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第IV部 共通基盤などの強化

6 処遇の向上及び再就職支援など

1 処遇の向上

自衛官は、厳しい環境下で任務を遂行するため、従来より、その任務や勤務環境の特殊性などを踏まえ、処遇の向上を図ってきた。2022年度には、ヘリコプタ─による一部の輸送任務や困難な状況で救急救命処置を行う隊員に支給する手当の支給範囲の拡大を行ったほか、長期出張者の負担を軽減する改善策を講じた。2023年度には、対領空侵犯措置などにかかる警戒監視業務を行うレーダーサイト勤務隊員への手当の支給を開始する。

整備計画においては、自衛隊員の超過勤務の実態調査などを通じ、任務や勤務環境の特殊性に加え、新たな任務の増加も踏まえた隊員の処遇の向上を図ることとしている。また、諸外国の軍人の給与制度などを調査し、今後の自衛官の給与などのあり方について検討することとしている。

なお、自衛官の勤務時間の実態調査については、2023年4月から実施している。

そのほか隊員が高い士気と誇りを持ちながら任務を遂行できるよう、功績の適切な顕彰をはじめ、栄典・礼遇に関する施策を推進することとしている。

2 殉職隊員への追悼など

1950年に警察予備隊の創設以降、自衛隊員は、旺盛な責任感をもって、危険を顧みず、わが国の平和と独立を守る崇高な任務の完遂に努めてきた。その中で、任務の遂行中に、不幸にしてその職に殉じた隊員は2,000人を超えている。

防衛省・自衛隊では、殉職隊員が所属した各部隊において、殉職隊員への哀悼の意を表するため、葬送式を行うとともに、殉職隊員の功績を永久に顕彰し、深甚(しんじん)なる敬意と哀悼の意を捧げるため、内閣総理大臣参列のもと行われる自衛隊殉職隊員追悼式など様々な形で追悼を行っており、令和4年度自衛隊殉職隊員追悼式では、35柱(陸自16柱、海自15柱、空自4柱)を顕彰している7

3 隊員の退職と再就職のための取組

自衛隊の精強性を保つため、多くの自衛官は50代半ば、任期制自衛官は20~30代半ばで退職する。その多くは、生活基盤の確保のために再就職が必要である。このため、現役の自衛官が将来への不安を解消し、職務にまい進するためにも、再就職支援は極めて重要である。

整備計画においても、自衛官の退職後の生活基盤の確保は国の責務であるとしている。また、進路指導体制や職業訓練機会の充実、関係機関や民間企業との連携強化など、再就職支援の一層の充実・強化を図ることとしている。

退職自衛官は、職務遂行と教育訓練によって培われた、優れた企画力・指導力・実行力・協調性・責任感などのほか、職務や職業訓練などにより取得した各種の資格・免許も保有している。このため、地方公共団体の防災や危機管理の分野をはじめ、金融・保険・不動産業や建設業のほか、製造業、サービス業など幅広い分野で活躍している。

特に、地方公共団体の防災部局には、2023年3月末現在で、46都道府県に107名、455市区町村に533名の計640名の退職自衛官が危機管理監などとして在職している。防衛省・自衛隊と地方公共団体の連携を強化することは、地方公共団体の危機管理能力の向上につながるため、このような再就職支援の強化にも取り組んでいる。

なお、防衛省では、地方公共団体の防災部門などへの採用を希望する退職予定自衛官向けに「防災・危機管理教育」を実施している。受講者は申請により内閣府から「地域防災マネージャー証明書」が交付される。証明書を交付する要件は、「1尉以上ないし2尉であって1尉の実質的な職務経験があること」とされている。

2023年3月、地域防災力の向上を目的として、防衛省と特定非営利活動法人日本防災士機構との間で防災士の資格取得における自衛官の特例を設けることについて申し合わせた。

また、任期制自衛官の充足の維持・向上に加え、予備自衛官及び即応予備自衛官の充足向上を図るため、任期制自衛官の任期満了後に国内の大学に進学した者が、その在学期間中、予備自衛官などに任官した場合、進学支援給付金を支給することとしている。

参照図表IV-2-1-6(再就職支援施策として行っている主な職業訓練)、図表IV-2-1-7(2022年度再就職支援実績)、資料68(再就職等支援のための主な施策)資料69(退職自衛官の地方公共団体防災関係部局における在職状況)

図表IV-2-1-6 再就職支援施策として行っている主な職業訓練

図表IV-2-1-7 2022年度再就職支援実績

一方、自衛隊員の再就職については、公務の公正性に対する国民からの信頼を確保するため、一般職の国家公務員と同様に3つの規制(①他の隊員・OBの再就職依頼・情報提供等の規制、②在職中の利害関係企業等への求職の規制、③再就職者による依頼等(働きかけ)の規制)8が設けられている。規制の遵守状況については、隊員としての前歴を有しない学識経験者から構成される監視機関において監視される。また、不正な行為には罰則を科すことで厳格に対応することとしている。

あわせて、内閣による再就職情報の一元管理・情報公開を的確に実施するため、自衛隊員のうち管理職隊員(本省企画官相当職以上)であった者の再就職状況について毎年度内閣が公表することとしている。

動画アイコンQRコード資料:防衛省の再就職支援(援護)について
URL:https://www.mod.go.jp/j/profile/syogu/engo/index.html

7 自衛隊殉職者慰霊碑は、1962年に市ヶ谷に建てられ、1998年、同地区に点在していた記念碑などを移設し、「メモリアルゾーン」として整理された。防衛省では毎年、防衛大臣主催により、殉職隊員の御遺族をはじめ、内閣総理大臣の参列のもと、自衛隊殉職隊員追悼式を行っている。また、メモリアルゾーンにある自衛隊殉職者慰霊碑には、殉職した隊員の氏名などを記した銘版が納められており、国防大臣などの外国要人が防衛省を訪問した際、献花が行われ、殉職隊員に対して敬意と哀悼の意が表されている。このほか、自衛隊の各駐屯地及び基地において、それぞれ追悼式などを行っている。

8 自衛隊法第65条の2、第65条の3及び第65条の4に規定