日本は古くから海洋国家として歴史を刻んでまいりました。
国土面積では世界61位ですが、排他的経済水域(EEZ)の面積では
世界6位と広大な海洋に四方を囲まれております。
また、国民生活に必要不可欠な石油や天然ガスなどの
エネルギー資源や食料品を海上輸送に依存しており、
海路による貿易は物量ベースで99.8%を占めています。
そのため、我が国の発展において海洋の自由で安全な利用は
不可欠であり海上自衛隊の果たす役割も大きくなっています。
そのような環境下で海上自衛隊では周辺海域の防衛や
海上交通の安全確保を各国との共同訓練などの
安全保障協力を通じて取り組んでおり、佐世保地方隊においても
護衛艦隊隷下の艦艇への支援や基地の運用など
日々任務にあたっています。
総監紹介・挨拶
佐世保地方総監
海将 西 成人
新年明けましておめでとうございます。
皆さまにおかれましては、令和4年の新春を穏やかに迎えられたこととお慶び申し上げます。また、皆さまには、平素から自衛隊の諸活動に対し、深い御理解と温かい御支援、御協力を賜り厚く御礼申し上げます。
私は、昨年12月22日、第47代佐世保地方総監を拝命いたしました。西海鎮護の要として、帝国海軍からの歴史と伝統が息づくこの佐世保の地において、勤務できることは身に余る光栄であり、その重責に改めて身の引き締まる思いです。佐世保地方隊の指揮官として、海上自衛隊の良き伝統を受け継ぎ、今後とも即応態勢の維持・強化にまい進したいと考えていますので、何とぞ一層のご指導ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。
さて、我が国を取り巻く安全保障環境は、様々な課題や不安定要因が従来にも増して顕在化・先鋭化し、極めて厳しい状況となっております。純然たる平時でも有事でもない、いわゆるグレーゾーンの事態が長期にわたり継続する傾向にあり、今後、更に増加・拡大していく可能性があります。特に、我が国周辺においては、質・量に優れた軍事力を有する国家が存在し、軍事力の更なる強化や軍事活動の活発化の傾向が顕著となっており、既存の国際秩序とは相容れない独自の主張に基づく力による現状変更の試みを強行に推し進める国家も存在します。また、国内における自然災害の増加や、未だ終息の兆しが見えない新型コロナウイルス感染症も引き続き大きな懸念事項となっております。
このような状況下、海上自衛隊は、我が国の領域及び周辺海域を防衛し、海上交通の安全を確保し、そして我が国にとって望ましい安全保障環境を創出すべく、「有事への対応」のみならず、日夜「平素からの闘い」に取り組んでいます。具体的には、国際緊急援助活動、防衛交流、能力構築支援等の活動により、常に安全保障環境を改善し続け、脅威が顕在化することを防ぐ「環境の形成」、そして日々の警戒監視、海賊対処行動、各種共同訓練等の積極的な活動を通じて事態の発生とその悪化を防ぐ「平素からの対応」等がその闘いであり、また、国内においては、先に述べた各種自然災害等への災害派遣要請にも、迅速かつ適切に対応していくとともに新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止に取り組んでいます。
そして、佐世保地方隊は、この「平素からの闘い」の最前線を警備区として担任しているとの認識のもと、この闘いに勝利し続けるため、「精強・即応」を旨として各種能力の向上に努めております。
皆さまには、本年も引き続き海上自衛隊佐世保地方隊に多大なるご支援とご協力を賜りますようお願い申上げますとともに、今年一年が穏やかなる年となることを祈念いたしまして年頭のご挨拶とさせていただきます。
沿 革・編 成
佐世保地方隊の沿革及び編成について紹介します。
沿 革
当地佐世保は、明治22年7月に海軍鎮守府が設置され、初代長官に赤松則良海軍中将が着任しました。以来120余年にわたり西海鎮護の最重要港として発展してきました。
昭和28年9月16日保安庁法の施行に伴い、海上警備佐世保地方隊が発足し、佐世保地方総監部、下関基地及び佐世保基地警備隊をもって編成されました。昭和29年7月1日、防衛庁が創設され海上自衛隊となり、その後、部隊の改編等により現在の佐世保地方隊に至っています。
