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第I部 わが国を取り巻く安全保障環境

7 アフガニスタン情勢

アフガニスタンでは、2014年12月にISAF(International Security Assistance Force)が撤収し、アフガニスタン治安部隊(ANDSF:Afghan National Defense and Security Forces)への教育訓練や助言などを主任務とするNATO主導の「確固たる支援任務(RSM:Resolute Support Mission)」が開始された頃から、タリバーンが攻勢を激化させた。一方、ANDSFは兵站、士気、航空能力、部隊指揮官の能力などの面で課題を抱えており、こうした中でタリバーンは国内における支配地域を拡大させてきた。

2020年2月、米国とタリバーンとの間で、駐アフガニスタン米軍の条件付き段階的撤収などを含む合意が署名され、同年3月、米国は、米軍の撤収を開始したと発表した。また、同年9月、アフガニスタン政府とタリバーンによる和平交渉がカタールで開始された。米国は、2021年1月までに駐留米軍を2,500人に縮小し、同年7月には、同年8月末までに撤収を完了予定であると発表した。

こうした状況の中、タリバーンは、アフガニスタン国内での支配領域をさらに急速に拡大し、同年8月、首都カブールを制圧した。同年9月にタリバーンが設立を発表した暫定内閣においては、対米交渉を担っていたバラーダル氏が第一副首相に就任した一方で、タリバーン内の強硬派であり、国連などによって制裁対象に指定されているハッカーニ・ネットワークから、複数人が閣僚に就任しており、後者の影響力の強さが指摘されている。

同年12月、国連安保理は、人道支援は国連の制裁に抵触しないとする、米国が提案した決議案を採択した。しかしながら、2022年3月現在、タリバーンの内閣は、いずれの国にも政府として承認されていない。

タリバーンによる国内の統治やタリバーンと各国の交渉が注目される。