わが国の先進的な技術を取り込み、効率的な研究開発を行うため、防衛装備庁と国立研究開発法人などの研究機関との間で、研究協力や技術情報の交換などを積極的に行っている。
国内においては、統合イノベーション戦略2025(令和7年6月6日閣議決定)を踏まえ、先端技術の活用による優れた装備品の創製や効率的、効果的な研究開発を行うため、内閣府などをはじめとする関係府省庁と平素から緊密に連携を行っている。また、同戦略を推進するために設置された統合イノベーション戦略推進会議1に積極的に参画し、関係省庁や国立研究開発法人、産業界、大学などとの一層の連携を図っている。
また、民生分野の取組を進める関係省庁と、防衛省とがお互いに連携することが有効である。国家安全保障戦略では、研究開発などに関する資金や情報を政府横断的に活用するべく体制を強化するとしている。このほか、2026年3月に閣議決定された第7期科学技術・イノベーション基本計画において、デュアルユース技術の研究開発の推進や安全保障分野におけるエコシステムの構築など、「科学技術と安全保障との有機的連携」が示されている。こうした戦略に基づいて、政府一丸で取り組んでいくことが重要である。
具体的には、AIや量子技術といった多義性を有する先端分野について、経済安全保障重要技術育成プログラム(K Program)などにより、国が重点的に後押しし、得られた研究開発成果は安全保障分野の強化にも円滑につなげていく。このほか、防衛省の意見を踏まえた研究開発ニーズと関係省庁が有する技術シーズを合致させることにより、総合的な防衛体制の強化への貢献が期待できる技術の開発を加速する政府横断的な仕組みを設置した。この取組では、関係省庁の民生利用目的の研究の中で、総合的な防衛体制の強化にも資する技術課題として当面推進していくものを「重要技術課題」として整理し、その中から育成する価値がある事業を「マッチング事業」に認定している。
さらに、わが国の防衛分野における科学技術の推進のため、同盟国・同志国との技術交流や技術者同士の人的交流を引き続き積極的に進めていくとともに、様々な場を活用して意見交換などを継続し、多様な可能性を検討していくこととしている。
参照図表IV-2-2-3(国立研究開発法人などとの研究協力)、3節(経済安全保障に関する取組)、III部1章3節(国全体の防衛体制の強化)

先進的な民生技術の積極的な活用は、将来にわたって国民の命と平和な暮らしを守るために不可欠である。また、米国防省高等研究計画局(DARPA(ダーパ):Defense Advanced Research Projects Agency)による革新的な科学技術への投資が、インターネットやGPS(Global Positioning System)の誕生など科学技術全体の進展に寄与してきたように、防衛分野への投資はわが国の科学技術イノベーションに寄与するものである。防衛省としては、こうした観点から関連する施策を推進していく。
具体的には、防衛分野での将来における研究開発に資することを期待し、目的指向の基礎研究を公募する競争的研究費制度である安全保障技術研究推進制度(防衛省ファンディング)を行っている。大学や研究機関およびスタートアップ企業などから広く研究課題を公募しており、2025年度までに239件の研究課題を採択している。同年度には、これまでの委託事業に加え、研究者による主体的な活動を支援する補助事業を新設した。また、柔軟な研究の実施を可能とする複数年度契約の適用範囲を拡大し、より応募しやすい制度となるよう改善を図るとともに、公募テーマに外傷医療やPTSD対策などへの寄与が期待される「医療・医工学」を追加するなど、制度の拡大を図っている。
なお、本制度が対象とする基礎研究においては、研究者の自由な発想こそが革新的、独創的な知見を獲得するうえで重要であり、研究を行うにあたっては、学会などでの幅広い議論に資するよう研究成果を全て公開できるなど、研究の自由を最大限尊重することが必要である。よって、本制度では、防衛省による研究への介入、研究成果の公表制限、研究成果の秘密指定、研究者への秘密の提供も行わない。あわせて、民生における先端技術の発掘・育成には、スタートアップ企業や国内の研究機関などとの連携が必要不可欠であることから、関係者の理解と協力を得つつ、広く学術界を含む最先端の研究者の参画促進に取り組む。
また、安全保障技術研究推進制度をはじめとする政府の科学技術投資で得られた先端技術や民生分野の先端技術を早期に発掘・育成し、装備品の創製につなげるため、「先端技術の橋渡し研究」を2020年度から実施している。2026年度も、装備品につながる研究成果を生み出すことを目指し、本研究を引き続き行うこととしている。
参照資料74(安全保障技術研究推進制度の2025年度新規採択研究課題)
参照図表IV-2-2-4(防衛省の研究開発推進の取組)

防衛イノベーションや画期的な装備品などを生み出す機能を抜本的に強化するため、2024年10月、防衛装備庁に防衛イノベーション科学技術研究所(東京都渋谷区)を創設した。防衛イノベーション科学技術研究所では、これまでとは異なるアプローチ、手法を採用し、変化の早い様々な科学技術から、防衛力の強化や社会変革につながる機能・技術を創出するブレークスルー研究を行っている。
ブレークスルー研究では、防衛イノベーションや画期的な装備品等を生み出す機能の抜本的強化として、これまでの延長ではない、防衛力を抜本的に強化する又は社会のあり方を変えるような革新的、画期的な機能・技術を創出するため、民生分野の科学技術に関する豊富な知見を有するプログラムマネージャの柔軟な発想の下で行う革新型ブレークスルー研究と、企業等が持つ様々な実用段階の先端技術を組み合わせ、防衛省・自衛隊の必要とする能力を早期に創出するための実証型ブレークスルー研究を行っている。
また、同研究所では、安全保障に関する研究開発エコシステムの構築を目指し、スタートアップなどに対し、防衛への理解と関心を高め安全保障に関するネットワークを形成することを目的として、「スタートアップ・非防衛産業・研究機関との共創活動」などに2025年度から着手している。これはスタートアップ同士が連携し、研究コミュニティを創成する取組であり、2026年度もこれらの取組を強化する。
参照図表IV-2-2-5(ブレークスルー研究)

![]()
資料:安全保障技術研究推進制度(防衛省ファンディング)について
URL:https://www.mod.go.jp/atla/funding.html
自衛隊の現在や将来の戦い方に直結できる分野のうち、特に政策的に緊急性・重要性の高い事業について、企業などから優れた提案を広く募りつつ、民生先端技術の取込みも図りながら、実証を通じて早期装備化の実現に取り組んでいる。なお、企業から提案された民生先端技術にかかる情報は、防衛装備庁に設置されている「早期装備化ワンストップ窓口」で受付をされ、一元的に情報を集約し適切な組織へと情報が提供される体制が構築されている。
![]()
資料:防衛省HP:最先端技術の早期装備化に向けた取組
URL:https://www.mod.go.jp/j/budget/rapid_acquisition/index.html