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第I部 わが国を取り巻く安全保障環境

2 各国の安全保障・国防政策

1 インドネシア

インドネシアは世界最大のイスラム人口を抱える東南アジア地域の大国であり、広大な領海及び海上交通の要衝を擁する世界最大の群島国家である。

インドネシアは国軍改革として、「最小必須戦力(MEF:Minimum Essential Force)」と称する最低限の国防要件を達成することを目標としているが、特に海上防衛力が著しく不十分であるとの認識が示され、国防費の増額とともに、南シナ海のナツナ諸島などへの戦力配備を強化する方針を表明している。同諸島では2018年12月、陸軍混成大隊、空軍防空コマンド所属レーダー中隊、海兵隊混成大隊が展開し、潜水艦が寄港可能な桟橋、無人機格納庫などを有する軍事基地の開所式を実施したことや、2021年4月には、潜水艦の支援施設の起工式を実施したことが報じられている。また、インドネシア軍は2019年9月、国軍の統合作戦能力構想を具現化した3つの統合防衛地域コマンドを設立した。同コマンドは、軍事・非軍事問わず、地域での紛争発生時の初動対処を担い、外的脅威への抑止力としての役割を有するものとされる。

インドネシアは中国の主張するいわゆる「九段線」がナツナ諸島周辺の排他的経済水域(EEZ:Exclusive Economic Zone)と重複していることを懸念しており、同諸島周辺海域における哨戒活動を強化している。2019年12月、インドネシアはナツナ諸島周辺のインドネシアのEEZ内で中国海警局所属の船舶が漁船団を護衛する形で違法操業をしたことを確認したとし、インドネシア外務省は抗議声明を発表した。

インドネシアは、東南アジア諸国との連携を重視し、自由かつ能動的な外交を展開するとしている。

米国との関係においては、軍事教育訓練や装備品調達の分野で協力関係を強化しており、「CARAT(Cooperation Afloat Readiness and Training)」1や「SEACAT(Southeast Asia Cooperation Against Terrorism)」2などの合同演習を行っている。

2021年8月には、インドネシア及び米国の両外相間で国際情勢などを議論する初の戦略対話を開催した。2021年11月には、バーレーンで開催されたマナーマ対話において、プラボウォ国防大臣とオースティン国防長官が会談し、両国間の演習や安全保障協力について議論した。

2 マレーシア

マレーシアは、2019年12月に公表した初の国防白書の中で、国土が半島部とボルネオ島にあるサバ・サラワクに二分されており、広大な太平洋とインド洋の間に位置していることから、両洋の橋渡し役としての可能性を自国に見出している。また、国防白書の中で、マレーシアの戦略的位置及び天然資源は恩恵であると同時に安全保障上の課題でもあるとの認識を示している。このような特性から、マレーシアは歴史的に大国の政治力学の影響を受けてきており、今日においても、不透明な米中関係を最も重要な戦略的課題と位置づけている。また、これに加え、複雑な東南アジア地域情勢のほか、テロ、サイバー、海賊及び自然災害という非伝統的な安全保障上の脅威の増加に直面しているとの認識を示している。

このような安全保障環境の認識のもと、国防政策においては、領土・領海を含む核心地域、周辺海空域を含む拡大地域、国益に影響する遠隔地である前方地域の3つの同心円地域ごとの国益を防衛するため、①国軍の能力向上を通じて侵略や紛争の抑止を目指す「同心円抑止」、②国民を含む社会全体で国家としての坑たん性を高める「包括的防衛」、③信頼性の高いパートナーとして、他国との防衛協力を拡大・強化することを通じて地域の安定を促進する「信頼できるパートナーシップ」の3本柱を掲げている。

昨今、マレーシアが領有権を主張する南ルコニア礁周辺において中国の船舶が錨泊(びょうはく)などを続けていることに関連して、マレーシア側は、海軍及び海洋法執行機関により24時間態勢で監視を行い、主権を防衛する意思を表明している。2021年6月には、同礁上空を飛行した中国軍機16機が、マレーシア沿岸まで接近したことをマレーシア空軍が発表した。同年10月にはマレーシアの排他的経済水域内に中国の調査船などが侵入し、これに対してマレーシア政府が抗議をした。

