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第IV部 防衛力を構成する中心的な要素など

3 各自衛隊の主要訓練

1 陸上自衛隊の主要訓練

陸自は、全国の部隊が実動する陸上自衛隊演習(1982年に初めて実施)や方面隊実動演習、機動展開訓練のほか、米陸軍との実動訓練(オリエント・シールド(国内)や米海兵隊との実動訓練(レゾリュート・ドラゴン(国内)、アイアン・フィスト(国外))及び豪州における米軍との実動訓練(タリスマン・セイバー)をはじめとする米国や諸外国との共同訓練などを通じ、各種事態への対処能力の向上を図るとともに、日米同盟の抑止力・対処力を強化している。

動画アイコンQRコード動画:米国における米海兵隊との実動訓練「アイアン・フィスト20」
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動画アイコンQRコード動画:国内における米海兵隊との実動訓練「フォレストライト」
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動画アイコンQRコード動画:豪州における米軍との実動訓練「タリスマン・セイバー19」
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動画アイコンQRコード動画:インド陸軍との実動訓練「ダルマ・ガーディアン19」
URL:https://www.youtube.com/watch?v=zobSfEAnIlc(別ウィンドウ)

動画アイコンQRコード動画:令和元年度米比共同訓練「カマンダグ19」
URL:https://www.youtube.com/watch?v=bal6T2UsDZI(別ウィンドウ)

(1)各種事態における実効的な抑止及び対処にかかる能力を強化する主要訓練

機動師団・旅団が全国に展開する機動展開訓練、西部方面隊をはじめとする方面隊規模での実動演習により各種事態などへの対処能力の向上を図っているほか、米海兵隊との実動訓練(アイアン・フィスト)を通じて、米軍の持つ実際的なノウハウを吸収しつつ水陸両用機能の強化を図っている。

また、国内における米空軍機からの空挺降下訓練を実施し、空挺作戦に必要な戦術技量を維持・向上するとともに、米軍機による空挺作戦の実効性の維持・向上を図っている。

さらに、良好な国内外の訓練基盤を活用し、特に国内では訓練評価支援隊などと連携した対抗形式による実動演習を北海道で実施し、諸職種協同に係る練度の向上を図っている。

このほか、米国本土においてホーク・中SAM/SSM部隊実射訓練を実施して地対空・地対艦戦闘能力の強化を図るとともに、豪州射撃競技会(AASAM)に参加し、射撃能力の向上を図っている。また、米陸軍との実動訓練(ライジング・サンダー)や豪州における米陸軍との実動訓練(サザン・ジャッカルー)などにおいて情報、機動及び火力を連携させた諸職種協同能力の向上を図っている。

(2)日米同盟による抑止力及び対処力を強化する主要訓練

日米共同方面隊指揮所演習(ヤマサクラ(YS))を日米共同訓練の基軸とし、前述の各種の指揮所演習及び実動訓練を年間を通じて実施することにより、日米共同対処などの実効性の向上や領域横断作戦能力の向上を図っている。

日米共同方面隊指揮所演習(ヤマサクラ)を視察する副大臣、政務官

日米共同方面隊指揮所演習(ヤマサクラ)を視察する副大臣、政務官

(3)安全保障協力を推進する主要訓練

印陸軍との実動訓練(ダルマ・ガーディアン)や多国間共同訓練(カーン・クエスト(モンゴル))、日仏米豪共同訓練(ARC21(アーク21))などの共同訓練を通じ各国との連携や信頼関係を強化し、わが国にとって望ましい安全保障環境の創出に寄与してきている。

さらに、英陸軍との実動訓練(ヴィジラント・アイルズ)、フィリピンにおける米海兵隊との実動訓練(カマンダグ)を通じ、米国の各同盟国との連携強化を図っている。

動画アイコンQRコード動画:日米共同対処などの実効性の向上
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動画アイコンQRコード動画:令和2年度機雷処分訓練
URL:https://www.youtube.com/watch?v=qgdHbRNwprY(別ウィンドウ)

2 海上自衛隊の主要訓練

海自は、1955年以来実施している全国の部隊が実動する海上自衛隊演習(実動演習)や1980年以来実施している米海軍が主催する多国間共同訓練(リムパック)、2018年以来実施しているインド太平洋方面派遣訓練や2007年以来実施している日米印豪共同訓練(マラバール)などを通じ、日米同盟の抑止力・対処力を強化するとともに、「自由で開かれたインド太平洋」の維持・強化にも貢献している。

