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ダイジェスト 第III部 わが国防衛の三つの柱(防衛の目標を達成するための手段)

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わが国自身の防衛体制

平時からグレーゾーンの事態への対応

わが国周辺における常続監視

  • 自衛隊は、各種事態に迅速かつシームレスに対応するため、平素から領海・領空とその周辺の海空域において情報収集及び警戒監視を実施している。

警戒監視を行う陸自隊員

警戒監視を行う陸自隊員

わが国周辺海域において警戒監視にあたる海自P-1哨戒機

わが国周辺海域において
警戒監視にあたる海自P-1哨戒機

24時間、365日警戒監視にあたる空自レーダーサイト

24時間、365日警戒監視にあたる
空自レーダーサイト

「瀬取り」への対応

  • 自衛隊はわが国周辺海域において、警戒監視活動の一環として、国連安保理決議違反が疑われる船舶についての情報収集も実施しており、2018年から2021年3月末までの間に、計24回の北朝鮮籍船舶による違法な洋上での物資の積替え(「瀬取り」)と強く疑われる行為を確認し公表している。
  • 「瀬取り」を含む違法な洋上での活動に対し、米国に加え、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド及びフランスが、在日米軍嘉手納飛行場を使用して航空機による警戒監視活動を行った。また、米国のほか、英国、カナダ、オーストラリア及びフランスの海軍艦艇がわが国周辺海域において警戒監視活動を行った。

「瀬取り」を実施していたことが強く疑われる北朝鮮籍タンカー(2019年12月)

「瀬取り」を実施していたことが強く疑われる北朝鮮籍タンカー(2019年12月)

領空侵犯に備えた警戒と緊急発進

  • 空自は、わが国周辺を飛行する航空機を警戒管制レーダーや早期警戒管制機などにより探知・識別し、領空侵犯のおそれのある航空機を発見した場合には、戦闘機などを緊急発進(スクランブル)させ、その航空機の状況を確認し、必要に応じてその行動を監視している。
  • 令和2(2020)年度の空自機による緊急発進(スクランブル)回数は725回

年度緊急発進回数の推移

中東地域における日本関係船舶の安全確保のための情報収集

  • 中東地域における日本関係船舶の安全確保のための情報収集において、水上部隊として護衛艦1隻を派遣し、派遣海賊対処行動航空隊のP-3C哨戒機2機を活用している。

アラビア海北部において情報収集活動にあたる護衛艦「すずなみ」

アラビア海北部において情報収集活動に
あたる護衛艦「すずなみ」

島嶼部を含むわが国に対する攻撃への対応

島嶼部に対する攻撃への対応

  • 島嶼部を含むわが国への攻撃に対しては、必要な部隊を迅速に機動・展開させ、海上優勢、航空優勢を確保しつつ、侵攻部隊の接近・上陸を阻止する。海上優勢、航空優勢の確保が困難な状況になった場合でも、侵攻部隊の脅威圏の外から、その接近・上陸を阻止する。万が一占拠された場合には、あらゆる措置を講じて奪回する。
  • 常続監視態勢の強化などのため、新型護衛艦(FFM)が進水、早期警戒機(E-2D)を整備する。

新型護衛艦「くまの」命名・進水式(2020年11月)

新型護衛艦「くまの」命名・進水式(2020年11月)

ミサイル攻撃などへの対応

  • わが国の弾道ミサイル防衛は、現在、イージス艦による上層での迎撃とペトリオットPAC-3による下層での迎撃を、自動警戒管制システム(JADGE)により連携させて効果的に行う多層防衛を基本としている。
  • 複雑化・多様化する経空脅威に対し、被害を局限するため、ミサイル防衛に加え、従来の防空のための装備品も併せ、一体的に運用する体制を確立し、常時持続的にわが国全土を防護するとともに、多数の複合的な経空脅威についても同時対処できる総合ミサイル防空能力を強化していく。
  • イージス・アショアについては、2020年6月、配備に関するプロセスを停止した。同年12月、厳しさを増すわが国を取り巻く安全保障環境により柔軟かつ効果的に対応していくため、イージス・システム搭載艦2隻の整備を閣議決定した。