このような意思の表明や海上防衛力の強化に加えて、2017年4月、ジェームズ礁や南ルコニア礁に近いビントゥルに海軍基地を新設し、また、2019年7月、空軍が東マレーシア(ボルネオ島)のサバ州でミサイル発射を伴う演習を実施するなど、東マレーシアの防衛態勢の強化にも努めている。

また、2019年12月以降、マレーシアは、自国の採掘船「ウエスト・カペラ」の周辺で中国船舶の活動を確認している。

2020年4月、米国及びオーストラリアは、「ウエスト・カペラ」の周辺で共同演習を実施したほか、同年5月、米国の沿海域戦闘艦が「ウエスト・カペラ」付近でプレゼンス・オペレーションを実施した。

さらに、米国との間では、「CARAT」や「SEACAT」などの合同演習を行うとともに、海洋安全保障分野での能力構築を含めた軍事協力を進めている。

3 ミャンマー

ミャンマーは、中国及びインドと国境を接し、ASEAN諸国の一部及び中国にとってインド洋への玄関口ともなることなどから、その戦略的な重要性が指摘されている。ミャンマーは、1988年の社会主義政権の崩壊以降、国軍が政権を掌握してきたが、欧米諸国による経済制裁を背景に、民主化へのロードマップを踏まえた民政移管が行われた。

2020年11月、5年ぶりとなるミャンマー連邦議会総選挙が実施され、与党の国民民主連盟が上下両院で前回の単独過半数を大幅に超える議席を獲得した。しかし、2021年2月、総選挙での不正を主張する国軍が、アウン・サン・スー・チー国家最高顧問ら政権幹部を拘束するとともに、非常事態宣言を発表し、三権を国軍司令官に移譲させるクーデターを実行した。国軍は「国家行政評議会(SAC:State Administration Council)」を設置し、ミン・アウン・フライン国軍司令官を議長とした。国軍政権に反対する不服従運動及び抗議デモが発生したが、国軍側は、情報統制や実力行使によりこれを鎮圧し、多数の死傷者が発生している。これに対し、国際社会からは強い非難と深い懸念の声があがった。

その後、同年4月に、民主推進派が設立した「連邦議会代表委員会(CRPH:Committee Representing Pyidaungsu Hluttaw)」が、国軍に対抗する「国家統一政府(NUG:National Unity Government)」の発足を宣言したものの、国軍は、CRPHやNUGなどをテロ組織に指定した。同月開催されたASEANリーダーズ・ミーティングには、国軍代表も参加し、会議後に示された議長声明では、犠牲者数の増大や暴力の激化を含むミャンマーの状況への深い懸念が表明され、平和的解決を促進するASEANの積極的かつ建設的な役割を認識し、「5つのコンセンサス」への合意がなされた。その内容は、①暴力を即時停止し、全ての当事者が最大限の自制を行うこと、②人々の利益に即した平和的解決の追求のため、全ての当事者の建設的な対話が開始されること、③ASEAN事務総長の支援を得て、ASEAN議長特使が対話プロセスを仲介すること、④ASEANがASEAN防災人道支援調整センター(AHAセンター)を通じて人道支援を提供すること、⑤ASEAN特使及び代表団がミャンマーを訪問し、全ての当事者と面会することである。同年8月、SACはミン・アウン・フライン国軍司令官を「暫定首相」とする「暫定政府」の発足を発表した。

また、同月には、ASEAN外相会議で、ブルネイのエルワン第2外相をミャンマー特使に任命することで合意された。

しかし、その後、国軍と民主派勢力との衝突が激しくなり、多数の死傷者が発生し、また、ミャンマー特使と関係者の面会も実現していない状況が継続した。同年10月、ASEANは、ミャンマー情勢を巡り緊急外相会議を開催し、ASEAN首脳会議及びASEAN関連首脳会議に、ミャンマーの非政務の代表を招待することを決定したことなどを明記した議長声明を発出した。これにミャンマー国軍は強く反発し、同月開催された首脳会議に出席しなかった。

