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第III部 国民の生命・財産と領土・領海・領空を守り抜くための取組

2 国連平和維持活動などへの取組

国連PKOは、世界各地の紛争地域の平和と安定を図る手段として、伝統的な停戦監視などの任務に加え、近年では、文民の保護(POC:Protection of Civilian)、政治プロセスの促進、元兵士の武装解除・動員解除・社会復帰(DDR:Disarmament, Demobilization and Reintegration)、治安部門改革(SSR:Security Sector Reform)、法の支配、選挙、人権などの分野における支援などを任務とするようになっている。現在、14の国連PKOが設立されている(18(平成30)年5月末現在)。

また、紛争や大規模災害による被災民などに対して、人道的な観点や被災国内の安定化などの観点から、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR:Office of the United Nations High Commissioner for Refugees)などの国際機関や各国政府、非政府組織(NGO:Non-Governmental Organization)などにより、救援や復旧活動が行われている。

これまで、わが国は、25年以上にわたって、カンボジア、ゴラン高原、東ティモール、ネパール、南スーダンなど、様々な地域において国際平和協力業務などを実施しており、その実績は内外から高い評価を得ている。今後も国際協調主義に基づく積極的平和主義の立場から、わが国に対する国際社会からの評価や期待を踏まえ、国際平和協力業務などを積極的かつ多層的に推進していく。その際、わが国の貢献が国際社会に及ぼす効果を最大化する観点からも、自衛隊がなすべき協力の態様について、より深い検討が必要である。そのため、国際平和協力業務などについては、自衛隊が蓄積した経験と施設分野などにおける高度な能力を活用した活動を引き続き積極的に実施するとともに、現地ミッション司令部や国連PKO局などにおける責任ある職域への自衛隊員の派遣を拡大するなどして、より主導的な役割を果たすなど、防衛省・自衛隊としてわが国の国際貢献への取組に主体的に関与していく。

1 国連平和維持活動に係る国際会議など

防衛省は17(平成29)年8月、「国連PKOに関する国防大臣会合」に向けた事務的協議である「準備会合」を東京で開催した。同準備会合では、共催国のバングラデシュ、大臣会合主催国のカナダをはじめとする32か国及び2国際機関の参加を得て、PKO要員派遣国に対する訓練や能力構築支援について意見交換し、国連のニーズや他国のベストプラクティスを確認するなどの成果を得た。

同準備会合の成果をふまえ、山本防衛副大臣は、17(平成29)年11月に、バンクーバー(カナダ)で開催された「国連PKOに関する国防大臣会合」において複数の国や機関が連携して国連PKOの能力ギャップを埋めることが期待されていること、わが国が中心となり実施してきた「国連アフリカ施設部隊早期展開プロジェクト」を含む国連、支援提供国、要員派遣国の三者が連携する「三角パートナーシップ・プロジェクト3」の有用性について言及しつつ、同プロジェクトへのさらなる貢献や女性PKO要員増加のための取組を進めていく旨表明した。なお、同大臣会合の関連会合として、同年7月に開催された国連PKO参謀長会議に陸自中央即応集団司令官(当時)が出席し、PKOに関する現状と課題などについて意見交換を実施した。

国連PKOに関する大臣会合の準備会合における大野防衛大臣政務官とカレ国連フィールド支援局長(17(平成29)年8月)

国連PKOに関する大臣会合の準備会合における大野防衛大臣政務官と
カレ国連フィールド支援局長(17(平成29)年8月)

2 国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS United Nations Mission in the Republic of South Sudan)
(1)UNMISSへの派遣の経緯など

05(平成17)年1月、スーダン政府とスーダン人民解放運動・軍が南北包括和平合意(CPA:Comprehensive Peace Agreement)に署名したことを受けて、国連スーダン・ミッション(UNMIS:United Nations Mission in Sudan)が設立された。