宇宙・サイバー・電磁波の領域での対応

宇宙領域での対応

  • 令和5(2023年度)からの宇宙状況監視(SSA)システムの本格運用に向け、わが国の人工衛星にとって脅威となる宇宙ゴミなどを監視するためのレーダーと運用システムの整備を進めている。
  • 宇宙領域専門部隊を強化するため、宇宙作戦群(仮称)を新編する。

SSA体制

サイバー領域での対応

  • 防衛省・自衛隊では、情報システムの安全性確保や専門部隊によるサイバー攻撃対処など、総合的な施策を行っている。
  • サイバーセキュリティに関する専門的知見を備えた優秀な人材を発掘することを目的にしたサイバーコンテストの開催や、高度な知見を有するサイバーセキュリティ統括アドバイザーの採用に向けた取組など部外の人材の活用を進めた。

自衛隊サイバー防衛隊(仮称)を新編予定(令和3(2021)年度)

自衛隊サイバー防衛隊(仮称)を新編予定
(令和3(2021)年度)

電磁波領域での対応

  • 防衛省・自衛隊は、電磁波の利用を適切に管理・調整する機能の強化、電磁波に関する情報収集・分析能力の強化及び情報共有態勢の構築、わが国への侵攻を企図する相手方のレーダーや通信などを無力化するための能力の強化などに取り組んでいく。
  • 陸自電子戦部隊の新編やスタンド・オフ電子戦機の開発、高出力マイクロ波やレーザーなどの研究を推進している。

大規模災害などへの対応(新型コロナウイルス感染症への対応を含む。)

大規模災害などへの対応(新型コロナウイルス感染症への対応を含む。)

  • 自衛隊は、地方公共団体などと連携・協力し、被災者や遭難した船舶・航空機の捜索・救助、防疫などの活動を行っている。
  • 発災当初において、自衛隊はいかなる被害や活動にも対応できる態勢で対応し、人命救助活動を最優先で行いつつ、生活支援などについては、現地対策本部などの場において、自治体・関係省庁などの関係者と役割分担、対応方針、活動期間などの調整を行っている。
  • 令和2(2020)年度は、令和2年7月豪雨、令和2年台風第10号に対する災害派遣など531件の災害派遣を実施した。
  • 世界的大流行(パンデミック)となり、わが国を含む国際社会の安全保障上の重大な脅威となった、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止に向け、防衛省・自衛隊は35都道府県において総力を挙げて災害派遣など様々な活動を実施した。
    • 自治体職員に対する感染防止の教育支援を33都道府県で約2,400名に実施(注)
    • 宿泊療養者に対する緊急支援を8都道県で約760名に実施
    • 病院から宿泊施設間の患者の輸送支援を6県で約90名に実施
    • 医療支援を5道県で実施
    • 野外でのPCR検査に必要な天幕の展張・維持管理を1県で実施
    • 離島で発生した患者輸送を5道県で約80名に実施
    • 自衛隊が保有するCT診断車の資器材提供を1県で実施
  • 鳥インフルエンザ、豚熱(CSF)、山林火災、大雪に対する災害派遣を実施した。

(注) 一般命令、官庁間協力による教育支援を含む。

令和2年7月豪雨において孤立集落へ支援物資を輸送する陸自隊員(2020年7月)

令和2年7月豪雨において孤立集落へ
支援物資を輸送する陸自隊員(2020年7月)

令和2年7月豪雨において人命救助にあたる海自隊員(2020年7月)

令和2年7月豪雨において人命救助にあたる海自隊員
(2020年7月)

東京国際空港において検疫支援する陸自隊員(2020年4月)

東京国際空港において検疫支援する陸自隊員
(2020年4月)