ASEAN首脳会議と「5項目合意」に関する議長声明【ASEAN】

ASEAN首脳会議と「5項目合意」に関する議長声明【ASEAN】

中国とは、1950年に国交を樹立して以来良好な関係を維持しており、ミャンマーにとって、主要な装備品の調達先とみられるほか、パイプライン建設やチャオピュー港湾開発の援助などを受けていた。2020年1月、中国の習近平主席が国家主席として19年ぶりにミャンマーを訪問し、「一帯一路」構想を通じて経済協力を推進する方針を確認した。

また、ロシアとは、過去の軍政期を含め軍事分野において協力関係を維持しており、留学生の派遣や主要な装備品の調達先となっていた。インドとは、民政移管以降、経済及び軍事分野において協力関係を進展させており、各種セミナーの実施受入れやインド海軍艦艇によるミャンマー親善訪問など、防衛協力・交流が行われていた。

過去のミャンマーの軍事政権下では、武器取引を含む北朝鮮との協力関係が維持されていた。民政移管後の政府は、北朝鮮との軍事的なつながりを否定していたものの、2018年3月に公表された国連安全保障理事会北朝鮮制裁委員会専門家パネル最終報告書では、弾道ミサイルシステムなどを北朝鮮から受領していることが指摘されていた。

4 フィリピン

フィリピンは、自国の群島としての属性と地理的位置は強さと脆弱性の両面を併せ持つ要因であり、戦略的位置と豊富な天然資源が拡張主義勢力に強い誘惑をもたらしているとの認識を示している。こうした認識のもと、国内の武力紛争を解決することが依然として安全保障上の最大の懸案と位置づける一方で、南シナ海における緊張の高まりに伴い、領土防衛にも同様の注意を向けているとしている。

歴史的に米国との関係が深いフィリピンは、1992年に駐留米軍が撤退した後も、相互防衛条約及び軍事援助協定のもと、両国の協力関係を継続してきた。近年の関係としては、両国は米比共同演習「バリカタン」、米比共同演習「カマンダグ」、米比共同演習「サマサマ」などの共同演習を行っている。また、両国が2014年4月に署名したフィリピン軍の能力向上、災害救援などでの協力強化を目的とした、「防衛協力強化に関する協定(EDCA:Enhanced Defense Cooperation Agreement)」に基づき、2016年3月、アントニオ・バウチスタ空軍基地、バサ空軍基地、フォート・マグセイセイ地区、ルンビア空軍基地及びマクタン・ベニト・エブエン空軍基地の5か所を防衛協力を進める拠点とすることについて合意している。さらに、2020年2月、フィリピンは、米国に対し、米軍がフィリピン国内で合同軍事演習などを行う際の米軍人の法的地位などを規定した「米軍との訪問軍協定」(VFA:Visiting Forces Agreement)を破棄する通告をしたが、2021年7月、ドゥテルテ比大統領が同通告の撤回を決定した。また、同年9月に実施された米比国防相会談においては、米比相互防衛条約による米国の義務は、南シナ海におけるフィリピンの軍隊・公船・航空機にまで及ぶことをオースティン国防長官が表明するなど地域における両国の協力関係が強化されている。

中国とは、南シナ海の南沙諸島やスカーボロ礁の領有権などをめぐり主張が対立しており、フィリピンは国際法による解決を追求するため、2013年1月、中国を相手に国連海洋法条約に基づく仲裁手続を開始し、仲裁裁判所は2016年7月にフィリピンの申立て内容をほぼ認める最終的な判断を下した。フィリピン政府は比中仲裁判断を歓迎し、この決定を尊重することを強く確認する旨の声明を発表するとともに、ドゥテルテ大統領は同月の施政方針演説において、比中仲裁判断を強く確認し、尊重すると述べている。

フィリピンはこれまで国連海洋法条約をはじめとする国際法に基づく紛争の平和的解決を訴えてきている。2019年4月には、フィリピンが実効支配する南沙諸島ティトゥ島(フィリピン呼称:パグアサ島)近くで200隻以上の中国船の航行が確認されたとして、中国側に抗議した。

