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第I部 わが国を取り巻く安全保障環境

3 弾道ミサイルなど

弾道ミサイルは、放物線状に飛翔する、ロケットエンジン推進のミサイルで、長距離の目標を攻撃することが可能であり、核・生物・化学兵器などの大量破壊兵器の運搬手段としても使用されるものである。また、高角度、高速で落下するなどの特徴を有しているため、有効に対処するには極めて精度の高い迎撃システムが必要である。さらに、近年、操舵翼を用いて姿勢を制御することで、通常の弾道ミサイルよりも低高度を変則的な軌道で飛翔することが可能な弾道ミサイルが登場するなど、弾道ミサイル関連技術は急速に変化・進展してきている。こうしたミサイルは、早期探知を困難にし、ミサイル防衛網を突破することを企図していると考えられ、既存のミサイル迎撃態勢への新たな課題となっている。

参照図表I-4-6-2(弾道ミサイルの分類)

図表I-4-6-2 弾道ミサイルの分類

武力紛争が続いている地域に弾道ミサイルが配備された場合、地域の緊張をさらに高め、さらなる不安定化をもたらす危険性も有している。さらに弾道ミサイルは、通常戦力において優る国に対する遠距離からの攻撃や威嚇(いかく)の手段としても利用される。

近年、こうした弾道ミサイルの脅威に加え、テロリストなどの非国家主体にとっても入手が比較的容易で、拡散が危惧される兵器として、巡航ミサイルの脅威も指摘されている。巡航ミサイルは、弾道ミサイルに比べ、製造コストが安く、維持、訓練も容易で、多くの国が製造又は改造を行っている。また、命中精度が比較的高く、飛翔時の探知が困難なものや、弾道ミサイルに比して小型で、船舶などに隠匿(いんとく)して、密かに攻撃対象に接近することが可能なものもあり、弾頭に大量破壊兵器が搭載された場合は、深刻な脅威となる。