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第IV部 防衛力を構成する中心的な要素など

第2節 環境問題への対応

地球環境の持続可能性に対する危機感は、国際的に高まっており、2015年には、持続可能な開発目標(SDGs)の国連における採択や気候変動に関する国際枠組みであるパリ協定の採択などを受け、各国で取組が進められている。

2019年6月に大阪で開催されたG20サミットでは海洋プラスチックごみ汚染や気候変動が重要な議題となるとともに、その直前には各国の関係閣僚が参加する「G20持続可能な成長のためのエネルギー転換と地球環境に関する関係閣僚会合」が初めて開催された。

わが国においても、2018年に第5次環境基本計画を閣議決定し、持続可能な社会の実現に取り組んでいるところであり、2019年9月のSDGサミットにおいて、次のSDGサミットまでに、国内外における取組をさらに加速させる旨表明している。

また、2021年10月に地球温暖化対策計画、気候変動適応計画等を閣議決定し、2050年カーボンニュートラルや2030年度目標の達成に向け、具体的な気候変動対策が進められている。

こうした国内外における取組の加速を受け、防衛省としても、政府の一員として環境問題の解決に貢献するとともに、自衛隊施設及び米軍施設・区域と周辺地域の共生についてより一層重点を置いた施策を進める必要がある。

1 防衛省・自衛隊の施設に関する取組

防衛省は、従前から政府の一員として、環境関連法令を遵守し、環境保全の徹底や環境負荷の低減に努めてきたところであり、「防衛省環境配慮の方針」のもとでさらなる環境への取組の推進を図ることとしている。2021年度には、地方協力局を改編し、防衛省・自衛隊の環境政策全般を担当する環境政策課を新設するなど、環境問題への対応について防衛省として一元的・効果的に実施する体制を整備しており、引き続き、さらなる施策の推進に取り組んでいく方針である。

1 防衛省気候変動タスクフォース

気候変動を安全保障上の課題として捉える動きが、国連安保理をはじめ各国の国防組織にも広がってきている。防衛省では、2021年5月に、防衛副大臣を座長とする防衛省気候変動タスクフォース(以下「気候変動タスクフォース」という。)を設置し、気候変動がわが国の安全保障に与える影響について評価及び分析し、防衛省・自衛隊が与えられた役割・任務を今後もしっかりと果たしていけるよう、必要な対応について、長期的な視点も持ちながら幅広く検討を行うこととしたところである。防衛省としては、気候変動対応と防衛力の維持・強化を同時に図っていくことを目指しており、気候変動タスクフォースでの議論を踏まえ、今後、防衛省としての戦略文書をとりまとめることとしている。

気候変動タスクフォースにおける議論の様子

気候変動タスクフォースにおける議論の様子

2 再生可能エネルギー電力の調達

防衛省・自衛隊は、25万人の隊員を有し、日本全国の各地で施設や様々な装備品を運用しており、政府の機関で最大の電力需要家(政府全体の約4割)として、温室効果ガスの排出の削減などに貢献するため、2020年度から、防衛省・自衛隊施設の電力の調達にあたり、再生可能エネルギーにより発電された電力(以下「再エネ電力」という。)の調達を積極的に進めてきたところである。

2022年度においては、契約件数は全国で964件あり、その内291施設等において、再エネ電力の調達が実現した。また、199施設等では、再エネ比率100%の電力の調達が実現した。2022年度の再エネ電力の調達見込み量は、約3億2千万kWh(一般家庭約7万世帯超の年間電力使用量)であり、防衛省・自衛隊全体の予定使用電力量(約12億9千万kWh)の約25%を再エネ電力で調達することになる。

防衛省としては、政府の一員として、引き続き、再エネ電力の調達比率が向上するよう努力していくこととしている。

参照図表IV-6-2-1(令和4(2022)年度 再エネ導入施設一覧(予定使用電力量 上位10契約))

図表IV-6-2-1 令和4(2022)年度再エネ導入施設一覧(予定使用電力量 上位10契約)

3 再生可能エネルギーと安全保障の両立

気候変動問題への対応として風力発電を含む再生可能エネルギーの導入が進められており、風力発電設備は今後増加していくことが予想される。風力発電設備は、その設置場所や高さによっては、警戒管制レーダーの発する電波が遮られるなどして、航空機やミサイルの探知が困難になるなど、自衛隊や在日米軍の活動に影響を及ぼすおそれがある。

このため、防衛省・自衛隊としては、事業者をはじめとする関係者との調整を事業計画の早期の段階からきめ細やかに行っている。今後とも、風力発電設備の設置による自衛隊や在日米軍の活動への影響を回避しつつ、再生可能エネルギーと安全保障の両立を図るための施策を推進していくこととしている。

4 防衛省におけるPFOS処理実行計画

防衛省においてはPFOSを含有する泡消火剤などについて、PFOS処理実行計画を定め、交換及び処分を実施しているところ、消火設備の改変などの理由がある一部を除き2021年度末までに交換及び処分を完了しており、艦船については、2023年度末までに交換及び処分を完了することを目標として迅速に進めている。

また、2021年度に過去にPFOSを含有する泡消火剤を使用していた又は使用していた可能性がある基地などを対象に実施した消火設備の水槽の水質調査において、一部の水槽の水からPFOSなどが検出されたことから、調査結果を踏まえつつ適切に対応する方針である。