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内倉統合幕僚長 記者会見

日時:令和8年6月5日(金)14:00~14:26

場所:防衛省A棟10階会見室

備考:定例会見

    1.発表事項

    本日は、私から2点、出張成果についてお知らせいたします。
     まず、5月28日から31日までの間、シンガポールにおいて実施されました第23回シャングリラ会合に参加いたしました。また、引き続き、6月1日及び2日にベトナム社会主義共和国を公式訪問いたしました。シャングリラ会合におきましては、各国との防衛相会談に同席するとともに、私自身もEU、NATOとの2機関、ブラジル、カナダ、ドイツ、マレーシア及びシンガポールとの2国間、並びに日・米・豪・比4か国の参謀総長等会談を行いました。なお、日米豪比会談では、参謀総長級の防衛協力の枠組みであります「日米豪比防衛協力委員会」に係る取決め、英語で Terms of Reference 略してTORと申します。これについて署名いたしました。
     次に、ベトナム社会主義共和国の公式訪問におきましては、5月初旬の首脳級・閣僚級のハイレベル交流の結果をフォローアップしますとともに、参謀総長等間の信頼関係を深化させ、2国間の防衛協力・交流の方向性について認識を共有し、その更なる深化の契機といたしました。
     今後とも、自衛隊は、同盟国・同志国との連携を強化し、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に寄与してまいります。
     私からは以上です。

    2.質疑応答

    記者:

    冒頭でお話いただいたシャングリラ会合に参加した成果を改めて教えて下さい。また、ASEAN諸国とアメリカとの信頼関係に関して、どのように感じられたかお伺いします。

    統幕長:

    まず1つ目のお尋ねですが、シャングリラ会合におきましては、インド太平洋地域などから多数の国防大臣等が一同に会しまして、地域の安全保障課題等について議論する権威ある国際会議でありまして、私も各防衛相会談に同席いたしました。
     成果に関し、2点申し上げます。
     まず、最大の成果は、大臣がスピーチでも話されましたが、「我が国は信頼、透明性、そして対話を重んじながら、同盟国・同志国との連携をより一層強化していること。」また、「頼りになるパートナーとして装備協力を含め、二国間・多国間の枠組みを活用し、各国の自主的な努力を結びつけ、地域の平和と安定に一層の貢献をしていくこと。」まさに、この活動に理解が得られたことだと考えております。具体的には、「日米同盟を基軸とし、同志国との抑止力・対処力を一層強化することで一致したこと。」、「日米豪、日米韓、日豪NZなどの枠組みで連携を確認したこと。」、また「防衛装備移転を通じました、地域の抑止力強化への期待が拡大したこと。」、これらが、具体的な成果だと考えております。
     2点目は、本会議に合わせまして、私自身も、ブラジル、カナダ、ドイツ、マレーシア、シンガポール及びEU、NATOの5か国・2機関との参謀総長等会談に加えまして、日・米・豪・比の枠組みで多国間参謀総長等会談を行い、現在の安全保障環境に関して、忌憚なく意見交換を行い、相互理解と信頼関係を一層深めることができたことだと考えております。中でも、日・米・豪・比の防衛協力の枠組みであります「日米豪比防衛協力委員会」は、昨年のシャングリラ会合において、防衛相会談で合意された共同声明に示された取組を具現化したものでありまして、この度TORに署名できたことは、大きな成果であると考えております。
     2つ目のお尋ねに関してですが、まず今回の会同におきまして南シナ海を含む地域情勢について、国際法の遵守、特に国連海洋法条約に基づく航行及び上空飛行の自由の重要性、力又は威圧による一方的な現状変更に反対するという認識は、ほとんどの参加者全員に共有されているかと思います。例えば、ベトナムのトー・ラム共産党書記長兼ねて国家主席は、現在の地域情勢について、「国際秩序の危機」と「戦略的信頼の危機」を始めとする3つ危機があるとしつつ、その対応として、「法の支配、対話、透明性」を重視する必要性を強調されました。また、小泉大臣も、力や威圧による一方的な現状変更の試みに反対しつつ、「信頼、透明性、対話」が自由で開かれた地域の基盤であるとの考えを示しました。
     このような共通の考え方を踏まえまして、同盟国・同志国との連携を強化し、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に引き続き貢献していく考えです。
     今、前半に述べましたのは、ASEANとアメリカの関係を申し上げる前に、東南アジア地域全般としてご説明をしました。その上でアメリカとの関係でありますが、まず、アメリカの国家防衛戦略において、インド太平洋地域を本土防衛と並ぶ重視事項と位置付けていると承知しております。また、米国からはこれまで、今般の中東情勢はアメリカ軍による我が国周辺の警戒監視態勢に影響しない旨、説明を受けてまいりました。その上で、シャングリラ会合におけるヘグセス長官によるスピーチのQ&Aセッションでは、小泉防衛大臣とのやり取りを通じて、インド太平洋地域へのアメリカによるコミットメントについて力強いメッセージが示されました。また、お尋ねのASEAN地域におきましては、先月行われました「バリカタン26」演習におけるアメリカの精力的な取組、そして、閉会式におけるパパロ司令官の力強いスピーチと、こういったものを見ましても、しっかりとした信頼関係、また、コミットメントがあると考えております。また、私自身も言葉だけではなく、日々の米軍の動き等見ておりますところ、日本周辺はもとより、南シナ海を含むASEAN地域を含めたコミットメント、取組については盤石なものがあると考えております。そういったことから、信頼関係はしっかりとあると考えております。

