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ダイジェスト 第IV部 防衛力を構成する中心的な要素など

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人的基盤と衛生機能の強化

人的基盤の強化

  • 防衛大綱は、防衛力の中核は自衛隊員であり、自衛隊員の人材確保と能力・士気の向上は防衛力の強化に不可欠としている。これらは人口減少と少子高齢化の急速な進展によって喫緊の課題となっており、防衛力の持続性・強靭性の観点からも、人的基盤の強化をこれまで以上に推進している。

採用対象人口の推移

募集・採用

  • 防衛省・自衛隊では、確固とした入隊意思を持つ優秀な人材を募るため、全国50か所に自衛隊地方協力本部を置き、地方公共団体、学校、募集相談員などの協力を得ながら、きめ細やかに、かつ、粘り強く自衛官などの募集・採用を行っている。

人材の有効活用など

  • 自衛隊の人的構成は、全体の定数が削減されてきた一方、装備品の高度化、任務の多様化・国際化などへ対応するため、知識・技能・経験などを豊富に備えた高齢人材の一層の活用を目的に、自衛官の定年年齢を階級毎に段階的に引き上げるとともに、再任用の拡大や退職自衛官の技能の活用を促進している。
  • さらに、AIなどの技術革新の成果を活用した無人化・省人化などを推進するとともに、限られた人員で艦艇の稼働率を確保するため、海自の一部の艦艇では、複数クルーでの交替勤務の導入による乗組員1名当たりの洋上勤務日数の縮減を行うなど、生活・勤務改善を図っている。

高校生に対するオンライン採用説明会

高校生に対するオンライン採用説明会

生活・勤務環境の改善及び処遇の向上

  • 即応性確保などのために必要な隊舎・宿舎の確保及び建替えを加速し、同時に、施設の老朽化対策及び耐震化対策を推進するほか、老朽化した生活・勤務用備品を確実に更新し、日用品などの所要数を確保している。
  • 自衛官の任務の危険性などの特殊性、官署が所在する地域の特性に応じた適切な処遇を確保するため、特殊勤務手当などの改善を図るとともに、災害対処能力などの向上のため簡易ベッドの整備や非常用糧食の改善、防衛功労章の拡充をはじめとした栄典・礼遇に関する施策を推進している。

厳正な服務規律の保持のための取組

  • 暴行、傷害及びパワー・ハラスメントなどの規律違反の根絶を図るため、隊員に対する各種教育、「防衛省パワハラホットライン」の常設や弁護士による相談窓口の設置など相談体制の改善・強化などの各種施策を行っているほか、懲戒処分の基準を厳罰化した。

自衛隊員の自殺防止への取組

  • 自衛隊員の自殺防止のため、きめ細やかな身上把握を行い、メンタルヘルス不調の兆候のある隊員に対しては部外カウンセラーの利用や医療機関での受診を行うよう積極的に指導するなどの対策を行っている。

ハラスメント防止教育を受講する隊員の様子

ハラスメント防止教育を受講する
隊員の様子

ワークライフバランス推進のための働き方改革

ワークライフバランスと女性の活躍の更なる推進

  • すべての隊員が能力を十分に発揮して活躍できるよう、ワークライフバランス確保のため、長時間労働の是正や働く時間と場所の柔軟化、休暇取得の推進などに努めている。
  • 特に、2021年3月に「防衛省における女性職員活躍とワークライフバランス推進のための取組計画」を改定し、勤務時間管理の徹底や管理職のマネジメント能力の向上に向けたマネジメント改革等を加えた新たな取組計画のもとで、取組の強化・拡充を図ることとしている。

業務効率化を推進した各機関などの取組を表彰する「防衛省における働き方改革推進のための取組コンテスト」

業務効率化を推進した各機関などの取組を表彰する
「防衛省における働き方改革推進のための取組コンテスト」

女性の活躍推進のための改革

  • 女性自衛官の採用・登用に際しては、機会均等のさらなる徹底を図るとともに、本人の意欲と能力・適性に基づく適材適所の配置に努めることを、人事管理の方針としている。
  • 女性自衛官の配置制限について順次見直しを行っており、2020年10月には女性初の潜水艦乗組員が配置されるなど、「母性の保護」の観点から女性が配置できない部隊(陸上自衛隊の特殊武器(化学)防護隊の一部及び坑道中隊)を除き、配置制限を全面的に解除した。

女性初の潜水艦乗組員(2020年10月)

女性初の潜水艦乗組員(2020年10月)