平和安全法制施行後の自衛隊の活動状況など

米軍等の部隊の武器等防護(自衛隊法第95条の2)の警護

  • 2020年は米軍の艦艇及び航空機に対して計25回の警護を実施

日米同盟

日米安全保障体制の意義

  • 2020年、締結から60周年を迎えた日米安全保障条約に基づく日米安保体制は、わが国自身の防衛体制とあいまってわが国の安全保障の基軸である。
  • 日米安保体制を中核とする日米同盟は、わが国のみならず、インド太平洋地域、さらには国際社会の平和と安定及び繁栄に大きな役割を果たしている。

「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)の概要

  • 日米間の役割や協力などの在り方についての一般的な大枠及び政策的な方向性を示したガイドラインは、1978年に策定され、1997年及び2015年に逐次改訂されている。
  • 2015年に改訂された現行のガイドラインは、平時から緊急事態までのあらゆる段階において連携するとともに、宇宙・サイバー領域における協力を盛り込んでおり、より力強い同盟とより大きな責任の共有のための戦略的な構想を明らかにするものである。

日米間の政策協議

  • 2021年3月、東京において、茂木外務大臣、岸防衛大臣、ブリンケン国務長官及びオースティン国防長官は、日米安全保障協議委員会(「2+2」)を開催した。また、同日、岸防衛大臣とオースティン米国防長官の日米防衛相会談が実施された。これらの機会を通じ、日米同盟の抑止力・対処力の強化に向けた連携の一層の深化について一致するとともに、主として以下の点について確認・表明した。
    • 中国による、既存の国際秩序と合致しない行動は、日米同盟及び国際社会に対する課題を提起しているとの認識で一致
    • 東シナ海及び南シナ海を含め、現状変更を試みるいかなる一方的な行動にも反対するとともに、中国の海警法に関する深刻な懸念を表明
    • 自由で開かれたインド太平洋を維持・強化するため、地域内外の多様なパートナーとの協力の強化の重要性を確認
    • 日米共同訓練を含む各種の高度な訓練の実施等を通じ、即応性を強化していくことが重要であることで一致

日米安全保障協議委員会(「2+2」)(2021年3月)

日米安全保障協議委員会(「2+2」)(2021年3月)

日米防衛相会談(2021年3月)

日米防衛相会談(2021年3月)

日米同盟の抑止力及び対処力の強化

  • わが国の平和と安全を確保するため、日米は、「宇宙領域やサイバー領域等における協力」、「総合ミサイル防空」、「共同訓練・演習」、「情報収集・警戒監視・偵察(ISR)活動」、「海洋安全保障」、「後方支援」、「わが国における大規模災害への対処における協力」など、あらゆる分野で協力を進めている。

日米共同訓練に参加する日米隊員

日米共同訓練に参加する日米隊員

日米共同訓練中のF-15戦闘機及び米空軍B-1爆撃機

日米共同訓練中のF-15戦闘機及び米空軍B-1爆撃機

幅広い分野における協力の強化・拡大

  • 日米両国は、自由で開かれた海洋秩序を維持・強化することを含め、望ましい安全保障環境を創出するため、インド太平洋地域におけるプレゼンスを高めることも勘案しつつ、「海洋秩序の維持・強化」、「人道支援・災害救援」などの日米共同の活動を実施するとともに、「防衛装備・技術協力」、「共同使用」での協力を強化・拡大している。

在日米軍駐留に関する施策の着実な実施

在日米軍の駐留

  • 日米同盟が、わが国の防衛や地域の平和と安定に寄与する抑止力として十分に機能するためには、在日米軍のプレゼンスが確保されていることや、在日米軍が緊急事態に迅速かつ機動的に対応できる態勢が、平時からわが国とその周辺でとられていることなどが必要である。
  • このため、わが国は、日米安保条約に基づいて米軍の駐留を認めており、在日米軍の駐留は、日米安保体制の中核的要素となっている。

