Contents

第IV部 防衛力を構成する中心的な要素など

2 米国との防衛装備・技術協力関係の深化

1 共同研究・開発など

わが国は、米国との間で、1992年以降、25件の共同研究と1件の共同開発を実施している。現在は、6件の共同研究(①部隊運用におけるジェット燃料及び騒音への曝露(ばくろ)の比較、②化学剤呈色(ていしょく)反応識別装置、③高耐熱性ケース技術、④次世代水陸両用技術、⑤日米間のネットワーク間インターフェース、⑥モジュール型ハイブリッド電気駆動車両システムに係る共同研究)を実施している。

また、2014年7月以降、ペトリオットPAC-2の部品、イージス・システムにかかるソフトウェア及び部品など、並びにF-15及びF-16に搭載されているF100エンジン部品の米国への移転について、国家安全保障会議において、海外移転を認め得る案件に該当することを確認している。

参照III部1章2節2項2(米国のミサイル防衛と日米BMD技術協力)
資料20(日米共同研究・開発プロジェクト)

2 日米共通装備品の生産・維持整備
(1)F-35A戦闘機生産への国内企業の製造参画及び整備拠点の設置

わが国は、2011年12月、F-35A戦闘機をF-4戦闘機の後継機とし、平成24(2012)年度以降、42機取得すること、一部の完成機輸入を除き国内企業が製造に参画することなどを決定した2。これを踏まえ、わが国は、平成25(2013)年度以降のF-35A戦闘機の取得に際して、国内企業の製造参画を図り、これまで、機体及びエンジンの最終組立・検査(FACO:Final Assembly and Check Out)やエンジン部品の一部(19品目)、レーダー部品の一部(7品目)及び電子光学分配開口システム(EODAS:Electro-Optical Distributed Aperture System)3部品の一部(3品目)の製造参画の取組を行ってきた。

令和元(2019)年度以降のF-35A戦闘機の取得に際し、国内企業が製造に参画することを前提にした機体価格と完成機輸入の場合の価格を比較した結果、完成機輸入の場合の方がより安価な取得方法であった。厳しい財政状況の中、わが国の防衛力の強化を効率的に図りつつ必要な機数を速やかに取得するとの観点を踏まえ、同年度以降のF-35A戦闘機の取得は、完成機輸入によることとした。

しかし、その後の製造工程の改善、作業習熟による工数の低減などといった、製造企業による経費低減の取組により、国内企業が最終組立・検査を実施する方が、完成機輸入に比べてより安価となることが確認されたため、令和元(2019)年度、令和2(2020)年度及び令和3(2021)年度のF-35A戦闘機の取得については、国内企業が最終組立・検査を実施した機体を取得することとされた4

国内企業が継続してF-35戦闘機の製造に参画することは、その運用・整備基盤の確保や最先端の戦闘機技術・ノウハウに接することによる戦闘機関連の技術基盤の維持・育成・高度化を図ることが可能となる意義もあり、技術基盤・産業基盤の強化にも資することになる。

米国政府は、F-35戦闘機について全世界的な運用が予想される中、北米・欧州・アジア太平洋地域において機体・エンジンを中心とした整備拠点(リージョナル・デポ)の設置を構想している。

2014年12月、米国政府は、アジア太平洋地域におけるF-35戦闘機の整備拠点について、①機体の整備拠点は、2018年初期までにわが国及びオーストラリアに設置すること、②エンジンの整備拠点は、2018年初期までにオーストラリアに設置し、その3~5年後、追加所要に対応するためわが国にも設置すること5を決定した旨、公表した。さらに、2019年2月、米国政府は、F-35戦闘機の構成品のうち、一部のアビオニクス部品のアジア太平洋地域における整備拠点を、整備所要に応じ2025年以降に日本に設置すること6を決定した旨、公表した。

2020年7月には、愛知県にある三菱重工業小牧南工場において、F-35戦闘機の機体の整備拠点としての運用を開始した。機体及びエンジンなどの整備拠点を国内に設置し、アジア太平洋地域での維持整備に貢献することは、わが国のF-35A戦闘機の運用支援体制を確保するとともに、国内の防衛産業基盤の維持、日米同盟の強化及びインド太平洋地域における装備協力の深化といった観点から、有意義である。

(2)日米オスプレイの共通整備基盤の確立に向けた取組

米海軍は、普天間飛行場に配備されている米海兵隊オスプレイの定期機体整備を2017年頃から開始するため、その整備企業を選定する入札を行い、2015年10月、富士重工業株式会社7を選定した。2017年2月から、陸自木更津駐屯地において定期機体整備が実施され、2019年3月には1機目、2020年3月には2機目、2021年1月には3機目の整備が完了し、米側へ引き渡された。現在は、4機目及び5機目を整備中である。

防衛省としては、①陸自オスプレイ(V-22)8の円滑な導入、②日米安保体制の円滑かつ効果的な運用、③整備の効率化の観点から、木更津駐屯地の格納庫を整備企業に使用させ、米海兵隊オスプレイの整備とともに、将来のV-22の整備を同駐屯地で実施することにより、日米オスプレイの共通の整備基盤を確立していくこととしている。木更津駐屯地での共通の整備基盤の確立は、新ガイドラインに掲げる「共通装備品の修理及び整備の基盤の強化」の実現と沖縄の負担軽減に資するものとして、極めて有意義である。

2 2018年12月、F-35A戦闘機の取得数については、42機から147機とし、新たな取得機のうち42機については、短距離離陸・垂直着陸機能を有する戦闘機の整備に替え得るものとすることが決定された。

3 電子光学分配開口システム。一つの機体に6か所内蔵することにより全方位を認識することができる最先端赤外線センサーであり、ミサイル検出及び追尾などが可能になる。

4 2019年12月、令和元(2019)年度及び令和2(2020)年度のF-35A戦闘機の取得について、また、2020年12月には、令和3(2021)年度のF-35A戦闘機の取得について、それぞれ、より安価な手段であることが確認された国内企業が参画した製造とすることが決定された。

5 日本におけるエンジンのリージョナル・デポは、株式会社IHI(東京都:瑞穂工場)を予定

6 日本におけるアビオニクス部品の整備拠点は、三菱電機株式会社(神奈川県:鎌倉製作所)を予定

7 2017年4月1日に、株式会社SUBARUに社名を変更

8 陸自では、CH-47JA輸送ヘリコプターの輸送能力を巡航速度や航続距離などの観点から補完・強化できるティルト・ローター機(オスプレイ(V-22))を17機導入することとし、佐賀空港における施設整備が完了するまでの一時的な処置として、木更津駐屯地に暫定的に配備することとしている。