弾道ミサイルとは、ロケットエンジンにより発射された後、弾道軌道、すなわち放物線軌道を描いて飛翔するものを指します。
北朝鮮は、核兵器の小型化・弾頭化を実現しているとみられるとともに、我が国を射程におさめる弾道ミサイルを数百発保有しています。昨今では、ミサイルの長射程化、多数のミサイルを同時に発射する能力、正確に目標を狙う能力、奇襲攻撃能力、低空を飛翔して探知を遅らせる新型ミサイルなど、ミサイル技術と攻撃能力の向上を図っています。
また、昨今では、ミサイル防衛網の突破を企図した極超音速兵器をはじめとする新たな脅威が出現しています。例えば、一部の国で導入が進められているHGV(Hypersonic Glide
Vehicle)は、弾道ミサイルによって打ち上げられた後、超高速で低高度を飛行し、高い機動性を有することから、一般論として、ミサイル防衛システムによる迎撃がより困難とされています。
我が国では、ミサイル攻撃などへの対応に万全を期すため、2004(平成16)年度からミサイル防衛(MD)システムの整備を開始しました。
イージス艦への弾道ミサイル対処能力の付与やペトリオット(PAC-3)の配備など、弾道ミサイル攻撃に対するわが国独自の体制整備を着実に進めています。
自衛隊は、レーダー、人工衛星、航空機、艦艇などによって、今この瞬間も、我が国周辺の警戒監視にあたっています。
我が国に飛来する弾道ミサイルに遅滞なく対応するため、JADGE(ジャッジ)と呼ばれる自動警戒管制システムが、全国各地のレーダーがとらえた情報を集約・処理しています。これにより、着弾地点の計算などを自動的に行い、はるか洋上のイージス艦などに瞬時に迎撃を命令することができます。
日本に向けて弾道ミサイルが発射された場合、これを迎撃するのは、海上自衛隊のイージス艦や航空自衛隊のPAC-3です。イージス艦は弾道ミサイルが大気圏外を飛行している段階(ミッドコース段階)で迎撃する一方で、PAC-3は大気圏に再突入した後の最終段階(ターミナル段階)で迎撃します。現在、イージス艦の能力向上増艦や、能力向上型PAC-3(PAC-3MSE)の導入を進めており、さらなるMD体制の強化に取り組んでいます。
極超音速兵器などを始めとする新たな脅威が出現している中、防衛省では、センサーやシューターの能力を高めていくほか、ネットワークを通じて、ミサイル防衛用の装備品とその他防空のための装備品を一体的に運用する「総合ミサイル防空」強化のための取組みを進めています。
こうした取組みが進展すれば、例えば、自らのセンサーで目標を捕捉していなくても、他のセンサーからの情報を用いて迎撃ミサイルを誘導することが可能となって防護範囲が拡大するなど、防空能力の向上が期待されます。
2021年2月9日更新