Contents

第III部 わが国防衛の三つの柱(防衛の目標を達成するための手段)

3 ゲリラや特殊部隊による攻撃などへの対応

高度に都市化・市街化が進んでいるわが国においては、少数の人員による潜入、攻撃であっても、平和と安全に対する重大な脅威となり得る。こうした事案には、潜入した武装工作員10などによる不法行為や、わが国に対する武力攻撃の一形態であるゲリラや特殊部隊による破壊工作など、様々な態様がある。

1 基本的考え方

侵入者の実態や生起している事案の状況が不明な段階においては、第一義的には警察機関が対処を実施し、防衛省・自衛隊は情報収集、自衛隊施設の警備強化を実施することとしている。状況が明確化し、一般の警察力で対処が可能な場合、必要に応じ警察官の輸送、各種機材の警察への提供などの支援を行い、一般の警察力で対処が不可能な場合は、治安出動により対処することとしている。さらに、わが国に対する武力攻撃と認められる場合には防衛出動により対処することになる。

2 ゲリラや特殊部隊による攻撃への対処

ゲリラや特殊部隊による攻撃の態様としては、民間の重要インフラ施設などの破壊や人員に対する襲撃、要人暗殺などがあげられる。

ゲリラや特殊部隊による攻撃への対処にあたっては、速やかに情報収集態勢を確立し、沿岸部での警戒監視、重要施設の防護並びに侵入したゲリラや特殊部隊の捜索及び撃破を重視して対応することとしている。警戒監視による早期発見や兆候の察知に努め、必要に応じ、原子力発電所などの重要施設の防護のために部隊を配置し、早期に防護態勢を確立することとしている。そのうえで、ゲリラや特殊部隊が領土内に潜入した場合、偵察部隊や航空部隊などにより捜索・発見し、速やかに戦闘部隊を展開させたうえで、これを包囲し、捕獲又は撃破することになる。

参照図表III-1-2-6(ゲリラや特殊部隊による攻撃に対処するための作戦の一例)

図表III-1-2-6 ゲリラや特殊部隊による攻撃に対処するための作戦の一例

3 武装工作員などへの対処
(1)基本的考え方

武装工作員などによる不法行為には、警察機関が第一義的に対処するが、自衛隊は、生起した事案の様相に応じて対応することになる。その際、警察機関との連携が重要であり、治安出動に関しては自衛隊と警察との連携要領についての基本協定11や陸自の師団などと全都道府県警察との間での現地協定などを締結している12

(2)防衛省・自衛隊の取組

陸自は都道府県警察との間で、全国各地で共同実動訓練を継続して行っており、2012年以降は各地の原子力発電所の敷地においても実施するなど、連携の強化を図っている。さらに、海自と海上保安庁との間でも、継続して不審船対処にかかる共同訓練を実施している。

4 核・生物・化学兵器への対処

近年、大量無差別の殺傷や広範囲な地域の汚染が生じる核・生物・化学(NBC:Nuclear, Biological and Chemical)兵器とその運搬手段及び関連資器材が、テロリストや拡散懸念国などに拡散する危険性が強く認識されている。

1995年3月の東京での地下鉄サリン事件などは、こうした兵器が使用された例である。

(1)基本的考え方

わが国でNBC兵器が使用され、これが武力攻撃に該当する場合、防衛出動によりその排除や被災者の救援などを行うことになる。また、武力攻撃に該当しないが一般の警察力で治安を維持することができない場合、治安出動により関係機関と連携して武装勢力などの鎮圧や被災者の救援を行うこととしている。さらに、防衛出動や治安出動に該当しない場合であっても、災害派遣や国民保護等派遣により、陸自の化学科部隊や衛生科部隊などを中心に被害状況に関する情報収集、除染活動、傷病者の搬送、医療活動などを関係機関と連携して行うことになる。

陸上戦闘訓練にあたる陸自隊員

陸上戦闘訓練にあたる陸自隊員

(2)防衛省・自衛隊の取組

防衛省・自衛隊は、NBC兵器による攻撃への対処能力を向上するため、陸自の中央特殊武器防護隊、対特殊武器衛生隊などを保持しているほか、化学及び衛生科部隊の人的充実を行っている。さらに、特殊な災害に備えて初動対処要員を指定し、速やかに出動できる態勢を維持している。

海自及び空自においても、艦船や基地などにおける防護器材の整備を行っている。

10 殺傷力の強力な武器を保持し、わが国において破壊活動などの不法行為を行う者

11 防衛庁(当時)と国家公安委員会との間で締結された「治安出動の際における治安の維持に関する協定」(1954年に締結。2000年に全部改正)

12 2004年には、治安出動の際における武装工作員等事案への共同対処のための指針を警察庁と共同で作成した。