わが国は、08(平成20)年10月以降、UNMIS司令部要員(兵站幕僚及び情報幕僚)として陸上自衛官2名を派遣していたところであり、11(平成23)年7月には、南スーダン独立にともなってUNMISの任務は終了したが、平和と安全の定着や南スーダンの発展のための環境構築の支援などを目的として、国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)が設立された。政府は、国連からのUNMISSに対する協力、特に陸自施設部隊の派遣要請を受け、同年11月に司令部要員2名(兵站幕僚及び情報幕僚)の派遣、同年12月には自衛隊の施設部隊、現地支援調整所(当時)及び司令部要員1名(施設幕僚)などの派遣、14(平成26)年10月には司令部要員1名(航空運用幕僚)の派遣をそれぞれ閣議決定した。

南スーダンは6つの国と国境を接し、アフリカ大陸を東西南北に結ぶ、極めて重要な位置にある。南スーダンの平和と安定は、南スーダン一国のみならず、周辺諸国の平和と安定、ひいてはアフリカ全体の平和と安定につながるものであり、かつ国際社会で対応すべき重要な課題である。防衛省・自衛隊は、これまでの国連PKOにおいて実績を積み重ね、国連も高い期待を寄せているインフラ整備面での人的な協力を行うことで、同国の平和と安定に貢献してきた。

参照I部3章1節3項7(南スーダン情勢)

(2)自衛隊の活動

12(平成24)年1月、南スーダンの首都ジュバ及びウガンダにおいて、自衛隊の国連PKO活動では初めて、現地支援調整所(当時)を設置し、派遣施設隊が行う活動に関する調整を開始した。派遣施設隊は同年3月にジュバの国連施設内での施設活動を開始して以降、順次活動を拡大し同年6月の第2次要員への交代以後は300名を超える規模を維持し、安全を確保しながら道路の補修や避難民向けの施設構築を行うなど、意義のある活動を行ってきた。

16(平成28)年11月15日には、国家安全保障会議(九大臣会合)の審議を経て実施計画の変更を閣議決定し、同年12月の第11次要員への交代後、平和安全法制で新たに認められたいわゆる「駆け付け警護」の任務を付与するとともに、宿営地の共同防護を行わせることとした。

派遣施設隊は、17(平成29)年1月で派遣開始から5年という節目を越え、主要な実績だけでも、道路補修は延べ約260km、用地造成は延べ約50万m2など、これまでのわが国PKO活動の中で、最大規模の実績を積み重ねてきた。わが国として、自衛隊が担当するジュバにおける施設活動について一定の区切りをつけることができたことなどを総合的に勘案した結果、17(平成29)年3月10日、同年5月末をもって自衛隊の施設部隊による活動を終了することを政府として決定し、同年3月24日、稲田防衛大臣(当時)から派遣施設隊の業務終結に係る行動命令が発出された。要員は撤収作業に従事した後、同年5月末までに南スーダンから順次撤収し、UNMISSにおける施設部隊による業務を終結した。

なお、国連から、道路の維持補修などに活用するため派遣施設隊が保有する重機、車両、居住関連コンテナなどの物品の譲渡要請があったことから、わが国によるUNMISSへの協力をさらに効果的なものにするため、これらの物品を無償でUNMISSに譲渡した。また、この譲渡に先立ち、UNMISSの要請を受け、日本隊撤収後もUNMISSがこれらの重機などを用いて円滑に施設活動を行えるよう、UNMISS職員に対し重機などの操作や整備に関する教育を行った。

派遣施設隊のこうした献身的な活動は、国連及び南スーダンから感謝され高い評価を受けた。なお、UNMISS司令部に対する要員派遣は継続しており、現在、4名の陸上自衛官(兵站幕僚、情報幕僚、施設幕僚、航空運用幕僚)がUNMISS司令部において活動を実施している。兵站幕僚はUNMISSの活動に必要な物資の調達・輸送、情報幕僚は治安情勢に係る情報の収集・整理、施設幕僚はUNMISS全体の施設業務に係る企画・立案、航空運用幕僚はUNMISSが運航する航空機の運航支援といった業務を行っている。