(1)各種事態における実効的な抑止及び対処にかかる能力を強化する主要訓練

海上自衛隊演習(図上演習(日米共同演習を含む。))、海上自衛隊演習(実動演習(日米共同演習及び日米豪加共同訓練を含む。))などにより即応能力の向上を図っている。

また、実機雷処分訓練(硫黄島)、機雷戦訓練(日向灘・陸奥湾・伊勢湾)、掃海特別訓練(日向灘・陸奥湾・伊勢湾)により各種戦術技量の向上を図っている。

さらに、米海軍の協力を得て良好な国外の訓練基盤を活用し、護衛艦の米国派遣訓練、米国派遣訓練(潜水艦)、グアム島方面派遣訓練(敷設艦)、米国派遣訓練(航空機)を実施し、各種戦術技量の向上を図っている。

日米共同統合演習(キーン・ソード21)に参加する海自艦艇部隊

日米共同統合演習(キーン・ソード21)に参加する海自艦艇部隊

(2)日米同盟による抑止力及び対処力を強化する主要訓練

艦艇や航空機による日米共同訓練、対潜特別訓練、掃海特別訓練、衛生特別訓練、日米衛生共同訓練により、日米共同対処などの実効性や領域横断作戦能力の向上を図っている。

海自は東シナ海や南シナ海において米海軍と精力的に共同訓練を行っており、例えば、2020年8月には、東シナ海において、護衛艦「すずつき」と米海軍駆逐艦「マスティン」が共同訓練を実施したほか、同年10月には、南シナ海において、インド太平洋方面派遣訓練(IPD)中の護衛艦「かが」と「いかづち」が、米海軍駆逐艦「ジョン・S・マケイン」と補給艦「ティピカヌー」と合流して共同訓練を実施した。

(3)安全保障協力を推進する主要訓練

インド太平洋方面派遣訓練(IPD)のほか、日米豪共同訓練、日豪共同訓練、日印共同訓練(JIMEX)、日スリランカ共同訓練(JA-LAN EX)、インドネシア海軍との親善訓練、日米豪韓共同訓練(パシフィック・ヴァンガード)、日仏米豪共同訓練(ARC21(アーク21))といった各国海軍との共同訓練の実施を通じ、インド太平洋地域の諸外国との信頼関係を構築・強化し、わが国にとって望ましい安全保障環境の創出を図っている。

例えば、2020年9月から10月にかけ、護衛艦「かが」、「いかづち」などがインド太平洋方面派遣訓練(IPD)を実施し、インド太平洋地域に所在する米国、オーストラリア、インド、インドネシア、スリランカの各国海軍と共同訓練などを行うとともに、ベトナム・カムラン、スリランカ・コロンボへ寄港した。

また、同年11月の日米印豪共同訓練(マラバール2020)においては、インド太平洋の主要海域であるベンガル湾とアラビア海北部において日米印豪の艦艇が一堂に会したことを通じて、「自由で開かれたインド太平洋」というビジョンを維持・強化していくという4か国の一致した意思が具現化されたほか、これら4か国の連携・結束が示された。

動画アイコンQRコード動画:練度向上のための訓練
URL:https://youtu.be/6IbU3COUBTA(別ウィンドウ)

3 航空自衛隊の主要訓練

空自は、全国の部隊が実動する航空総隊総合訓練(実動訓練)や各種機能別訓練のほか、1996年以来実施している米空軍演習(レッド・フラッグ・アラスカ)や1999年以来実施しているグアムにおける日米豪共同訓練(コープ・ノース)などを通じ、日米同盟の抑止力・対処力を強化するとともに、諸外国との連携強化を図っている。その際、インド太平洋地域での航空機の飛行や寄港を通じて「自由で開かれたインド太平洋」の維持・強化にも貢献している。

(1)各種事態における実効的な抑止及び対処にかかる能力を強化する主要訓練

PAC-3機動展開訓練、国外運航訓練により機動展開能力、即応能力の向上を図っている。また、良好な国外の訓練基盤を活用し、高射部隊によるペトリオットの実射訓練により、防空戦闘能力を強化している。

さらに、米国高等空輸戦術訓練センターを活用し、輸送機部隊の任務遂行能力の向上を図っている。

訓練でミサイルを発射するF-15戦闘機

訓練でミサイルを発射するF-15戦闘機

(2)日米同盟による抑止力及び対処力を強化する主要訓練

米空軍に加え、米海軍や米海兵隊との対戦闘機戦闘訓練、要撃戦闘訓練、防空戦闘訓練、戦術攻撃訓練、空中給油訓練、捜索救難訓練、編隊航法訓練、米海軍との共同訓練などの各種日米共同訓練により、日米共同対処などの実効性の向上や領域横断作戦能力の向上を図っている。

