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第IV部 共通基盤などの強化

4 民生技術の積極的な活用

1 国内外の関係機関との技術交流や関係府省との連携の強化

先進的な民生技術を取り込み、効率的な研究開発を行うため、防衛装備庁と国立研究開発法人等の研究機関との間で、研究協力や技術情報の交換などを積極的に実施している。

国内においては、「統合イノベーション戦略2022」(令和4年6月3日閣議決定)を踏まえ、先端技術の活用による優れた防衛装備品の創製や効率的、効果的な研究開発を行うため、総合科学技術・イノベーション会議3(CSTI:Council for Science, Technology and Innovation)などをはじめとする関係府省庁とは平素から緊密に連携を行っている。また、同戦略を推進するために設置された統合イノベーション戦略推進会議4に積極的に参画し、関係府省や国立研究開発法人、産業界、大学などとの一層の連携を図っている。

参照図表IV-1-2-2(国立研究開発法人等との主な技術交流)

図表IV-1-2-2 国立研究開発法人等との主な技術交流

また、政府内の取組として、民生分野の取組を進める関係府省と、防衛省とがお互いに連携することが有効である。安保戦略においても、研究開発などに関する資金及び情報を政府横断的に活用するべく体制を強化するとしており、この戦略に基づいて、政府一丸で取り組んでいくことが重要である。

具体的には、AIや量子技術といった多義性を有する先端分野について、経済安全保障重要技術育成プログラムなどにより、国が重点的に後押しし、得られた研究開発成果は安全保障分野の強化にも円滑につなげていく。このほか、関係省庁が実施する研究開発と防衛省の研究開発ニーズをマッチングし、防衛力の強化への貢献が期待できる技術の開発を加速する仕組みを創設していく。

さらに、国外においては、同盟国・同志国との技術交流や技術者同士の人的交流を引き続き積極的に進めていくとともに、様々な場を活用して意見交換などを継続し、多様な可能性を検討していくこととしている。

2 革新的・萌芽的な技術の発掘・育成

防衛分野での将来における研究開発に資することを期待し、目的指向の基礎研究を公募・委託する「安全保障技術研究推進制度」(競争的研究費制度)を実施しており、2022年度までに142件の研究課題を採択5している。2023年度も、引き続き革新的・萌芽的技術の発掘・育成を推進することとしている。

なお、本制度が対象とする基礎研究においては、研究者の自由な発想こそが革新的、独創的な知見を獲得するうえで重要であり、研究の実施にあたっては、学会などでの幅広い議論に資するよう研究成果を全て公開できるなど、研究の自由を最大限尊重することが必要である。よって、本制度では、防衛省が研究に介入したり研究成果の公表を制限することはなく、防衛省が研究成果を秘密に指定することや研究者に秘密を提供することもない。研究成果については、既に学会発表や学術雑誌への掲載などを通じて公表されている。

本制度などを通じて、先進的な民生技術を積極的に活用することは、将来にわたって国民の命と平和な暮らしを守るために不可欠であるのみならず、米国防省高等研究計画局(DARPA:Defense Advanced Research Projects Agency)による革新的な技術への投資が、インターネットやGPSの誕生など民生技術を含む科学技術全体の進展に寄与してきたように、防衛分野以外でもわが国の科学技術イノベーションに寄与するものである。防衛省としては、引き続き、こうした観点から関連する施策を推進していくとともに、本制度が学問の自由と学術の健全な発展を確保していることの周知に努めることとしている。

また、2020年度から、「安全保障技術研究推進制度」で得られた基礎研究の成果などの中から、有望な先進技術を早期に発掘、育成し、技術成熟度を引き上げて装備品の研究開発に適用する「先進技術の橋渡し研究」も開始している。2023年度も、将来的なゲーム・チェンジャーとなり得る装備品の創製につなげることを目指し、「先進技術の橋渡し研究」を大幅に拡充し実施することとしている。

加えて、装備品の研究開発を加速するため、2022年度から、民間企業に研究を委託し、企業の有する先進的な技術を装備品の研究開発に使用可能なレベルまで向上させる取組として、「ゲーム・チェンジャーの早期実用化に資する取組」を開始した。

参照図表IV-1-2-3(安全保障技術研究推進制度の2022年度新規採択研究課題)

図表IV-1-2-3 安全保障技術研究推進制度の2022年度新規採択研究課題

3 早期装備化のための新たな取組

自衛隊の現在及び将来の戦い方に直結できる分野のうち、特に政策的に緊急性・重要性の高い事業について、5年以内の装備化、おおむね10年以内に本格的運用するための枠組みを新設する。

3 内閣総理大臣、科学技術政策担当大臣のリーダーシップのもと、各省より一段高い立場から総合的・基本的な科学技術・イノベーション政策の企画立案及び総合調整を行うことを目的とした「重要政策に関する会議」の一つ。

4 内閣官房長官のリーダーシップのもと、全ての国務大臣が参加し、「統合イノベーション戦略2019」(令和元年6月21日閣議決定)に盛り込まれた項目のうち、特にイノベーション関連の司令塔間で調整の必要がある事項について、点検・整理などを行い、横断的かつ実質的な調整・推進を実施することを目的とした会議

5 「安全保障技術研究推進制度」(競争的研究費制度)の採択研究課題については、防衛装備庁HPを参照(https://www.mod.go.jp/atla/funding.html