んでいるの?
A 防衛省・自衛隊においては、
- 防衛省気候変動タスクフォースを設置し、気候変動が今後与える影響に対して的確に適応・対応するために今後推進すべき具体的な施策を掲げた防衛省気候変動対処戦略を策定しています。
- この文書に基づき、気候変動への対処を防衛力との維持・強化と同時に進めていきます。
例えば、
SAF(持続可能な航空燃料)を政府専用機に、さらには戦闘機(F-2及びF-15)にも使用し、温室効果ガスの排出削減に取り組んでいます。
- 「SAF(Sustainable Aviation Fuel)」
主にバイオマス由来原料や使用済み食用油などを原料とする航空燃料。従来の石油系燃料と比較し、約80%の温室効果ガス排出の削減効果がある。
Q20 台風や地震など災害があったとき自衛隊はどのような活動をするの?
A 台風や地震の災害派遣にあたる部隊は、人命救助/行方不明者の捜索/給水支援/入浴支援/物資の輸送など、様々な活動を行います。
なお、
- 地震・津波・豪雪などの自然災害
- 火災・海難・航空機の墜落などの人為的な災害
- 離島地域などからの緊急患者の空輸
についても、自衛隊の災害派遣を行う場合があります。
令和4年度の災害派遣の件数は、381回でした。
都道府県知事が人命・財産の保護のために必要があるとして自衛隊の災害派遣を要請した場合には、防衛大臣等が部隊を派遣します。
また、全国各地の駐屯地や基地に災害が起きればすぐに対応する部隊を待機させて、迅速な情報収集、人命救助等の初動対処にあたり、国民の生命と財産の保護に全力を尽くします。
Q19 北朝鮮のミサイル発射のニュースで聞いたけどロフテッド軌道の弾道ミサイルって何?
A 弾道ミサイルの飛翔パターンのうち、
- 最も効率的な飛翔パターンを、ミニマムエナジー軌道
- ミニマムエナジー軌道と比べ、高度を高くとり、垂直に近い角度で落下するため、対処が困難な飛翔パターンを、ロフテッド軌道といいます。
ロフテッド軌道で打ち上げられた軌道ミサイルを迎撃するには、極めて高い迎撃能力を持つイージス・システム搭載艦が必要になります。
Q18 日本へのミサイル攻撃にどうやって対応するの?
A 日本に向けて弾道ミサイルが発射された場合、次のような対応により、日本全体を弾道ミサイルから守れるようにしています。
- 地上レーダーやイージス艦のレーダーによって、探知・追尾
- イージス艦からミサイル(SM-3)を発射し、宇宙空間で撃ち落とす
- 宇宙空間で撃ち落とせなかった場合、地上に配備されているミサイル(PAC-3)で撃ち落とす
大気圏内を音の速さの何倍もの速度で飛翔する極超音速滑空兵器(HGV)は、通常の弾道ミサイルと比べて、ミサイルの探知が遅れ、迎撃可能な時間が短くなり、軌道の予測や着弾位置の予測が困難になります。
こうした新たな脅威に対処するため、より迎撃能力の高い装備品(中距離地対空誘導弾(改善型)能力向上型、SM-6等)を整備していきます。
Q17 北朝鮮の弾道ミサイル開発はどのくらい進んでいるの?
A 北朝鮮は、以下のようにミサイル関連技術や、実戦的なミサイル運用能力を向上させています。
【ミサイル関連技術の向上】
- 発射の秘匿性・即時性向上
-
- 車両、鉄道、潜水艦等、様々な場所から発射
- ⇒通常の発射台からの発射よりも、いつ、どこから発射するかを事前に把握するのが困難
- ミサイル防衛網の突破能力の向上
-
- 低い高度を変則的な軌道で飛ぶ弾道ミサイルの開発
- 「極超音速滑空飛行弾頭」の開発
- ⇒通常の弾道ミサイルよりも探知や迎撃が困難
- 長射程ミサイルの開発
-
- ICBM級「火星15」「火星17」「火星18」は、弾頭重量等によっては射程14,000km~15,000km以上(米国全土を含む長さ)に及ぶ
- ⇒米国に対する抑止力を確保したと一方的に認識し軍事的挑発の増加・重大化につながる可能性も
【ミサイル運用能力の向上】
- 複数発の同時発射
- 発射間隔が1分未満の発射
- 異なる場所から発射し、特定の目標に命中させることを追求
Q16 アメリカ以外の国とはどういう協力をしているの?
A インド太平洋地域は、世界の人口の半数を擁していて、主要なシーレーンが通っている重要な地域です。
この地域を、法の支配に基づく自由で開かれたものとすることで、地域全体、ひいては世界の平和と安定につながります。
こうした「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の考え方の下、防衛省・自衛隊は様々な取組を進めています。
Q15 日米同盟はなぜ必要なの?