沖縄における在日米軍の駐留

  • 戦略的要衝である沖縄に、高い機動力と即応性を有し、幅広い任務に対応可能な米海兵隊などの米軍が駐留していることは、日米同盟の実効性をより確かなものにし、抑止力を高めるものであり、わが国の安全のみならず、インド太平洋地域の平和と安定に大きく寄与している。
  • 一方、わが国における在日米軍施設・区域(専用施設)のうち、面積にして約70%が沖縄に集中し、県面積の約8%、沖縄本島の面積の約14%を占めている。このため、沖縄における負担の軽減については、前述の安全保障上の観点を踏まえつつ、最大限の努力をする必要がある。
  • 普天間飛行場の移設は、同飛行場を単純に移設するものではなく、沖縄における基地の機能や面積の縮小を伴い、沖縄の負担軽減に十分資するものである。
  • 普天間飛行場代替施設については、米軍キャンプ・シュワブ南側の海域において埋立工事を実施中。2020年4月、沖縄防衛局は、公有水面埋立法に基づき、地盤改良工事の追加などに伴う埋立の変更承認申請書を沖縄県知事に提出
  • 駐留軍用地の返還に関する主な進捗は、以下のとおり。
    • 2015年  3月:キャンプ瑞慶覧(西普天間住宅地区)(約51ヘクタール)の返還
    • 2016年12月:本土復帰後最大の返還となった北部訓練場の過半の土地(約4,000ヘクタール)の返還
    • 2017年  7月:普天間飛行場の一部土地(市道宜野湾11号用線用地約4ヘクタール)の返還
    • 2018年  3月:牧港補給地区の一部土地(国道58号拡幅用地約3ヘクタール)の返還
    • 2019年  3月:牧港補給地区の一部土地(第5ゲート付近の区域約2ヘクタール)の返還
    • 2020年  3月:キャンプ瑞慶覧の施設技術部地区内の倉庫地区の一部(約11ヘクタール)の返還
    • 2020年12月:普天間飛行場の一部土地(佐真下ゲート付近の土地約0.1ヘクタール)の返還

沖縄在日米軍施設・区域(専用施設)の件数及び面積の推移

キャンプ・シュワブ南側の海域における埋立工事の進捗状況

キャンプ・シュワブ南側の海域における埋立工事の進捗状況

沖縄を除く地域における在日米軍の駐留

  • 沖縄を除く地域においても、米軍の抑止力を維持しつつ、地元負担の軽減を図り、在日米軍の安定的な駐留を確保する施策を実施。在日米軍施設・区域の整理や在日米軍再編などを継続している。

安全保障協力

多角的・多層的な安全保障協力の戦略的な推進に向けて

「自由で開かれたインド太平洋」というビジョンのもとでの取組

  • 防衛省・自衛隊は、「自由で開かれたインド太平洋」というビジョンを踏まえ、多角的・多層的な安全保障協力を戦略的に推進し、わが国にとって望ましい安全保障環境を創出していくこととしており、インド太平洋地域における各国との間で二国間・多国間での防衛協力・交流を強化している。

「自由で開かれたインド太平洋」の3本柱

  1. ①法の支配、航行の自由、自由貿易等の普及・定着
  2. ②経済的繁栄の追求(連結性の向上等)
  3. ③平和と安定の確保

防衛省における取組の方向性

  • 防衛協力・交流を活用し、主要シーレーンの安定した利用を確保
  • 信頼醸成や相互理解を進め、不測の事態を回避
  • 関係各国と協力し、地域の平和と安定に貢献