さらに、司令部要員の活動を支援するため、2名の連絡調整要員を在南スーダン連絡調整事務所に派遣している。連絡調整要員は、わが国のUNMISSに対する協力を円滑かつ効率的に行うことを目的として、南スーダン政府等と南スーダン国際平和協力隊との間の連絡調整に当たっている。このように、わが国は引き続き、UNMISSの活動に貢献していく。

参照II部3章3節(平和安全法制の施行後の自衛隊の活動状況など)、図表III-2-3-2(UNMISSの組織)

図表III-2-3-2 UNMISSの組織

3 国連事務局への防衛省職員の派遣

防衛省・自衛隊は、国連の国際平和に向けた努力に積極的に寄与し、また、派遣された職員の経験をわが国のPKO活動への取組に活用することを目的に、国連事務局へ職員を派遣している。18(平成30)年6月現在、1名の自衛官(担当級)が国連平和維持活動局(国連PKO局)において国連PKOの方針や計画の作成などに関する業務を行っており、また、1名の事務官(担当級)が国連フィールド支援局において「三角パートナーシップ・プロジェクト」に関する業務を行っている。02(平成14)年12月以降、現在派遣中の職員を含め、これまでに国連PKO局に延べ6名(課長級1名、担当級5名)の自衛官を、また、国連フィールド支援局に延べ2名(担当級2名)の事務官を派遣した。

参照資料58(国際機関への防衛省職員の派遣実績)

4 PKOセンターへの講師などの派遣

防衛省・自衛隊は、アフリカ諸国などの平和維持活動における自助努力を支援するため、PKO要員の教育訓練を行うアフリカ所在のPKOセンターなどに自衛官を講師などとして派遣しており、これらPKOセンターの機能強化を通じ、アフリカなどの平和と安定に寄与している。また、山本防衛副大臣が、17(平成29)年11月にバンクーバー(カナダ)で開催された「国連PKOに関する国防大臣会合」において、女性PKO要員増加のための取組を進めていく旨スピーチしたことを踏まえ、同年12月、PKO分野でのジェンダー担当講師として女性自衛官1名を含む2名の自衛官をエチオピア平和支援訓練センターに派遣した。当該派遣を含め、08(平成20)年11月以降、これまでに延べ31名(計26回、計8か国)の自衛官を派遣している。

派遣された自衛官は、自衛隊が海外の活動で得た経験や教訓などに基づき、国際平和協力活動の現場における現地住民との関係構築の重要性やジェンダー問題についての講義などを行っている。

参照III部2章1節2項4(1)国際機関主催の国際会議
資料58(国際機関への防衛省職員の派遣実績)

5 国連アフリカ施設部隊早期展開プロジェクトへの支援

わが国は、これまでPKOの円滑化に欠かせない施設や輸送の分野で確かな信頼を得てきた。今後とも、PKOの早期展開を支援し、質の高い活動を実現するため、14(平成26)年9月のPKOサミットにおいて、安倍内閣総理大臣が積極的な支援を表明し、本プロジェクトによって具体化された。

本プロジェクトは、国連フィールド支援局が、わが国が拠出した資金を基に、重機の調達や施設要員への訓練を実施するものである。15(平成27)年9月の試行訓練以来、ナイロビ(ケニア)にある国際平和支援訓練センターに自衛官を教官として派遣しており、17(平成29)年5月から10月には、同訓練センターにおいて訓練が2回実施され、これに自衛官を派遣し、タンザニア国軍などの要員に対して施設機材操作訓練を実施した。これまで、6回の訓練を、アフリカの8か国約170名の要員に対して実施してきている。

防衛省は、今後実施される訓練についても、17(平成29)年11月のバンクーバー(カナダ)で開催された「国連PKOに関する国防大臣会合」における山本防衛副大臣のスピーチも踏まえ、積極的に支援していく。

3 国連、国連PKOの要員派遣国及び技術や装備を有する第三国間の協力により、国連PKOの要員派遣国の要員の能力向上を支援するパートナーシップ