内倉統合幕僚長 記者会見
日時:令和8年9月11日(金)14:00~14:15
場所:防衛省A棟10階会見室
備考:定例会見
1.発表事項
本日は、インドネシア共和国における国際緊急援助活動についてお知らせいたします。インドネシア共和国で発生している山林火災への対応のため、陸上自衛隊のCH-47ヘリコプター3機を搭載した海上自衛隊輸送艦「くにさき」は、昨日10日に現地に到着しました。現在、派遣部隊は、消火活動の開始に向けた準備を進めており、現地における調整及び所要の準備が整い次第、CH-47ヘリコプターによる消火活動を開始する予定です。自衛隊といたましては、インドネシア共和国国防省と協力し、被災されたインドネシアの人々のために全力で取り組んでまいります。
2.質疑応答
記者:
冒頭発言に関連してお伺いさせていただきます。昨日、陸上自衛隊のヘリコプターを搭載した「くにさき」がインドネシアに入港したということですが、現在はまだ準備中とのことで、これから活動の見込みがありましたら教えてください。また、自衛隊としては初めて海外で消火活動に当たるということになるかと思います。改めて、この意義についてもお聞かせください。
統幕長:
まず、8月30日から約10日間かけ、約5,100kmの航程を航海し、現地に到着しました。途中、台風の影響による波やうねりによる揺れに苦しみながらではありましたが、現地に到着した部隊をインドネシア軍をはじめ、皆様が温かく迎えていただきました。それによって、隊員は大変士気が上がっております。また、受入れ式典の後ですが、私のカウンターパートでありますアグス・スビヤント国軍司令官も現地に赴いて、直接激励、そして謝意を伝えていただきました。一層、隊員はやる気になったと思います。そういった中で、現在、現地におきましては準備が整い次第、開始できるように最終調整に入っております。まずは自衛隊の活動に当たりまして、インドネシア軍等が把握するファイアー・ポイントと言われる火が燃えている場所、そして延焼方向、住家等への危険性ですとか、避難状況を踏まえ、どの地域を優先して自衛隊の活動地域に決定するのか、インドネシア軍との間で継続的に調整しております。また、CH-47ヘリコプターについては、現地の延焼範囲や、火の勢いに応じて、その運用要領を適時具体化、修正するとともに、自衛隊機だけでなくインドネシア軍も飛行することから、活動の範囲について丁寧に調整しております。加えまして、現地の状況として、地上車両の搬入ルートに制限があるため、本日より「くにさき」からエアクッション艇を使用し、車両等の搬入を実施しております。併せて、消火に当たり、ご指摘のあったとおり未経験の地であり、かつ、煙による見通しが悪いため、実施については安全を最優先として、日々の活動の可否や要領を判断するように努めてまいります。いずれにしましても、火災の状況、気象条件、並びにインドネシア側との調整を踏まえながら、隊員の活動基盤も整えつつ、山林火災の消火に少しでも寄与できるように、適切に判断して活動を実施したいと、このように考えております。意義については、午前中に大臣がおっしゃったことに付け加えることは特にございません。
記者:
今回派遣されているCH-47ヘリコプターは、国内の山林火災でも過去に数々の現場を踏んできていると思います。今回は未経験の地にはなりますが、国内で培ってきた消火活動の経験というものが、現地でどのように活きるか、お考えがありましたら教えてください。
統幕長:
ご指摘のとおり、近年、国内におきましても山林火災は頻発し、激甚化しております。激甚化と申しますのは、延焼範囲が広がったり、その期間が長くなっております。そのために、ヘリコプターを集中運用する場面が増えております。今回は3機投入しておりますが、現地におりますインドネシア軍のヘリコプター多数機と連携を行いながら、例えば、消火活動を行う場所を分けるとか、時間を分けて役割分担するとか、消火活動の効率性を保ちつつ、さらには安全確保、この両立を図りながらやっていくことになろうかと思います。これまでは自衛隊内のみ、自衛隊内でも陸上自衛隊のヘリコプター、航空自衛隊のヘリコプター、そして消防のヘリコプターとの連携等がありましたが、今回は国をまたいだ、国籍の違う軍隊との連携になるため、言葉の壁、そして文化の違い、基準の違い等々、そういったものを相互理解し、課題を克服しながらやっていかなければならないと考えています。
記者:
中東情勢に関して伺います。米中央軍がここ数日、イランが米空母や米駆逐艦をターゲットに、弾道ミサイルを発射したことを公表しています。中東に派遣されている海上自衛隊の護衛艦のオペレーションに影響はないのか、また、その活動海域の情勢認識に変化はないのか、教えてください。
統幕長:
