欧州では、ロシアによるウクライナ侵略の教訓などを踏まえ、無人アセットやAI、サイバー、情報戦、継戦能力などの分野での取組が行われている。
英国においては、例えば、国防省が2024年に「国防ドローン戦略」を発表した。この戦略においては、ウクライナの戦場で無人アセットが幅広い用途で効果的に活用されているほか、その技術革新のスピードが極めて速くなっており、従来の開発・調達方法では対応できなくなっているとの認識が示された。英国は、こうした教訓を踏まえ、安価な無人アセットの大量運用、速やかな調達、迅速な改良を重ねた開発に加え、強靱なサプライチェーンを構築することによって産業基盤を強化していくことの必要性を明記している。
AIの分野では、2025年に発表された「戦略的国防見直し2025」において、AIの利用を一層拡大することを優先課題の一つとして掲げている。例えば、英国軍はAIを基盤とした「デジタル・ターゲティング・ウェブ」を2027年に導入することとしており、これにより、目標の探知手段から攻撃手段までが一元的に連接され、AIによって収集・整理された情報に基づき、極めて迅速かつ最適な方法で目標を攻撃できるようになるとしている。
また、サイバー・電磁波領域における陸海空の部隊を一元化することとしており、2025年9月には「サイバー・専門作戦部隊」として正式に発足した。
このほか、継戦能力の分野では、弾薬や装備品の在庫の確保や迅速な補充の必要性を強調しており、こうした課題に対しては、弾薬工場の新設をはじめとする生産体制の拡充や装備品の調達プロセスの抜本的な見直しなどにより対応していくこととしている。
フランスでは、2023年、予算や装備調達計画などを規定する「2024年-2030年の軍事計画法」において、無人航空機の役割が戦略レベルから戦術レベルにおいて極めて重要であるとの認識が示され、短い生産サイクルで低コストの無人航空機を大量に調達する能力を優先的に確保する必要があるとされた。そして、7年間で50億ユーロの予算を無人航空機に充て、さらに2030年までに無人航空機によるスウォーム飛行能力を達成することなどが目標として記載された。さらに、2026年4月にはこの軍事計画法が更新され、陸海空における作戦効果を高めるため、各軍に早期に無人航空機を配備することを目指すとしており、例えば、戦闘支援やCBRN(Chemical, Biological, Radiological and Nuclear)対応などのための陸軍戦闘群への配備や、共同海上作戦能力向上のための海軍主力フリゲートなどへの配備を行うとしている。
AIの分野では、その軍事利用をめぐって、2024年に、仏軍事省が国防AI機関を設立した。AIは、無人航空機などが電子妨害下でも活動するための自律的機能や、無人航空機による画像解析の開発にとって重要であるとされ、フランスが諸外国に依存することなく、自国でAIを運用する能力を強化するための体制が整えられている。
さらに、情報戦の分野においても、「2024年-2030年の軍事計画法」で、若年層向けのメディア教育や偽情報対策のキャンペーンなどの国民への啓発活動を実施することが記載された。2025年には、仏欧州・外務省は「フレンチ・レスポンス」と呼ばれるXのアカウントを開設し、フランスを標的とした偽情報に対し、ユーモアや風刺を利かせた投稿などで迅速に反応し、偽情報の拡散を防ぐなどの取組も実施している。
また、継戦能力の分野では、大規模紛争に耐える戦略備蓄を形成することとしており、弾薬備蓄の再充足や拡大、維持整備能力の向上を目指している。
ドイツでは、ウクライナ侵略の教訓などを踏まえ、無人航空機への投資を強化している。2025年10月、ピストリウス国防相は、NATO(North Atlantic Treaty Organization)国防相会合に際して、NATOのドローンによる防衛強化の計画を支持したうえで、「今後数年間であらゆる種類、高度の攻撃用および防衛用ドローンに100億ユーロを投資する」方針を示した。
また、無人航空機への対処を含む防空の分野では、2022年10月、ウクライナ侵略でみられるミサイルや無人航空機などの多様な経空脅威に対抗するための多国間枠組みとして、「欧州スカイシールド・イニシアチブ」を発足させた。この枠組みでは、参加国間で防空システムを共同で調達、運用、維持するとされ、複数の防空システムを組み合わせることにより、数km圏内の短距離防空から弾道ミサイル防衛まで、欧州各国の防空網を多層的に強化することを目的としている。現在、スイスやオーストリアを含む21か国の欧州諸国が参加しており(2025年3月時点)、今後の動向が注目される。
さらに、情報戦の分野では、偽情報への対策として、ロシアによるウクライナ侵略に関する偽情報を例にあげて、国民向けに偽情報の見分け方を公開しており、ファクトチェックの活用や情報の発信者の確認など、基礎的な事項について記載し、国民に注意を呼び掛けている。
このほか、継戦能力の分野では、防衛産業基盤の強化に取り組んでいる。2024年12月に策定した「国家安全保障・防衛産業戦略」において、ウクライナ侵略におけるデジタル化や戦場の「透明化」により、革新技術の開発が促進されていると指摘したうえで、こうした急速な技術進展に適応していく必要性を示した。この戦略では、特定の基幹産業の生産能力を維持していくとの方針のもと、特に重要な防衛産業技術として、AI、量子技術、無人システムなどを指定しており、これらの技術の海外依存を回避しつつ、自国で供給できる体制の構築を目指すとしている。