A 現在の国際社会では、どの国も一国だけで自国の安全を守ることは難しくなっています。
こうした中、日米同盟があることにより、相手国は自衛隊のみならず世界一の軍事力を持つ米軍と直接対決することを覚悟しなければならないこととなります。
これによって、「日本を攻撃するのはやめておこう」と思いとどまらせることができます。
特に日本の周りには大きな軍事力を持っている国家が集中しています。
こうした中で、日本にいる米軍は、日本と米国の利益を守るだけでなく、地域の国々に大きな安心をもたらす存在でもあります。
Q14 安全保障環境が厳しいというけど…ロシアの動きはどう変わったの?
A ロシアは、核戦力を含む各種装備の近代化を推進し、北方領土及び千島列島に新型装備を配備するなど軍備を強化しています。
また、中国との共同活動を活発化させています。
Q13 安全保障環境が厳しいというけど…中国の動きはどう変わったの?
A 中国は、国防費の高い水準での増加を背景に、海上・航空戦力や核・ミサイル戦力を中心に、軍事力を広範かつ急速に強化しています。
中国は、尖閣諸島周辺において、力による一方的な現状変更の試みを長年にわたり執拗に継続しています。
また、2022年8月には、中国が発射した弾道ミサイル9発のうち、5発が日本のEEZ内に着弾しました。
Q12 安全保障環境が厳しいというけど…北朝鮮の動きはどう変わったの?
A 近年、北朝鮮による弾道ミサイル等発射事案は急増しており、日本上空を通過する事案も発生しています。
北朝鮮は、核・ミサイル開発を急速に進展させています。
また、弾道ミサイルに核兵器を搭載して日本を攻撃する能力も保有しているとみられます。
Q11 防衛産業の課題解決のために何をするの?
A 国内の防衛生産・技術基盤を維持・強化するために、防衛力整備の一環として、より踏み込んだ取組を実施していきます。
力強く持続可能な防衛産業の構築
- 企業の努力を反映した利益となるように改善し、防衛事業を魅力化
- 企業における製造工程効率化を促進するための財政措置・資金の貸付け
- 企業間の事業承継等を円滑化するための財政措置・資金の貸付け
様々なリスクへの対処
- 原料等の供給の途絶や情報の窃取等のリスク調査、リスクを低減するための財政措置・資金の貸付け
- 企業が防衛産業サイバーセキュリティ基準に適合するための投資を促進するための財政措置
防衛産業の販路の拡大等
- 防衛装備移転三原則を始めとする制度の見直しについての検討、装備移転特有のコストに対する助成金・資金の貸付け
Q10 防衛産業を取り巻く課題は?
A
事業としての魅力の低下
多大な経営資源の投入が必要。一方、収益性は低い傾向にあり、企業にとって魅力が低下。
産業全体の活力の低下
魅力が低い産業では事業撤退や、企業による新たな投資、新規参入も低調に。
様々なリスクに満ちた事業環境
- サイバー攻撃のリスクなど、様々なリスクが顕在化
- サプライチェーン上のリスク
(原材料等の供給途絶や悪意あるソフトウェア等による情報の搾取等)
販路の限定性
基本的に顧客は防衛省・自衛隊に限定されているため、企業にとっての魅力は低下の一途。
こうした防衛産業を取り巻く課題がある中、これらの課題に適切に対応し、防衛生産・技術基盤を維持・強化していくことが急務です。
Q9 防衛産業はなぜ重要なの?
A
- 防衛力の中核は「防衛装備品」と「自衛隊員」です。
高度な防衛装備品を保有して、それを適時適切に運用することで初めて、自衛隊は任務遂行が可能になります。
- 防衛産業はいわば防衛力そのものです。
防衛装備品の製造等を担う防衛産業なくして我が国の防衛力は発揮できません。
急速に進展する科学技術が安全保障の在り方を根本的に変化させる中、防衛装備品の安定的な調達を確保するため、国内の防衛生産・技術基盤の維持・強化が不可欠です。
Q8 自衛隊って男社会のイメージだけど女性自衛官はどのくらい活躍しているの?
A 2023年3月末現在、約2万人(全自衛官の約8.7%)の女性自衛官が活躍しています。
意欲と能力のある女性職員の活躍を推進するために以下の取組を行っています。
- 活躍推進のための人事管理方針の制定
機会均等の更なる徹底、本人の意欲と能力・適性に基づく適材適所の配置
- 女性自衛官の配置制限の解除
配置制限を全面的に解除(戦闘機操縦者、空挺隊員、潜水艦の乗員など)
- 「母性保護」の観点から女性が配置できない部隊を除く
- 女性職員の採用・登用の拡大
女性職員の採用・登用の数値目標を制定し、計画的に採用・登用を拡大
Q7 自衛隊の仕事は特に厳しそうだけど…働き方改革できるの?