    記者:

    冒頭のシャングリラ会合参加の関連でお伺いいたします。今回、日本の5類型撤廃等の「防衛装備移転三原則」及び「防衛装備移転三原則の運用指針」改定後の会議となり、フィリピンとの防衛相会談では、「あぶくま」型護衛艦については退役後、速やかに輸出する方向で議論されることで大筋合意した等の成果があったと思いますが、今回、統幕長が参加された各国との会談で、日本の「防衛装備移転三原則」及び「防衛装備移転三原則の運用指針」改定への反応をどう感じられたか、また、日本が目指す防衛装備移転を進める上で課題について感じられた部分があればお願いいたします。

    統幕長:

    お尋ねのありました、日比防衛相会談をはじめ、いくつかの防衛相会談に同席しまして、そのような細かい中身については共同声明以上のことについて、ここで申し述べることは控えたいと思います。
     総じて、我が国の防衛装備、技術移転に関する方針の変更については、大変歓迎されまして、ニーズというものを強く感じたところであります。それぞれの国の事情によって、そのニーズについては違いますが、期待感というのを私もひしひしと感じた次第であります。
     課題という点につきましては、これからそれぞれのニーズを刈り取った上で、個々に課題については分析すべきだと思います。いずれにしましても、日本の装備品に対する信頼、品質、能力も含め、関わる信頼というのを強く感じた次第であります。

    記者:

    シャングリラ会合に関連したASEANについてお伺いします。フィリピンとの防衛協力は進展していると感じていますが、ASEANは非常に経済的・軍事的なところも含めて、中国とつながりが深い国も多々あります。そのような国と「ミリタリー・トゥー・ミリタリー」での協力をどのようにこれから進めていくのか、例えば、ベトナムもトー・ラム共産党書記長の話もありましたが、中国と地続きというような非常に密接な関係もある中で、どのように対処力の向上を同じ方向で協力を進めていけるのかというところをお聞きしたいと思います。

    統幕長:

    まず、東南アジア全般に関してお答えしたいと思います。東南アジア地域は、海上交通の要衝であるとともに、我が国及び地域全体の平和と繁栄の確保にとって重要なパートナーであると認識しております。このため、統合幕僚長としましては、同地域諸国との防衛協力を引き続き、戦略的かつ着実に推進してまいります。具体的には、各国軍との信頼関係の構築を基礎としまして、ハイレベル交流や実務者協議、共同訓練・演習、人的交流などを重層的に実施し、相互理解の深化と連携の強化を図っております。特に、法の支配や航行の自由といった普遍的価値の共有を重視しつつ、各国の立場や事情にも十分配慮した形で交流を進めております。この際、各国の立場や事情に十分配慮するというところがポイントかと思います。ASEANという国々をひとまとめにせず、個々の事情をしっかりと理解し、それを尊重した上で、どういう協力分野があるかということを丁寧に深掘りしていくことが必要かと思います。今般訪問しましたベトナムを例にとりますと、約4,600kmの国境が存在します。そのうちの約1,300kmは中国と接しており、かつては戦いもありました。そういった複雑な事情を抱えております。他方、日本は四面環海、四方海に囲まれていて、ベトナムは4,600kmもの国境がある。こういったそれぞれの地理的な違いというのを踏まえた上で、共通性をこの最大公約数というのはできるだけ広げる、そして深く追求していく、そういった取組みが必要ではないかと思います。また、第一列島線に位置するか否かということも一つのポイントかと思います。日本を含む第一列島線と言われるところ、フィリピン、インドネシア、マレーシア、ブルネイ、そういったところ、地理的な特性等も踏まえて、ここに丁寧に協力できる分野というものをしっかりと模索してまいりたいと考えております。それがASEANの諸国との取組み方の原則的な姿勢ではないかと思います。そういった観点から、能力構築支援ですとか、二国間や多国間の枠組みを織り交ぜながら、地域のニーズを踏まえ、実効性のある形で取り組んでいきたいと思います。統合幕僚監部としましては、こうした防衛交流、そして協力が、我が国の防衛に直接資するものであることを踏まえまして、 今後とも関係各国との信頼関係を一層強化し、地域の平和と安定に積極的に貢献してまいりたいと思います。