また、南シナ海問題を巡る両国の対立は新型コロナウイルス感染症が世界的に拡大した2020年以降にもみられており、フィリピンは、同年2月、中国艦艇がフィリピン海軍艦艇に対し火器管制レーダーを照射したことを抗議したほか、同年4月には、中国が南シナ海に行政区を設置したことに対して抗議を行った。また、同年7月、中国が南シナ海で軍事訓練を行うことを公表したことを受け、ロクシン外相が動画で懸念を表明した。このほか、2021年3月、フィリピン国防省は、「中国民兵船220隻が南シナ海で確認された」ことについて、「軍事拠点化という明確な挑発行為」と非難し、撤退を求めた。これに対し、中国側は、ウィットサン礁の中国主権を主張したうえで、民兵船の存在を否定し、「一部の漁船は牛軛礁(ウィットサン礁の中国側呼称)で荒天退避を行った」と説明している。

さらに、2021年11月、フィリピン外相は、南沙諸島でフィリピン軍への補給のために活動していた補給船に対して、中国海警船が放水銃を使用して作業を妨害したとして抗議声明を発表した。これを受けて、同月に米国務省が発出した報道声明では、南シナ海でフィリピン公船への武力攻撃があった場合には、米国の相互防衛条約を発動することになることを強調すると表明された。

参照4章5節1項(「公海自由の原則」をめぐる動向)

5 シンガポール

国土、人口、資源が限定的なシンガポールは、グローバル化した経済の中で、その存続と発展を地域の平和と安定に依存しており、国家予算のうち国防予算が約5分の1を占めるなど、国防に高い優先度を与えている。

シンガポールは、国防政策として「抑止」と「外交」を二本柱に掲げている。また、シンガポールの国土は狭小なため、国軍は米国やオーストラリアなど諸外国の訓練施設も利用し、訓練のために部隊を継続的に派遣している。

シンガポールは、ASEANや五か国防衛取極(FPDA:Five Power Defence Arrangements)3の協力関係を重視しているほか、域内外の各国とも防衛協力協定を締結している。地域の平和と安定のため、米国のアジア太平洋におけるプレゼンスを支持しており、米国がシンガポール国内の軍事施設を利用することを認めている。2013年以降、米国の沿海域戦闘艦(LCS:Littoral Combat Ship)のローテーション展開が開始されたほか、2015年12月、米軍のP-8哨戒機が初めて約1週間にわたり同国へ展開され、今後も定期的に同様の展開が継続されるとしている。このほか、米国と「CARAT」や「SEACAT」などの合同演習を行っている。2019年9月、両国はシンガポールにおける米軍の施設利用に関する1990年11月の覚書を延長する修正議定書に署名した。2021年7月、オースティン米国防長官がシンガポールを訪問し、ウン・エンヘン国防大臣と会談し、両国軍の防衛協力関係を再確認し、同年8月のハリス米副大統領の訪問と併せて、米国の東南アジア地域へのコミットメントを強調した。

中国とは、経済的に強い結びつきがあるほか、二国間の海軍演習も実施している。2019年10月、両国は防衛交流・安全保障協力協定(ADESC:Agreement on Defence Exchanges and Security Cooperation)の改訂に署名した。一方、南シナ海問題について仲裁判断に基づく解決を主張していることや、台湾と軍事協力を行っていることでは摩擦が生じている。

インドとは、2017年11月に二国間海軍協力協定を締結しており、陸上演習「ボールド・クルシュトラ」や海上演習「SIMBEX(Singapore India Maritime Bilateral Exercise)」を行っているほか、2019年9月、シンガポール、インド及びタイの3か国が初の共同演習をアンダマン諸島付近で実施した。

オーストラリアとは、2020年3月、軍事訓練とオーストラリアにおける訓練エリア開発に関する条約に署名した。これにより、シンガポール軍は新しく開発されるオーストラリアの訓練エリアへのアクセスが可能となる。

参照6節1項3(4)(東南アジア及び太平洋島嶼国との関係)

6 タイ

タイは、国防政策として、ASEAN・国際機関などを通じた防衛協力の強化、政治・経済など国力を総合的に活用した防衛、軍の即応性増進や防衛産業の発展などを目指した実効的な防衛などを掲げている。