A 防衛省・自衛隊では、2021年にワークライフバランス推進及び女性の活躍推進の改革を柱とする新たな取り組み計画を策定し、2023年3月には、
- テレワークの推進
- ペーパーレス化の推進
- 勤務時間管理の徹底
- 男性の育児休暇取得推進
- あらゆる職員が働きやすい職場環境の確立
- を重点的に進める旨の改定を行い、取組を一層推進しています。
戦後最も厳しく複雑な安全保障環境の中で、各種事態に持続的に対応できる態勢を確保するためには、職員が心身ともに健全な状態で、高い士気を保って、その能力を十分に発揮しうる環境を整えることが必要です。
今後もワークライフバランスや働きやすい環境の確立を推進していきます。
Q6 防衛力を抜本的に強化すると日本は軍事大国になってしまうの?
A 日本は、以下の考え方で国の防衛に取り組んでいます。
- 専守防衛
-
- 相手から武力攻撃を受けたとき初めて防衛力を行使し、
- その態様も自衛隊のための、必要最小限にとどめ、
- また、保持する防衛力も自衛のための最小限度のものに限る
- など、憲法の精神にのっとった受動的な防衛戦略の姿勢を維持する
- 軍事大国とならないこと
ほかの国を脅かすような強大な軍事力を持たない
- 非核三原則
「核兵器を持たず、作らず、持ち込ませず」という原則を堅く守る
- 文民統制の確保
自衛隊が国民の意思によって整備・運用されることを確保するため、国会、内閣、防衛省の各レベルで、自衛隊を統制する仕組みを採用
こうした考え方を堅持しつつ、相手の能力と新しい戦い方に着目して防衛力を抜本的に強化します。
これによって、日本を断固として守り抜くという意志と、十分な能力があることを認識させ、相手に日本を侵略する意思を持たせないことにつながっていきます。
Q5 防衛省・自衛隊は何をしているの?
A 国民の生命・財産と国の領土・領海・領空を守り抜くほか、国内外の大規模災害や国際平和協力活動を含む様々な事態に対応しており、日本の「最後の砦」として、重要な役割を果たしています。
防衛省・自衛隊は日本の防衛という任務を果たすため、実力組織である陸・海・空自衛隊のほか、防衛大臣を補佐する本省内部部局、統合、陸上、海上、航空幕僚監部・防衛装備庁など、様々な組織で構成されています。
Q4 増額する防衛費で海外製品を大量に買うことになるの?
A これまでの防衛費では、国内向け支出の割合が約8~9割を占めており、令和5年度予算でも約8割が国内向けの支出となっています。
このように、防衛力の抜本的強化は国内企業への波及効果や雇用創出の効果にもつながります。
Q3 防衛費って結局戦車や戦闘機をたくさん買ってるの?
A 防衛費=装備品(戦車や戦闘機など)というイメージを持たれやすいですが、令和5年度予算全体のうち、装備品の購入費は約21%です。
最も割合が大きいのは、人件・糧食費で約33%となっています。
人件・糧食費とは、隊員の給与、退職金や駐屯地等で居住する隊員のための食事などの経費です。
Q2 日本の防衛費は、主要国と比べてどのくらい?
A 2022年度の国防費の対GDP比は、主要国の中には2%を上回る国もあるのに対し日本は1%未満です。(※)
- 各国発表の国防費(現地通貨)とIMF発表のGDP(現地通貨)を用いて試算。なお、各国発表の国防費は、内訳の詳細が必ずしも明らかでなく、予算制度も異なること等から、その多寡を正確に比較することは困難です。
Q1 安全保障環境が厳しいというけれど…戦争はどうすれば防げるの?
A 最も重要なのは、他国との外交によって戦争を未然に防ぐことです。
しかし、外交努力を尽くしても戦争に至ってしまう場合があります。
このため、国を確実に守り抜く力を持って、他の国に「日本を攻めても目標を達成できない」と思わせることが必要です。
そのため国民の命や平和な暮らしを守るために、相手の能力や新しい戦い方に着目した防衛力の抜本的強化を行う必要があります。
パンフレット等資料
主要装備品の紹介
自衛官になる(多種多様なコース)
活躍する自衛隊員(世界)
活躍する自衛隊員(国内)
まるわかり!日本の防衛
~ はじめての防衛白書 ~ (第3版)
令和5年版防衛白書
防衛費の使い方(グラフィカルサマリー版)
10年の変化(わが国周辺の安全保障環境)