防衛大綱は、海洋国家であるわが国にとって、法の支配、航行の自由などの基本的ルールに基づく「開かれ安定した海洋」の秩序を強化し、海上交通及び航空交通の安全を確保することは、平和と繁栄の基礎であり、極めて重要であるとしている。
この観点から、防衛省・自衛隊はインド、スリランカなどの南アジア諸国、東南アジア諸国といったインド太平洋地域の沿岸国自身の海洋安全保障に関する能力向上に資する支援を推進している。
また、共同訓練・演習や部隊間交流、これらに合わせた積極的な寄港などを推進するとともに、関係国と協力した海賊への対応や海洋状況把握(MDA:Maritime Domain Awareness)の能力強化にかかる協力などの取組を推進している。
国家安全保障戦略において、わが国は海洋国家として、法の支配、航行・飛行の自由や安全の確保、国際法にのっとった紛争の平和的解決を含む法の支配といった基本的ルールに基づく秩序に支えられた「開かれ安定した海洋」の維持・発展に向け主導的な役割を発揮することとしている。
また、2018年5月、第3期海洋基本計画が閣議決定された。本計画においては、海洋の安全保障の観点から海洋政策を幅広く捉え、「総合的な海洋の安全保障」として政府一体となって取り組むことを明記している。
これに向け政府は、わが国の領海などにおける国益の確保、わが国の重要なシーレーンの安定的利用の確保などに取り組むこととしている。
また、海洋に関する施策に活用するため、海洋関連の多様な情報を艦艇、航空機などから収集、集約・活用するMDAの強化に向けた取組を一層強化することとしている。
なお、中国とASEANが策定に向け協議を続けている南シナ海行動規範(COC:Code of Conduct in the South China Sea)に対し、わが国としては、COCは、国連海洋法条約をはじめとする国際法に合致すべきであり、南シナ海を利用するステークホルダーの正当な権利や利益を害してはならないとの立場を表明している。
防衛省・自衛隊は、シーレーンの安定的利用を確保するための海賊対処行動、中東地域における日本関係船舶の安全確保に必要な情報収集活動などを行っている。また、法の支配や航行の自由の重要性について、防衛省・自衛隊としても機会を捉えて国際社会に呼びかけており、例えば、2020年12月のADMMプラスにおいては、岸防衛大臣は、力を背景とした一方的な現状変更の試みや既成事実化に強く反対し、国連海洋法条約を含む国際法に則った紛争の平和的解決を強く要請する旨を述べた。
また、海自は、これまで、西太平洋海軍シンポジウム(WPNS:Western Pacific Naval Symposium)の枠組みのもとで「洋上で不慮の遭遇をした場合の行動基準」(CUES:Code for Unplanned Encounters at Sea)を策定するなどの取組も行っている。