衛生機能の強化

  • 自衛隊がその任務を遂行するため、隊員の健康を適切に管理し、部隊の壮健性を維持するとともに、各種事態に対応する隊員の生命を最大限に守れるよう衛生機能の充実・強化に不断に取り組んでいる。
  • 加えて、自衛隊の任務が多様化・国際化する中で、災害派遣や国際平和協力活動における衛生支援や医療分野における能力構築支援など様々な衛生活動のニーズに適確に応えていくこととしている。
  • 防衛省・自衛隊では、自衛隊病院や防衛医科大学校病院において、2020年2月から新型コロナウイルス感染症患者を受け入れている。自衛隊中央病院のほか札幌、三沢、仙台、横須賀、富士、阪神、福岡、佐世保、熊本、別府、那覇の各自衛隊地区病院及び防衛医科大学校病院において、計1,708名(2021年3月31日時点)の新型コロナウイルス感染症患者を受け入れた。
  • 特に自衛隊中央病院及び防衛医科大学校病院は、第一種感染症指定医療機関の指定を受けており、新型コロナウイルス感染症患者数の増加に対応し患者の受入れを一般病床まで拡大している。
  • また、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種を加速するため、自衛隊は、2021年5月24日以降、東京及び大阪において自衛隊大規模接種センターを設置・運営し、ワクチン接種を開始した。

新型コロナウイルス感染症患者の治療にあたる医官・看護官

新型コロナウイルス感染症患者の治療にあたる医官・看護官

自衛隊大規模接種センターにおける活動の様子

自衛隊大規模接種センターにおける活動の様子

技術基盤の強化

  • 新たな領域に関する技術やゲーム・チェンジャーとなりうる重要技術など、戦略的に重要な装備・技術分野で技術的優越を確保しうるよう「中長期技術見積り」を見直している。
  • 先進技術の研究開発体制を強化するため、令和3(2021)年度には「次世代装備研究所」を防衛装備庁に新設した。加えて、国内外の先端技術動向の調査・分析に関する企画立案に従事する「先進技術戦略官」と、大学、民間企業、国立研究機関などの先進的研究の成果活用を推進する「技術連携推進官」を新設した。

装備調達の最適化

  • 2021年3月末時点で、21品目のプロジェクト管理重点対象装備品を選定し、装備品の効果的・効率的な取得を推進するとともに、長期契約を活用した装備品などの一括調達により、調達コストの縮減に取り組んでいる。
  • FMS調達の履行に関する防衛省内の管理体制を強化しつつ、日米間で物品の納入及び役務の提供の状況を常続的に把握していくとともに、日米間の緊密な協議などを通じて米国政府との連携を強化することで、履行管理の強化を図っている。

産業基盤の強靱化

  • わが国の産業基盤の強靭化のため、①企業間の競争環境の創出に向けた契約制度の見直し、②装備品のサプライチェーンのリスク管理強化、③輸入装備品などの維持整備などへのわが国防衛産業のさらなる参画、④防衛装備移転三原則のもとでの装備品の適切な海外移転の推進に取り組んでいく。

防衛装備庁と経団連防衛産業委員会との意見交換の成果について報告を受ける岸防衛大臣(2020年12月)

防衛装備庁と経団連防衛産業委員会との意見交換の
成果について報告を受ける岸防衛大臣(2020年12月)

防衛装備・技術協力

  • わが国は、自国の安全保障、平和貢献・国際協力の推進及び技術基盤・産業基盤の維持・強化に資するよう、防衛装備移転三原則に基づき、諸外国との防衛装備・技術協力を推進している。
    • 2020年8月、フィリピン国防省と三菱電機株式会社との間で、同社製警戒管制レーダー(4基)を約1億ドルで納入する契約が成立し、2014年の防衛装備移転三原則の策定以来、わが国から海外への完成装備品の移転としては初の案件となった。
    • 防衛装備品の海外移転に関する官民の知識向上の機会として、民間ビジネス分野での先行事例や、防衛装備・技術協力の現状を学ぶウェビナーを順次開催している(これまでにインド(2020年12月)及びベトナム(2021年3月)の2か国を対象に開催)。
    • 防衛装備庁、商社、製造会社の連携のもと、相手国の潜在的なニーズを把握して提案に向けた活動を行う「事業実現可能性調査」を令和2(2020)年度から事業化している(インド、インドネシア、ベトナム、マレーシアを対象に実施)。

防衛装備品等の海外移転に関するベトナムウェビナー

防衛装備品等の海外移転に関する
ベトナムウェビナー

フィリピン空軍による自衛隊レーダー視察の状況

フィリピン空軍による
自衛隊レーダー視察の状況

情報機能の強化

  • 情勢の推移に応じて的確に防衛政策を立案し、また、各種事態への対処において防衛力を効果的に運用するためには、わが国周辺などにおける中長期的な軍事動向を把握するとともに、各種事態の兆候を早期に察知することが必要である。このため、防衛省・自衛隊は、平素から、各種の手段による情報の迅速・的確な収集に努めている。
  • 防衛省・自衛隊による具体的な情報収集の手段としては、①わが国上空に飛来する軍事通信電波や電子兵器の発する電波などの収集・処理・分析、②各種画像衛星(情報収集衛星を含む)からのデータの収集・判読・分析、③艦艇・航空機などによる警戒監視、④各種公刊情報の収集・整理、⑤各国国防機関などとの情報交換、⑥防衛駐在官などによる情報収集などがあげられる。
  • 防衛駐在官については、令和3(2021)年度中に、大洋州地域との連携強化、欧州及び中東に関する情報収集を強化するため、ニュージーランド及びスペインに各1名の新規派遣を計画するとともに、イスラエルに1名の追加派遣を計画している。

