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第III部 わが国防衛の三つの柱(防衛の目標を達成するための手段)

防衛白書トップ > 第III部 わが国防衛の三つの柱(防衛の目標を達成するための手段) > 第3章 安全保障協力 > 第4節 軍備管理・軍縮及び不拡散への取組 > 1 軍備管理・軍縮・不拡散関連条約などへの取組

第4節 軍備管理・軍縮及び不拡散への取組

大量破壊兵器及びその運搬手段となり得るミサイルなどの拡散や武器及び軍事転用可能な貨物・機微技術の拡散については、国際社会の平和と安定に対する差し迫った課題である。また、特定の通常兵器の規制についても、人道上の観点と防衛上の必要性とのバランスを考慮しつつ、各国が取り組んでいる。

これらの課題に対しては軍備管理・軍縮・不拡散にかかわる国際的な体制が整備されており、わが国も積極的な役割を果たしている。

参照図表III-3-4-1(通常兵器、大量破壊兵器、ミサイル及び関連物資などの軍備管理・軍縮・不拡散体制)

図表III-3-4-1 通常兵器、大量破壊兵器、ミサイル及び関連物資などの軍備管理・軍縮・不拡散体制

1 軍備管理・軍縮・不拡散関連条約などへの取組

わが国は、核兵器、化学兵器及び生物兵器といった大量破壊兵器や、その運搬手段となり得るミサイル、関連技術・物資などに関する軍備管理・軍縮・不拡散のための国際的な取組に積極的に参画している。

化学兵器禁止条約(CWC:Chemical Weapons Convention)については、条約交渉の段階から化学防護の知見を提供し、条約成立後も検証措置などを行うために設立された化学兵器禁止機関(OPCW:Organisation for the Prohibition of Chemical Weapons)に化学防護の専門家である陸上自衛官を派遣するなど、人的貢献を行ってきた。また、陸自化学学校(さいたま市)で条約の規制対象である化学物質を防護研究のために少量合成していることから、条約の規定に従い、OPCW設立当初から計11回の査察を受け入れている。

OPCWの査察に対応する陸自隊員(2020年12月)

OPCWの査察に対応する陸自隊員(2020年12月)

さらに、わが国はCWCに従い、中国において遺棄化学兵器を廃棄処理する事業にも政府全体として取り組んでいる。防衛省・自衛隊としては、同事業を担当する内閣府に陸上自衛官を含む職員を出向させており、2000年以降、計19回の発掘・回収事業に、化学・弾薬を専門とする陸上自衛官を派遣している。

その他、生物兵器禁止条約(BWC:Biological Weapons Convention)、国際輸出管理レジームであるオーストラリア・グループ(AG:Australia Group)やミサイル技術管理レジーム(MTCR:Missile Technology Control Regime)などの主要な会合に防衛省職員を派遣するとともに、包括的核実験禁止条約機関(CTBTO:Comprehensive Nuclear-Test-Ban Treaty Organization)準備委員会が実施する代用査察員1を養成する訓練に自衛官を派遣するなど、規制や取決めの実効性を高めるため協力している。

参照資料47(国際機関への防衛省職員の派遣実績)

通常兵器の規制について、わが国は、人道上の観点と安全保障上の必要性を踏まえつつ、特定通常兵器使用禁止・制限条約(CCW:Convention on Certain Conventional Weapons)などの各種条約に加え、CCWの枠組み外で採択されたクラスター弾に関する条約(オスロ条約2)も締結している。わが国は、同条約の発効を受け、2015年2月に自衛隊が保有する全てのクラスター弾の廃棄を完了した。

なお、CCWの枠組みにおいては、自律型致死兵器システム(LAWS:Lethal Autonomous Weapons Systems)に関する政府専門家会合などに随時職員を派遣している。LAWSにかかる議論については、その特徴、人間の関与のあり方、国際法の観点などから議論されており、わが国としては引き続き、安全保障上の観点も考慮しつつ、積極的に議論に関与していくこととしている。

さらに、対人地雷の禁止に関連し、防衛省は、例外保有などに関する年次報告を対人地雷禁止条約事務局に対して行うなど、国際社会の対人地雷問題への取組に積極的に協力してきた。

このほか、防衛省・自衛隊は、軍備や軍事支出の透明性の向上などを目的とした国連軍備登録制度や国連軍事支出報告制度、武器貿易条約(ATT:Arms Trade Treaty)に基づく年次報告を行うとともに、制度の見直し・改善のための政府専門家会合などに随時職員を派遣している。

1 包括的核実験禁止条約(CTBT)の発効後の現地査察(OSI)の実施に備え、CTBT機関に登録される関連分野の専門家であり、CTBTの発効後には、現地査察を実施する査察員となることも期待される。

2 クラスター弾の主要な生産国及び保有国である米国、中国、ロシアなどはオスロ条約には署名していない。