    記者:

    ベトナムのお話を具体的にしてくださいましたが、例えばそういう国とはどういう分野で防衛協力の手を携えていけるとお考えでしょうか。

    統幕長:

    いくつか具体例をもってお示しします。まず、陸上自衛隊と先方の陸軍種との関係でありますが、HA/DR、人道支援、こういったところが一つあります。あとは、サイバーという形で地理的な枠組みを超えて連携できる分野があります。これは世界中の各国、そして軍隊が注力しているところでありまして、そういったところの協力ということが一つあろうかと思います。
     海上自衛隊と海軍につきましては、古くから海上自衛隊は寄港を重ねておりまして、その信頼関係、伝統というものは、とても堅固なものがあるということを今回感じてまいりました。私より先に、海上幕僚長もベトナムを公式訪問し、海軍種同士の連携、信頼関係というのは、非常に固いものであるということを感じた次第です。
     最後に、航空自衛隊と先方の防空軍、航空部隊との連携ですが、先方のニーズで航空気象ですとか、航空救難についてノウハウが欲しいということで、能力構築支援という枠組みで先方のニーズに応える取組を続けております。こうやって違いはあるものの、共通性を見出しながら、そして何よりも先方のニーズを踏まえながら、できることを着実にやっていくということが信頼構築の第一歩ではないかと思います。

    記者:

    そういった国々は、アメリカと中国のいわゆる米中関係の中で、どちらにもつかず、うまくバランスを取っていくような外交の姿勢を、軍事面でも同じような特徴かと思います。統幕長が言われたような信頼関係の構築が、今後どのような形で我が国の安全保障環境の改善に役立つとお考えでしょうか。

    統幕長:

    大変鋭いご質問だと思います。基本的な考え方は今申し上げたとおりですが、まさにそのポイントは、特定の陣営化を求めるのではなくて、各国の自主的な選択に基づく協力を幾重にも重ねることで、地域全体として強靭な安全保障の「網」を形成していくこと、これは小泉大臣が「多層的な相互連結性の網」、英語では「Multi-layered Network of Inter-connectivity」と呼称しております。これを進めていくことになると思います。なかなか一筋縄ではいかない複雑で厳しい地域でありますので、まさに今申したような二国間や多国間、こういった「相互連結性の網」を強靭化していくことが必要だと思います。私自身も着任以来、5つの「I」を掲げましたが、その一つが「Inter-connectivity」ですので、閣僚級の大臣と参謀長級の私も「Inter-connectivity」という共通の認識で、まさに「網」を重ねていきたい、そして信頼関係を構築していきたいと思います。何かあったときについては、躊躇せず連絡が取り合える、そういう関係を構築できればと考えております。

    記者:

    シャングリラ会合の期間中、一部報道のインタビューで、小泉防衛大臣が、安保関連三文書改訂でAI活用を明記すると表明しました。かねて防衛省・自衛隊では、指揮統制や無人アセットの運用等でAIの活用が検討されてきたかと思いますが、現在の検討状況について教えて下さい。また、AIシステムを指揮統制等で取り入れる上での今後の課題があれば併せてお聞かせ下さい。

    統幕長:

    お尋ねの件につきまして、2つに分けてお答えします。まず、安保関連三文書についての検討状況につきましては、現時点でお答えできることはありませんのでご理解下さい。その上で申し上げますと、AIの活用については、私の考えではありますが、新しい戦い方ということ、これはドローン等、無人アセットを含めた考え方をこれまで累次にわたりお話をしてきておりますが、その中でも、新しい技術「AI」ということについては、AIと共に仕事ができる、協力して働く「AIと協働できる自衛隊」ということはこれから必須なんだと思います。その上での着意事項ということは、最終的にAIをどういった形で活用するにせよ、責任は人間に帰するということです。例えば、現在我々が使っているシステムが、人間が中に入った「ヒューマン・イン・ザ・ループ(Human in the loop)」、と申します。それを、戦闘が複雑化し、高速化する中で、人間の判断力を超える場合に、AIを活用するというやり方があろうかと思いますが、その上においても、「ヒューマン・オン・ザ・ループ」ということで、ループを人間が、指揮官が俯瞰して、緊要な決断は人間がする、といったところが必要かと思います。皆さんも日頃やっているような検索であったり、選択肢を提示してもらうところまでは、もしかしたらAIがうまくアシストしてくれるかもしれません。そして、同じレベルの選択肢の提供を極めて短時間でやってくれるかもしれません。しかし、現在の戦略情勢など、様々な法的なものを勘案した上で、最終的に決心を下すのは人間であるべきだと思います。責任の所在は人間に帰するということで、そういったところを、原則を踏まえつつ、AIを活用していくという方向というのが一般的な方向としてあろうかと思います。重ねて申しますが、今の私の個人の考えであります。

    記者:

    統幕長がおっしゃっていた内容とも重なる部分があると思いますが、指揮統制などへのAIの活用をめぐり、パランティア社といった米国製のAIと日本産のAIとの実力差が大きいことを指摘する声があるかと思います。例えば、米国製AIを日本の自衛隊の指揮統制で活用することへの様々なリスクもあるかと思います。この点について、統幕長ご自身のご見解がございましたら、お聞かせ下さい。

    統幕長:

    私の現在の知識において、皆さんの前で、今尋ねられました外国の一企業のAIと国内のAIを比較して、それをお答えすることは不適切だと思いますので、現時点では控えたいと思います。 利点・不利点、いろいろあると思いますので、そこは今後、様々なレベルで、そして様々な枠組みの中で検討されていくべきものだと考えております。それから意思決定について冒頭ありましたが、先ほど「ヒューマン・オン・ザ・ループ」と言い方をしましたが、もう一つは、意思決定の文脈ではよくAIに支援された意思決定という言い方をします。「AIアシスティッド・ディシジョン・メイキング(Assisted Decision Making)」という言い方もしますので、あくまでも支援であって、最後は人間に帰するといったところだと思います。

    記者:

    東南アジア諸国への防衛装備移転についてお聞きします。防衛装備移転が促進されることで日本の防衛において、どのような効果があるのか改めてお聞かせ下さい。

    統幕長:

    方針のことについては、政策レベルで判断すべきことですので、一義的な意義については申し述べることは控えたいと思いますが、統幕長という立場で、意義を申したいと思います。これまでも別の場で、何度かお話ししてきましたが、現在は、ネットワークやデータベースの時代と言われますが、同じ装備品を持つこと、すなわち共通の物を持つ有用性は、引き続きとても重要です。そういった観点から、「もがみ」型護衛艦を例に取りますと、汎用型を一緒に運用する国があるとすると、装備品の能力をベースにしながら戦術・戦技というのは決まってきますので、そこで相互運用性が生まれる。そして、部品の補用品の互換ができるという形で、連携の幅と深さが出てまいります。「もがみ」型護衛艦を例に取りましたが、現在進行形のF-35A/Bであります。これは、世界でユーザーが大変多い装備品でありますが、このF-35という特定の装備品を基軸にして、この広がり、相互運用性、相互互換性、インターチェンジビリティの輪というのは、ワールドワイドです。こういった状況の中で日本の装備品がその核になっていくことは、言葉にできないほど有益だと思います。そして、信頼のできる装備品を提供することによって、日本に対する信頼も増していくということで、相乗効果があろうかと思います。運用面、後方面、そういったところで、あらゆる面で相乗効果があると考えております。

    記者:

    統幕長がおっしゃるように東南アジアには様々な国があって、国によって事情が異なるということですが、日本とは脅威認識とか脅威の度合いが必ずしも同じではない国も多数あるかと思います。そういった国に対しての防衛装備移転や連携というのはどういう意味があるのでしょうか。

    統幕長:

    そこについては、方針ということですので、あえて私の方が申し上げることは控えたいと思いますが、しっかりと相手に応じて装備品というのを個々に適切に判断していくことになるかと思います。