昭和 |
27年 |
海上警備隊発足 |
28年 |
佐世保地方隊新編 地方総監部、下関基地隊、佐世保基地警防隊(のちの佐世保警備隊)
鹿屋航空隊新編
|
29年 |
防衛庁設置法、自衛隊法施行、対馬連絡所新編 |
30年 |
鹿屋第2航空隊(のちの大村航空隊)新編 |
32年 |
第1駆潜隊新編 |
35年 |
第5駆潜隊新編、第11護衛隊新編 |
36年 |
佐世保補給所・工作所新編、鹿屋工作所新編、第13揚陸隊新編 |
37年 |
奄美基地分遣隊新編 |
40年 |
佐世保教育隊新編 |
41年 |
第21護衛隊新編 |
43年 |
総監部新庁舎移転(現庁舎) |
44年 |
下対馬警備所新編、『はるかぜ』佐地隊直轄艦 |
45年 |
佐世保造修所、衛生隊、対馬防備隊新編 |
46年 |
第34護衛隊新編、佐世保沖観艦式、『はるかぜ』第12護衛隊に編成替
|
48年 |
沖縄基地隊新編 |
50年 |
佐世保調査隊新編 |
51年 |
佐世保音楽隊新編 |
52年 |
佐世保水雷調整所新編、第11護衛隊佐世保に編成替 |
55年 |
佐世保地区病院(のちの佐世保病院)新編 |
62年 |
第21護衛隊佐地隊に編成替 |
63年 |
輸送艇1号編入 |
平成 |
3年 |
第39護衛隊(のちの第26護衛隊)新編 |
9年 |
佐世保史料館開館 |
15年 |
佐世保地方隊創設50周年、第3ミサイル艇隊新編 |
20年 |
第13護衛隊・第16護衛隊の新編 |
25年 |
佐世保地方隊創設60周年 |
30年 |
佐世保地方隊創設65周年 |
令和 |
4年 |
佐世保病院から佐世保衛生隊に編成替
輸送艇1号除籍
|
編 成
佐世保地方隊は、佐世保地方隊の中核として各部隊を総括する佐世保地方総監部をはじめとして、新入隊員の育成を担う佐世保教育隊、
警備区の監視及び港湾設備の運用等並びに機雷等の処分を実施する佐世保警備隊、弾薬等の補給整備を任務とする佐世保弾薬整備補給所、
艦船、武器から衛生器材に至る補給、整備、改善、研究に関する業務を行う佐世保造修補給所、官舎、売店、給食等、隊員の福利厚生を担当する佐世保基地業務隊、
佐世保地区隊員の衛生管理を主任務とする佐世保衛生隊、部内儀式、式典や広報活動における演奏を主任務とする佐世保音楽隊、
関門海峡、響灘、玄界灘の警戒・監視及び艦艇等に対する支援を任務とする下関基地隊、同じく沖縄周辺海域を担当する沖縄基地隊、
そして対馬海峡の警戒・監視及び艦艇等に対する支援を主任務とする対馬防備隊、
以上11の部隊で編成され、周辺海域の警戒監視等任務にあたっています。
佐世保地方隊隊歌等
『佐世保地方隊隊歌』及び『海のさきもり』をお聴きいただけます。
"佐世保地方隊隊歌"
作詞:萩原行友 作曲:片山正見
♪クリックして再生
-
黒潮しぶく国端の 国土の護り我等が使命
赤き血潮はたぎり立ち 今踏みしめる第一歩
あゝ我等海の男子ぞ これぞ佐世保地方隊
-
練磨の汗に微笑みて 己が任務を朝夕に
静かに果して海原を 眺むる彼方に大潮どよむ
あゝ我等海の男子ぞ これぞ佐世保地方隊
-
昇る朝日にもえ出づる 遠い我等の祖先達が
永遠に鎮るこの山河 ゆるがじ護らん海と空
あゝ我等海の男子ぞ これぞ佐世保地方隊
作詞者は昭和39年に退職した元1等海佐の萩原行友。作曲者は初代佐世保音楽隊長であり、後に第2代東京音楽隊長を務めた片山正見。
※令和2年校訂版では、「海の男子ぞ」を「海のさきもり」として収録した。
"海のさきもり"
作詞:江島鷹夫 作曲:山田耕筰
♪クリックして再生
- あらたなる光ぞ雲朱
き日本の
空を富嶽を仰
ぎて進
む
われらこそ海のさきもり
- くろがねの力ぞ揺ぎなき心
もて
起ちて鍛えてたゆまず行
かむ
われらこそ海のさきもり
- とこしえの平和ぞ風きよき旗
の下
同胞を国土を守らでやまじ
われらこそ海のさきもり
海上自衛隊の儀式の一つである自衛艦旗授与式のほか、諸儀式の執行者が必要と認める場合に演奏される。
歌詞は昭和27年警備隊歌公募の入選作で、作詞者の江島鷹夫とは海軍中尉であった岡本文治のペンネームである。作曲者は『赤とんぼ』などで知られる山田耕筰。