オンラインでの外務・防衛当局間(PM)協議に参加するイスラエル防衛駐在官 平光1佐(右端)【イスラエル国防省】

オンラインでの外務・防衛当局間(PM)協議に参加する
イスラエル防衛駐在官 平光1佐(右端)【イスラエル国防省】

高い練度を維持・向上する自衛隊の訓練・演習

各自衛隊の訓練・演習

訓練・演習

自衛隊がわが国防衛の任務を果たすためには、平素から指揮官を始めとする隊員が高い資質と能力を持つとともに部隊としても高い練度を保持し、堅固な防衛態勢をとることが必要である。これによりわが国への侵略の意図を思いとどまらせる抑止力として機能することができる。また、各軍種間での共同訓練などを着実に実施することにより日米同盟の抑止力・対処力を強化している。さらに、積極的な共同訓練・演習などを通じて平素からプレゼンスを高め、わが国の意思と能力を示すほか、「自由で開かれたインド太平洋」というビジョンを踏まえ、訓練・演習に積極的に取り組むこととしている。

「キーン・ソード(実動演習)」において離島での訓練を行う米海兵隊員と陸自隊員(2020年10月)

「キーン・ソード(実動演習)」において離島での
訓練を行う米海兵隊員と陸自隊員
(2020年10月)

各自衛隊の主要訓練

  • 各種事態への対処能力の向上や日米同盟の抑止力・対処力の強化のため、日米共同統合演習「キーン・ソード(実動演習)」などの各種訓練・演習を実施している。
  • 「自由で開かれたインド太平洋」の維持・強化に資するべく、日米印豪共同訓練「マラバール2020」などの関係国との訓練・演習を積極的に実施している。

各種訓練環境の整備

自衛隊の訓練は、可能な限り実戦に近い環境で行うよう努めているが、自衛隊の即応性を維持・向上させるためには、訓練環境をより一層充実させていく必要がある。こうした背景のもと、防衛省では、効率的・効果的な訓練・演習を行うべく、国内外での訓練実施基盤の拡充にかかる取組を推進している。

地域社会や環境との調和にかかる施策

民生支援活動

防衛省・自衛隊は、地方公共団体や関係機関などからの依頼に基づき、様々な分野で民生支援活動を行っている。これらの活動は、自衛隊への信頼をより一層深めるとともに、隊員に誇りと自信を与えている。

オリンピックを目標に挑戦し続ける並木選手

オリンピックを目標に挑戦し続ける並木選手

南極地域観測に対する支援

防衛省・自衛隊は、文部科学省が行う南極地域における科学的調査を支援している。2020年11月からの第62次観測支援でのその行動は約30,000kmに及ぶ長大なものであり、わが国の南極地域観測事業の推進に大きく貢献している。

南極観測支援

南極観測支援

環境問題への対応

政府全体として、持続可能な開発目標(SDGs)に関する取組の加速や、2050年までの脱炭素社会の実現に向け具体的な施策を進める中、防衛省としても、政府の一員として環境問題の解決に貢献するとともに、自衛隊施設及び米軍施設・区域と周辺地域の共生についてより一層重点を置いた施策に取り組む必要がある。

具体的には、2021年5月に、省全体の地球温暖化対策を強力に推進するべく「防衛省気候変動タスクフォース」を立ち上げたほか、令和3(2021)年度に地方協力局を改編するなど、環境問題への対応について防衛省として一元的・効果的に実施する体制を整備することとしている。

情報発信や公文書管理・情報公開など

様々な広報活動

  • 国内外に対する情報発信など
    防衛省・自衛隊は、公式ホームページ、ソーシャルネットワーキングサービス(【SNS】(Social Networking Service)、動画配信など、インターネットを活用し、積極的な情報発信に取り組んでいる。
    また、パンフレットや広報動画の作成、広報誌「MAMOR(マモル)」への編集協力、報道機関への取材協力など、正確な情報を、幅広く、適時に提供するよう努めている。

航空観閲式(2020年11月)

航空観閲式(2020年11月)

公文書管理・情報公開に関する取組

防衛省・自衛隊は、公文書管理の適正化に向けて職員の意識や組織の文化を改革し、チェック態勢を充実させるなど、行政文書の管理や情報公開請求への適切な対応に取り組んでいる。