タイは、柔軟な全方位外交政策を維持しており、東南アジア諸国との連携や、主要国との協調を図っている。1982年から実施している米タイ合同演習「コブラ・ゴールド」は、現在、東南アジア最大級の多国間共同訓練となっている。

また、米タイの海兵隊による「CARAT」や海賊・密売対処を想定した「SEACAT」などの合同演習も引き続き実施している。

中国とは、両国海兵隊による「藍色突撃」や、両国空軍による「鷹撃」などの共同訓練を行っている。また、政変後、米国の軍事援助の一部が凍結されたことを受けて、両国の軍事関係は緊密化しているとの指摘がある。

韓国とは、2019年9月、韓タイ軍事秘密情報保護協定(GSOMIA:General Security of Military Information Agreement)を締結した。

7 ベトナム

ベトナムは、海洋は国家建設・国防に密接にかかわるとの認識のもと、海洋強国となる目標を掲げ、海上における軍及び法執行機関の近代化に重点を置くとともに、海洋状況把握能力を確保し、海上における独立、主権、管轄権、国益を維持する姿勢を示している。

ベトナムは全方位外交を展開し、全ての国家と友好関係を築くべく、積極的に国際・地域協力に参加するとしている。2016年3月には、戦略的要衝であるカムラン湾に国際港が開港し、わが国を含む各国の海軍艦艇がカムラン国際港に寄港している。

米国とは、近年、米海軍との合同訓練や米海軍艦艇のベトナム寄港などを通じ、軍事面における関係を強化している。2017年には、両国首脳が相互訪問を行い、防衛協力関係の深化について合意したほか、2018年3月には、ベトナム戦争後、米空母としては初となるベトナム寄港が行われた。また、2020年3月にも米空母と巡洋艦がダナンに寄港した。2021年7月、オースティン米国防長官がベトナムを訪問し、ファン・バン・ザン国防大臣と会談し、両国の防衛協力関係を今後拡大していくことに合意し、同年8月のハリス米副大統領の訪問と併せて、米国の東南アジア地域へのコミットを強調した。

ロシアとは、国防分野での協力を引き続き強化しているほか、装備品の大半を依存している。2018年4月、ベトナムとロシアは軍事・技術協力にかかるロードマップに署名しており、2019年7月、ベトナム海軍艦艇が初めてウラジオストク港へ寄港するとともに、2019年12月、ロシア太平洋艦隊の救難艦がカムラン港へ寄港し、初の二国間潜水艦救難共同演習を実施した。

参照5節5項5(1)(アジア諸国との関係)

中国とは、包括的な戦略的協力パートナーシップ関係のもと、政府高官の交流も活発であるが、南シナ海における領有権問題などをめぐり主張が対立している。

2019年11月に公表した国防白書では、南シナ海の領有権問題について、ベトナムと中国は、両国の平和、友好、協力関係の大局に悪影響を及ぼさないよう、極めて用心深く、慎重に処理する必要があり、両国は国際法に基づく平和的解決のため継続的に協議すべきとの認識を示している。

インドとは、安全保障や経済など広範な分野において協力関係を深化させている。防衛協力については、ベトナム海軍潜水艦要員や空軍パイロットに対する訓練をインド軍が支援していると指摘されているほか、インド海軍艦艇によるベトナムへの親善訪問も行われている。2016年9月には、インド首相として15年ぶりにモディ首相が訪越し、二国間関係を包括的戦略パートナーシップへ格上げすることに合意したほか、防衛協力深化のための5億ドルの融資などを表明している。また、国防相会談などを通じ、両国の防衛協力のさらなる推進を図ろうとしている。

参照4章5節1項(「公海自由の原則」をめぐる動向)

1 米国が、バングラデシュ、ブルネイ、カンボジア、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ及び東ティモールとの間で行っている一連の二国間演習の総称である。

2 米国が、ブルネイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール及びタイとの間で行っている対テロ合同演習である。

3 1971年発効。マレーシアあるいはシンガポールに対する攻撃や脅威が発生した場合、オーストラリア、ニュージーランド、英国がその対応を協議するという内容。五か国はこの取極に基づいて各種演習を行っている。