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平成30年版防衛白書の刊行に寄せて

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防衛省・自衛隊は、いつ、いかなるときでも、危機管理に万全を期し、わが国の独立、平和及び安全、そして、国民の命と財産を守り抜くという崇高な使命を担っています。

わが国をとり巻く安全保障環境について振り返ると、昨年まで核実験や弾道ミサイルの発射を繰り返してきた北朝鮮は、本年に入ってから対話の動きを見せていますが、例えば、今なお、わが国のほぼ全域を射程に収めるノドン・ミサイルを数百発保有し、これを実戦配備しているという事実は、看過できるものではありません。北朝鮮の核・ミサイル問題については、本年6月の米朝首脳会談の結果も踏まえ、引き続き、国際社会が一致団結して、北朝鮮による全ての大量破壊兵器及びあらゆる射程の弾道ミサイルの、完全で、検証可能な、かつ、不可逆的な方法での廃棄に向けて努力していくことが重要であり、わが国としては、今後の北朝鮮による具体的な行動をしっかりと見極めていくことが必要です。

また、中国については、急速な軍事力近代化や運用能力の向上、わが国周辺での活動の一方的なエスカレーションなどは、透明性を欠いた形で軍事力を強化していることともあいまって、わが国を含む地域や国際社会の安全保障上の強い懸念となっています。さらに、ロシアもわが国周辺で活発な活動を続けているほか、サイバー空間や宇宙空間といった新たな領域における課題の顕在化など、グローバルな安全保障上の問題も広範かつ多様化しています。

こうした状況の中、防衛省・自衛隊がその使命を全うしていくためには、まずは、わが国自身の防衛力を強化し、自らが果たしうる役割の拡大を図る必要があります。現在、この使命を将来にわたって全うすべく、安倍内閣総理大臣の指示のもと、本年末を目指し、防衛計画の大綱の見直しや次期中期防衛力整備計画の検討を進めています。この検討に当たっては、従来の延長線上ではなく、国民を守るために真に必要な防衛力のあるべき姿を見定めていく考えです。

また、日米同盟の強化も一層進めていく必要があります。私は、昨年の大臣就任以降、マティス米国防長官との会談を重ね、日米間の緊密な連携を図ってまいりました。とりわけ、北朝鮮問題への対応に当たっては、日米間で認識や方針を綿密にすり合わせ、一致した対応をとることができています。日米同盟の絆を一層強固なものとし、日米同盟の抑止力・対処力の一層の強化に努めてまいります。同時に、沖縄をはじめとする地元の基地負担軽減のための取組みも重要であり、地元の声に真摯に耳を傾け、一層の努力を続けていきます。

日米防衛相会談においてマティス米国防長官と握手を交わす小野寺防衛大臣 18(平成30)年6月

日米防衛相会談においてマティス米国防長官と握手を交わす
小野寺防衛大臣 18(平成30)年6月

さらには、諸外国との安全保障協力も引き続き推進していかなければなりません。近年、基本的価値や安全保障上の利益を共有する多くの国々との間で、共同訓練や装備品の共同開発、能力構築支援(キャパシティ・ビルディング)といった様々な協力を着実に拡大しています。今後とも、国際協調主義に基づく「積極的平和主義」の立場から、地域と国際社会の平和と安定に一層貢献すべく、戦略的な国際防衛協力を力強く進めていきます。

このように、防衛省・自衛隊は、各種施策を着実に進めていますが、その担い手は、離島の駐屯地やへき地のレーダーサイト、洋上の艦艇を含む過酷な現場において、旺盛な士気と強い責任感のもと、事に臨んでは危険を顧みず、日夜任務に精励する一人ひとりの自衛隊員であるということは言うまでもありません。今年の白書においては、防衛省・自衛隊の各種施策を丁寧に説明するとともに、巻頭特集では、24時間365日態勢でひたむきに、誠実に、真剣に任務に当たる現場の隊員の姿を紹介することを通じ、施策の着実な実施と隊員の日々の奮闘が、国民の皆様の平和な暮らしと安心に繋がっているということをご理解いただけるよう心がけました。

防衛省・自衛隊がその実力を最大限に発揮し、任務を全うする上で、国民の皆様のご支持と信頼を得ることは必要不可欠です。一昨年以降、文書管理や情報公開のあり方などをめぐって、防衛省・自衛隊に対する国民の皆様の信頼を大きく揺るがす問題が続き、大変遺憾に思っています。防衛省・自衛隊としては、このようなことが二度とないよう、再発防止を引き続き徹底していく考えです。

最後に、一人でも多くの皆様が防衛白書に触れ、防衛省・自衛隊に対するご理解を深めていただくとともに、日々の平和な暮らしを守るべく、今、この瞬間も、それぞれの現場で任務に当たっている自衛隊員の存在に思いを馳せていただけることを願ってやみません。