自由で開かれたインド太平洋 図

各国との防衛協力・交流の推進

  • 防衛省・自衛隊は、地域の特性、相手国の実情やわが国との関係なども踏まえつつ、最適な手段を組み合わせた防衛協力・交流を推進している。
  • また、各国と東シナ海・南シナ海情勢への深刻な懸念を共有したうえで、力を背景とした一方的な現状変更の試みや既成事実化に強く反対するメッセージを明確に発出している。
  • オーストラリア:新型コロナウイルス感染症流行後、初となる対面での防衛相会談(2020年10月)を実施するなど、「特別な戦略的パートナー」として各種協力を一層強化
  • インド:日印物品役務相互提供協定の署名(同年9月)や日米印豪共同訓練(同年11月)など幅広い分野で協力を推進。日米豪印4か国での協力も追求
  • ASEAN諸国:ハイレベル交流に加え、能力構築支援、共同訓練、防衛装備・技術協力など、より実質的な協力を推進。多国間の枠組みでの協力も強化
  • 韓国:韓国防衛当局側による否定的な対応が継続していることから、日韓・日米韓の連携が損なわれることのないよう、引き続き韓国側の適切な対応を強く求めていく。
  • 欧州諸国・カナダ・ニュージーランド:「瀬取り」対応など、グローバルな安全保障上の共通課題への取組を中心に防衛協力・交流を進展
  • 中国:東シナ海や南シナ海での活動、最近では中国海警法などについて、わが国の強い懸念を伝達。多層的な対話・交流やホットラインの早期開設に向けた調整などにより、日中防衛当局間での相互理解・信頼醸成を増進
  • 太平洋島嶼国:わが国初の多国間国防大臣級会合となる日・太平洋島嶼国国防大臣会合の開催に向け緊密に協力
  • 中東諸国:オンラインによるハイレベル交流を推進

対面で実施した日豪防衛相会談(2020年10月)

対面で実施した日豪防衛相会談(2020年10月)

日米印豪共同訓練「マラバール2020」(2020年11月)

日米印豪共同訓練「マラバール2020」(2020年11月)

中国国務委員兼国防部長とテレビ会談を行う岸防衛大臣(2020年12月)

中国国務委員兼国防部長とテレビ会談を行う岸防衛大臣(2020年12月)

多国間における安全保障協力の推進

  • 拡大ASEAN国防相会議(ADMMプラス)や、ASEAN地域フォーラム(ARF)をはじめとした多国間枠組みの取組が進展しており、アジア太平洋地域の安全保障分野にかかる議論や協力・交流の重要な基盤となっている。
  • 日ASEAN防衛協力の指針「ビエンチャン・ビジョン2.0」に基づき、二国間協力に加え、多国間の枠組みでの協力を強化しており、新事業として「日ASEAN防衛当局サイバーセキュリティ能力構築支援事業」を発表した。
  • 民間機関などが主催する国際会議のほか、多国間会議や多国間共同訓練など各軍種間における取組にも積極的に参加している。

第7回拡大ASEAN国防相会議(オンライン)に参加する岸防衛大臣(2020年12月)

第7回拡大ASEAN国防相会議(オンライン)に
参加する岸防衛大臣(2020年12月)

能力構築支援への積極的かつ戦略的な取組

  • 防衛省・自衛隊による能力構築支援は、2012年以降、インド太平洋地域を中心に、15か国・1機関に対し、人道支援・災害救援、国連平和維持活動(PKO)、海洋安全保障などの分野で協力している。
  • 新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ、2021年からはオンラインによる講義・実習も能力構築支援の新たな手段として取り入れている。
  • 能力構築支援の一環として2020年1月から2021年3月までの間に実施した派遣は4か国7件、延べ33名であり、招へいは3か国1機関4件、延べ57名であった。また、オンラインによる講義・実習は2か国2件であった。

カンボジア軍に対し、道路測量についてオンライン教育を行う陸自隊員(2021年2月)

カンボジア軍に対し、道路測量について
オンライン教育を行う陸自隊員(2021年2月)

海洋安全保障の確保

  • 海洋国家であるわが国にとって、法の支配、航行の自由などの基本的ルールに基づく秩序を強化し、海上交通の安全を確保することは、平和と繁栄の基礎であり、極めて重要である。
  • 自衛隊は、2009年以降、水上部隊、航空隊及び支援隊を派遣し、ソマリア沖・アデン湾において船舶を海賊行為から防護する活動を継続している。
  • 共同訓練や寄港を通じインド太平洋地域沿岸国との連携を強化するとともに、海洋安全保障に関する能力構築支援の取組や拡大ASEAN国防相会議(ADMMプラス)などの地域の安全保障対話の枠組みにおいて海洋安全保障のための協力に取り組んでいる。

