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第IV部 防衛力を構成する中心的な要素など

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第4章 高い練度を維持・向上する自衛隊の訓練・演習

第1節 各自衛隊の訓練・演習

防衛大綱は、防衛力が真価を発揮するためには、平素から絶えずその能力を維持・向上させることが必要であり、自衛隊の訓練・演習は防衛力を支える重要な要素の一つであるとしている。

KEY WORD訓練・演習とは

練成訓練は、隊員の練度を向上するとともに精強な部隊などを練成することを目的とするものであり、「個人訓練(各個訓練)」と「部隊訓練」に区分される。また、「部隊訓練」は基本的なものから応用的なものまで段階的に進め、部隊に対して組織としての行動に習熟させ、与えられた任務を遂行できるよう練度を向上させる「訓練」と、主に防衛出動など自衛隊の行動時の事態を想定し、部隊の訓練の集大成として、各種の部隊が参加し総合力を演練する「演習」に区分される。

自衛隊がわが国防衛の任務を果たすためには、装備品などの充実を図るだけでなく、平素から指揮官をはじめとする隊員が高い資質と能力を持つとともに、部隊としても高い練度を有することなどにより、堅固な防衛態勢をとることが必要である。堅固な防衛態勢をとることは、わが国への侵略を意図する国に対して、その侵略を思いとどまらせる抑止力としての機能を果たすものである。

また、防衛大綱は、日米同盟の抑止力・対処力の強化として、各種の運用協力及び政策調整を一層深化させるべく、共同訓練・演習を一層積極的に実施することとしており、各自衛隊は、各軍種間での共同訓練や日米共同統合演習(実動演習及び指揮所演習)を着実に実施している。

さらに、積極的な共同訓練・演習やその際の海外における寄港等を通じて平素からプレゼンスを高め、わが国の意思と能力を示すとしているほか、多角的・多層的な安全保障協力を戦略的に推進するとの観点から、「自由で開かれたインド太平洋」というビジョンを踏まえ、訓練・演習に積極的に取り組むこととしている。

そのため、同盟国、友好国その他の関係国との共同訓練・演習を通じ、わが国の安全保障と密接な関係を有するインド太平洋地域の安定化を図るとともに、一国のみでは対応が困難なグローバルな安全保障上の課題や不安定要因への対応に努めている。

1 部隊の練成

各自衛隊の部隊などで行う訓練・演習は、隊員それぞれの職務に必要な技量の向上を目的とした隊員個々の訓練と、部隊の組織的な能力の練成を目的とした部隊の訓練・演習とに大別される。隊員個々の訓練は、職種などの専門性や隊員の能力に応じて個別的、段階的に行われている。部隊の訓練・演習は、小さな単位の部隊から大部隊へと徐々に規模を拡大しつつ訓練を積み重ねながら、一つの組織として能力を発揮できることを目標として部隊間での連携などの大規模な総合訓練を行う。

各自衛隊は、種々の制約の中で、事故防止など安全確保に細心の注意を払いつつ、日夜厳しい教育訓練を行い、心身ともに健全で、練度の高い隊員の育成と精強な部隊の練成に努めている。

1 陸上自衛隊

陸自は、普通科(歩兵)、特科(砲兵)、機甲科(戦車・偵察)、施設科(工兵)などの職種ごとに部隊の行動を訓練するとともに、他の職種部隊と協同した諸職種協同訓練を行っている。

2020年には、北海道の良好な訓練基盤を活用して連隊を基幹とした部隊が実動による対抗演習を実施するため、訓練評価支援隊を新編した。

夜間射撃能力を向上させる陸自第7特科連隊

夜間射撃能力を向上させる陸自第7特科連隊

2 海上自衛隊

海自は、要員の交代や艦艇の検査、修理の時期を見込んだ一定期間を周期として、これを数期に分け、段階的に練度を向上させる訓練方式をとっている。

この方式での訓練の初期段階では、戦闘力の基本単位である艦艇や航空機ごとの練度の向上に伴って、応用的な部隊訓練へと移行するとともに、艦艇相互、艦艇と航空機の間で連携した訓練を実施している。

訓練参加中の海上自衛官

訓練参加中の海上自衛官

3 航空自衛隊

空自は、戦闘機、レーダー、地対空誘導弾などの先端技術の装備を駆使するため、訓練の初期段階では個人の専門的な知識技能を段階的に引き上げることを重視しつつ、戦闘機部隊、航空警戒管制部隊、地対空誘導弾部隊などの部隊ごとに訓練を実施している。

この際、隊員と航空機などの装備を総合的に機能発揮させることを目指しており、練度が向上するに従って、これら部隊間の連携要領の訓練を行い、さらに、これに航空輸送部隊や航空救難部隊などを加えた総合的な訓練を実施している。

飛行教導群F-15アグレッサー

飛行教導群F-15アグレッサー

4 統合訓練

有事の際に防衛力を最も効果的に発揮するためには、平素から、陸・海・空各自衛隊の統合運用について訓練を積み重ねておくことが必要である。

このため、自衛隊は、従来から2つ以上の自衛隊が協同して行う統合訓練を実施してきており、逐次その充実を図っている。

統合訓練は、機能別統合訓練、作戦別統合訓練、統合演習に区分される。このうち統合演習は、統幕が計画、実施する自衛隊の全般的な対処構想に基づく訓練・演習であり、米軍との共同統合演習を含めて、1979年から実施している。

海上輸送、99式自走りゅう弾砲

海上輸送、99式自走りゅう弾砲