お尋ねのありました米中央軍の発表については、私も承知しております。その上で申し上げますと、米国とイランとの攻撃の応酬が断続的に行われるなど、ホルムズ海峡をはじめとする地域の情勢が悪化していることを深く懸念しております。今、最も重要なことは、ホルムズ海峡の航行の安全確保を含む事態の早期沈静化が実際に図られることであり、引き続き重大な関心を持って情報収集に努めつつ、関連の動向を注視しております。いずれにしましても、自衛隊は関係省庁及び関係国と緊密に連携し、さらには米中央軍に派遣しております連絡官を活用するなど、情報収集に努めながら、中東地域で活動する部隊等の安全確保を図りつつ適切に対応してまいります。2点目にありました具体的な護衛艦の活動につきましては、現在も平常どおり、それぞれの任務に従事しております。その都度、情勢判断をし、安全を確保しながら活動しているところであります。
記者:
これまでイランは、中東にある米軍基地への攻撃を主眼に置いてきましたが、米空母を直接標的にしているということは、事態がエスカレーションしているようにも見えますが、この点はいかかでしょうか。
統幕長:
ご指摘の件についても、報道や米中央軍の発表で承知しております。総じて申しますと繰り返しになりますが、米国とイランとの間の攻撃の応酬が断続的に行われており、地域の情勢が悪化している全般情勢で、米軍の空母艦艇そのものに対する攻撃があったということだけをもって、情勢が悪化したかどうかということについては、私は判断する立場にないと考えております。
記者:
米海軍関係者が一部メディアに対し、日本も原子力潜水艦の保有を検討すべきと発言したと報じられています。米軍内にこうした日本の原潜保有に肯定的な声があることへの統幕長の受け止めを教えていただけますでしょうか。また、併せて、原潜については何ら決まっていないと思いますが、仮に導入するとした場合の作戦上の有用性や、逆に導入する難しさについて、お答えいただけるところがありましたらお願いいたします。
統幕長:
今お尋ねがありました報道については、私も承知しておりますが、米軍関係者の発言の逐一についてコメントすることは差し控えたいと思います。また、私自身の原子力潜水艦に対する考え方、そして仮に導入した場合といった仮定のご質問についてお答えすることは、現時点では差し控えたいと思います。
記者:
先週、防衛省が「イラン情勢でみられた戦い方や課題」に関する分析を初めてまとめて対外公表しました。その内容について何点か伺います。分析の中では、今回イランがホルムズ海峡への機雷敷設など、シーレーンの武器化を図る事によって圧倒的な軍事力の差がある米国との非対称戦を戦い抜いていると分析されています。この分析に対する統幕長の受け止めや見方を伺いたいのと、この「地の利を生かした戦い方」について、我が国に置き換えるとどのような戦い方が挙げられると今考えていらっしゃるのか。そして、この「地の利を活かした戦い方」が現代戦でも有効であるとされているイラン情勢の教訓を我が国の防衛政策に今後どのように活かしていけるとお考えか、この3点、お願いいたします。
統幕長:
まず1点目の、機雷等を敷設してホルムズ海峡、それからシーレーンを武器化したということについてですが、イランは戦略的要衝であるホルムズ海峡や、国土の縦深性を活用した地の利を活かした戦い方を展開しています。 特に、ご指摘のあった機雷敷設など、ホルムズ海峡の事実上の閉鎖は、アメリカのみならず、我が国を含む国際社会全体に大きな影響を与えたと考えております。
2つ目の地の利についてでありますが、地の利を活用することで、軍事的に優位な相手に対しても大きなコスト賦課が可能になるということは、この教訓から見て取れます。その上で私の考えを申しますと、我が国は四方を海に囲まれ、多くの島嶼と長大な海岸線を有する海洋国家であります。防衛すべき地域が広範である一方で、我が国への侵攻には必ず海を越えなければいけないという特性があります。私は、こうした国土の特徴を踏まえた上で、ウクライナやイラン等の海外の教訓を取り入れることが重要だと考えています。
具体例を申しますと、スタンド・オフ・ミサイルと無人アセットを組み合わせて活用し、早期・遠方での対処により隊員の命を守りながら、海上からの侵攻を阻止・排除すること。2つ目、海上・水中における有人・無人アセットを組み合わせた防衛網の構築によって、水中優勢を獲得すること。3点目、安価かつ大量の無人アセットを活用し、相手方に非対称的なコストを賦課すること。そして、既存の任務を担っていた有人アセットに加えて、ヒューマノイド・ロボットを含む無人アセットをより大胆に導入するといったことを実現していく必要があると考えております。
今申し上げたことが、3番目の回答にもなろうかと思います。いずれにしましても、世の中の軍事科学技術動向を見ますと、武器の長射程化、そしてそれぞれの装備品の高速化というのはありますが、距離というのは厳然たる事実であります。
ある専門家の方が、現在は地理だけが固定的なものだと言っています。すなわち、日本と周辺国を隔てるその距離というのは、地殻が変動しない限り固定的なものです。そこを何らかの手段で越えてくる、そこには必ず距離があります。距離を克服するということ、そういったところを相手に強いるということになるかと思います。そこを我々は活用するということになります。