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第I部 わが国を取り巻く安全保障環境

第11節 その他

1 国際テロリズムの動向

1 全般

中東やアフリカなどの統治能力がぜい弱な国において、国家統治の空白地域がアル・カーイダや「イラクとレバントのイスラム国(ISIL:Islamic State in Iraq and the Levant)」などの国際テロ組織の活動の温床となる例が顕著にみられる。こうしたテロ組織は、国内外で戦闘員などにテロを実行させてきたほか、インターネットなどを通じて暴力的過激思想を普及させている。その結果、欧米などにおいて、国際テロ組織との正式な関係はないものの、何らかの形で影響を受けた個人や団体が、少人数で計画・実行するテロが発生している。さらに、極右思想を背景とした、特定の宗教や人種を標的とするテロも欧米諸国で発生している。

国際テロ組織のうち、ISILは、元々の拠点であるイラクやシリアのほか、両国外に「イスラム国」の領土として複数の「州」を設立し、こうした「州」が各地でテロを実施している。2024年3月には、モスクワ郊外のコンサート会場での銃撃テロにより140人以上が死亡した事件について、ISILが犯行声明を出した。

国際テロ対策に関しては、テロの形態の多様化やテロ組織のテロ実行能力の向上などにより、テロの脅威が拡散、深化しているなかで、テロ対策における国際的な協力の重要性がさらに高まっている。

2 アフリカにおける動向

アフリカでは、ISILやアル・カーイダ関連組織が活発に活動している。特に、マリをはじめとするサヘル地域は、2024年に発生した世界のテロによる死者数の約50%を同地域の死者数が占めるなど、依然として国際テロリズムの温床となっている。また、アフリカ中部や南部においては、2019年6月以降、主にコンゴ民主共和国東部やモザンビーク北部においてISILの「中央アフリカ州」が活動を継続していた。2022年5月には、これまでISILの「中央アフリカ州」名義で犯行声明を発出していたモザンビークの武装集団が、ISILの「モザンビーク州」名義で犯行声明を発出し、新たな支部としての活動を開始した。アフリカ東部では、ソマリアにおいて、アル・シャバーブが自爆テロを含むテロ攻撃を繰り返し行っている。

欧州諸国などは、このようなテロ組織の活動に対し、対テロ作戦や訓練支援を行ってきた。例えば、サヘル地域においては、2013年から2022年までの間、フランス軍が主導となって、イスラム過激派に対する対テロ作戦を展開した。モザンビークにおいては、ISILの「モザンビーク州」の活動に対し、周辺国から派遣された部隊と共同での対テロ作戦や、EUによるモザンビーク国防軍への訓練ミッションが継続されている。また、ソマリアでは、2025年1月から、アフリカ連合が新たなミッションを開始しており、テロ対策の強化や治安の安定化などに焦点を当てた支援を行っている。

3 中東における動向

ISILは、2013年以降、情勢が不安定であったイラクやシリアにおいて勢力を拡大し、2014年に「イスラム国」の樹立を一方的に宣言した。同年以降、米国が主導する有志連合軍は、両国において、空爆や現地勢力に対する教育・訓練などに従事し、2019年、米国は、有志連合とともに両国におけるISILの支配地域を100%解放したと宣言するに至った。2022年には、2月と11月に米国がISIL指導者の死亡を発表したが、ISILはそれぞれ同年3月と11月に新指導者の就任を発表しており、イラクとシリアにおいて、依然活動を継続しているとみられる。こうしたなか、米軍は両国への部隊駐留を継続し、引き続き、ISILの再興防止に努めている。直近では、2025年12月にシリアでISILとみられる戦闘員の襲撃により、米軍要員など3名が殺害されたことをうけ、米中央軍は、同月および2026年1月にシリア各地で空爆を実施した。2025年12月の空爆では、精密誘導兵器100発以上、戦闘機20機以上などにより、70以上の標的を攻撃した。

アフガニスタンにおいては、タリバーンが支配地域を拡大するなか、2015年以降、ISILの「ホラサン州」が、首都カブールや東部を中心にテロ活動を継続してきた。アル・カーイダと協力関係にあるタリバーンがカブールを制圧した2021年8月、米国は、米軍の撤収を完了したが、遠隔からの対テロ作戦の継続を表明した。

米軍撤収後も、ISILの「ホラサン州」はカブールなどでテロ攻撃を継続しているほか、高い広報能力を駆使して各地でプロパガンダを展開しており、アフガニスタンにとどまらず、パキスタン、ロシアおよび中央アジアにも拡大しているなど、国際社会の脅威となっている。