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本部長からの市ヶ谷レターvol.22

2020.8.4

岸良本部長紹介

体験型防災教育受講の薦め

1 はじめに
 皆さんは、防災教育を受講したことがありますか? 自衛隊では、防災講話や表題に掲げています体験型防災教育を行い、 参加者の防災意識の向上や命を守るための行動の習得を図っております。
 災害発生の観点からは、近年、台風や豪雨など多くの災害に見舞われるとともに今後、 首都直下地震や南海トラフ巨大地震が高い確率で発生すると言われております。
 また教育の観点からは、小学校では2020年度から、中学校は2021年度から、 高等学校では2022年度から新しい学習指導要領がスタートします。 小・中学校学習指導要領においては、防災・安全教育などの充実として「都道府県や自衛隊等国の機関による災害対応」 (社会)が、高等学校学習指導要領においては、同じく防災・安全教育などの充実として「防災と安全・安心な社会の実現」 (公民)が謳われています。
 よって教育関係者をはじめ、PTA、青少年育成関連団体、町内会などの皆様には、 是非、専門知識と豊富な経験を有する自衛隊(自衛隊東京地方協力本部)に体験型防災教育を依頼していただければと思います。

2 体験型防災教育
 なぜ体験型が良いのか?防災講話の場合、一般的に聴講者は話を聞くだけとなり、 長時間になればなるほど子供達にとっては集中力が途切れてしまう可能性があります。 しかしながら体験型防災教育は、内容を工夫することにより、被教育者に自ら考えてもらい、 体を動かして実践するため楽しく飽きません。更に小さな成功体験、あるいは失敗体験をするため、 印象深く記憶にも残りやすい特性があります。まさに「百聞は一見に如かず、百見は一験に如かず」 であると思います。更に学習方法と平均学習定着率の関係を表した「ラーニングピラミッド」 によると学習定着率は、講義を聞くだけの場合が5%、自ら体験する場合が75%であり、 やはり体験型が効果的かつ効率的であると言えます。
 ここでは、防災士の資格を保持し、多くの災害派遣の経験を有する東京地本の地域事務所長が実施した 「防災×アクティブラーニング」を紹介します。

3 「防災×アクティブラーニング」
  
の概要

(1)全般
 「防災×アクティブラーニング」のコンセプトは、 「震災で生き残る力を身につける」です。救急活動の現場では、震災後3日(72時間) が勝負と言われています。災害による被害をできるだけ少なくするためには自助、共助、 公助の連携が不可欠であり、自助とは一人ひとりが自ら取り組むこと、 共助とは地域や身近に居る人同士が一緒に取り組むこと、公助とは、 国や自治体が取り組むことです。この中で最も基本となるのは「自助」であり、 まずやるべきことは「自分の身を自分で守る」ことです。自分が助からなければ近くで助けを求めている人も助けられません。 また災害に遭遇した場合の身の安全や守り方を家族とともに知っておく。 そして数日生き延びていくためには、水や食料などの備えをしておくことが必要です。 前段教育では、震災直後どのように行動すべきなのか、自ら考えながら、知識を吸収し、 生き残るためのポイントを学ぶこととなります。後段教育では、身近にあるものを使用して、 自ら生き残る術を体験します。本教育は1時間半を基準とした教育内容ですが、 対象者や使用可能な時間等に応じて柔軟に教育内容を修正します。

(2)前段教育「震度7!生死を分ける3分の過ごし方」
○ はじめに(震度7のイメージ共有)
 はじめに、震度7とはどのくらい危険なのか、周りの建物などはどのように壊れるのか、 そして帰宅困難も含めどのような状況が生起するのかなど映像により具体的なイメージを共有します。
○ 生死を分ける18の質問及び回答、生存率集計
 ここでは大地震が起こった直後にどのような行動をとるべきかをクイズ形式で学びます。 例えば、「古いビルの地下にいるとき大地震が発生。その時あなたは?」との質問に対し、 2つの写絵が提示され、その写絵の状況を教育者が説明を行い、子供達は正しいと思う方を選択します。 一人で考えて選択する子供もいれば、友達同士話し合いながら選択する子供達もいます。 会場を二つに区分して、子供たちは正しいと思う方に移動します。そして教育者が、 正解を発表し解説を行います。それぞれの選択肢は点数が決まっており、 18コの合計得点により、個人の生き残り度合いを測ることができます。一例として100点満点中、 80点以上であれば「伝道者レベル」、60点以下だと「要注意」の評価となります。 前段のまとめとして子供たちに「生き残るポーズ」を実際にとってもらうとともに「生き残るポイント」を学びます。

(3)後段教育「生き残る!72時間の過ごし方」
○ グループに分かれて実習~あるものを使って生き残る
 ここでは身近な物を使って、子供たちが自ら体験することにより、生き残る術を学びます。 一つ目は、「怪我の手当て」です。手ぬぐいなどを用いて止血を行ったり、 骨折や捻挫の際にペンや割り箸を使って添え木にしたり、段ボールをギプス代わりに使用する方法を学びます。 二つ目は、「飢えをしのぐ」です。缶切りなしで缶詰を開ける方法や非常用糧食の温め方、 少ない食料を協力して分け合い飢えをしのぐ方法などを学びます。 三つ目は、「寝袋をつくる」です。ブルーシートと新聞紙を寝袋にする方法を学びます。 ブルーシートを納豆の藁容器のような形にして作成します。 四つ目は、「灯り、トイレをつくる」です。懐中電灯にビニール袋をプラスし、 ランタン代わりにする方法やツナ缶・バターをローソク代わりにする方法、 更には段ボールとレジ袋でトイレをつくる方法を学びます。 五つ目は、「避難を考える」です。会場周辺の道路を避難道路と仮定して、 子供たちが避難者の立場になって危険な個所を確認して歩き、危険見積りや回避策について討議します。 大人はカメラマン兼安全確認係として同行します。
○ グループ毎の発表
 グループ毎実施したそれぞれの内容を代表者が発表し、情報及び認識の共有を図ります。
○ まとめ
 「生き残る」そして「生きのびる」ことに関して、子供達に考えさせるとともに、 今日からそのために何を心掛けるかを問いかけて実践を促します。

4 最後に
 本体験型防災教育により、日本の将来を担う子供たちが、大震災等に際しても生き残る知恵を身に着けるとともに、 お互いに助け合い工夫することで一体感が醸成され、 仲間意識が高くなるとともに困難を乗り越える自信をつけることができると考えます。 併せて子供たちのご両親等、大人も一緒にご参加くだされば気づきが沢山あり、 極めて有意義な教育になり得ると確信しています。
 東京地本では、令和元年度は35件の防災教育等を実施しました。 対象は、高校生が11件、中学生が8件、小学生が6件、専門学校生が3件、 保育園児・保護者が1件、市民・教員等が6件となっており、幅広い方々に教育を実施しています。
 現在は、コロナ禍であり、3密を避けなければならないため、 大人数での実施は困難かもしれませんが、少人数毎分散して実習を行ったり、 ネット上で、応急担架搬送、寝袋作成、怪我等応急処置について映像を提供するなど、 感染防止対策を実施した上で工夫して体験型防災教育を行うこともできます。
 結びに、皆様には本稿で紹介しました体験型防衛教育の有用性についてご理解をいただき、 防災意識の向上や命を守るための行動を習得するため自衛隊(自衛隊東京地方協力本部) に教育を是非依頼していただければ幸いです。詳しくは、お近くの東京地本募集事務所又は地域事務所まで連絡下さい。

自衛隊東京地方協力本部長 岸良 知樹

防災教育のリーフレット

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生き残るポーズの実践

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