アデン湾における海賊対処行動に従事する護衛艦「おおなみ」(2020年6月)

アデン湾における海賊対処行動に従事する護衛艦「おおなみ」
(2020年6月)

宇宙領域及びサイバー領域の利用にかかる協力

  • 宇宙領域の利用にかかる協力として、関係国との協議や宇宙安全保障に関する多国間机上演習「シュリーバー演習」への参加などを通じ、多国間における宇宙空間の脅威認識の共有を含めた様々な分野で連携を推進している。
  • サイバー領域の利用にかかる協力として、米国、英国、オーストラリアなどと防衛当局間によるサイバー協議を設け、脅威認識の共有やサイバー攻撃対処に関する意見交換を行っているほか、NATOサイバー防衛協力センター主催サイバー防衛演習「ロックド・シールズ2021」への初となる正式参加などにより、関係国との連携を強化している。

軍備管理・軍縮及び不拡散への取組

  • わが国は、大量破壊兵器や、その運搬手段となりうるミサイル、武器及び軍事転用可能な貨物・機微技術などに関する軍備管理・軍縮・不拡散のための国際的な取組に積極的に参画している。また、近年、自律型致死兵器システム(LAWS)に関する国際的な議論に積極的に関与している。

国際平和協力活動への取組

  • 防衛省・自衛隊は、紛争・テロなどの根本原因の解決などのための開発協力を含む外交活動とも連携しつつ、国際平和協力活動への取組を積極的に実施している。
  • 自衛隊は国際平和協力活動に積極的に取り組むため、陸海空自ともに派遣待機部隊などを指定し、常続的に待機態勢を維持しているほか、派遣先での情報収集能力の強化や派遣前の要員育成、訓練支援など、平素から各種体制の整備を進めている。

多国籍部隊・監視団(MFO)への派遣

  • 2019年以降、シナイ半島国際平和協力業務の実施について閣議決定し、初めての国際連携平和安全活動としてMFOへ司令部要員2名を派遣している。
  • 派遣要員は、シナイ半島南部シャルム・エル・シェイクの南キャンプに所在するMFO司令部において、エジプト・イスラエル両国とMFOとの連絡調整に従事する連絡調整部の副部長及び部員として勤務している。

MFOにおいて活動する陸自隊員(2020年6月)

MFOにおいて活動する陸自隊員(2020年6月)

国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)

  • 南スーダンの平和と安定は、南スーダン一国のみならずアフリカ全体の平和と安定につながるものであり、国際社会で対応すべき重要な課題である。
  • 防衛省・自衛隊は、UNMISS司令部に対し、陸上自衛官4名(兵站、情報、施設、航空運用の各幕僚)を派遣しており、UNMISSの活動に貢献している。

国連三角パートナーシップ・プロジェクト(UNTPP)への支援

  • 本プロジェクトは、わが国が拠出した資金をもとに、国連活動支援局がPKO派遣要員への訓練を実施しているものであり、2015年以降、わが国は延べ164名の陸上自衛官をアフリカに派遣し、9回の重機操作訓練をアフリカの8か国277名に対して実施した。
  • PKO要員の30%以上がアジアから派遣されていることを踏まえ、2018年以降、わが国は延べ66名の陸上自衛官をベトナムに派遣し、計3回の重機操作訓練を、アジア及び同周辺地域の9か国56名の工兵要員に対して実施した。
  • 2019年にウガンダで実施された国連野外衛生救護補助員コース(UNFMAC)の第1回試行訓練において、わが国は陸上自衛官(医官)2名を教官として派遣した。

UNMISSにおいて活動する陸自隊員(2020年11月)

UNMISSにおいて活動する陸自隊員(2020年11月)

国際緊急援助活動への取組

  • 防衛省・自衛隊は、人道的な貢献やグローバルな安全保障環境の改善の観点から、国際協力の推進に寄与することを目的に国際緊急援助活動に積極的に取り組んでいる。