例えば、日本海、東シナ海周辺空域などにおいて、米空軍B-52爆撃機、B-1爆撃機などと共同訓練を着実に積み重ねている。

(3)安全保障協力を推進する主要訓練

多国間共同訓練(コブラ・ゴールド)における在外邦人等保護措置訓練、人道支援・災害救援共同訓練(クリスマス・ドロップ)を実施し、各国との信頼関係の構築・強化により、わが国にとって望ましい安全保障環境の創出を図っている。

例えば、2021年3月、C-2輸送機などにより国外運航訓練を行い、ベトナム・ホーチミンに寄航した。これらの活動は、「自由で開かれたインド太平洋」の維持・強化に資する観点から、インド太平洋地域の航行・上空飛行の自由に寄与するとともに、各国との協力・交流の推進を通じて同地域の安定に寄与するものである。

4 統合による主要訓練

自衛隊は、1979年以来、統合運用を演練する自衛隊統合演習(実動演習)及び自衛隊統合演習(指揮所演習)をおおむね毎年交互に実施している。また、1986年以来、武力攻撃事態などにおける自衛隊の運用要領及び日米共同対処要領を演練し、自衛隊の即応性と日米の相互運用性の向上を図るため日米共同統合演習(キーン・ソード(実動演習)、キーン・エッジ(指揮所演習))2を実施している。

日米共同統合防災訓練(TREX)

日米共同統合防災訓練(TREX)

(1)各種事態における実効的な抑止及び対処にかかる能力を強化する主要訓練

統合水陸両用作戦訓練などを実施して、自衛隊の水陸両用作戦に関する戦術技量の向上を図っているほか、自衛隊統合防災演習、離島統合防災訓練を実施し、災害対処能力の向上を図っている。

また、国内における在外邦人等保護措置訓練を実施し、在外邦人等保護措置に関する統合運用能力の向上及び自衛隊と関係機関との連携の強化を図っている。

さらに、従来領域における訓練・演習に加え、新たな領域にかかる体制の充実に合わせた総合的な訓練・演習を実施し、わが国防衛を任務とする自衛隊に必要な練度の維持・向上を図ることとしている。

(2)日米同盟による抑止力及び対処力を強化する主要訓練

日米共同統合演習(キーン・ソード(実動演習)、キーン・エッジ(指揮所演習))を実施し、各種事態における実効的な抑止及び対処にかかる能力を強化するとともに、日米共同対処能力の向上を図っている。また、日米共同統合防空・ミサイル防衛訓練を実施して日米共同による弾道ミサイル対処や防空戦闘能力を向上している。

例えば、2020年10月から11月にかけて実施したキーン・ソード21では、陸自と海自による水陸両用作戦に加え、空自が参加して統合火力訓練を沖大東島射爆撃場で実施したほか、鹿児島県十島村の臥蛇島において、統合訓練として初めて日米共同での着上陸訓練を実施した。この着上陸訓練は、普天間飛行場に所在するMV-22による米軍再編にかかる訓練移転として、日米共同訓練を行うとともに沖縄の負担軽減も図るものである。このほか、キーン・ソード21には同年5月に新編された空自宇宙作戦隊が初めて統合訓練に参加し、宇宙状況監視について訓練を実施したほか、サイバー攻撃等対処、電子戦といった新たな領域における統合運用要領を演練した。

(3)安全保障協力を推進する主要訓練

多国間共同訓練(コブラ・ゴールド)やパシフィック・パートナーシップ、国際平和協力演習ADMM、拡散に対する安全保障構想(PSI)訓練への参加により、在外邦人等保護措置に関する統合運用能力や国際平和協力業務に必要な各種能力の向上を図っている。

参照資料19(主な日米共同訓練の実績(令和2(2020)年度))
資料46(多国間共同訓練の参加など(過去3年間))

2 全自衛隊と米インド太平洋軍が参加する本演習は、おおむね毎年、実動演習と指揮所演習を交互に行っておりこれまで合計15回実施した。2020年の訓練においては、一部の訓練にカナダ海軍が参加したほか、英国、オーストラリア、フランス、インド、フィリピン、韓国からのオブザーバーを受け入れている。