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第IV部 共通基盤などの強化

3 ライフサイクルを通じたプロジェクト管理

1 重点的なプロジェクト管理による最適な装備品の取得

装備品の高度化・複雑化により、装備品のライフサイクル(構想、研究・開発、量産・配備、運用・維持など)全体のコストが増加傾向にある中、品質が確保された装備品を適切な経費で必要とする時期までに効率的かつ計画的に取得するには、ライフサイクル全体を通じた取得の効率化と、それを実現するための組織的な管理体制が極めて重要である。このため、防衛装備庁の設置(2015年10月)以来、同庁プロジェクト管理部が重要な装備品を選定したうえでライフサイクルを通じたプロジェクト管理を実施し、最適な装備品の取得の実現に向けた取組を推進している。

具体的には、プロジェクト管理対象装備品(以下「対象装備品」という。)として、2023年3月末時点で、22品目のプロジェクト管理重点対象装備品と13品目の準重点管理対象装備品2を選定している。また、プロジェクト管理重点対象装備品については、専属の担当官としてプロジェクトマネージャー(PM:Project Manager)を指名した後、省内関連部署の職員で構成される統合プロジェクトチーム(IPT:Integrated Project Team)などによるプロジェクト管理を実施している。

また、2023年3月末時点の対象装備品の35品目は、これまでに取得プログラムの目的や取得方針、ライフサイクルコストなど、計画的にプロジェクト管理を進めるために必要な基本的事項を定めた「取得戦略計画」及び「取得計画」(以下「対象装備品の計画」という。)を策定している。

さらに、原則、毎年度、対象装備品の計画の実施状況を確認したうえで、分析及び評価を実施し、これを基に適宜、対象装備品の計画を見直すなど、最新の状況を反映した適切なプロジェクト管理の推進に努めている。また、2023年3月の取得プログラムの分析及び評価は、対象装備品の計画を策定してきたもののうち35品目に対して実施した。

参照図表IV-1-4-1(プロジェクト管理重点対象装備品及び準重点管理対象装備品)

図表IV-1-4-1 プロジェクト管理重点対象装備品及び準重点管理対象装備品

動画アイコンQRコード資料:プロジェクト管理について
URL:https://www.mod.go.jp/atla/soubiseisaku_project.html

2 プロジェクト管理推進・強化のための取組
(1)これまでの取組

プロジェクト管理を推進、強化するために次の取組を行っている。

ア WBSによるコスト・スケジュールの管理

一部の国内生産の装備品などについては、装備品などの構成要素(WBS(Work Breakdown Structure)3)ごとに作業の進捗状況、経費の発生状況などを可視化できるマネジメント手法の導入を推進している。2020年4月からは、共同履行管理型インセンティブ契約制度を活用し、コスト上昇やスケジュール遅延を早期に察知して、迅速な対応を行うなど、官民共同でのコスト・スケジュール管理に努めている。(4項3参照)

イ コスト見積り精度向上に関する手法の検討

ライフサイクルコストの見積りは、これまでに開発又は導入した類似装備品の実績コストデータから推定している。見積り精度の向上には、より多くのデータに基づき推定する必要があるため、コストデータベースを構築し、コストデータの収集とそのデータベース化を推進している。

ウ 専門知識の習得・発展

プロジェクトマネージャーなどのマネジメント能力のさらなる向上や、プロジェクト管理に携わる人材育成のため、海外や民間におけるプロジェクト管理手法の研修などを定期的に実施している。

(2)今後の取組

装備品の効果的・効率的な取得を一層推進するためには、装備品のライフサイクルを通じたプロジェクト管理の実効性及び柔軟性の向上が必要である。このため、整備計画では、さらなる装備品の効果的・効率的な取得の取組として、長期契約の適用拡大による装備品の計画的・安定的な取得を通じてコスト低減を図り、企業の予見可能性を向上させ効率的な生産を促すことに加え、他国を含む装備品の需給状況を考慮した調達、コスト上昇の要因となる自衛隊独自仕様の絞り込みなどを行うこととしている。

2 プロジェクトマネージャーの指名及び統合プロジェクトチームの設置は行わないものの、プロジェクト管理重点対象装備品と同様に、機能・性能やコスト、スケジュールなどに関するリスクに着目し、プロジェクト管理を実施する特定の装備品を指す。

3 プロジェクト管理を行うため、事業において創出する成果物について、その進捗や費用を管理可能な単位(構成品や役務など)にまで詳細化し、体系付けした階層構造のこと